土樹良也と異世界の吸血鬼 第二章


注意 この作品は奇縁譚とヘルシングのクロスオーバー作品です。若干グロイ描写があります。



「どうした良也、その程度か? まだ腕が一本ちぎれただけだぞ。かかってこい!新しいスペルカードを出せ!! 能力を最大限まで利用しろ!! 腕を再構築して立ち上がれ!! 剣を用いて反撃しろ!! 訓練はこれからだ。早く!早く早く!!早く早く早く!!!


良也の視線の先で、魔王のような形相でアーカードが佇んでいる。アーカードのスパルタな指導をうけて、良也は草薙の剣レプリカで体を支えながら皮肉を返す。

「あいにくスペルカードは、さっきのが最後のでな… 新作は製作中だよ」

 良也は、何とか立ち上がり剣を構える。それを見つめながらアーカードは、良也が自分に訓練をつけてくれと言った時のことを思い出す。あの時、良也はまっすぐアーカードを見てこう言ったのだ。

「僕は見知らぬ人が死んだとして、悲しめるほど聖人みたいな性格はしていないさ。だけど僕の大事なものに手を出した奴らを放っておくほど甘くはないつもりだよ。だからこそ、あの時みたいに弱いから何もできずに大事なものを失うのは、絶対に嫌だ」

良也は力強く、迷いのない眼をしていた。

「……それに、アイランズ卿も言ってたんだろう?この借りは兆倍にして返すって。だから僕もその手伝いをしないとね


 アーカードはその光景を瞼の裏に見ながら、本当に楽しそうに笑う。そして目を見開き、剣を片手に霊弾をばら撒きながら向かってくる良也を見てこう叫んだ。

「やはり人間とはこうでなくては…… そうでなくてはならない!! さあこいよ、!! お前の持ちうる全て出し切ってみせろ!!!」
「…! 言われんでもそのつもりだよ!!」

良也はそう叫ぶと頭の中で策を練り始める。

(まず霊弾は動きを遅らせるのに有効だ。しかし武器は剣とアンデルセンの銃剣が異空間に十数本だけ…… 対して相手はウォルターさんのとんでも改造銃が二挺と、何処に仕舞ってるか分からない大剣、この形勢の不利は現在変えられない事実か)

良也が思考している間にもアーカードは銃弾と霊弾を次々撃ち込んできている。それを何とか躱すと良也は簡単な魔法を地面にむけて放ち、土煙をあげさせて相手に視界を奪った。それも数瞬の間しか時間を稼ぐことができない。だがそれで十分、時間操作と霊力による肉体強化を併用して一気に距離を詰めることができたのだから。

「喰らえ」

良也は剣を振り下ろした。 ……が、良也の剣はアーカードの影に阻まれ届かなかった。良也のスピードは、並の吸血鬼と同等まであがっていた。しかし、相手は不死王(ノーライフキング)と呼ばれるほどの吸血鬼、それが通用するはずも無かった。

「さて、そろそろ私の手番(ターン)だ!! 影符『ダークネススピア』精々うまく避けろよ、良也」

 アーカードは、スペルカードを発動させた。良也は戦慄する。光によって生まれる影は、光と同じスピードで進むことができる。そのスペルはそれを再現したもの、良也がいくら時間操作できるからと言っても、精々三倍。避けることはまず不可能。
 
そして影の槍は良也を貫き、さらにその槍に追従するように放たれたどす黒い弾幕が、良也の周りの空間ごと彼を吹き飛ばした。

「……………………………ほう? まだ立つか。ククククク面白いぞ。ここまで私を楽しませるとはな。どうやらお前のことを過小評価していたようだ」

 アーカードは、本当に嬉しそうに笑う。彼は、人間というものにある種の羨望を抱いている。彼は、自らを『人間でいる事にいられなかった弱い化け物』と嘲るほどだ。

だからこそ、諦めを甘受する人間や存在には容赦がない。そんなものに敬意を払うつもりがない。そういうものを彼は、侮蔑をもって容赦なく鏖殺する。

 だが意志の強い者や、自分の使命を全うしようとする者、諦めを踏破するものには最大限の敬意を払う。それが敵ならば、全力をもって戦い、その末に自分が死ぬとしてもそれを良しとする。

 諦めを踏破した良也は、後者のそれも最上級の部類に分類されている。

「そいつは…… どう…… も」
(どうすればあいつに攻撃をあてられるんだろう? アーカードのおかげ……といっていいのか分からないが再生のスピードは馬鹿みたいに早くなっているんだけどなあ。あのラスボス臭ただよう容赦のない攻撃で、今日一日だけで死亡回数四桁突破したから当然か)

 良也の体は高速再生して、もうほとんど傷がない。血も先の攻撃で蒸発していたがこれは現在造血中だ。

(我ながらとんでもない回復力だな、まてよ? この回復力があれば……)

 良也はイチかバチかの賭けに出ることにした。だがアーカードも本気を出し始めた。

「拘束制御術式  第三号 第二号 第一号 開放。
 状況A『クロムウェル』発動による承認認識
目前敵の完全沈黙までの間
能力使用 限定解除開始」

 アーカードの体がギチギチと音を立てたかと思うと巨大な黒い犬が現れ、大口を開けて良也に喰らいついた。良也は犬の口の中で手足に力を入れて踏ん張って、食われないようにしている。何故、良也は肉体強化の魔法が使えず貧弱な霊力による強化しか使えないのに、このようなことができたのだろうか。

肉体強化の魔法とは、体中の骨や筋肉の強度を上げ、脳がそれだけの力を使っても大丈夫だと判断しとんでもない馬鹿力が使えるようになるのだ。しかし、良也は脳のリミッターを外すことでとんでもない身体能力を発揮している。

だがそんなことをすれば骨や筋肉は、負荷でズタズタになる。良也は蓬莱人の再生能力の高さをもってそれを克服した。ようは、骨や筋肉がズタズタになる前に再生するという荒業だ。

「−−−−−−−−−ぎぎぎぎぐぅおらああああぁぁあぁ!!」

 良也は雄叫びと共に犬の口をこじあけ、その横っ面に異空間から取り出した銃剣を突き刺した。ちなみにこの異空間は、良也が違う位相の空間に世界を広げることで、そこに物を収納できるという四○元ポケットみたいな便利なものだ。しかし、広げている世界の分の容積しか収納できないあたりの不便さが良也クオリティというべきかもしれない。

「やるじゃあないか! では、お次のスペルカードだ。『逆さまの串刺し刑』!!


 無数の魔法陣が良也の頭上に展開され、そこから次々黒い棘がのびる!! 良也はギョッとして回避をするが、躱しきれずに何発か喰らった。

(クッソ、やっぱりぶっつけ本番の技を使うのはきつい! 次で決める!!)

意を決した良也は時間操作を行い限界まで加速させ、アーカードに突っ込んだ。

そして……





「いよっしゃああああああああ!! やっとアーカードに一発あてられた」

この訓練での良也の勝利条件はアーカードに一発でも攻撃を当てること。敗北条件は良也が負けを認めること。つまり、良也は勝ったのだ。訓練開始から約十時間二十七分、さらにアーカードは、被害が出ないように周囲に結界まではっていたのだ。ようはこの勝ちはおまけみたいなもんである。

だが、それでも良也にとっては大きな一歩だ。なんだかんだと理由をつけて逃げる癖のある良也が、自分から望み、勝ち取った勝利だ。しかし良也は重大なことを見逃していた。それは…

「良也、喜んでいるところに水を差すようで悪いが、いつまでその奥様もうっとりなでかい一物をさらしているつもりだ?」

アーカードの人をからかうようなニヤニヤ笑いに嫌な予感がした良也は、ゆっくりと視線をおろす。

「?…………!!!!くぁwせdrftgyふじこlp!!!!??!!?!?!!!」

 良也の言葉にならない絶叫は、ヘルシング邸全体に響き渡った。




「いつまでしょげてるんだ、良也? 勝ったんだから別に気にすることではないだろう、あのくらいのことは」
「だって裸ですよ! すっぽんぽんですよ!! しかもあの事を、アーカードがインテグラに言ったせいで顔を合わせるたび大爆笑されるんですよ!!?」
「すっ、すまん………思ったより深刻だな」

 あの事件以来、良也とウォルターは仲良くなり、会話もフランクなものになっている。良也の言葉で、大分訓練後の事態がどれほど良也の精神にダメージを与えているか理解したらしい。

(しかし、良也には悪いが、お嬢様や良也が元気になってよかった。あの事件以来暗かった屋敷にも活気が戻ってきたようだ)

 ウォルターが思っている通り、良也のすっぽんぽん騒動は生き残った者たちに笑顔を与えたのだ。良也は異変などが起こった時などでも、素で場を和ましたりしている(本人にとっては不幸なことが起こることが多い)ので、ある意味良也は、天才的なムードメーカーかもしれない。

「……ところでウォルターさん、僕がなんで空中戦の訓練をしていないか知ってますよね」
「ああ、確か、お前の飛行速度では確実に銃で狙い撃ちされるから、だったな」
「ええ、今では地上でリミッターを外して走った方が早いですからね。そこは、空中を走れるようにするつもりです。それともう一つの理由はスペルカード以外の決定打に欠けるからです」

 良也の言葉を詳しく説明すると、ぶっちゃけ、霊弾の威力の低さとスピードの遅さが問題なのだ。良也の霊弾は、彼の強化なしの全力パンチと同じ位で、牽制などで相手の動きを止めたりするぐらいにしか使えない。数百と相手に当てられれば、吹き飛ばしたり、かなりのダメージは与えられるが、相手は化け物。スピードのとろい霊弾なんてまず当たらない。

「だから、霊弾の基礎威力と基礎スピードの底上げを追々すると言いましたが、それは何時になったら完成するか分かりません。なので、銃火器を使おうと思います」
「…………なるほど。つまり、お前は武器の改造を手伝えと、遠まわしに言っているんだな?」
「ええ、察しがよくて助かります」

 良也は、ゆっくりと求めている武器の名前を挙げていく。

「まずは、改造用のデザートイーグルが二挺。ワルサーPPKが二挺。MP5Kが二挺。AK74が一挺。水平二連式散弾銃が一挺。改造しやすそうなガトリング砲を一挺。注文(オーダー)は以上です」
「やれやれ、人使いが荒い奴だ。わかった、用意させよう」

 ウォルターは苦笑しながらそう言うと、静かに笑って立ち去っていく。それを良也は、満足そうな表情で見送ると、踵を返した。

「さてと、今日の朝の仕事も終わったし、兵士の訓練でも見に行くか」

 良也は、あいつらアーカードにやられてないよな、と自分の独り言を言いながら、訓練スペースに歩き出した。



あとがき


良也の再生スピードが50から200に上がった!!
良也の精神力が20から850に上がった!!
良也の先頭技術が30から2500に上がった!!
良也の痛みに対する耐性がカンストした!!!!

アーカードの魔王っぷりが1000000000から1000008000に上がった!!
アーカードのドSっぷりが1000000000から1250000000に上がった!!



さて久しぶりの投稿でしたがいかがでしたか?上のパラメーター上昇値は半分くらい適当に書きました。

今回は、良也らしさを潰さず、前回のシリアスを乗り越えて、強くなるための過程を描いています。そのため、良也は千回以上、訓練でアーカードにやられています(過程はそこまで書いてませんが)。そして、それだけ殺られた為に、再生速度が上がっています。奇縁譚本編でも殺られたぶんだけ、再生が早くなる描写があった気がしましたので、そこからこのようになっています。

あと、言うのが遅れましたが、この作品は良也を主人公として強く成長させてみるというコンセプトで書いています。しかし良也は、過酷という程度では成長しづらそうでしたので、地獄と言ってもいいくらいの環境につっこみました



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