土樹良也の消滅


注意
メールで初投稿させていただきます、ペンネーム「ねむいひまじん」と言います。今作はシリアスな話なので、そういったものに不快感を覚える人は読まない方がいいかもしれません。あと、外伝の要素も少し含まれています。



良也は宴会の準備をしていた。そんな良也が自分の体調の異変に気がついたのは、おつまみを作るために厨房で食材を調理している時だった。
「っっつ!! 何だ? めちゃくちゃ痛い……。」
突如襲った激痛に良也は胸をおさえてうずくまった。
平衡感覚が維持できず、全身から汗が吹き出る。まるで、内側から何かが侵食して自分の何かが失われていくような感覚。
そして、良也の意識は闇に落ちた。



「知らない天井だ。」
「!! 起きたのね、良也。」
良也はネタをかましたが、人を実験台にする永琳にしては珍しい心配顔で、良也を覗き込んでいた。その他には、紫がいた。彼女も珍しく、良也を心配しているようだった。
「めずらしいな。スキマが僕のこと心配するなんて。どうかしたのか?」
「良也、落ち着いて聞きなさい。もうすぐあなたは世界から侵食されて消滅するわ。」
良也は、紫の言ったことが理解できなかった。しかし紫の顔をよく見ると、泣き出しそうな顔をしていた。その表情が、無情にも良也に悟らせてしまう。紫が言っている事は事実であると。
良也はややかすれた声で聞いた。
「何で……。僕は消滅するんだ?」
「あなたの能力のせいよ。あなたの能力は世界を自分のまわりに構築する能力。しかしそれは、この世界にとっては異物。例えるなら、ウイルスと似たようなものよ。あなたの能力が強化され始めたことによって、世界にとって看過出来ないものにあなたはなってしまった。」
「そうか……」
良也は静かにそう呟いた。彼の心は、不思議と落ち着いていた。きっと、何処かで悟っていたのだ。いずれこうなることを。
考えてみれば、彼はいつも死ぬことが多かった。これは世界の免疫作用の一つだったのだ。
彼の前世では成人することはなかった。それはその前の、そのさらに前の生でも同じこと。
しかし今回の人生で、それは覆された。良也が蓬莱人となってしまったから。そして、時と共に成長してゆく能力はついに、世界が良也を消滅させるまでに至らせのだ。
「この事は誰にも話すな。これは、僕たちだけの秘密だ。」
「っっ!!! どうして!!!!!」
スキマが声を荒げるなんてめずらしいな、などと良也は考えながらこう言った。
「僕のせいで誰かが泣くなんて嫌だからだ。それに、僕は充分に生きたよ。」
その何もかも悟ったような表情に永琳と紫は、息を飲んだ。自分達と比べ遥かに若い、いや幼いと言ってもいいような良也がこんな表情をしている事に深い悲しみを覚えたのだ。二人は、何かを言うため口を開こうとするが、
「良也さん大丈夫!?」
心配した霊夢が駆け込んできたので何も言えなかった。
「大丈夫だよ。永琳の話によるとただの貧血だそうだ。今は、スキマ達と話をしてたんだ。」
「たくっ…心配させないでよ。二人が帰ってこないから、何かあったのかと思ったじゃない。」
「心配することじゃないだろ? まだ、ちょっと話があるから外で待ってろ。」
霊夢は、少し不満そうにしながら部屋から出ていった。

「さて、聞きたいことがある。僕はあとどれくらいもつ?」
「……もう何を言っても無駄みたいね。三ヶ月といったところ。」
永琳は良也にそう答えた。それは、良也と過ごせる時を示すもので、告げられた良也よりも告げた永琳と紫の方が辛そうだった。

こうして、良也の最期のひと時が始まった。


最初の一ヶ月に良也はまず、さざなみ寮の面々や家族、月村家の面々、さらにかつての教え子たちと宴会を開いた。そして、幻想郷の面々とも宴会を開く。

次の一ヶ月に良也は退職して、外界との繋がりをできるだけ減らした。



そして、最期の一ヶ月……
良也は、紫の元を訪れていた。残酷な頼みごとを彼女にするために……。
「スキマ、頼みがある。僕のことを憶えているすべての存在の僕に関する記憶、僕のすべての記録をこの世から抹消してくれ。」
「何を言っているの?あなたは……。そんなことしたら、あなたは誰の記憶にも残らず本当に消えてしまうわよ!!」
「それが目的だよ。僕は最初にいったろう? 誰かが僕のせいで泣くのは嫌だって。だから頼む。これが僕の最期の願いだ。」
紫は、そんな言い方されたら断れないじゃない、と泣きながら言った。
こうして、良也の記憶は、抹消された。良也と紫の記憶を除いて……。
流石に世界規模の記憶の境界をいじったせいか紫はやや衰弱していた。
そして良也は自分のことを憶えている最後の存在に近づき、スペルカードを発動した。
「忘符 存在消滅」
そのスペルカードは対象の記憶の中の、特定の存在の記憶を消すためのもの。弱っていた紫はなす術もなく喰らい、意識を闇へ落とした。
「あーあ、これで僕のことを憶えている存在はいなくなったのか……。やっぱり悲しいな。誰にもいたまれず逝くのは……。」
そう言った良也の体は薄く透け始めた。世界との繋がりを絶った良也を繋ぎとめるものはなく、消滅をはやめたのだ。
「さようなら、皆。僕は皆と出会えて本当に良かった。皆との時間は、僕の宝物だ。」
そう言うと良也は微笑み、静かに消えていった。



あとがき
今回は奇縁の三次創作をさせていただきましたが、いかがでしたか?
良也が消えてしまうといったバットエンドですが、次回で彼を復活させる予定です。こんな初心者の文を読んでいただけるか不安ですが、次回もよろしくお願いします。



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