前書き この作品は奇縁譚とデビルサマナーシリーズとのクロスオーバーです。







「の、飲み過ぎた……


 良也は、千鳥足で歩いていた。理由は単純。萃香の酒盛り勝負に付き合わされていたからである。そして、流石にこの状態で飛ぶと空中でリバースするという大惨事になりかねないので、夜道を歩いているというわけである。

(萃香が先に酒樽20個分ぐらい開けてたから、勝てると思ったのに…… ルーミアに遭遇したくないから早く神社までつかないかな)

 萃香は、さすが鬼と言いたくなるような飲みっぷりで、良也は結局勝てなかったのだ。良也の心境としては、鬼パネェといったところである。そんなくだらない事を考えながら、歩いていると、良也の目の前に銀髪の少女が現れた。

「やあ、こんばんは」
「こっこんばんは」

 挨拶をされたので、良也はとりあえず挨拶を返した。相手は友好的な態度をとっているが、良也の額からは冷や汗が流れ落る。なぜなら、銀髪の少女から大妖怪クラス…… いやそれを遥かに凌ぐほどの霊力を感じ取ったからだ。

「おやおや、そんなに怯えられると傷ついてしまうよ?」

 あくまでも笑みを絶やさずに、少女はそう言った。しかし、良也は指一本動かすことができないほどのプレッシャーを感じている。蓬莱人であることが関係なしに、この人物は自分を屠ることができると本能で悟ってしまうほどの力を感じたからだ。

「まあいい。私はこの姿の時は、神綺と呼ばれている。君の名は?」
「……土」
「土樹良也」
「……わかっているなら聞かないでくださいよ」

 先程までの酔いが嘘のように覚めてしまっている良也からしてみれば、この状況から逃げなければまずいことになるのは理解できている。しかし、体を動かすことができない。神綺はそれを知ってか知らずか言葉を紡ぐ。

「もうすぐ、君は巻き込まれることになるだろう。これは決定事項だ。けして変えることはできない。歴史とはそういうものだよ

「? 何を言って……!?」

 直後、良也の足元が黒い影に覆われた。そして、その影の中にゆっくりと彼の体が沈み込んでいく。

「私は充分に楽しませてもらったよ。それでは、良い旅を」

 神綺はそう言って、恭しく礼をする。良也は完全に影の中に沈みきり、その場から姿を消した。

 神綺はそれを見届けてから、後ろを振り返る。そこには良也を飲み込んだ黒い影と似た影が現れ、その中から男がゆっくりと出てきた。それを見た神綺は、楽しそうに笑う。対照的に、様々な感情が滲んだ笑みを浮かべた。













 一方、良也は影から放り出され、どこかに着地していた。

「いったぁ…… って、どこだここ!?」

 良也が驚くのも無理はない。影の中に沈みきったかと思えば、どこか古めかしい街並みの中に放り出されたのだ。

(人里にこんなとこあったっけ? だけど、人っ子一人いないし……)

 良也は、そう思いつつもあたりを見回す。良也が立っているは橋の上で、橋の向こうに様々な食事処が立ち並んでいるのが見えた。

 ふと、彼が目を凝らすと橋の向こう側で巨大な蜘蛛のような姿をした悪魔に、少女が襲われているのが見えた。それを見た良也はまずいと思って駆け出した。






「あん? 誰だてめえ? 誘い出せって言われたのはてめえじゃねぇんだがな。それにどうやって龍のアギトを超えてきやがった?

「はい? よくわかんないけど、とりあえずそこの女の子を開放してくれたりはしない?」
「はっ 何ほざいてんだてめえは、奴を誘い出してからいただくに決まってんだろうが。まあいい、先にお前を食っちまうとするか!!」

 そう言うと、悪魔は良也に向かって襲いかかってきた。良也は悪魔の爪を躱すと、懐からスペルカードを取り出し、発動させる。

「シルフィウィンド!!」

 良也の放った風の刃が悪魔の体を切り裂いた。

「てってめぇ!!」

 どうやら、風の属性が弱点だったらしく悪魔は怯んで動きが止まっている。その隙に、少女を抱えて逃げようとする良也だったが、横から突っ込んできたもう一匹の悪魔にそれを阻まれた。

「苦戦してるようじゃねえか」
「助かったぜ兄妹」

 良也は舌打ちをしてもう一度、スペルカードを放とうとしたが、背後からさらにもう一匹近づいてきた悪魔が良也を切り裂かんとして爪を振り上げていた。

「危ない!!」

 その悪魔の横から、叫び声を上げながら突っ込んできた学生服の少年の一撃によって、それは阻まれた。

「大丈夫ですか?」
「ありがとう、おかげで助かったよ」

 良也はそう言って少年に礼を言った。少年と良也は、三匹の悪魔を睨みつけながら会話をする。

「とりあえず、こいつらやっちゃってから話さない? そうしないとあの女の子が危ないし」
「そうですね。来い、ポルターガイスト!!」

 少年がそう言いながら管を突き出すと、底から緑色の光が溢れ小さな悪魔…… ポルターガイストが召喚された。

(うわ、どうなってんだろあれ? 使われてるのは霊力じゃないな)

 良也は少年の召喚方法について興味がわいたがとりあえず、戦闘に集中することにした。そして、また風のスペルカードを取り出すと発動させた。今度は、一体に攻撃を集中させるのではなく、全体に攻撃が届くように調整して風の刃を放つ。

 そして、良也の攻撃でひるんだ悪魔に、少年とポルターガイストは攻撃を加えていく。これを繰り返すことで、なんなく悪魔を殲滅することができた。

「おわりましたね」
「そうだな。っと、自己紹介がまだだったっけ。僕の名前は土樹良也」
「ご丁寧にどうも。僕の名前は葛葉ライドウと言います」

 二人が自己紹介をしていると、少女が光に包まれて消えてしまった。それを見た良也とライドウは一瞬取り乱すが、どこからか響いた声によって落ち着きを取り戻す。

「心配するな、こちら側に引き込んでいる原因が消えたため元いた場所に戻っただけだ」
「そうか…… 良也さん。この黒猫の名前はゴウトです」
「中〇 讓〇 ボイスだ……」

 良也はそう呟きながらも、ゴウトの頭を撫で始めた。渋い声でしゃべる以外はただの猫である。猫好きの良也にとって撫でないという選択肢はなかった。

「ちょっとマテ! 我は猫では……」

 そんなことをゴウトはぼやいたが、そこは良也の撫でテクの見せ所。あっさりと陥落させた。

「すごいですね。ゴウトは猫扱いされるのを嫌うのに、こんなあっさりと」
「猫好きの僕にとってこのくらい軽いって。ところで、ここどこかわかる?」
「そんなこともわからないで戦ってたんですか? ここは帝都にある筑土町の異界ですよ」

 なるほど、と相槌を打っていた良也はふと、違和感と嫌な予感を覚えてこう言った。

「あれ、さっきなんて言った?」
「筑土町の異界ですよ?」
「いや、その前!!」
「ここは帝都にある、ですか?」

 その言葉を聞いた良也の嫌な予感が一気に現実味を帯びてしまった。

「つかぬことをお伺いしますが、今の年号となんでしたっけ?」
「大正ですが、それがなにか?」
「なっななにいいいいいぃいいぃいぃぃぃぃーーーーーーー!!?」

 これが、二人と一匹の出会い。時間遡行してしまった良也が、この時代の大事件に首を突っ込んでしまった、そんな一幕である。





 あとがき

 スライディング土下座!! まだ完結してない連載があるっていうのに新しい連載を書いてしまいました。最新話を見たときこのネタだ!! て思って書き始めてしまったんです。
今回は、良也とライドウの出会いを描いてみました。異世界トリップの次は時間遡行だといったノリです。

神綺は一応、ある悪魔と同一人物設定です。うごご、いったい何シファーなんでしょうね? 隠す気はあんまりないです。彼女の言葉には、良也が時間遡行してしまうこと以外にも意味があったりなかったりしますが、これは後々明かされます。

 良也がライドウのいる時代に行ってしまった後に現れた男が誰なのかは、後々わかります。

あと、ゴウトの一人称は作品によって違ったりしますが、使われていることの多い我で統一します。


用語解説
龍のアギト ゲーム本編で登場する。普通は越えられない結界のようななもの。良也は能力のおかげで超えることができる。



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