次元航行艦アースラ内部にはそうそうたるメンバーが集まっていた。

 艦長のリンディを筆頭にクロノ、フェイト、はやてと守護騎士達(ヴォルケンリッター)。ミルズ&ユーノという布陣である。
 現在メンバーはブリーフィングルームで最新の情報を検討し作戦会議中だった。

 ユーノの調べで新しく解ったことが伝えられる、席に座った全員の前で話すユーノ。

「今回、エルヌアークの一部の歴史が解ったのでお伝えします。エルヌアークは王政の制度だったようです」
「今から1500年前に文明として栄えたようですね。衰退の原因はいまだ解りませんが、最後の王は女王だったようです」

「また、女王を護る十四人の魔導師がいたことも判りました。サークル式、デルタ式と言う今のミッドとベルカ両方式に酷似する魔法文明もあったようです」

 モノリスから得たエルヌアークの情報を一通り伝える。一拍置いてから、ユーノ・スクライアは司書として言葉を続ける。

「次に、プロトクリスタルですが。管理局は正式に第零番特級捜索指定ロストロギアとして認定を出しました。クリスタルの追加情報として。これは何らかの高いエネルギーを制御させる装置の予備エネルギーではないか? との説が一番信頼性が高いとの事です」

 ユーノが説明を終える。
 今度はミルズが立ちあがり、交代で七罪の番人の近況を伝える。

「次に、七罪の番人の方ですが魔法文明世界を巡り、魔力の蒐集を行ってる伏があります」

 この言葉にはやて達は動揺を隠せない。ディスプレイを出現させる広域特別捜査官。

「これを見てください」

 エウリュトスと呼ばれた人物が分厚い黒色の本をもち、魔法使いとおぼしき集団からリンカーコアを抜き取ってる映像がでる。

「確かに、これは蒐集だな……」

 シグナムが、自分たちもやった行為を振り返り呟く。

「今のところ……エウリュトスしか行動の確認がとれてませんが、グラトニーも同じ事をしていると思われます」

 ミルズの話は此処までで、彼は椅子に着席する。艦長リンディが、椅子に座ったまま対抗策を語りだす。

「補足になりますが、プロトクリスタルのエネルギー波動に、固有のパルスが確認できたの、アースラに探査装置を付けてあります、現在確認されているパルスは二つ。よってこの二ヵ所に人員をさき、彼等よりも先にクリスタルの確保をお願いします!」



 シグナムは、フェイトと打ち合わせするミルズを見て考えていた。

(ミルズ・ヒューディーか……名前と姿からすると私の考えすぎかもしれないが……アレの言動からすると、我々にも関係してくるかもしれないな)


 参加している各個人の能力を踏まえた上でクロノから編成が伝えられる。

 ミルズフェイトを一分隊。シグナムヴィータをニ分隊として先行させ、シャマルとザフィーラでサブ。ユーノがサポート。はやてが分隊指揮を執ることになった。

「よろしくお願いします、ミルズ捜査官」

 八神はやてはミルズに挨拶をする。

「こちらこそ、よろしくおねがいします八神さん。単独回収が多かったのでチーム行動指揮なんてとれませんからこきつかって下さい」

 はやてに挨拶をすますとミルズは出発準備をする。

「ミルズさんに、聞きたいことがあります!」

 口調を強めてミルズに問いかけるはやて。ミルズは何故口調を強く言ったのかが理解できていない様子ではやてを見る。

「カレンという女性に、心当たり無いですか?」

「カレンさん……ですか?」

 ミルズはしばらく考えたあと、はやてに答えた。

「すいません、心当たりというか、初めて聞く名前です」

 はやてはミルズの目を射ぬくような瞳でジッと見つめる。嘘をついてる目ではないと判ると。

「申し訳ありません、いきなり変なこと聞いてしまいました」

 謝罪の意を言葉にしペコリと頭を下げる。

「構いませんよ、ですがどうして私に、その女性の事を?」

「実は……」

 質問に対する答えを彼女は目の前の黒翠色の騎士(ミルズ)に説明していった。














 シグナムとヴィータは、すでにパルスの反応が出てるポイント上空に来ていた。

 今いる世界はエルヌアークではない。以前自分たちが闇の書としてモンスター相手に蒐集したことがあった砂漠の世界に来ていた。

 ヴィータの右腕には腕時計サイズのパルス探査装置端末があり、この場所の特定に一役買っていた。パルスの反応をみてヴィータがもらす。

「反応は出てるけどよ……砂しかねえぞ?」

 反応は出ているが建物自体も見当たらない。シグナムが考えうる限りの答えを返す。

「もしかしたら、砂の中にあるのかもしれんな」

「中かよ……どうやって入り口見っけんだ?」

 シグナムの返答に、ヤレヤレだぜ……というような表情で質問をする。シグナムは、考えを整理する時間を少しとり結論を踏まえヴィータに答える。

「シャマルをよこしてもらおう……我々では神殿ごと破壊しかねん」

 確かにヴィータはもとより、シグナムも潜入という意味合いからいえば不向きな方である。破壊しかねん、という言葉にヴィータも納得はいった

「おう、はやてに連絡するぜ」

 ヴィータははやてに事のあらましを伝える為に、空中に通信ディスプレイを出現させ、シャマルの出動要請をかける。

「わかった〜、シャマル送るから気いつけてがんばるんやよ」

 はやての返事があると程なくして、シャマルが転送魔法で現れ、すぐにクラールヴィントで辺り一帯を調べ、入り口の特定をし結果を言う。

「シグナムの予想的中ね、地下10mの所に神殿らしき空間があるわ。だけど……入り口らしきものは見当たらないわね」

 シャマルの返事にシグナムは、ならば行動はひとつだけかと、転送で内部に潜入しようと、シグナムがシャマルにたずねる。

「三人、一気に転送できるか?」

「やれるわよ?」

 シグナムの疑問系の問いかけにシャマルは当然だという感じで平然と言った。


 転送魔法で潜入した三人は、クリスタルルームにダイレクトに転移し、土色のプロトクリスタルを見つけていた。目的の物体を発見したシグナムの第一声。

「テスタロッサが言っていたのは、これか?」

「デケーな、オィ」

 あまりのでかさに、あきれ返るヴィータ。

 しかし、三人は不思議な感覚を覚える。山吹の光を放つ目の前の物体は、見る物に力を与える、そんな感じの感覚にとらわれる。

 不思議な感覚を味わっている最中の三人は不意に殺気を感じその場を飛び退く。闇の書時代から培われてきた危険察知。

「!」

 何処かの特撮映画で使用するような爆発音。この音が部屋の中にこだまし振動もあった為に長年砂の中に埋まって埃を溜め込んだ部屋を煙だらけにした。

「あれ? はずしましたですわ」

 煙がモクモクと立ちこめる中に小さい人影が映し出される。三人はその人物との間合いを取り、体勢を整える。
 煙が晴れてくると一人の少女が巨大なハンマーをもって立っていた。

 金髪で肩辺りまでのばしたストレート。黄金色に輝くハンマー赤い血のような瞳。全体が黒で体の側面のみ赤で彩られたボディスーツ。
 おへその周りの部分だけ素肌で、黒いスカートと赤いカリガタイプのブーツを履いている。

「グラトニーさん、不意打ち失敗したですわ〜」

 残念そうにいう少女の隣から無骨な鎧を着込んだ男が出現する。

「ラース、私はエンヴィーを覚醒させる。その間一人で対応できるな?」

 ラースの頭を撫でているグラトニーの表情はどことなく父親の様な雰囲気を出している。

「おまかせですわ〜」

 頭をなでられ猫のようにゴロゴロと機嫌よく答えるラース。

「まて! こちらは時空管理局だ。大食のグラトニー……貴方には逮捕状が出ています。大人しくしていただきましょう」

「まて! と言われて待つお馬鹿さんは、此処にはいませんですわ♪」

 シグナムが大男に対し言うが、ラースがシグナムの揚げ足を取る。


 グラトニーはフッと口で笑い、モノリスをよびだす、描かれている画はシグナムと同じような背格好の女性のようだ。

「こっちの言うことは無視か! シグナム! もう我慢ができねぇ! あたしはやるぜ!」

 吠えるヴィータは、グラトニーに愛機であるグラーフアイゼンを構えて攻撃にでた。

「何を吠えてるんですの? 貴女たちの相手は七罪の番人が一人。憤怒のラースこと、わっちですわ!」

 ラースは言うや否や、ハンマーをヴィータに向かって振り上げる。巨大な黄金のハンマーは攻撃にでたヴィータの鼻先を通過しラースの頭上に持ち上げられた。振り上げの鋭さから見るとヴィータと同等かそれ以上の力を持っている様だ。
 もしあのままヴィータが振り上げを食らっていたらただでは済まなかっただろう。証拠に彼女の赤い髪の毛が少し空中に舞っていた。
 気勢が殺がれたヴィータは間合いを取り直す、ラースのハンマーは彼女の頭上から動かない。 

 黒色のミッド式魔法陣がラースの足下に出現する。

「グリンタン二、やっておしまい! ですわ」

【KeenEdge】{キーンエッジ}

 デバイスが発声しハンマー部分から黒色で針状魔力の雨が三人に降り注ぐ。

 三人は各自で防御魔法を展開させて受け続ける。
 放射状にに降り注ぐラースの魔法キーンエッジは広範囲に効果があった。三人が使った防御魔法を撃ちぬく力はないが、時間を稼ぐという意味では効果は絶大だった。

「アハ、アハハハ。キーンエッジから逃れる事なんて出来る訳が無いのですわ〜」

 なおも続くラースの魔法は、威力は小さくても長時間持続するようである。

「それなら!」

 シャマルはクラールヴィントに口付けをして対抗策を試みる。魔法の同時展開を敢行するようだ。

「お願いね、クラールヴィント」

 バリアを張りながら別の魔法も使用する。魔導師にとって同時展開(マルチタスク)は必須のスキルだ、こういう状況ではかなりのアドバンテージを持つ。
 使うのはもちろん旅の鏡だ、ラースの首もとに鏡の照準をあわせた。

「いまよ!」

【ja】

 愛機の返事を起因として、旅の扉がラースの背後に出現する。


 不意に首をつかまれて、う……と呻いたラースは自分の魔法を解除する。痛みによる精神集中を妨害された為に彼女の足元の魔法陣が消え去る。

 魔法の雨が止むのと同時にシャマルの方にも真空の刃が飛んでくる。避けるためにシャマルも魔法を停止せざる得ない、飛んできた方をみると。

 黒く長い髪を、後頭部で一つ団子にまとめた女性騎士の姿がある。

 全体を青で纏めた騎士甲冑に身を包み、手に持つ剣も身が冷めるような青さであるが柄の部分は金色で装飾されている。振り上げていた剣を鞘にもどし閉じていた目を開くと翠色の瞳が現れる。
 何処と無くシグナムと雰囲気が似ている剣士タイプ。

「もう一人追加かよ……」

 ヴィータが厄介な事になったという口調で言った。

「エンヴィー私は回収準備に入る。ラースを助けてやってくれ」

 グラトニーが言うと了解したという感じで頷く青い女騎士エンヴィー。




 シャマルは次の一手先を読み切れずにいた。目の前の三人は明らかに敵。しかし体の反応が遅れる。こんな経験は初めてだった。
 最初のラースの不意打ちにしても、普段の彼女なら襲撃前に察知していたはずだ。

(いったいなんだというの? やりにくい相手だわ)

 ですわを連発する黒赤ジャケットの少女とシグナムに雰囲気が似ている女騎士を見つめるシャマルの頬から一筋の汗が流れ床に落ちる。





 シグナムは目の前の青い女騎士と、ヴィータはラースと対峙する。
 エンヴィーは剣を抜き縦に構えると名乗りをあげた。

「七罪の番人エンヴィー。参ります」

 青い剣ダインスレイフを水平に構え直しシグナムに向かって駆ける。シグナムはレヴァンティンを構え相手の剣の動きを読む。
 激しい剣戟音がクリスタルルームという閉鎖空間で鳴り響き三度の打ち合いをした。青と赤の剣閃が綺麗に弧を描く。

 打ち合いの最中(さなか)にシグナムは相手の女騎士のスタイルを分析した結果に少し戸惑いを見せた。

(なんだというのだ。奴の剣の動き……私と似ている?)

 そう考えながらなおもエンヴィーと打ち合う烈火の将。

 お互いの小手調べが終わり、間合いを離す剣士と騎士。相手を睨むシグナムは数回の打ち合いで確信した似ているのではない。そっくりなんだ! と。

「……」

 エンヴィーも同じ感覚に陥ってるのかもしれない。やがてエンヴィーの方から口を開く。

「名を……聞いておきましょう」

 エンヴィーの声は年齢相応の落ち着いた声である。目の前の人物エンヴィー。敵ながら礼儀を尽くした様な立ち振る舞いにシグナムも礼儀として返答をした。

「時空管理局ヴォルケンリッターが烈火の将。シグナム」


「シグナム……」

 エンヴィーは自分の心にシグナムと言う名前を刻み込むかのように聞き入れた後にダインスレイフを構え言う。

「どうであれ互いに技を出さなければ、この状況は打開できませんか……」

 愛剣を構えたシグナムは口元を二ヤつかせ、この言葉を彼女に送る。

「奇遇だな、私もそう思う」

 レヴァンティンのカートリッジをニ発ロードさせ、刀身に炎を宿らせ構えを取った。紫色のベルカ式魔法陣が浮かび上がり。

「紫電一閃!」

 高く飛び上がり上段からの振りおろし攻撃。シグナムが最も信頼する技だ。
 対するエンヴィーはその場から動かずシグナムにカウンターの要領で高速ニ連撃。
 光属性を伴った技を放つ。足元に白色のベルカ式魔法陣が浮かぶ。

「ダインスレイフ……紫光十字閃セラフブレード」

 炎と光が混ざりあい二人を激しく包み込んだ。












「さっきはよくもやってくれましたですわ。わっち怒りましたですわ!」

 怒髪、天を突く。ラースの心情は正に先の言葉通りなのだが喋り方のせいで些か緊張感がない。
 ヴィータは間合いを取りつつラースの動きを観察している。

「あなた! その武器はハンマーですわね?」

 ラースはヴィータのグラーフアイゼンを指さす。それはもうビシッ! て感じで。

「それがどうした? あたしのグラーフアイゼンでぶっ叩かれてえのか?」

 ラースはヴィータのガンとばしもどこ吹く風で、自分のデバイスに熱い抱擁をしながらヴィータのアイゼンという言葉に酔いしれる。

「グラーフアイゼン……良い名ですわ。グリンタン二とセットにしたいですわ〜」

 クネクネと動くラース。
 なんだコイツは? 頭逝ってんじゃねーのか? というヴィータの表情もラースには見えていない。さらにすごい事を彼女はヴィータに言ってのけた。

「決めましたわ! わっち。あなたを倒してアイゼンさんをいただきですわ〜」

 いただき宣言を高らかにした後に、グリンタン二をヴィータに向けて無造作に投げつけた。小さい体のくせに凄いパワーだ。
 アイゼンのギガント級の大きさのハンマーを片手で投げたのだ、パワーがあるヴィータでも片手であの巨体ハンマーをどうにかするなんて事は出来ないだろう。
 避けきれないと判断したヴィータはカートリッジを一発ロードして愛機に叫ぶ。

「アイゼン!」

【ja】

「うら〜 テートリヒシュラーク!」

 投げつけられた巨大な戦槌に対し討って出た鉄槌の騎士。迫るグリンタン二に猛然とアイゼンを打ちつけるのだが?

「なに!」

 目の前のグリンタン二が消えた! 自分の攻撃を空振りにさせられたのだ。代わりにグリンタン二を両手で持たラースがヴィータの足下から現れた。

「なんだって?」

 ヴィータには信じられない光景だった。デバイスを投げつけられ打ち払おうとしたら消え、真下で準備万端で打ち上げ準備をしている目の前の『ですわ』少女が。

 
 ラースは別に、特別なことをしてるわけじゃない。グリンタン二が巨大すぎてヴィータの空間把握能力を狂わせ。投げつけたと見せかけて一緒についていっただけである。
 相手が打ちおろした直後に自分が打ち上げ体勢を取った事で相手にはいきなり巨大な物体が消えたかの様に見えたのだ。ヴィータにはそれを知る由もないのだが。

 二ヤ〜とした顔をラースがする。アイゼンさんは頂きですわ言わんばかりの笑みだ。

「かち割れ! ブレインシェイカーですわ〜」

【Brainshaker】

 振り上げられる黄金槌は魔法のコマンド名を発声。その輝きを増し鉄槌の騎士に襲いかかった。
 ヴィータの表情はしまった! という感じであり彼女の瞳にはブレインシェイカーの光が迫る。瞳の片隅に緑の魔力光も僅かに光っていた。

 

 豪快な音が鳴り響き、光の柱が天井まで突き刺さる。このショックで又も埃が閉鎖空間に舞って視界を極端に遮った。

「むう、ちょっと力を入れすぎたですわ。アイゼンさんはどこですわ?」

 腰に右手をあて左手を額にくっつけて辺りを見回す、ですわ少女ラース。


 光と音が止む。空間に緑色の光が発生しシャマルとヴィータが光の中から現れる。シャマルの旅の鏡のお陰で何とか無事だった鉄槌の騎士。

「ヴィータちゃん平気?」

「ありがとうシャマル。相手のペースに乗せられちまった……すまない」
 
 ヴィータの心配をするシャマルに反省と感謝の意を伝えるヴィータ。

「むぅ……ずるですわ。わっちの! 一人勝ちだったのに〜!」

 怒り心頭の様子のラースはその場で地団駄を踏む。

「ラース準備が出来た戻るぞ。エンヴィーもだ!」

 グラトニーが帰還を叫ぶ。
 シグナムと技を繰り出し合った結果。致命傷は無い物のかなりの傷を負ったエンヴィー。シグナムの方がかなり深刻なダメージを負っていた。

「この勝負あずける」

 エンヴィーがシグナムに告げダインスレイフの構えを止めて戦いの場から退く。番人達は土色のクリスタルと一緒に消えていった。

「なにもできなかった……」

 ベルカの騎士達は同時にそう思った。












 スプールスにある夢幻回廊は七罪の番人達のアジトとなっている。
 金色の四角い魔方陣が夢幻回廊の床に現れると魔法陣の上に三人の人物。そして土のプロトクリスタルが実体化した。

「たっだいまなのですわ〜」

 巨大な黄金のハンマーを持った少女がだれも居ない回廊にただいまと大きく声をだす。
 三人の目の前に何もない空間から青髪のオールバック男が現れた。

「もどったか? 回収も済んだようだなご苦労」

 ですわ少女ラースは、オールバック男の返事に突っ込みを入れる。

「スロウス! わっちがたただいまって言ったのですわ。おかえりと返すのが常識ですわ……」

「そうか? それはすまないな以後気をつけるとしよう」

 腕を組み頬を膨らませるラースの頭を撫でてあやすスロウスも七罪の番人の一人である。


 大男グラトニーは土のプトロクリスタルを風のプロトクリスタルが安置されている場所に移動させ固定する。先ほど覚醒した女騎士とスロウスという男も大男と一緒についていく。

「既に三つ揃えたのですか?」

 クリスタルが安置されている空間をみてエンヴィーはグラトニーに問いかけた。風、土そして紫の光を放つプロトクリスタル。雷のプロトクリスタルが存在していた。

 管理局がプロトクリスタルの発する固有パルスに気がつく前に、もう一つのプロトクリスタルを番人は手に入れていたのだ。

「もっと早く回収したいのだが……時空管理局という新手の勢力が今は存在していてな、我々でしか感じ取れないはずの波動をキャッチできるようなのだ」

 グラトニーはエンヴィーに今の次元世界の状況を伝えるとエウリュトスが居ない事に気がつく。

「エウリュトスはどうした?」

 オールバックの男が大男の質問に答えようと声を出そうとするとスロウスの後ろから少年の声が聞こえた。

「コキュートスに出向いたぜ? 氷のクリスタルを回収しにな」

 ラースと変わらない身長の少年。グリードは大人三人に答え手に持ったリンゴをかじり言った。

「グラトニー俺も覚醒したんだ。邪魔な組織があるならぶっこわしてやるよ……さっさと遊びに行かせろよ!」

 かじったリンゴを握り潰し戦闘準備は完了なんだぜ? との意思表示を表した七罪の番人。
 貪欲のグリードは好戦的な性格を表に出して大食のグラトニーに叫んだ。


       ――魔法少女リリカルなのは 星の道光の翼 Distant Worlds――
                 第五話 守護騎士VS番人



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