東方紅鏡曲(こうきょうきょく)


              -第2章- 忘れられし楽園へようこそ





















「っとまぁ幻想卿はこんなところよ♪」

スキマから現れた女、八雲紫がこの場所について説明する。私はと言うと、

「か〜わ〜い〜い〜」

またレミリアと・・・・訂正、レミリアで遊んでいた。
ついさっき怖い目にあったばかりだがやっぱり可愛いことに変わりはないわけで・・・・

『ちゃんと話を聞きなさい!!』
『ちゃんと話を聞け!!』

紫とレミリアから同時に怒鳴られてしまった。



この会話の少し前、私は完全に思考が停止していた。
私がここにいる原因、私を飲み込んだスキマから人が出てきたからだ。
スキマから出てきた女はクスリと笑い

「こんにちわ紅野鏡子。私は八雲紫、あなたをこの場所・・・・・・幻想卿につれてきた
張本人よ。」

こういうと紫は私の今いる場所、忘れられし楽園「幻想卿」について説明をし始めたのであった。
最初こそ戸惑ったものの説明を聞いているうちに徐々に普段のペースを取り戻し、現在に至るのでした。


「え〜と大体はわかったわよ〜。私が連れてこられたのは幻想卿という私の世界で
忘れられたものが集まるいわばパラレルワールドってことでしょ?まだちょっと信じがたいけど
紫は妖怪でレミリアは本当に吸血鬼、まぁあれだけ人間離れしたとこを見せられちゃ信じるしか
ないんだけど。あとはスペルカードというものを使って勝負をして、勝った方は負けた方を
好きにできるっと。こんなとこ?」


「だいぶ簡単な説明にされたけれどまぁ大体そんなものね。」
「まぁ大体のとこはわかったけれどまだ肝心なところを聞いてないわ。」
「あら?何かしら?」
「な・ん・で・いきなり私をここに連れてきたのよ!!」
「だからさっきも言ったでしょう?面白そうだったからだって♪」
「そんなの理由になるわけないでしょう!!」

そりゃ確かに違う世界に行きたいと言ったのは私だけれど、だからといって
いきなりつれてこられてはさすがに色々と困る。
まぁ実際にはそこまで未練みたいなものはないけれど一応理由くらいは聞いて
おきたいというのが正直なところかな?

「とりあえずちゃんと理由を教えなさいよ。」
「どうしようかしら〜☆」

紫の煙に巻く発言に私もちょっとカチーンとくる。

「わかったわ、確か勝負で勝ったら負けた方を好きにしていいのよね?」
「えぇそうよ♪」

紫がにやりと笑う

「なら今すぐ私と勝負しなさい。勝って聞き出してやるんだから。」
「あらあら、まぁ私は構わないけれど負けたときの覚悟はあるのかしら?」
「そっそんなの大丈夫よ。もし負けたら私のこと好きにして構わないわよ。」

実際私は運動能力なら結構自信もある、第一妖怪って言ってもこんなわけのわからない
女に負けるとは思えないし。

「あらそう、妖怪の好物が何かをわかってて言ってるのよね?それは。」
「えっ・・・・・・」

急に紫の表情から微笑みが消え、背筋に寒気がし始める。

「自分の立場をわきまえずに行動することはあまりにも愚かよ。あなたの能力は
確かに凄いわ。だけれどそのことに気づいてすらいない、それは恥ずるべきことよ。」

明らかにさっきまでの態度とは一変、まるで別人のような紫の態度に体が凍りつく。

「わっ私の能力?確かに鏡を出すことはできるけど今までそんなに凄いと思えるようなことって
なかったわよ?」

ここで怖気づいたらいけない気がしてとりあえず反論する。

「あなたの能力はただ鏡を出すだけではない。鏡は全てのものを映し出し反射する。
そう、あなたの能力はこの世界でもかなり上位のものになるわね。むしろこの世界では、かしら。」
「映し出し・・・反射?それってさっきレミリアの技を跳ね返したときのようなことができるってこと?」
「そうよ、そしてそれは物理的なものから目に見えないものまで・・・・まぁあとは自分で考えてみなさい。」
「むぅ〜・・・・・」

私が唸っていると紫の表情がもとに戻る。

「まぁこれもあなたをつれてきた理由の一つね。第一あっちの世界だといずれあなたはその力を見つかって
しまうわよ?見つかれば当然色々な実験材料にされ、それどころか最終的には危険人物とされて殺されて
しまうかも知れないしね。どう?これでもまだ何か文句はあるかしら?」

なっ・・・そこまでは考えていなかった。確かにこの能力を見つかったら普通の女の子として生きてい
くことはできないと思っていたけれど、まさか殺されるとまでは思っていなかった・・・・・・・・
確かに私ってばこの能力に対する考えが甘すぎたのかも知れない。



もしかしたら紫って実はいい人、いやいい妖怪なのかな・・・・・・?

「まっもう一つの理由は退屈しのぎになりそうだったからね♪」

・・・・・前言撤回、やっぱりこの妖怪は信用できない。

「ところでなんで勝負もしてないのに教えてくれたの?今にも襲ってきそうなくらいのオーラを出してた
のに。」

私がふと疑問に思って聞いてみる。
すると紫はあくびをしてこう答えた。

「そろそろ寝る時間なの。」
「・・・・・・へ?」

「だ・か・ら・そろそろ眠る時間だからあなたと戦っている暇なんてないの。」

「・・・・・・それだけ?」

「そ・れ・だ・け・よ(はぁと」

この妖怪本当に何を考えているんだろう・・・・・

「それじゃ私は帰らせてもらうわね〜。」
「ちょっと待ちなさい!!」

一件落着かと思いきや突如紫を呼び止めた声、レミリアだった。

「・・・・・こいつ、どうするのよ?」


・・・・・こいつ?


そして気づいた。何故今までこんな大切なことに気づかなかったのだろう?

「私帰る家ないじゃない!!」

まさかこんな歳で家なき子になるなんて誰も思いもしないだろう。
しかし現実問題今私は家なき子になりかけている。

「うぅ〜紫〜私のこと連れてきたのあなただしせめて家が見つかるまで泊めて〜。」

まぁいきなり泊めてというのもおかしな話だけども実際野宿だけは絶対勘弁だし。

「い・や・よ♪」

あっさり断られた。うぅ・・・ほんとにどうしよう。

「うちには泊めるところなんてないわよ。まぁレミリア、あなたに任せるわ。煮るなり
焼くなり好きになさい。それじゃあお休みなさ〜い。」

そういうと紫はスキマの中に入ろうとしたが、ふと止まり

「あっそうそう、忘れてたわ。鏡子、ちょっとこっちに来なさい。」
「ん?な〜に?」

私が紫に近づくと紫は持っていた扇子で私の頭をポンとたたき

「これでよしと、それじゃ今度こそお休みなさ〜い。」
「えっ?今のはなn・・・・・・」

私が聞こうとするのを無視して紫はスキマの中に消えてしまった。
意味不明な紫の行動に私が悩んでいるとレミリアが口を開き、

「・・・・・さて、咲夜?今日のお夕飯のメニューが決まったようね。」
「そうですね、お嬢様。わざわざ人里まで買い物に行く手間が省けて助かりますわ。」



・・・・・あら?もしかして文字通り煮るなり焼くなりされちゃいます?

「えっえっと、私は食べてもおいしくないわよ?」
「あら?人間の味覚じゃおいしいわけないじゃない。私たち妖怪にとっては絶品よ?ねぇ咲夜?」
「いや私に振られましても(汗」

まっまずいこのままここにいたら本当に食べられてしまう。

「こっこうなったら・・・・」
「あら?逃げるのかしら。咲夜!」
「はい、お嬢様。」

あら?咲夜さんが消え・・・た?




っと思うが早いかいきなり咲夜さんが私のことを捕らえる。

「きゃ・・・って一体どうやって後ろに?」
「私の能力は時を操ることができます。あなたを捕らえることなど飛ぶ鳥を落とすよりも
簡単なことですわ。」
「そっそんなの反則じゃない〜。それに飛ぶ鳥を落とすとか本来難しいことの例えだし。」
「私からすれば簡単なことですわ。」

何それ〜とか考えているうちにレミリアがゆっくりと近づいてくる。

「フフフフちょっとお夕飯には早いかも知れないけれど、たまには踊り食いもいいものね。」
「キャーよるな〜この変態〜。」
「大丈夫よ痛いのはほんの一瞬だから。すぐに楽になるわ。」
「楽に・・・・って死ぬんじゃないの!?イヤだーはなして〜。」

うぅ〜このままじゃ本当にまずいかもしれないよ〜。
そして私の首筋にレミリアの牙が触れそうになるその時・・・・







「・・・・・プッ。」
「・・・・・ほぇ?」
「アッハハハハハハハハハ。あ〜おかしい、たまにはこうやって怯える相手をからかうのも
面白いものね〜。」
「もぅお嬢様ったら人が、いや妖怪が悪いんですから。」
「あら?咲夜だってノってたじゃないの。」
「私はお嬢様の命に従っただけですわ。」

咲夜さんが私を捕まえていた手を離す。

・・・・・あれ?もしかして私、からかわれてた?

二人が笑っている中で一人ポカーンとしている私。

「大丈夫よ、安心なさい。あなたのことを食べたりなんかはしないから。あの紫がわざわざ
送ってきたのよ?きっと面白いことが起こるに違いないわ。それに私は私を恐れる人間の血
しか飲まないし。」

そういうとレミリアはにやりと笑う。
もぉ〜幻想卿ってば見た目につり合わないくらい腹黒いやつが多すぎよ〜。

「それだったら最初からこんなことする必要ないじゃない〜。」
「あら?これからここに住む者に主の怖さと威厳を示すのは当然でしょう?あとはさっき子供
扱いしたことへのちょっとした復讐よ。」
「子供扱いしたことまだ根に持ってたの?・・・・・って、え?これからここに住む・・・?」
「そうよ。咲夜?確か空いている客間があったわよね?今日からそこにこの子を住ませることに
するわよ。案内してあげなさい。」
「わかりましたわ。それでは鏡子様どうぞこちらへ・・・・」
「あっはっはい。」

あまりに急な展開に頭がまだついていけてないかも。
とりあえず住ませてくれるらしいし家なき子になるという最悪な結果は免れたみたい。

「えっと・・・レミリア?その・・・・・・どうもありがとう・・・・・。それとその・・・・
さっきは子供扱いしてごめんなさいね?」

私が謝るとレミリアはフッと笑い

「まぁ今回は私のことを本当に知らなかったようだし勘弁してあげるわ。ただし、今度やったらそ
のときはお夕飯の材料よ?」
「・・・・気をつけるわ(汗」




っとこうして私は紅魔館に住ませてもらうことになった。

・・・・・・・・・・・・食べられないように気をつけないと。






                       つづく






あとがき


どうも、ミラです。

というわけで鏡子は紅魔館にしばらくご厄介になることになりました。

章が進めば進むほど鏡子のおバカっぷりが増していく気がする現状なのですが、

実際紫になんの勝算もなしに喧嘩を売って勝てると思っているくらいなので鏡子

の知能レベルはチルノと同じくらいということになるかも知れません(汗

そして紫が最後いなくなる前に鏡子にしたことですがこれはまた後々の章でわかるようになります。

それではまた次章でお会いしましょうm(_ _)mペコリ













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