明るい光が見える。 朝が来たと思えるその光に瞼を開ける。 しかし、その光はすでにその姿を消していた。 あるのは白い白い世界。 いや、世界自体が白いのではない。 雪、 そう雪が降っている。 ああ、またこの季節がやってきた。 体中に掛かったその雪を取る。 そして手を上げようとすると何かが引っかかる感触。 その手を大きく動かしてそれを掴みあげる。 小さな手がそこにはあった。 ああ、そうだ。 雪を掻き分けて彼女を確認する。 静かな寝顔、でもその手は傷だらけで、どうしてもその傷を治す手立てが見つからなかった。 だからその手を温めるように握る。 わたしは彼女と共にここに居残ったのだった。 空になってしまったわたしと彼女だけでもここまで来れた。 もう、わたしたちに手を伸ばすものもいない。 でも、外に出て行ったわたしの中身はちゃんと成し遂げてくれるだろう。 この白が始まった世界にいるわたしが彼女に望んだ願いの形を、 満たしてくれる何かを求めてくれると……… 静かに彼女の顔を確認して、わたしはもう一度眠りに着く もう始まる頃だろう、わたしの意識が朦朧としているのはそういう理由のためだ。 だから、わたしは夢を見よう。 もう、疲れ果ててしまったから。 だから、夢を見よう。 夢を見よう。 彼女の願いが適う夢を………… 長い夢を見ていたのだと理解した頃には意識は覚醒を始めていた。 目を覚ますと広がるのは静かな教室の姿。 いつから眠り始めていたのだろう、すでに日は沈みかけ赤焼けに光る町並みが窓の外に広がっている。 記憶を辿ってみるがいつ眠りに着いたのかさえ覚えていない。 「…………」 校庭では部活動に励む生徒の声が聞こえ、そろそろ終わりなのかもしれないとラストスパートを掛けている者たちの姿も目に入った。 そこでそろそろ学校が閉まるということを思い出して鞄を片手に教室を出た。 歩きながら今さっき見ていた夢を思い出してみると、覚えているのは白い景色だけで、そこに何があったのかまでは思い出せない。 しかし、思い出す必要も無いだろう。夢はそういうものだからだ。 一階に下りた後はそのまま渡り廊下を伝う。 寮に向かうためである。 寮へはこの渡り廊下を使ったほうが早くつけるからでもあるし、風がよく通っていて気持ちのよい場所であるからだ。 心地よい風を肌に感じながら寮へと入るためのドアを開ける。 中に入るとすでに学校生活の空気から私生活の空気へと衣替えした生徒が数名いて、静かに談笑をかわしている姿が見える。 その横を通って俺は自室へと向かって足を進める。 俺にはこれといった日課が無く、大抵学校が終わって寮に帰ると一度仮眠を取る。 今日もいつもどおり仮眠を取るつもりでいるわけだ。 自室に着いて鞄を備え付けの机に置くと俺はベッドに倒れた。 徐々に眠くなっていく意識、体を横にした時ふとカレンダーが目に写った。 そこには12月3日の文字があり、明日が例の日であることを俺に認識させた。 さて、まだ寝たり無い部分もあるから少し寝よう。 そう思って俺は目を瞑り、しばらくして意識を手放した。 |
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