幻想郷を『おお、あかいあかい』状態にした犯人を捜すべく、いきなり飛び出した霊夢を追ってきた俺と許斐であるが、霊夢の迷い無き進行に目的地がわかっているものだとばかり思っていた。

「巫女としての勘がこっちだといっているわ」
「ちょっと待て、勘ってなんだよ勘って!」
 
 おまえはあれか、こいつ動くぞ!とかの人と同じように第六感に頼るタイプなんですか。

「こっちっぽいはね」
「霊ちゃんって無鉄砲なところあるよね」

 久しぶりに許斐と考えてることが同じっていうのが面白いけどよ。できればちゃんと目的地に早く着いていただきたいものだ。
 こちらは攻撃手段…………、まぁ一応ここまでで弱っちい霊弾っぽいのを出せるようにはなったわけだけどさ。

「おっと」

 放たれた弾を避けて、その弱っちい霊弾を弾を送ってくれた方に返す。
 
「それで、なんでこんなに妖精がいるわけ?」

 あ、落ちてった。なるほど、一応倒せるわけね。
 とか言っているうちに目の前に現れた妖精が次々にぽろぽろ落ちていく。

「ケイちゃんの霊弾って弱いよね〜」
「ぐぬ、う、うるさいぞ。なんでだよ、なんで数百年も生きてる俺がこんなに弱い攻撃しかできないのに数十年だけ生きてる許斐が俺より強い弾を射出できるんだよ」

 最後のほうにいたってはゴニョゴニョって愚痴ってる俺。
 図で表せば霊夢>許斐>俺ってなる。
 できれば許斐と俺の位置を変えてください。

 そしてふと顔を上げると霊夢の視線が。

「ごめん、この異変を圭介が起こしたとは思えなくなったわ」

 てめぇ、その哀れみをこめた視線は何だ。
 そうだよ、こんな霊力が弱いやつに異変なんか起こせるわけねーよな。そう思ってんだろこら!

「ええ、そうよ」
「勝手に人の心の中を読むな!」
「ケイちゃん無駄話してると当たっちゃうよ」

 そう言って発射された許斐の弾、きれいに妖精を落としていくわけである。
 負けじと発砲。
 受けてもなんというかぴんぴんしている妖精さん。ごめん泣いていいかな?

「泣くなら帰れ」

 某司令官のような台詞をさらっと吐いてくれるわけですね霊夢。
 もうなんだろうね。人生が辛いよね。結構マジで。

「後今更だけど、異変が起きると妖精はその異変によって発生する妖気に当てられるからよ。結構攻撃的だしね」
「うん、ありがとう」
「へ〜、つまり外に出てたときは私も妖気を浴びてたんだね」

 もしかしたら許斐の霊弾の強さは妖気の………、んなわけあるか、俺も同じくらい外に出てるし。

「あんたたちは無駄話してる暇があるならもう少し早くしなさいよ。置いていくわよ」

 くそ、俺の気も知らないで軽く言ってくれるよ。
 しかし、なんというか木々のところどころに何かが当たったような後が目立つが、誰かが先にここを通っていったみたいだな。
 予想としては魔理沙だと思うが…………
 あと、何ですかね、このまるでぶっといレーザーが通過したかのような機の消滅の仕方は。

「マスタースパークの後ってことは何かひと悶着あったみたいね」
「これが魔理ちゃんのマスタースパークの威力なんだね」
 
 いつぞやかにしてたコンビニの話で出てきた粉々という単語を思い出して背筋を寒くした。
 これじゃ本当にKONA☆GONAだぜ☆になっちまうじゃねえか。

「まぁ、焦げ目がついたかな?位の威力みたいだし本気じゃないみたいね」

 これで焦げ目がついたかなですか、なんですかそのギャグ口調、普通の人間が食らったら間違いなく粉々になってまうわ!
 しかし、こんなものを受ける羽目になったやつに同情するよ。お気の毒に。
 
「あれ?」

 なんか高度が徐々に下がってるように感じるな。
 若干だけど霊夢のスカートの中身が見えるような見えないようなそんな高さなわけでして、あれ、今さっきまで二人の背中を追いかけてたはずなんだけど、おかしいな。
 
 高度を上げて見ようとするが、よくわからないけど高度が上げられないわけで、そのなんだ逆にまだ高度が下がり続けてる。
  
「あれ、圭介さんどこいった?」
「あれ〜、ケイちゃんどこ〜?」

 さすがにやばい気がしてきた。足を何かに捕まれてる。しかもやばい力、とても振りほどけない!

「ちょっと、俺はここ――――」
 
 一気に視界が暗闇と化す。
 どうやら地面まで下ろされてしまったようであり、同時に二人の言葉が聞こえた。

「帰っちゃったのかもしれないわね」
「う〜ん、ケイちゃん傷つきやすいからね」
「まぁいいわ、先を急ぎましょう。魔理沙に先越されたら個人的に負けだし」
「うん、それじゃ行こう霊ちゃん」

 そう言って空に浮かんでいた二人の姿がどこかへと…………
 もしかしなくてもこれってかなりまずい状況なんじゃ………

 そしてだ、俺をこの地面まで誘導してくれた張本人の気配が真後ろに感じられるわけで、これってあれじゃん。今流行のフラグって奴ですかね。
 もちろんあれだよ、一+タ+ヒでできる奴だよ。
 それとなんだろうね、捕まれてた足がものすごい力で握られてるよ。引きちぎられそうなくらい。
 あっ………ちょ!


 〜〜〜nice boot〜〜〜


「ぐおおおおおおおおああああああああ」
 
 まずまずい、久々だからマジで痛い。
 イダイダイヂアダイヂアダァァァァァァァ!!!!!!!!!
 って今度は左足!
 ま、ま―――!
 
 
 〜〜〜nice boot〜〜〜


「あががががががががががが!!!!」
 
 いっそ死んでやる!
 よし、首に向かって抜き手だ! 
 そりゃ!

 〜〜〜nice bo
 
 復活完了!
 一気に回転して距離を置く。
 暗闇の中にいる奴に視線を向ける。
 黒い服と金髪、それに赤いリボンが特徴的な、お、女の子だよな?
 うん、なんか見た目怪物じゃない普通の女の子だ。
 まてまて、幻想郷では女の子が人肉を食すのがナウなのか?
 
「うん、うん、骨が残っちゃうな」

 んなわけねえ。
 それより自分自身の骨を見るのは少し勘弁願いたい、そのなんだ、やっぱり良いもんじゃないしね。
 しかし、まさか一回死ぬことになるとは思ってもいなかったぞ。
 まだ冒険開始して一時間も経ってないのに死ぬなんて噛ませ犬みたいじゃないか。

 わかることはこのままではまずいということだ。
 このままではあと五回くらい死なないとここを抜けられない気がするぞ。

 下を向いたまま肉を食べていた女の子が顔を上げてくる。
 うわ〜、口の回り真っ赤かだ。服の黒い部分がなんか湿ってるし、それにまだ腹が減ってるみたいな顔して…………

「…………あれ〜」

 な、なんだ。何なんだそのどっかで見たことあるなって顔は?

「もしかして市ノ川なのか〜?」

 首を傾げながら俺の名前を一言、あれ待てよ。
 こんな感じでそ〜なのか〜とか言ってた友人がいたような気がするんだが、あれ待てよひょっとして。

「おまえまさか、ルーミアか?」
「だよ。久しぶりだね市ノ川〜」
「あ、ああ。そのなんだ久しぶりだが、いきなり喰いつくあたりはまったく変わってないな」

 ルーミア、俺がこの変な体になって村を出ることになってから一年間くらい一緒に過ごした妖怪だ。たしか出会ったきっかけは人食い妖怪をどうにかしてほしいっていうある村の依頼に志願して、ルーミアに一度食われて、それからそうだ俺がルーミアの世話を…って今の俺とまったく同じようなことしてるし。
 そのなんだ、俺にとっては妹分みたいなものかね。よく食われたけど。

「なんか懐かしい味だな〜って思ったんだ〜」
「そ、そうか」
 
 できれば俺の姿を見て判断してもらいたかった。だって嫌だろ、久しぶりに会った友人に『ん、この肉の味。おまえ○○か?』なんて言われるのはさ。
 でもこれで一安心だ。ルーミアに背を向けて空へと羽ばたく準備。

「悪いが少し急いでるから話はまたな」

 もう食われる心配は無…………、あれ、なんで後ろから抱きついてきますかルーミア?

「おなかペコペコなんだ。よくわからないけどボロボロにされちゃったし、だからいただきま〜す」
「って、何がいただきますだ!」
「ひゃ〜」
 
 背負い投げでルーミアを投げ飛ばしてはみたが器用に空中で姿勢を正す。
 その運動神経には感服するね。

「今さっき飛んでいったのはたべてもいい人類なのか?」
「さっき飛んでいったのって、あっ!」

 そうだった、こんなところで立ち往生している暇なんて無かったんだ。早く二人に追いつかねえといけなかったんだ。
 一気に空へと飛び上がりまわりを見回してみる、
 二人の姿はおろか妖精の姿すらない、つまり本当に置いていかれたのか。

「くそ、マジで置いていったのかよ」

 霊夢はともかく許斐くらいは待っててくれると思ってたけどそんなことはなかったか。
 しかし、こうなると自力で追いかけなくちゃいけないわけだ、一応二人が飛んでいった方角だけは覚えてるからどうにかなるはずだ、
 はぁ〜、これから先は妖精とかが出てきても一人で相手しなくちゃ行けないのか、嫌な予感的中だ。
 
「しかたねぇから追いかける――――ん?」
 
 なにやら服を引っ張られているようだが、振り向いてみるとそこにはルーミアがいて、おい、まてなんで泣きそうな顔してる。

「おい、なんでそんな顔する」
「だって、食べ物がどこかに行っちゃうのは悲しいことだもん」
「た、食べ物って」
「食べ物の市ノ川がどこか行くなら、ルーミアも着いてく〜」
「いやだから、食べ物じゃないって言ってるだろ」

 どうやらルーミアの中での俺の立ち居地は食べ物で固定されてしまっているようだ。
 しかし、この掴み具合、どう考えても離してくれそうに無いわけだ。
 これ以上面倒を背負い込みたくはないが、ここから移動できなくては意味が無いわけだから仕方ない。

「わかった、着いて来てもいいから今すぐその手を離してくれ」
「そ〜なのか〜」

 すんなりと手を離してくれたルーミアを見ながら俺は二人の飛んでいった方角へと目を向ける。
 さてと、この先には何があるのかね?



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