俺はそれなりに器物破損とか損壊とかとは無縁ともいえる人生をさりげなく歩んできた人間だ。 昔からそういうことする意味も無かったし、そもそも人の家のものを壊すって行為自体どうよってタイプなわけである。 そして昔からそういう友人を持ってすべての責任を取るのは俺だったりするわけだ。ルーミアなんていい事例だからな。 しかし、ものには限度と言うものがある。というか、限度と言うものを人間とか知的生物は重々理解しているはずなのだ。そもそも理解してもらわなければ困る。 だけど…………… 「なんだこれ」 「畑を耕した後でしょうか?」 大ちゃんその考えはある意味すごいぞ、まぁ見た目畑っぽく見えるかもしれないけどさ、その土に混ざってる赤いレンガとか花瓶とか人とかでさこれが畑じゃないってことくらい理解できるよね? あと何十枚にもわたってばら撒かれている札とかなんてもう笑えないね。あと、どこかで見たことのあるまるで波動砲が通過したかのような傷跡。 これってあの二人が完全に合流したってことで、っていうことは破壊の限りを尽くす破壊神姉妹が出来上がってしまうわけで、一方的な攻撃を延々と浴びせ続けるんじゃないかな? こう考えるとよくSTGで1プレイヤー専用にしてるゲームとか納得できるな。 だって、上級プレイヤーが二人も相手じゃ、成す術が無いだろ? 「あれって食べてい〜のか」 「ルーミア、俺がお前に言ったことを少しでも覚えているのであれば今後その発言をしないでほしいね」 「あたいがさいきょうってことね!」 「あ〜はいはい、さいきょうですです」 「ふふふ、物分りのいい人間ね。あたいの下僕にしてやってもいいわよ」 「あ、それはパス」 「そうなの〜、市ノ川は私の食料だから〜」 「な、なんか嫌らしい関係なんですね圭介さん」 もうなんなんだよ。 少しくらい敵の本拠地なんだから緊張感くらい持ったらどうなんだ? まぁ、俺も緊張してないんだけどね。 改めて眺める敵本拠地、まるで集中爆撃を受けたかのように破壊された壁やら草木やらがよく目立つわけで、ただの廃墟の集まりにしか見えない。 「でも一応、ラスボスが潜んでそうな建物が一つ丸々残ってるみたいだな」 奥のほうにはその館の姿がある。赤い館だ。 一昔前のRPGにありそうなそんな館だ。絶対に敵が潜んでる奴。 「あれですか?」 「っていうかあれ以外に無傷な人が中にいそうな建物が無いって言うのが本音だな。それより…………」 やっぱり歳を取るとあれだね。なんていうか困っている人を助けたくなるんだよね。 あちこちに転がっている背中に羽が生えたメイド服に身を包んだ少女たち、このまま放って置くの少々良心が痛む。 「ちょっと辺りで倒れてる奴らを助けながら館に向かおうぜ」 「圭介さん、私手伝います」 「大ちゃん。助ける必要なんて無いんじゃないの?」 「さいきょーは心の優しさも兼ね備えてると聞くが?」 「あたいも助けるの手伝うよ」 「わたしも〜」 四人で地面に犬神家になっている奴とかを地面から掘り起こしたり、木にぶら下がっている奴を降ろしたりしながら進んでいく。 どうやらこの館に勤めているメイドはかなりの数のようだ。 全体的にルーミア達と同じくらいの背のものたちばかりであるわけで、俺が助け起こすときだけなんか三人の視線が痛かったりする。 俺はそういう趣味じゃないですから。 「う………」 その時、元々門だったと思われる瓦礫付近にいた俺に届く。 瓦礫の山からよく見ると赤い髪の毛がちょっとばかりはみ出しているわけである。 しかも他の奴らに比べてコテンパンにやられたらしく、声が弱弱しい。 「やばい、みんなそっちの瓦礫をどかしてくれ」 「はい」 「わかったわ」 「そ〜なのか〜」 瓦礫を完全にどけてその負傷者を運び出す。 なんというか予想以上にボロボロであるが大きな傷は無いみたいだ。あと、視線がうようよしてしまう。 一応俺だって健全な男だ。そんな深いスリットの入った服で、しかも胸元が破れかけてたりとかあって、いろいろとやばいのだ。 足は長くて綺麗だし、胸は大きいし、顔立ちも整ってて可愛いと美人っていうのが二つ合わさった顔立ちで、そのなんだかわいい。 だからって自分を見失う俺じゃないしな。 『………』 くっ、こんな覚めた目線を受けることになるなんて思いもしなかった。人助けをしてるのに受けるこの非難の視線。 でもまぁ、傍から見れば俺が今からナニかをしようとしているように見えないわけでもないしな。 無論そんなつもりなんて無いけど。 「う、ううん」 「おっ、気がついたみたいだな。大丈夫か?」 「あ、ありがとうございます、ってあなた誰ですか?」 「まぁ、まて落ち着け」 「は、はい」 よし、チルノとかルーミアなんかと違って話の通じそうな感じだ。 その少女は立ち上がってから裾についた汚れなどを落とし、今にも破けそうな服を簡単に繕う。 そこに俺が男性であると言う配慮がなされていることにある意味感動している俺。 「まず自己紹介。俺は市ノ川圭介、市ノ川でも圭介でも好きなように呼んでください」 「はい圭介さん、私は紅美鈴と言います。美鈴と呼んでください」 「それじゃ美鈴、聞きたいことなんだが、ここを黒い奴と赤い奴とおちゃらけた奴が一人ずつ通らなかったか?」 その言葉で美鈴の表情に変化が生まれる。 それは、あ〜あの人たちですかと言う感じだ。 「はい、通りましたよ。ここの主はどこにいるのか瓦礫に埋もれてる私に聞いてきて、言ったらそのまま行っちゃいました」 「すいません」 せめて許斐には人間らしい心って奴があるかと思ったけど、多分幻想だったんだろうな。 霊夢と魔理沙は一方的に攻撃しただけなんだろうけど、そこに人間としての慈悲はあったのかね? 「いいですよ別に、でも通しちゃったから一ヶ月ご飯抜きかもしれません」 「そのときは俺が美鈴のご飯を作りますんで許してください」 「はははは、お気遣いありがとうございます。それにしても、お嬢様達は大丈夫でしょうか」 そう言って向けられる目線の先には赤い館。 そうだ、これ以上の未曾有の大惨事は防がなくちゃいけない気がするのだ。 このままじゃ目の前に立っている赤い館がそのまま倒壊する恐れがあるほどだ。 でも、その前に。 「なぁ、入っていいか?」 「紅魔館にでしょうか?」 「あの館の名前か?」 「そうですよ」 「で、入っていいですかね?」 「侵入者と言うことで入れるとなると、私と一戦交えてもらうことになりますけど?」 笑顔でさら〜っと怖いこと言うね。 だって、もうすでに人間がかなう領域を超えてる気がするんだもん。 「なら、美鈴の友人と言うことで紅魔館に入れてくれないか、無論無理な一戦交えるくらいの覚悟はあるぞ」 でたらめな形を取ると、美鈴が笑う。 「くすくす、冗談だったんですけど。わかりました」 「ふぅ〜、よかっ―――――」 「一戦交えてくれたら友人として紅魔館に招待しましょう」 その後、開始6秒にして空をきりもみ回転しながら、上空でつかまれ地面へとパイルドライバーされた俺の姿と、それを見て笑う二人と心配してくれる一人の少女の姿を見たのだった。 |
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