土樹良也と異世界の吸血鬼 第一章


注意 この作品にはグロイ描写があるので気を付けてください。あと、誤字脱字があるかもしれません。


「ウォルターさん、こっちの仕事は片付きましたよ」
「ご苦労様です。しかし魔法関係以外にも私の仕事を手伝っていただけるとは……」
「いえ……お世話になるし、これくらいしないと。それに、この屋敷にウォルターさんしか執事がいないじゃないですか」
 
そう、この屋敷ではウォルターが掃除に洗濯、さらには武器の調達や改造まで一人で行っているのだ。良也も
(流石にこれはないだろ… 咲夜さんでさえ妖精メイドの部下がいるんだぞ!?)
と思ったほどだ。

「しかしウォルターさん、僕に仕事を教えるときに鋼線をちらつかせないでください。あれは、本当にトラウマになりそうです…」
「いやはや、後進を育てるのは初めてでして…」

 ウォルターはこう言っているが、ほかの理由もある。それは、三日後にある円卓会議の召集だ。
吸血鬼の事件が多発するなか、現れた良也はスパイの疑いがかけられている。それに対して円卓のメンバーに少しでも好印象を与えるために執事としての働きを見せ、ヘルシングに対する恭順を見せる必要があった。だから、良也の仕事を手伝うという提案は渡りに船だった。
今、この状況で戦力拡大を見込める良也を円卓にいちゃもんつけられて失うわけにはいかないのだ。

「しかし、アーカードはすごかったですね。あいつ、スキマと霊夢を足して二で割っていないやつ百人分以上の霊力を持ってましたよ。それに飲み込みも早くて、飛行、スペルカード、魔法すべてにおいて成長スピードがダントツです」
「彼は規格外ですよ。彼は、血を吸ったものの命を取り込める。おそらく、いままで吸った人間や非人間の力を振るえるのでしょう。ところで、警備兵とセラス嬢、お嬢様の魔法の習得はどのような状況ですか?」

 ウォルターは、話をかえて良也にアーカード以外のことについての習熟度をきいた。

「インテグラ様とセラスは、霊力を体外に放出・操作ができるようになり、簡単なスペルカードの製作と発動が可能になっています。警備兵の二割はお嬢たちと同じレベルまで、三割は操作と放出まで、残りはやっと霊力を感じられるようになったところです。訓練から一週間でこれだけなら、相当いいペースだとおもいます」
良也は、そう一息でいうと仕事に集中しはじめた。ウォルターは、後でジャッカルの製作を手伝ってください、と言い残し去って行った。


三日後、ヘルシング家邸内では立て続けにおこっている吸血鬼が起こす事件の報告をインテグラが行っている。そこに集まった円卓のメンバーは英国の各機関のトップたちだ。
良也はインテグラの傍らで、その様子を見ていた。彼は、自分に向けられるぶしつけな視線を煩わしく思いつつ円卓メンバーを観察する。
円卓メンバーの視線には疑念や期待などが入り混じっており、良也を値踏みしようとしているのがよく分かる。
(やれやれ……ほんとにお偉方の相手をするのはたいへんだな。早く終わってほしい)
良也は、そう思いながら自分について報告するインテグラを見つめた。良也は、これだけのことを考えながら眉ひとつ動かさない。これはウォルターの教育の賜物だろう。
円卓メンバーのアイランズが良也に質問をしようとしたところで突如、警報が鳴り響く。

「なにごとだ!! 警備室!!!」
『敵の襲撃です! 武装したグールの軍隊が押し寄せてきます!!』

警備兵の受話器越しの声に円卓メンバーに動揺が走る。それでもインテグラとアイランズは冷静に対処を続ける。

『敵の三分の一は打ち取りましたがこれ以上は持ちません! 敵がもう扉の前まで……ああああアアぁぁァaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!……」

「警備室どうした!!」
 インテグラの悲痛な声が響く。しかし、この場にいる者たちは皆気づいている。警備室の兵士はすでに息絶えていることを…
『あ〜アー アロー アロー円卓会議の皆さまこんにちはー。どうしようもないインバイでビッチのくそヘルシングちゃんも聞こえてますかあ? 僕様ちゃんたちの名前はバレンタイン兄弟。僕、弟のヤンでーす』
 受話器越しにヤンの声と何かを食い漁るような音が響いている。
(こいつら……まさか!?)
良也はある可能性に気づき、怒りに顔を赤く染める。そして、その予感は的中した。
『こちらは遅めのランチの真っ最中でござーい。あんた等の仲間を美味しくいただいてます。こいつ等は、僕たちのウン○になるですよ』
 そこでいったん声が切れた。インテグラは唇が切れるほどに噛みしめている。もはや感情に抑えがきかないのだ。
『今からてめえらぶっ殺しにいくぜ、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?』
 それから声はと途絶えた。同様する円卓メンバーをインテグラは諌めつつウォルターに連絡を取る。
ウォルターとインテグラの声が部屋に響いている。そして作戦はたてられた。


それからしばらくして、通風孔の蓋が円卓メンバーであるペンウッドの頭に落ち、さらにはセラスが彼の頭におちた。
(大丈夫かなあの人の首。ていうか、ウォルターさんはきれいに着地したのに吸血鬼であるセラスがあんなドジな着地するとは……)
良也はそう思いながらも彼らが来たことを喜んだ。
「ウォルター下の様子は?」
「ある程度生き残った兵が銃弾やスペルカードを使い、敵の数を減らしながらここまで退却しております。良也の訓練がなければ、彼らも生きてはいなかったでしょう」
「そう言っていただけると幸いです。執事長、これからどうされますか?」
良也は、ウォルターにこれからの動きについて尋ねた。
「地下階からアーカード様が、3Fからセラス嬢と私が迎撃…いえ、出撃します。そして良也はここで守備を任せます」
「了解しました。ただ……」
良也は一旦言葉を切り、そして一気にこう言った。
「絶対にやつらを叩き潰してください。奴らは僕の生徒を食っていました。逃がさないでください、絶対に」
「良也の言うとおり。ウォルターこれは命令だ。奴らをこの館から生かして帰すな」
 良也とインテグラの言葉を聞いたウォルターは、それに応えるように凄絶な笑みを浮かべ死地に向かって出撃した。

 出撃したウォルターを見送ると、円卓会議のメンバーは銃を取り出し安全装置を外しす。
(さっきまで取り乱してたのがウソみたいだ。これが、円卓会議…英国を守る人たちか)
良也は、彼らに感心しながら気を引き締める。もはや気を抜けない状況なのだのだ。

 一秒か一瞬かそれとも数時間か、どれほどの時が経ったのだろうか。銃声が止み、ウォルターのしまったという言葉が場の空気を緊張させる。扉が破られ、敵の腕がインテグラに伸びた。

グシャァ

何かが突き破られる音。しかし、インテグラは傷一つ負っていない。代わりに貫かれたのは

「大丈夫ですかインテグラ様」

良也だった。彼は、腹をヤンの腕に貫かれていたが怒りで完璧に痛みが飛んでいる。

「おい化け物、よくもまあ僕の生徒を喰ってくれたな……… そんなに血が欲しいか? ならくれてやるよ、たっぷりとなぁ!!」


 良也の言葉と共に、周囲に飛び散った彼の血が蠢き、ヤンに殺到した。血がヤンの体を貫き、内側から肉をミンチにして骨を砕き内臓を破壊していく。

「後は頼みました。インテグラ様……」

血を失い、遠のく意識の中で確かに良也は聞いた。

「よくやった良也。今は休め」

 

ここからは多くのことを語れない。良也が目を覚ますと、すでにことは片付いていた。喪われてしまった彼らの葬儀は終わり、良也はひとり、涙を流し、雨に打たれながら彼らの墓の前で佇んでいる。彼らと出会わなければ、こんな悲しみに襲われることはなかったのではないか、と良也は思う。だけど、良也は出会わなければよかったのだろうかと自分に問う。
答えは否。良也は、彼らの顔を一人一人鮮明に思い出せた。短い付き合いだったが、確かに彼らと過ごした時間は楽しかった。だから、彼は墓標に言葉を贈る。

「ありがとう、みんなと出会えてよかった。喪ったものは大きくてとても悲しいけど、出会えたことは絶対に後悔しない」
 そして、良也は涙をぬぐい立ち上がる。そして、しばらく歩くとウォルターがいた。
彼は、何も言わずに煙草を良也に差し出す。良也は、少し驚いたがそれを受け取り自分で火をつける。


思いっきりむせた。ウォルターはそれを見て微笑み、良也は苦笑いだ。そして、墓のほうから笑い声が聞こえた。良也は、一度だけ振り向き微笑む。もう雨はあがっていた……


あとがき
話の都合上長くなるので、良也の絡んでたとこ以外カットしました(これでも十分長いとか思っちゃいけません)。そのせいでアーカードが出てません。ルークも出てません。そのうち行き詰ったらミレニアムと良也のギャグ話でも書こうと思います。



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