フェイトは速人に魔法の使い方を教えるべく色々な文献を引っ張り出し、ミッドチルダ式がどういったモノなのかを再確認していく。 速人自身がミッドに適正があるのかベルカに適性があるのか、まだ未知数である。 フェイト自身はミッドチルダ式を扱うため、まずはそれから試してみようと言う事になる。 魔法の特訓初日。 ハラオウン家の住むマンションの屋上でフェイトの使い魔アルフが結界を作った。フェイト、クロノそして速人の合計四人が結界内に存在する。 「じゃあ、まずはリンカーコアの発現の仕方からいってみようか?」 フェイトの優しい声が結界内部に響く。 リンカーコアを体内から外に出す。 この行為は魔導師としてまず覚えないといけない事でありこれが出来ないと次のステップである魔方陣の構築すら出来なくなる。 「速人。心を静かにさせて、自分の胸の中に意識を集中させてみて? 中に光をイメージしてみるとやりやすいかも?」 フェイトのアドバイス通りに行動を起こす速人。直立不動の体勢で自分の中に光をイメージする。 その行為を注意深く観察するクロノとフェイトと犬形態のアルフ。 すると、速人の両手が自然と自分の胸の辺りまで動きソフトボール大の広さを作った所で止まる。 やがてその空間の中に、白金(プラチナ)色の小さな光の球が出現した。 「へぇ〜 速人の魔力光は白金か。珍しいね」 声を出したのはアルフ。通常の魔力光と言うのは色の三原色に習ったものであり、フェイトの様な金色というのは変換資質をもった者が発現させる色である。 中には、はやての様な例外も存在するのであるがミッドチルダ式魔導師においては今までに例が無い。 「なんらかの変換資質を持っていると言う事か……」 クロノは速人が出現させた色に感想を漏らす。 フェイトは、まず第一段階をクリアした速人を見つめて微笑む。 およそ10分間、速人のリンカーコア取り出しの練習は続いた。 フェイトがコアをしまっていいよ、と声をかけて、訓練終了を言い渡す。 「ふう……」 速人は一息ついた、全身から汗をかいているのは慣れない事をしたために体がかなり緊張していたのであろう。 「今日はこれで終わりなの?」 少し物足りないと言う感じの少年の意見に、クロノが口をだす。 「あまりあせっても仕方が無い。覚える事は山ほどあるが、基本をしっかり覚えないとな、そのうちに嫌って言うほど特訓させてやる、今はまだ適正判断の時だからな物足りなくて当然だ」 クロノの物言いにそうですか、と少し残念そうに言う少年。そんな速人にクロノは課題を出した。 「どうしても、と言うならそうだな……君がいま勉強している物理を今から見てやろう」 「え? 物理!」 クロノの意見を聞いた速人は青ざめる、速人はどちらかと言うと物理はあまり得意じゃない方である、夏休み入って課題は出ているが、毎回物理は後回しにしている教科であった。 「此方の物理がミッドの魔法習得に大いに役に立つんだ、なのはもフェイトも物理においては優秀だぞ?」 お前の基礎力を見てやる、というクロノの意見にフェイトが賛成意見を出した。 「そうだね、物理を理解できれば魔法の使い方も覚えやすいから。速人、クロノにみてもらおう?」 好きな子にそう言われてはイヤですとはいえなくなった速人だった。すこしトーンを落とし両腕をダラリと下ろして返事をする。 「よろしく、おねがいします」 こうして初日を終え、その後4時間。クロノとマンツーマンで物理の勉強をした速人であった。 正直こっちの勉強の方が彼にとってはきつかった。 こんな感じで適正判断を下していきながら魔導師速人の訓練が始まったのである。 その日の夜遅く。フェイトはリビングで色々なデータや本を取り寄せ、必死に魔法初心者の為に教えるマニュアルを作っていく。 約束した以上は全力で教える。フェイトは親友のなのはから全力全開の意味を嫌と言うほど学んでいたからだ。 「あまり根を詰めると、君が持たなくなるぞ?」 砂糖の入ったココアを義妹の為にいれてやった義兄クロノはそれを差し出し、飲めと勧める。 「あ、ありがとう……クロノ」 フェイトはココアを口にする、クロノも同じようにココアを飲んでいる。 フェイトの作っているマニュアルにサッと目を通した義兄は、自分のポケットから待機状態のデバイスを取り出し、彼女の手書きのマニュアルの上に置いた。 「クロノ……これって?」 差し出された物は彼が使っていたストレージデバイス。 ジュエルシード事件、闇の書事件の時に使っていたデバイス【S2U】だった。 クロノから見ればグレアムから凍結の杖デュランダルを託される前まで愛用していた。思い出のある一品。 ココアを飲みきったクロノは義妹に考えを述べる。 「速人が何系統の魔法が得意なのか? 現状では分かっていない。君はバルディッシュを扱わせるつもりなんだろうが、それだと返って速人がデバイスに振り回されるかもしれない。こっちのS2Uの方が初心者には扱いやすいはずだ」 確かにクロノの言うとおりである。 魔力は大きいと予測される速人であるも、魔法を使うとなるとズブの素人の位置なのだ。 高町なのはの様にいきなりインテリジェントデバイスを扱えるという天才は、そうは居るわけが無いだろう。 フェイトはクロノを見つめた、血はつながっていなくとも、未だ兄妹関係の日が浅くても、クロノはやっぱり自分の義兄。 それとなくサポートをしてくれているのだ。 今日の特訓を終えた速人の帰り際の言葉を思い出すフェイト。 物理の特訓を受け終わりゲンナリした速人が靴を穿き一言いった。 「クロノってさいい兄貴だよね? 僕には兄と呼べる人が居ないからさ。フェイトが羨ましいよ」 「そうかな……」 速人の意外な一言に少し言葉を詰まらせるフェイト。 速人はそんなフェイトに笑いかけ言う。 「きっとさクロノ待ってるよ。フェイトがお兄ちゃんって言ってくれるのをさ? 言えばきっと喜ぶよ」 クロノとフェイトの関係は速人も理解していた、養子に入ってまだ半年。 フェイトの性格から直ぐに言い出せないことも分かっていたが、それでも勧めてみたのは、クロノとマンツーマンでやった特訓からクロノの想いを見抜いたのであろう。 速人の後押しも在った為かフェイトはクロノにお礼を言う時にいつもと違う返事をした。 「ありがと、お兄ちゃん」 クロノにとってみればこれは完全な不意打ちであった。 飲みきったココアのカップを手から落とし、そのカップが自分の右足の小指にクリーンヒットした。 「ーーーーーーーー!」 彼(クロノ)の声にならない叫びが聞こえそうだ。小指を押さえて悶絶する義兄。 「わたし、変な事いったかな?」 頭に疑問符をつける義妹のキョトンとした表情は、痛みをこらえる義兄の悶絶表情とは対象的であった。 魔法特訓の方も順調に進んでいく。 「じゃあ今日は今までのおさらいね、まずは魔方陣の展開から」 フェイトに言われ速人は魔方陣を構築する。白金(プラチナ)色のミッド式魔方陣が出来上がる 危惧していた方式のほうはクロノとのマンツーマン物理特訓の成果か、ミッド式魔法陣を構築出来るまでになっていた。 今はミッドでも基本的な魔法を習得し、運用展開と言う所まで進んでいた。 「次は移動系の練習ね? 500m先の目標まで0.1秒で動けるようにね?」 「次は空をとぶよ?」 フェイトの訓練は物言いはやさしいがその実スパルタだ。 日に日にクリアのハードルが高さを増していく、速人も必死にそれに応える。 フェイトはミッド式魔道士の中でも近距離と中距離を得意としているが遠距離、長距離は得意じゃない。 なので、あの少女が登場となる。 「なのはが……教えるの?」 速人は聞くそれはもう嫌そうに、まるでフェイトとの二人の時間を邪魔するな的な視線を送って。 「わたし、これでも管理局で先生役なんだけどね?」 速人を虐める事が出来る。もとい教育するのも姉貴分の仕事だといわんばかりの視線を浴びせる。 「ごめんね速人。私は接近戦とか教えれるけど。クロノが教導専門のなのはにも見てもらった方がいいって言うから」 フェイトが申し訳なさげに言うと、速人はあきらめた感で「おねがいします……」と答える。 「じゃあバリアジャケットつけてはじめようか」 なのはが訓練開始を告げる。フェイトもなのはもバリアジャケットを着ける。 「うん……」 速人もバリアジャケットを着用するのだが? 「……」 暫しの沈黙の後。なのはが彼の格好をみてプッと笑い出した。 口に手をあてた彼女の目は可笑しな形になる。 「アハハ、速人君。それにあってない〜」 げらげらと笑い出す。 速人に対しては遠慮というものをしない、それが高町なのは。腹を抱えて盛大に笑う。 「なのは……速人も気にはしてるんだよ?」 フェイトは速人の心中を察する。なのはにフォローを入れ、笑いの元になってる少年の方を見る、ムスッとしてる速人。 速人がつけたソレはクロノがつけてるソレだ。急遽の借り物デバイスなのでジャケットの換装もしていないわけだ。 速人は思った。 (直ぐにジャケットの変換式も組めるようになってやる! 待ってろよ、なのはめ!) 姉なのはに対し、変な所で対抗心を燃やす弟速人であった。 ハラオウン兄妹からミッドチルダ式という魔法の使い方を教わる飛鳥速人。 学校での成績は中の中辺りであるが、美術や工作等の成績はダントツであった。 しかしミッドチルダ式魔法と言うものは、此方で言う科学の部分も入ってくる。 大別して文系な彼は理系教科に強くなかった。 だが人間面白いもので、窮地に立たされると火事場のくそ力が発揮されるのであろうか? 英会話も出来ない日本人が、なんの頼りも出来ない状況下で必死に英会話を覚えて行き、ひと月で会話等が出来るようになってしまう。 または、子供特有の興味が沸くと苦手な物も好きになりどんどんと力を付けていく。 こんな現象が現在の彼、飛鳥速人の近況だった。 執務官であるクロノ・ハラオウンは本局に行き来する傍ら、速人の物理の勉強を専門にみつつ、クロノの補佐という立場のフェイトはクロノよりは時間的余裕があったため、殆どは彼女が教えるというスタイルになっていた。 現在はクロノの部屋での物理の勉強中。 勉強の最後にクロノが試験問題をだし、合格点を取らなければまたやり直しという実にスパルタな事をしている。 最初に行った時は様子見で4時間という時間が使われ、2回目は合格点が取れずに半日の間クロノの部屋に缶詰になったのだ。 このとき、速人はクロノに言われた。 「お前。自分の命がかかってるのに、そのやる気の無さは何だ?」 クロノにこういわれる程。彼の物理はお粗末過ぎたのだ。仮に教えるのがフェイトなら。 「此処の問題は、この公式を使えば解けるとおもうよ?」 等の助言があり、物理自体の理解力は増えたかもしれない。 しかし、物理の勉強はあくまで魔法の構築を理解するために学ぶものであり、魔法の基礎とされるものである。 基本が理解できていなければ応用など出来るわけも無く。他人の手助けがあってはいけないのだ。 2回目の特訓後にクロノは速人に課題を出していた。今回はそれの確認をしているわけである。 速人に渡したS2Uに監視機能を付加し、ちゃんと課題をしていたかと言う事も確認できるようになっている。 尤もその監視に関しては速人本人は知りえない事であるが。 提出された課題を厳しい表情で見つめるクロノ。 20ページにわたる物理の問題集の回答を眺めていく。クロノの厳しい表情が驚きの表情に変わっていった。 全部の回答をチェックした彼は、目の前の椅子に座る銀髪の少年を見つめた。 S2Uの監視映像でもズルをしているところは無くちゃんと全部自力で解いていた。 「お前、前回の授業から四日しかたっていないのに。なんでコレが解けるようになったんだ?」 クロノの予測では、できて二、三割であろうという所だったのだ、それが全問正解という結果に驚いたのだ。 クロノの驚く表情とは裏腹に速人は終始ニコニコで答える。 「いやさぁ、僕もよく分からない」 速人の答えに、は? と言う顔をするクロノは自分の現在のデバイス。デュランダルを起動させようと待機状態のカードを取り出した。 それをみた速人はまてまてクロノ。ちゃんと言うから、という風に両手を彼の方に上げる。 何で急に理解できるようになったのか、その時のことを話しだす。 クロノが出した課題を自分の部屋の机に広げウンウンとうなってる時の事を。 「クロノの出された宿題を見てて、最初絶対出来ない! って自信があったよ? 正直、投げ出して寝ちゃったさ……」 速人の物言いにそりゃそうだろうな、選んだ問題はフェイトでも時間がかかった問題ばかりだしなとクロノは選択問題の難易度を思い返す。 「でもね、寝てる時に声を聞いたんだ。物理と考えるからいけない魔法として考えてみなさいってさ……魔法として理解しようとするなら手を貸せる。その声はそう言ったんだ」 彼の言葉に耳を傾けながらそれで? という表情をするクロノ・ハラオウン。 「起きて問題集をやり始めたらね。頭に声がそのまま聞こえてて、その問題の解き方がスラスラと出てくるようになった。例えば最初の問題、ある理論を使えば解けるよね? その理論を声が教えてくれるというか……」 「……」 速人の答えにクロノは押し黙る。今言った速人の答えが釈然としなかったのだ。。 「速人。その声は今でも聞こえてるのか?」 「うん、意識を集中させれば聞こえる」 もし速人の言った通りであるとすれば、声の正体はかなり魔法に精通してる存在である。 なので彼(クロノ)は、此方の世界の大学院で使う様な問題を突発で出してみる事にした。 「今から出す問題をここで解いてみろ。それが正解ならお前の話を信じよう」 「わかった」 結果から言うと速人は速攻で正解を導き出した、正解に至るまでの公式の運用のしかた等もきちんと理解していた。 目の前で問題を解かれたクロノは、速人の言う事を信じざる得なかった。 「これならまぁ、実戦運用に進んでもいいかもな。声に感謝するんだな速人」 クロノの最後の言葉がこれだった。クロノの物言いにちょっとムッとした速人だった。 その日のクロノとの学習を終え。今度はハラオウン家リビングで、フェイトからデバイスの中に組み込む魔法のセッティングを教えてもらっている。 今までの基本的な魔法運用から実戦的な形式に移る為の前準備と言うところか。 フェイトは色々丁寧に教えている。 「でね、魔法は予めデバイスに組み込んでおいて発動させる事もできるんだ。というより、今は呪文詠唱で発動させるほうが珍しいかも。バルディッシュ、リストアップ」 フェイトは自分のデバイスであるバルディッシュを起動させて、中に組み込んである魔法の術式を展開させるように頼む。 【yes sir】 短いバルディッシュの発声の後に、術式のリストがズラズラと空間ディスプレイに流れ出す。フォトンランサーの術式から始まり、かなりの多種多様な術式が速人の目の中に飛び込んでくる。 「うあ……こんなに、バルディッシュの中にはいってるの?」 【My capacity still remains】{私の記憶容量はこんなものではありません} 速人の驚きの声に、バルディッシュが失礼な! 馬鹿にしないでほしいな。という感じで返事を返す。 まだまだ魔法を蓄えれるぞ! と言わんばかりだ。そういえば、金色球の本体部分が心なしか赤みを帯びている。 そのやり取りを終始にこやかに見てるフェイト。 速人は、バルディッシュの変形シークエンス術式を見ながら、何気なしに彼女と彼女の愛機に質問した。 「ねぇ二人とも。この術式ってS2Uとかにも組み込めるの?」 彼の質問ももっともである。バルディッシュは、インテリジェントといわれるタイプ。デバイスの中でも高性能機である、対して彼がクロノから預かってるS2Uはストレージデバイスといわれ、ミッド式魔法を使う魔導師には一般的なものである。 速人のいう【組み込める】という意味が【変形シークエンス】に関してなのか? それともフェイトのいう【魔法】に関してなのか? 両方に取れる。 なのでフェイトはこう答えた。 「君が使っているS2Uは、バルディッシュの様に形状変化は起こせないよ? でも、魔法を新しく作ってその術式を組み込む事はできるよ」 彼女の答えに、ふぅんという気の無い返事をした少年は、ハッ! と何かに気がつき、フェイトに言った。 「僕でもS2Uに、術式組み込めるってこと?」 「うん。組めるよ?」 速人の質問にこれから私が教えるのはそれなんだけど? という感じで返事をしたフェイトだった。 ハラオウン家で今日の魔法特訓を終えた速人は自室にてS2Uを起動させフェイトより伝授された魔法の組み込みをしていた。 元来こういう作業は好きな性格であり、物理の勉強よりも遥かに集中して魔法の構築式を書き出し組み込んでいく。 「うん、この術式なら問題ないかな〜 これが認められればなのはだって僕のこと笑うことしなくなるはずだよ」 自分の力で構築した初めての魔法。 組み上げた少年の見つめる空間ディスプレイには、なのはの使うアクセルシューターの術式とフェイトの使うプラズマランサーの術式が映しだされていた。 「さてと、明日も早くから訓練しないといけないし、寝よう寝よう」 初めて魔法を組み上げた速人は昼間の疲れもあって直ぐに寝息を立て始めた。 後の検査でわかる事だが、リンカーコアの魔力回復は十分な睡眠を取る事によって行われる。 この回復力にも個人差があるのだが、なのはとフェイトは魔導師の中でも群を抜いた回復力を持っている。 だが、速人の魔力回復力はその二人を更に上回る力を持っている。 訓練で上昇することができない速人だけが持つ魔導師としてのセンス。そのひとつがこの魔力回復力であった。 ピピッピピッっとスムーズ機能の付いた目覚まし時計の音が鳴り響く部屋。 六畳の和室にある自作の木製ベッド。窓から入り込む心地の良い風が少年を眠りから覚ます。 現在の時刻は朝4:30。 冬ならまだ太陽など出てはいないだろうが、今海鳴は夏真っ盛り、この時間から明るくなりはじめる。 段々と音を大きくしていく目覚まし時計のボタンを押し音を切ると、飛鳥速人はベッドの上で大きく伸びをして自分の意識を覚醒させた。 ねまき等を着ないで下着で寝る彼はスポーツウェアにモソモソと着替えだし洗面所で顔を洗うと鏡に写った自分に一言話した。 「さてと、姉さん起こさないように出かけるとするか」 玄関でスニーカを履いて心地の良い風が吹く海鳴の大地を大きく蹴った。 早朝の体力トレーニング。 魔導師になる前から続けている彼の日課である。 高町の家に預けられた時から始まったこの朝の散歩と称したランニングは齢を重ねるごとに距離を伸ばし、現在は3km先の海岸まで続く。 海岸の公園に着くとストレッチ等を済ませて背中に背負い込んでいたちょっと長い木刀を取り出す。 「さてと、父さんや母さんのやっていた武術の基本を、もう一度やり直そうか」 海鳴に戻る前。本山に預けられた時から続けている鳳凰の太刀の鍛錬。 本格的な修行はしていないが姉から基本的な鍛錬方法を聞いており、よほどの事が無い限り毎日続けている彼の朝の習慣であった。 約2時間公園で彼は過ごす。 時を同じくして、なのはやフェイトも、各自朝の訓練は自分達だけで行っている。 だれからも強要されていない自己鍛錬の時間。魔導師達の朝は結構早いのである。まぁ速人に至ってはまだ卵であるが。 自己鍛錬を終え朝食を済ますと、家が近いハラオウン家の在るマンションに通うのが最近の彼の新しい日課となっている。 基礎となる部分をクリアした速人は早速魔法の実践を開始する事になる。 初めての魔法陣構築から飛翔魔法の習得等。乾いた大地が水を直ぐに吸ってしまう様な勢いで速人は魔法の使い方を覚えていく。 なのはを交えた訓練では。 「382……383……389」 コン、コンと小気味よい空き缶の鳴る音が響く練習空間。 「そう! それを500まで続けて! 500回1セットを後4セットやるよ〜?」 と言う様な感じで誘導制御を中心に行っている。 今までの訓練で速人の適正は中距離の射撃。それと誘導制御にかなりの適正を示している。 近接も剣士の家柄のためそつがない適正だ、もっともフェイトの様に多種多様な技があるわけでないが。 飛行特性もあり空も飛ぶ、なのはの様に足元に羽は作らずフェイトと同じような飛び方をする。 だが、遠距離とアウトレンジはからっきしだった、簡単にまとめると中距離戦闘型に分類される。 本人が練習の虫になっているためにどんどん教えることを吸収していった。なのははそれが嬉しく、フェイトはそれが頼もしかった。 なのはは誘導制御中の速人に対しフェイトに目配せで速人に攻撃を仕掛けるような指示をたまにする。 それも速人の意識が薄れている部分からの攻撃をフェイトに頼んでいる。 誘導制御しながらでも他の事に対して意識を分割できるか? というのがなのはの狙いなのである。 これは空間認識能力を必要とするのだが。なのははこの能力に関してはクロノも感心するほどの高さを持つ。 見えないはずなのに何故か認知することができるという風な表現がしっくり来るであろうか。 「そろそろ1セット目終わるよ速人君。フィニッシュ準備!」 5つの光の球を操作しながら速人は指定されているターゲットに空き缶をぶつける行動を起こす。 コンコンと音が鳴る空き缶、形を変化させない様にソフトに衝撃を与えなくてはいけないので誘導操作は見た目よりもかなりの意識を向けなければならない。 速人は空き缶に視線を集中しなのはが指定したターゲットに空き缶を誘導していく。 「これで……フィニッシュ!」 最後の誘導弾を空き缶にぶつけるとコーンという音が缶から発せられターゲットに吸い込まれるように放物線を描いた。 人は何かをやり遂げれる瞬間というのは意識がそっちに行くもので他の予期せぬ事態には対応が利かない事が多い。 この直後フェイトのソニックムーブからの斬撃が速人の背後に見舞われるのである。 だが速人は、フェイトのバックスタビングをまるで知っていたかのように避けるのである。 一番初めの誘導制御訓練の時からなのははこの実戦形式ぽい制御訓練を彼に課してるのであるが、空き缶を変形させて失敗、(出力ミス)誘導が間に合わす空き缶が地面に落ちる(コントロールミス)等の失敗はあるものの、フェイトやなのはによる不意打ちに関しては、なのは側が100%失敗という結果であった。 トスン、という音がして、空き缶が無事に指定されたターゲットに命中した。 「ふう、なんとか1セット目完了かな」 飛鳥速人のもうひとつの魔導師としての才能は、なのはと同じ空間認識能力の高さであった。 このような訓練を続けながら、魔法の運用もかなり出来るようなった速人は、二人を訓練スペースに呼び出した。 いつもの訓練はハラオウン家の住むマンションの屋上でありそこに三人が登場する。呼び出した理由を少年は言い出した。 「僕さ、ちょっと考えてる魔法があるんだけどね?」 なんだろう? と二人が聞くと。 速人が説明しだす。 自分の得意分野である誘導系、なのはのアクセルシューターをベースにしているがそれだと弾速が遅い。 そこでフェイトの直射型のプラズマランサーの式を掛け合わせて見る事を考えたと。 「う〜ん、でもそれ可能なのかな?」 なのはが、速人の考えに疑問を持つ。 少なくともアクセルとランサーではその魔法の性質が違うため掛け合わせるというのが理解が出来ない。 「でも、やれそうなんだよね」 自分の考えを主張する弟速人の表情は成功できる! という感じの自信が満ち溢れている。 「やってみても、いいんじゃないかな?」 その表情を見たフェイトがそう言った。 親友の肯定的な意見に、姉なのはも試させてみて欠点があるなら諦めさせよう、という考えに至るのである。 「そうだね、じゃあ見せてみて?」 なのはが教導官の顔になりレイジングハートを起動させてバリアジャケットもつけた。 わかった! と速人が言い、なのはがシューターを十二発ほど出して待機する。 速人も足元に白金のミッド式魔方陣を作り出した。 次に回りになのはと同じ球形のアクセルシューターを出現させる。速人が現在完全制御できる数十二個。 「じゃあいくよ?」 なのはと速人、同時に操作開始させる。 速人は操作に意識を集中させる。 桜色とプラチナの球が空中を飛び交う様は、さながらロケット花火を打ち合う感じで縦横無尽に入り乱れる。 「そこ!」 瞳を閉じコントロールに集中していた速人が瞳をカッ! と見開き声をあげる。 持ち前の空間認識能力の高さからか、なのはのシューターのコントロールの癖をつかみ取り、十二個の桜色球が一瞬止まる時を狙って自分の魔法を使い出した。 白金の球がフェイトのランサー状に形態を変化させる。 フェイトのランサーほど大きくなくその5分の1ほどの大きさ。 それが各個の桜色球に光の速さで打ちかかりシューターを全て吹き飛ばす。 速人の周囲にかなりの桜色の魔力煙が立ち込める。 「すごいね……途中で高速直射型に切り替えるのか」 フェイトはそう言いながらも今の対決を分析する。 なのはのシューターもかなりの速度なのだが、それをすべて叩き落したスピードは凄いとしか言いようがない。 仮に自分があの速度を出そうとするなら出来はしないというのが彼女の答えだった。 「どうかな?」 最高の結果を得られた速人が明るい表情で聞く。 「これは、使えそうだね」 予想外の成果になのはも認める、教導官という立場からか仮想敵をよくする彼女である。 だが此処まで見事に自分のアクセルを全部落とされた事はいままでに経験が無かった。 「よかった、僕の考えは間違ってなかったのかな」 自分のことを認めた姉なのはに喜ぶ弟速人は、ついでに聞いた。 「使ってもいいよね? この魔法」 無言で同時に頷くなのはとフェイトであるが、疑問も出来ていた。 魔法と言う存在を知り経過した時間は約2週間、その間に魔法の構築を考え出せるようになった少年に。 「でも速人君、なんで私とフェイトちゃんの魔法を掛け合わせようと思いついたの?」 言い出したなのはの疑問はもっともだ。 彼女もディバインバスターのバリエーションとしてスターライトブレイカーを編み出してはいる。 だけどその魔法でさえも速人の様に短期間で編み出したものではない。 「んー、二人から教わったモノを僕なりに形にしてみたかったから、かな?」 元々工作の類は得意な速人である。ミッド式を理解し始めて自分なりにカスタマイズすると言うのは当然な事としているようである。 さながら模型店で売っているプラモデルを説明書通りに作るが満足できず、自分なりに改造するという感覚なのであろう。 クロノがこの場に居れば間違い無くこう言う。 「感覚で魔法を組むってのは末恐ろしい」と。 「あ、名前かんがえてないや」 使うとなると発動キーを設定する必要も出てくるのである。速人が言うと少女二人は苦笑いする。 珍しく、彼女達のインテリジェントデバイスが会話に参加した。なのはのデバイス、起動状態のレイジングハートが彼女特有の音を出して。 【There is a good idea for me】{わたしに、いいアイデアがあります} 次にフェイトの愛機バルディッシュ。待機状態で低くバリトンの声で。 【I also hit on a good neme】{わたしもいい名前を思いつきました} これに驚いたなのはとフェイトは互いの愛機を見つめた。 「レイジングハート?」 「バルディッシュも?」 バリトンで話すバルデッシュはレイジングハートと自分の考えが同じであることを主張する。 【Itis befor it perhaps the same】{おそらく同じ名前です} 「きかせて? くれるかな?」 少なくとも主人以外の事柄に首を突っ込むなんて事は今までになかった二機であるのだ。三人が興味がでるのも必然なのかもしれない。 二機は同時に一つの単語を喋った。 【Dancing Edge】{ダンシングエッジ} ――魔法少女リリカルなのは 星の道光の翼 Distant Worlds ―― 第十一話 速人のセンス |
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