それは、遠い遠い昔の話。

 私は彼女の語る夢を聞いた。

 それは夢以外のなにものでもないぐらいの夢物語で、私はいつも苦笑いしながらそれを聞いていた。

 人間味の無い彼女が語る現実味の無い話はいつ聞いても可笑しくて、楽しかった。

 でも、いつか叶えてみせると彼女は言った。

 その姿に私は少しだけ嫉妬した。

 妖怪である彼女の“いつか”を人間である私が見ることなど出来るはずも無いのだから。

 でも、それでも私も少しだけ夢想した。

 彼女が語る全ての者がありのままに生きていける楽園を。

 そこに、私の居場所はあるのだろうか。



















 めでたいめでたいと誰かが何処からともなく歌い、奏で、踊り、騒ぎ出す。

 この泣き出す前に爆発でもしてしまいそうな暗雲の中で開かれたこの大宴会は、夕刻にもならないのにすでに佳境に入っていた。

 ……もう、本当に酷い。主役であるはずの僕ら新郎新婦ですら別々の場所で酒を煽っている辺りで、この混沌っぷりが理解できるだろう。


「か〜〜、旨い! めでたい席で飲む酒は本当に旨いねぇ〜」


 しかも、一緒に呑んでいるのが結婚を反対している側だったはずの萃香なのが、僕の頭痛を一層酷くさせる。


「幼女のナリして親父臭い声出すなよ。何事かと思うだろ」
「こんなナリでないと、中々酔えないんだから、しょうがないさ」


 僕としては、一応はこの騒動の主犯に言いたいことが多々ある訳だが、当の本人はまるで何事も無かったかのように、めでたいめでたいと言いながら酒を口に運んでいるのだ。そうなると、もう僕は溜息を吐くしかない。


「めでたいかも知れないけど、お前らほんとに強引過ぎだっての。もっと、こう僕に優しい案にしてくれよ」
「はっはー、何言ってる。そっちの方が面白そうだったからに決まってるじゃないか!」


 だが、いくら上手く回ったとは言え、この言葉には僕もカチンと来た。


「……よーし、分かった。こちとらただ今、絶好調だ。今日こそはお前を降してやる」
「へぇ? お前が何で私を負かすんだい?」
「これだよ、これ」


 そう言って、僕は今しがた空けた酒の杯を揺らす。その仕草に、萃香は一瞬、呆けたような顔をしたが、すぐさま笑い出した。


「酒? はっはっはっ! 鬼の私に呑み比べを挑もうと言うのか!! これは面白い冗談だ!!」


 萃香が笑うのも無理は無い鬼の酒量は人間のそれを遥かに上回る。妥協や手加減の入る余地が無い分、ある意味で鬼退治よりも分の悪い勝負だった。

 だけど、僕とてそんな事は重々承知。その上でニヤリと笑ってやる。我に秘策あり、って奴だ。


「冗談じゃないさ。……射命丸!!」
「はいさー」


 呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃん。面白さあるところに射命丸在りー、とでも言うようにパパラッチが飛んで来た。
 ……そういえば、こいつも裏の発起人の1人なんだよな。


「嫌ですねー。そんな昔、もとい過ぎた事を気にしてもしょうがないじゃないですか」
「……心を読むな。まぁ、いいや。あれあるだろ、天狗殺し。あのきっつい酒を持ってきてくれ」


 それを聞いて、射命丸の目が面白いものを見つけたと言った風に細められる。
 こういう時、コイツらの洞察力はありがたい。


「はは〜ん、そうですね、それならもっと怖ろし……面白いお酒がありますよ?」
「何かすごい不安な単語が出てきた気がするけど、まあいいや。むしろそれを持ってきてくれ」


 仮にも天狗である射命丸が『怖ろしい』という酒に若干嫌なものが背中を伝うが、むしろ“それぐらいで無いと意味が無い”。


「はい、こんなこともあろうかと持って来たるは『神主殺し』。あの天狗殺しを越える一品です。むしろ逝品です」
「何で天狗より神主が上なんだ?」
「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないですか! さあさ、呑みましょう呑みましょう」


 瓶を開けた瞬間に、揮発したアルコールが肌を焼いた。その天狗殺しが子供だましに思える程に濃厚なアルコールの気配に、周囲の妖怪たちどころか、あのアル中萃香ですらたじろぐ。
 うわぁ、これはすごい。むしろヤバい。だけどこれで良い。いや、これが良いのだ。


「ああ、いいよ。――瓶でくれ」
「瓶で!?」
「何だ萃香、怖気づいたか?」
「じょ、上等じゃん!」


 そうこなくちゃ。まぁ、簡単な挑発だけど、鬼というのは格下の挑発には乗るのが務めだと思っている節があるから予想範囲内だけどな。


「さあさ、では、こちらになります。溢したりズルしちゃだめですよ?」
「しないよ」
「するか」


 ズガン、と瓶ごと渡された『神主殺し』を萃香と並んで持つ。瓶から立ち上るアルコールは、やはり尋常ではない。
 酒に弱い人なら、今の空気を吸っただけで泥酔するんじゃないかと言うレベルだ。


「それでは、この不詳、射命丸が開始の合図をさせて頂きます」


 用意は整った。


「よ〜い……――」


 周囲の妖怪たちがごくりと唾を飲み込む。

 そして、僕たちは一度、深く呼吸をして、瓶を持つ腕に力を込めた。


「――ドン!!」


 それと同時、僕らは勢い良く瓶を傾けた! 喉を焼くアルコールっていうかコレむしろ―――!!


「ご、ごふっ!」
「がふっ……こ、これは……ひ、火か何かじゃないのか?」


 2人して一口目で瓶を放してしまう。一口で口やら喉が火傷したように痛みを通り越して痺れる。
 ガビガビになった喉と口内は空気を吸うことさえ拒否したくなるほどだ。

 いや、もうコレ、酒っていうか劇薬の類じゃないか? ……本当、一体何のための酒なんだろうか。

 ……いや、愚問だった。何のためだって? そんなのは分かり切ってる。これは――


「――ふん!!」
「おおうっ」


 ――コイツ《萃香》に勝つための酒だあああああああ!!!


「が、がふgっ……」


 文字通り死にそうになりながら瓶を煽る。そうして、5分の1程を呑むと同時にくるんっ、と僕の眼球がひっくり返った。


「あ〜、死んだ。無理するから」


 そんな萃香の呆れ声を“聞きながら”僕は秘策を発動させた。


「リザレクション!」
「マジで!?」


 萃香の驚愕。そう、“ただの酒”なら僕に勝ち目は万が一にも無い。だけど、さっきのスキマ同様、僕の“蓬莱人としての特性を活かせば”、それは変わってくる。
 蘇生の際には、当たり前だが“死亡原因の除去”が行われる。もちろん、全てとはいかないが、こうやって意識を保つ程度にはアルコールが体から消えているのだ。


「フッハー! そうだ、霊力がある限り僕は無限に再生する! さあ、僕の霊力が尽きるのが先かお前の酒量限界が先か勝負だぁ!!」


 卑怯とは言わせない。人間と鬼には天と地程の差があり、それが埋まることは決してない。
 だからこそ、鬼たちはこうやって正面から戦いぶつかり続ける限り、全ての策を肯定する。

 鬼の中でも四天王と呼ばれる程に強く、人と鬼の関係を復活させたいと目論んだことさえある古い考えを持つ彼女が、それを否定するなんてこと、あるはずが無いのだ。
 それどころか。否、“だからこそ”ブルブルと嬉しそうに、かつ凶悪に彼女は唇を吊り上げた。


「ふ、ふふふ……。そう、これだよ。私はこれを求めていたんだ!! こんな勝負を! 鬼の私と人間と全力でやりあえる勝負を!! 己の鍛えた技と、知恵と、勇気を持って真正面からぶつかり合う命を賭けた大勝負を!! いいよ土樹良也、やってやろうじゃないか!! 私は! お前を! 私の敵と認めてやるうううううう!!!!」
「はっ! 張り切り過ぎて急性アル中で死んでも知らないからな!!」


 売り言葉に買い言葉。アル中で死ぬなら本望とばかりに瓶の底を天に突き上げる僕らに、ギャラリーの妖怪たち歓声が贈られる。

 そう、僕たちは今、ここで失われたはずの人と鬼との勝負を再現しているのだ!!



「ルゥィィィィィィィザレぇクショォォォォン!!」
「オラァ! 次持って来おぅい!!」




 酒の席での出来事は無礼講とは言え、後で何でこんなテンションでいたのか恥ずかしくなるのは余談である。



















「チッ! 気に入らないわ」


 良也と萃香の周りが異様な盛り上がりを見せる中、少し離れた場所でレミリアは、そう舌打ちした。

 従者である咲夜は料理に借り出されているので今はおらず、行儀悪くどっかり胡坐をかいで座っている。


「あら、不満なの?」


 そこに掛けられる何処か胡散臭い声。ギロリという擬音が似合うようなレミリアの一瞥も何のその、余裕の顔で紫が笑う。
 この2人だけで飲んでいる光景は、珍しいを通り越して何か不気味だった。


「不満だらけよ。あれだけお膳立てした舞台を台無しにされたのよ? この試練を越えれたなら、霊夢との結婚も認めてやらんことも無いと思っていたんだけどね。あいつ、きっちり無視してくれた上に景品《霊夢》だけはちゃっかり持って行きやがったわ」


 ふん、とレミリアはそっぽを向くように鼻を鳴らし、同時にグイッと酒器を煽る。自棄酒だった。

 しかし、文句は言いつつも今から妨害しに行こうとは思わないのだろう。野暮だと思っているのか、そもそも妨害するつもりが無いのか。後者であろうことは、誰にでも分かることだった。

 少しだけ思い通りに行かなかったことが、少しだけ面白くないのだ。きっと、文句を言いながらも、結婚式などになれば誰よりもハシャぐレミリアの姿を思い浮かべ、紫は口元を扇子で隠した。
 端の上がった口元を見られたら、臍を曲げてしまうからだ。


「そこんとこ、私にも詳しく聞かせてくれないか?」


 そこに、ツマミの大皿を抱えた魔理沙がやってきた。新婦の所にいたはずだが、次から次に押しかける妖怪を嫌ったのだろう。


「よっ」


 魔理沙は短くそう挨拶をしながら座り、その場に大皿を4人の中心になるよう置いた。手土産なのか、手間賃なのかは分からないが、この抜け目無い少女のことだ。どさくさに紛れて、一番良い皿を持ってきたに違いないだろう。
 幻想郷にはあまり無い生ハムとチーズが大量に盛られていて、実に美味そうだった。


「お前らが2人をくっ付ける方向で何か企んでたのは知ってるんだけどな。それにしちゃ、ちょっと様子が変だった。あんなに強引にさせるなら、霊夢にアプローチさせた方が……無いな」
「諦めるなよ。……確かにその通りかも知れないけど」


 レミリアが脱力した。だが、魔理沙の言う通りだった。霊夢も嫌がってはいなかったが、特に乗り気であった訳でもない。
 せいぜいが、流れに身を任せる気になった、と言う所だろう。何も無いのに、良也にアプローチを掛けるような面倒を彼女がするとは考え辛かった。


「まぁ、何だ。それでも、もうちょっとやり方があったと思うんだよ。いつものやり方に比べると強引過ぎた。余裕が足りないって言うのが正しいかな」


 気を取り直して魔理沙が言う。


「最初は余所者《外来人》を博麗に受け入れる正当性を示したかったんじゃないかと思ったんだけど、それなら良也がその気になってからで良い。逆に良也をその気にさせるには、あれは急すぎる。何か、もっと他に意味があったんだろ?」


 ビシリ、とそう指を突きつけられた紫は、行儀が悪いとばかりに扇子で魔理沙の手を下ろさせ、少し笑った。
 猪突猛進なイメージがあるが、魔理沙は理論思考派なのだ。普段から行き当たりばったりで動いているのは本当だが、彼女は動きながら考える。
 道すがら様々な情報を集め、真実にたどり着く。それが彼女のスタイルだ。恐らく、霊夢の周りで色々と話を聞き、最終的にここにたどり着いたのだろう。
 ならば、事が終わった以上、最後の回答を出すのは黒幕の務めであった。


「……霊夢には伴侶を得る運命が無かった」


 しかし、そこで口を開いたのは、紫ではなくレミリアだった。黒幕という感じではなかったが、彼女も表のラスボスである。
 それに、その話を語るのに自分以上の適役はいない、と彼女が判断しての、横入りだった


「運命? でも、良也にそういうのは意味ないんだろ?」
「意味がないからこそ、厄介なの」


 しかし、魔理沙としては説明してくれるなら誰でも良いので、特に疑問もはさまない。運命と言う単語が出たなら尚更である。


「運命がレールのようなものだって言うのは、話したことがあるわね?」
「起こることは起こる可能性があるが、起こらない事は起こらないだったか」


 それぐらいは覚えてるぜ、と続きを促す魔理沙にレミリアは言う。


「“運命の赤い糸”って言葉があるように、結婚って言うのは、そのレールが繋がることなのよ。良也はね、他人の運命をかき回すことは出来ても、繋がることが出来ないの。加えて、良也にはありとあらゆる“縁”が無い。魂と肉体の縁すらぶった切るような奴が他人と繋がる縁を持っているはずがないでしょ?」


 そう、普通なら袖を掠らせることすら前世からの“縁”と言われる。しかし、その“縁”を無意識に閉じてしまう良也は例え前世の恋人と再会を果たしても、それはあくまで“偶然”なのだ。そこに、一切の運命は関与しない。
 “運命的”と言う言葉がありえないのが、良也の“自分だけの世界に引き篭もる程度の能力”なのだ。


「結婚なんて、“縁”や“運命”の塊よ。むしろ、そのものと言っても良い。それが無ければ必ずどこかで歪みが生じるわ。少なくとも、普通じゃこうは行かなかったでしょうね」
「成る程な。だけど、それがどうしてアレに繋がるんだ?」
「……起こらないことは起こらないと言ったけどね。それを覆す方法がある」


 そこで、レミリアは徐にピッと指を口の前に持って行き、ニヤリと笑った。


「運命を越えることさ」
「何か、勇者とか御伽噺みたいな話だ―――あっ」
「そう、だからこそ“この異変”だったのよ」


 “謂れ”と言うものがある。例えば、竜を殺した剣には竜殺しの幻想が付くように、悪魔には銀、鬼には炒った豆が効くように、言わば世界に認められた“お約束”。

 同じように、古来から使い古された運命を打ち破る英雄譚の物語は、それだけで運命を覆す“謂れ”と成りうる


「自然に打ち勝ち、天の難題を退け、地獄より這い出し、賢者に学び、怪物を越え、悪魔を打倒し、攫われた姫を救い出す。強引かつ王道に、弾幕ごっこを古来より変わらない英雄譚に準えたのさ。良也が英雄、霊夢が姫、そういう風に“謂れ”を作り出せば、良也の“世界《能力》”より大きな“世界《幻想郷》”の縁で2人を繋げることが出来る」
「……まぁ、理論上は可能かどうかって話だったんだけどね」


 楽しそうに語るレミリアのその横で紫が苦笑した。打ち合わせもしていないのに“正解”を導き出している彼女の聡明さと、ちゃっかり自分の手柄のように言ってしまっている強かさは、ある意味で実に見事だった。
 裏の事情を知らない以上、魔理沙はそんな事には気付かないだろう。


「ただ、異変の目的は良也と霊夢の運命を引き合わせることだから、その時にお互いが好きあってなくちゃいけないとか、そういうことでは無いのよ。終わった後にあの婚約がご破算になったとしても、可能性《運命》が繋がってくれたなら、そこからは何とでもなるから」
「ほー」


 そんな紫の心境も知らず、そんなことがあったのか、と魔理沙は感心した。意味も無く行うにしては規模も、悪ふざけも過ぎるとは思っていたが、そこまで考え抜かれていたとは思わなかった。
 そう魔理沙の中で今までの理に適わない行動も全て辻褄が―――

 ―――合わなかった。


「…………って待て、駄目じゃん。準えてないだろ。逃げたじゃん。良也逃げちまったじゃん」
「…………そうね」


 そう、そもそも大失敗だったのだ。どれだけ、格好良いこと言っても良也が逃走したことで全てはご破算である。


「つーことは、あれか? こうやって上手く言ってるってことは実は今までお前らがやったのは最初から全く無意味だったってことか?」


 最悪ではないが、いろんな意味で最低な推論に行き着き、魔理沙は冷や汗を流す。
 古今東西の大妖怪や神が集まり、こんな大雲まで呼んで、やったことと言えば良也と霊夢をだしにした乱闘と宴会の乱痴気騒ぎ。
 早苗辺りが聞けば、ひきつけを起こしそうな事実だった。


「大丈夫よ。流石にそんなことは無いわ」


 だが、紫はそれを否定した。そもそも、そんな可能性があるのなら、こんな拗れるような賭けなどせず、普通に時間をかけて良也をその気にさせるようにしただろう。
 これは、それが出来ないと判断したからこそであり、そして、その賭けに負けた紫はさらに分の悪い賭けに出ることになったのだ。


「良也と私で弾幕ごっこをしたのよ。勝てばお前の望みを聞いてやるってね。役どころで言えば魔王か試練の神ってとこかしら?」


 そう、あの弾幕ごっこである。


「え? 良也がお前に勝ったのか!? あのヘタレが!?」


 ずいぶん酷いことを言われているが、事実であった。良也は彼女たちにとってヘタレの代名詞。どれぐらいかと言うと、「あのヘタレ」で皆が理解するぐらいには、そう思われている。

 そのヘタレが挑むのはコンティニュー無しの一発勝負。最初の異変であれば、仮に6人いたとしても無限コンティニューという状況なので、死ぬたびに強引に霊力でも注入してやれば、100回生き返る頃には1度ずつぐらいは勝てただろうと言う予想があった。
 しかし、迂闊に手を抜くことも出来ないあの状況で、ヘタレが紫に勝つ方に賭けるのは、余りに無謀だったと言わざるを得ない。


「勝ってはいないわ。ただの引き分けよ」
「それでも、昔に比べれば大したもんだよ」


 実際、そんな奇跡は起きなかった。不死と世界を創り出す能力という反則を出し尽くして、引き分けを狙いに来るというある意味究極的な後ろ向きさで、良也は戦った。
 だが、いつも逃げ回っていた彼が本気で怒り、食いかかって来たのは初めてのこと。それを成長と取るのはあまりに小さなことではあるけど、彼の意地はその時、確かに紫に届いたのだ。

 そういう意味では、良也は勝っておらずとも、紫を負かしたのは間違いないのかも知れなかった。


「……そうね、大したものね」


 そう言って紫は本当に楽しそうに笑った。良也が自分に対し、あれだけの事を出来たのもそうだが、まさかその日のうちにプロポーズをしてしまうなどとは予想もしていなかった。
 本当はあの状況でさえ半々どころか、半ば諦めていただけに実は相当、嬉しかったりするのだ。

 そんな様子を「珍しい顔してんな〜」と眺めていた真理沙だが、不意に嫌な憶測が頭を過ぎった。


「…………なぁ、1人で魔王できるなら6人もけしかける必要あったのか?」


 そして、先程と違い妖怪2人は揃って目を逸らした。


「1人より6倍お得ってことじゃないかしら? 命賭けてる訳じゃないんだし、一発どころか無限発勝負だし」
「大雑把だな!」


 そっちには、それほど重要な意味が無いと言っているようなものだった。実際、一対一とかそういうのでは手加減しづらいし、場が盛り上がらないだろと言うのが萃香の主張だった。


「アル中の脳みそで考えることなんだからそんなもんよ」
「ちょっ、お前、さっきまで自分が考えたみたいに言ってた癖に!」


 それどころか大掛かりになったなどと喜んでいた訳だが、そんな事は既に時の彼方である。
 妖怪の結束力の強さという当たり前のものを知り、魔理沙は柄にも無く泣きたくなった。


「まぁ、大丈夫さ。私が保証する」
「そうなのか」
「ああ、一瞬だけど、霊夢と良也の運命が繋がるが見えたからね」
「良也の運命は見えないんじゃなかったのか?」


 そう、良也が簡単に運命が見れる人間であるなら、こんな異変を起こす必要など無かったのだから、魔理沙の疑問はもっともだ。
 それに対し、レミリアは笑いながら説明した。


「大方、こいつと勝負したせいじゃない? 魂や精神由来の能力者にはたまにあることなんだけどね。価値観の“崩壊”と一緒に能力が影響を受けて、その手の効力が緩んだんじゃないかしら。…………こいつが、良也の境界を弄っていないなら、の話だけど」


 視線を向けられたのはもちろんスキマ妖怪である紫。


「…………」
「紫?」


 その扇子で口を隠し黙考に魔理沙が訝しげな声を出す。それとほぼ同時、紫は扇子を閉めて言葉を紡いだ。


「大丈夫、そんな無粋な真似はしませんわ。それに、私だって女ですもの。そんな事をするぐらいなら、素直に霊夢に養子を取らせます」


 間があったのは少し気になったが、それもそうかと2人は頷いた。紫は胡散臭い妖怪だが、一定の信用は置ける奴だと言う認識はある。
 ここまで胡散臭いと言われ続けてもそれだけの信用があるというのは、ある意味で凄いことなのかもしれなかった。


「でも、これで肩の荷が降りたわ。あなたがそう言うなら、もう安心ということでしょう? 本当に良かった」
「……そうだな。な、レミリア!」


 そう、澄ました顔で言う癖にやたらと嬉しそうな紫に続き、魔理沙も同意する。
 彼女にとって霊夢は腐れ縁というか幼馴染だし、大切な友人だとも思っている。良也だって仲の良い友達だ。
 あいつなら、霊夢の傍にいてもあらゆる意味で大丈夫だ。そんな2人の結婚なら、友人として本当にめでたい。
 ……それに幻想郷で霊夢を貰ってくれる奴などいないと思っていたから余計に嬉しい。


「ああ、良かっ……」


 それについてはレミリアも同様なのだろう。少し嬉しそうな顔をしながら


「って、駄目っ! 駄目よ! 何を流れで誤魔化そうとしてるの。私は……! そう、気に入らないの! 気に入らないのよ!!」


 思い出したかのように……いや、思い出して駄々をこね始めた。


「いや、ここまで来て何言ってるんだよ……」


 流石の魔理沙もこれには呆れた。これもプライドゆえなのだろうが、素直じゃないにも程がある。
 そこまでして微妙な建前を守る理由があるのだろうか? 答えは出ない。


「そうよ、もう良いじゃない。全部綺麗に纏まったんだから、これ以上は野暮ですわ」
「良い訳ないでしょ! 一度逃げ出しておいてノコノコと戻って来るなんて許されると思っているの!? 見てみなさいよあの間抜け面を!!」


 そんな風に嗜める紫に怒鳴り返し、ズビシッとレミリアが指差したその先には良也と萃香。
 既に呑み比べはクライマックスにして最高潮。大勢のギャラリーの中心で萃香がゆっくりと倒れる所だった。



「も、もふむひだらば」
「す、萃香が倒れた!!」
「勝った! 良也が勝った!!」
「すげぇ! 鬼に呑み比べで勝った人間なんて見たことないぞ!!」
「すごいですよ良也さん! 大スクープです!! 早速取材をってア゛ーーッ!!」
「燃えた!? 良也が燃えたぞ!!」
「限界を超えて……、異常な血中アルコール濃度が自分の霊力と肉体を燃やしたのか……っ!!」
「誰か消化しろ!!」
「また素っ裸になる前に!!」



 ワーキャー――



「………………」
「………………」
「………………」



 一部始終を見届けた面々はとりあえず無言になった。

 文句を言っていたレミリアでさえ、言葉を窮する程の混沌がそこにあった。


「あー、うー、あーーー……」


 ぶっちゃけ、これならこのスキマ妖怪を論破できるわよね? でも、ここでそれをやっちゃうと色々とマズ過ぎるわ……っ!

 言ったからには覆せない、でも、ここで先ほどの言葉を完全同意されてしまうのもマズイ。
 第三の目などなくとも、高いプライドと本音の間で揺れる心情が、プルプルと震える腕から痛いほどに伝わって来た。

 もう、本人としては後に引くタイミングを完全に逸してしまったのだろう。何も言わなければ、いつまでもそうしていそうな雰囲気さえあった。呆れたものである

 ただ、捨てる神あれば拾う神あり。神と悪魔は相性が悪いが、そこは妖怪。そんな困った様子のレミリアに紫は助け舟を出した。



「とりあえず、その破れたお尻を何とかしなさいな」



 しかし、残念ながら吸血鬼に水は渡れない。それが泥舟なら尚更である。

















 レミリアが奇声を上げて走り去り、好奇心を満たした魔理沙が良也の様子を見に行ったのを見送る。
 遠く響く喧騒が、自分が1人になったことを感じさせた。

 騒がしかった所から、いきなり喧騒の外にやられたせいか、妙な寂しさを感じる。ただ、それ以上にこの喧騒を眺めることは、嬉しいことでもあった。

 また一歩、夢の実現への道を進んだ。それがただ、嬉しい。それが、今は私に幸福感を与えている。
 遠く聞こえる誰かが慣らす祭囃子も、そう思えば乙なものだ。


「うふふ、隣良いかしら?」


 そんな風に喜びを噛み締めていると、ふいに後ろから声がかけられた。
 振り返ると、そこには一升瓶を大事そうに抱えた幽々子が居た。


「あら、私が断ったことなんてあるかしら?」
「親しき仲にも礼儀あり、よ」
「そうね。なら、どうぞ」
「ええ、そうさせて貰うわ」


 声が掛かるまで、足音どころか幽かな気配さえも感じなかったのは、流石は浄土の住人とでも言うべきか。
 幽霊に足が無いなどと言う与太話は、案外こんな所からから来ているのかも知れない。


「まずは一杯どうぞ」
「頂くわ」


 注がれた酒は瓶から出るだけで日本酒独特の香りが広がった。良い酒だ。幽々子も白玉楼から秘蔵のものを持ってきたのだろう。
 良い酒と言うのは1人で呑んでもつまらない。こう言った祝いの席で親しい誰かと呑むのが一番 巧く、そして旨い呑み方だ。

 ツマミの生ハムとチーズに合うかと言われれば微妙だが、和漢洋の全てが入り混じる幻想郷の祝い事なのだから、これも1つの予定調和なのかも知れなかった。

 いや、そう思うことにしよう。最後ぐらい予定調和があっても良いだろう。何といっても今回は――


「それで、妖怪の賢者さん。今回はどうでした? あなたの予想通りに事は進んだかしら」


 ――これだから、この亡霊姫は侮れないと思う。偶然なのか並外れた観察眼なのか、はたまたさとりの力でも持っているのか。……ふわふわとした掴み所の無い存在感は決してそれを悟らせないのだ。


「……ええ、これ以上無いぐらい、望んだ結果が得られましたわ」


 頬の肉で苦虫を押し潰しながら返杯する。それを見て、何が楽しいのか、彼女はふわふわころころと笑い、意地悪な質問を続けた。


「あら、私が聞きたかったこととは微妙に違うのだけれど」
「結果が全てよ」
「過程は評価されるべきだわ」
「意外だわ」
「浄土の住人ですもの」


 幽霊とは人生の過程の評価が進退を決める。さらに、その過程を評価されて白玉楼の管理人を任されている幽々子の言葉だ。重みが違う。私は両手を上げて降参した。


「予想も予定も全ておじゃんよ。何もかも上手く行かなかったわ。酷いものよ。萃香が立てた計画に便乗する形だったけど、筋書きが乱れすぎて訳が分からなくなっていたのに、結果は大勝利。誰かの手の平で踊っていた気分よ」
「たまには良いんじゃないかしら? きっと、バチが当たりにくくなったわよ」
「そうだと良いんだけどね」


 杯をグイッと飲み干し、溜息。喉越し、香り、味、全てが一級品の浄土の酒だった。不味い筈が無いのに、どこか苦い。


「でも、あれは予想できない事態って訳ではなかったと思うんだけど」
「……予想だけはね」


 女性として見れないなんて言わせるつもりは無い。良也は呑みすぎた霊夢を介抱することがたまにあるが、最近では良く生唾を飲み込んでいるのを私は知っている。
 私の誤算は良也と言う男が、意外に霊夢を良く知っていたと言うことだ。


「『それなら、僕じゃ無くてもいいじゃないか』って言ったのよあの子」


 は、と幽々子が目を丸く見開く。そして、今度は段々と震えだし、


「あ、あっはっはっはっはっはっはっはっ!!」


 次の瞬間には爆笑だった。それはそうだろう。


「ふ、ふふふ。とんだ勘違いだわ。『僕じゃなくても』ってぷくくくくっ! あー、お腹痛い」


 そう、とんだ勘違いなのだ。


「博麗の伴侶として認められるだけの能力と人格があり、妖怪を許容出来て、かつ霊夢に結婚しても大丈夫だと思わせれる人間の男なんて見つかる訳が無いのにね」


 そんな稀有な人間など、紫が知る限りでは良也以外は存在しない。


「そうね、何と言っても初めてだものね。大結界が出来てから“博麗の巫女が結婚したのは”」
「ええ、萃香は少し勘違いしていたみたいだけどね」


 確かに、子を生して家系が続き、博麗が権力を持てば問題だと思うが、その程度は何とでもなる。別に結婚を禁止した覚えなど、私を含め、幻想郷の有力者たちには無い。


「良く言うわ。人間の里から神社を離して、力ある人間以外との関わりを絶ってしまったら、結婚相手がいなくなるのは当然じゃない」
「下手に里と関わられると面倒なのよ」


 博麗の巫女は人にも妖怪にも平等でなくてはならない。人間が人間に寄り添えば、必ずその考えは人間に寄ってしまう。それを防ぐための措置だった。

 彼女らが人間である以上、それはつまり妖怪からは妖怪よりに見られ、人間からも妖怪よりに見られることを意味する。
 異変解決や妖怪退治のことがあるから、決して害成す存在とは捉えられないが、彼女らが“普通の人間とは違う”というイメージはもはや崩すことは出来ない。

 交流すら僅かなのに、里の人間で博麗を伴侶にしようという人間がいないのは当然であると言えた。外来人など論外である。
 そういう意味において、萃香が博麗が完全に養子制だと勘違いするのも無理の無い話しだった。


「ただ、決して推奨していた訳では無いのは認めるわ」
「ふふ、“今までは”でしょう?」
「ええ、そうね」


 そう、時代は変わった。妖怪が人里を闊歩するようになり、多少ながら里の人間と妖怪の交流も増えた。
 スペルカードルールが出来、妖怪と人間の本分も安全に行えるようになった。

そして――


「霊夢が妖怪たちの垣根すら取り払ってしまった」


 その博麗史上最強の力を存分に発揮して、異変とあれば所構わず暴れ周り、退治した後は酒を持ち寄り、その不思議な人柄で皆を強引にくっつけてしまった。
 そのおかげで、吸血鬼、冥界、異邦人、妖怪の山、天界、地底、神。そして、今まで人間など食料程度にしか考えていなかった妖怪も、人間に興味を持つようになった。

 今ほど人妖共に平和な時代は無いだろう。今代の阿礼乙女が幻想郷縁起にもそう書いたことで、人間の認識さえも変わりつつある。


「我侭と言われればそうかも知れないわ。今まで妨害はしていなかったけど、邪魔はしていたかも知れない博麗の婚姻を画策しようなんて、虫の良い話ですもの」


 でも、見たくなったのだ。この幻想郷の化身なのではないかと思うほど理想の博麗が、どのような子を残し、血を繋いでいくのか。

「それに、その娘の傍に条件に合致するだけじゃなくて、面白いぐらいメリットだらけの人間が傍にいるんですもの。ちょっと欲張りたくなるのが人情ってものでしょう?」
「あらあら、妖怪さんが何か言っているわ?」


 良也は死なない。これから、血が繋がる限り続く博麗の系譜の最初の人間が生きていれば、それだけで博麗が持つかもしれない権力への抑止力になる。

 そして、ある意味で霊夢以上に交友関係が広く、どの勢力とも良好な関係を築いていることは、それだけで大きな意味がある。その上、霊夢と違って人里にも顔が利く。
 自覚は無いようだが、いざとなれば各勢力の仲介役として、立派に役目を果たせるだけの人脈を彼は持っているのだ。

 博麗に連なる者としては、これほど理想的な相手もいないだろう。


「まるで良也がこの先、ちっとも変わらないみたいな言い草ね」
「変わらないわ」


 私は断言した。


「良也は永遠に“普通”であり続けるわ。幽々子だって分かっているでしょう?」
「ええ、あの子は“世界”ですもの」


 自分を特別だと思わない人間は存在しないと言われる。良也もいくら自分が幻想郷では優れた存在とは言えないとは言え、外の世界であれば、自分が一騎当千の能力を持っていることぐらいは理解しているだろう。

 それでも、彼は自分の事を心の底から“普通である”と思っている。より正確に言うなら、良也にとっての“普通”とは常に自分が基点となるのだ。

 自分を決して“特別だとは思わない”。それは、ある意味で良也の持つ異常であるとも言える。


「“世界”は普通《フラット》で構成されている。それは常識とも呼ばれるとてもとても強い力。魂由来の能力者である彼が、それに引きずられるのはある意味、当然の事」
「うちに来たときはもう魂だったものね」


 そう、能力を発現させたせいで肉体との繋がりが絶たれ、魂だけで冥界を訪れたのだから当然である。
 仮に、この能力が肉体に依存するものなら、良也は身体に戻ることが出来ずにそのまま閻魔の審判を受けただろう。


「まぁ、だからこそ、良也は幻想郷に受け入れられているのだけれど」


 霊夢が誰に対しても平等であるのなら、良也は誰にとっても普通の存在だ。
 世界に自分が存在することを疑う人が居ないように、世界が自分の周りにあることなんて当然すぎて意識すらしない。
 彼はそういう存在から変わることは無いだろう。

 幻想からも現実からも人間からも妖怪からも“普通”として受け入れられる。そんな存在として。


「霊夢のそれが無関心から来る安らぎなら、良也のそれは自然にある優しさ。あの2人ほど、周りにとって相性の良い伴侶は居ないでしょうね」


 私としては、それが一番大きな理由かもしれない。一緒に居て、霊夢の良さを決して失わせないその気質こそが、私を動かす決め手になったのだと、今になって思う。

 私が子を生して欲しいと思ったのは、博麗霊夢ではなく、霊夢なのだから。


「今日のあなたはいつにも増して理屈っぽいわね」


 幽々子が笑う。


「これでも理数系なもので」
「なら、文系の私がもっと簡潔に答えてあげるわ」


 ふわふわと、いつだって優しい瞳で


「良也は良い子よ」


 簡潔に、そして完結に一言。


「…………そうね」


 だけど、今まで私が言った理屈の全てを越える何かがその中にはあった。

 千年も友人を続けているが、こんな時はいつも幽々子には敵わないと思う。


「じゃなかったら、霊夢を上げたりしないわ」
「あら、親馬鹿ね」
「親じゃないわ」
「そうかしら?」
「…………」
「親ばかね」


 こう屈託無く笑われては、怒る気にもなれない。本当に敵わないと、もう一度思った。


「でも、ここからまた忙しくなるわ。何せ外で生きるつもりの外来人が博麗の伴侶になったんですもの。外の世界でも色々しなくてはいけないわ」
「それぐらいの覚悟はしていたでしょう」
「もちろんよ。100年ぐらい余裕で誤魔化してやるわ」


 その意気よ、とまた笑う幽々子に笑いかけて、向こうの喧騒に目を向ける。
 女の子ばかりなのにぎゃーぎゃーとはしたなく騒ぐ妖怪たち。氷妖精が本格的に炎上しだした良也に一生懸命、一升瓶を傾けている。

 それが火に油を注ぐのとどう違うのか、あの妖精は馬鹿だから気付かないのだろう。余計に燃え盛って皆にどつれている。


 そして爆発した。


「は?」
「は?」


 何の脈絡も無くあぼーん、と宙を舞う妖怪たち。喧騒が激しくなる。とりあえず何かに引火したらしいが、ここからでは良く分からない。氷妖精はどうやら溶けて無くなったようだ。


「あ、あははっははははっはっ!!!」


 幽々子が堪え切れずに噴出した。はしたなく大口を開けてひっくり返って、子供のように笑い転げる。


「ふ、あはははははははっ!!!」


 それに釣られて私も笑う。遠くの喧騒からも、大きな笑い声が聞こえてきた。

 そうだ、これが私の望んだ楽園だ。人間も妖怪も神も妖精も全ての者が肩を並べて笑いあえる。そんな素晴らしい楽園だ。

 幻想郷をこんな風に笑いあえる場所にしたかった。これからも、こうやって笑っていられる場所にしたいと思う。


 願わくば、こんな日常が永遠に続けられるように。私は、そう強く強く思った。















 それは、長い長い今の話。

 私は彼女の創る夢を見た。

 それは夢以外のなにものでもないぐらいの夢物語だったのに、いつのまにか形を成していた。

 人間味の無い彼女が創る世界は優しくて、いくら見ていても飽きないぐらい面白かった。

 昔のことは忘れてしまったけど、いつか叶えてみせると彼女が言った事だけは覚えている。

 そのことが、私には本当に嬉しかった。

 妖怪である彼女の“いつか”を人間だった私が見ることが出来るなんて。

 立ち上がって彼女の世界を見渡した。

 彼女が創る全ての者がありのままに生きていける楽園を。

 私の居場所は、どうやらここにもあるようだ。





























 あとがき


 ジャンピングスパイラル割腹土下座ァァァァァァァッァァァ!!!!
 申し訳ありません。2週間近く前に今日中に仕上げるとか言っておいてこんなに掛かってしまいました。
 言い訳をさせていただくと、自分的には20kbで終わる計算でした。それが気付けば31kbwww
 婚姻異変 結も25kbぐらいと思っていたので、自分にはつくづく計画性って奴が欠けていると思います。

 さて、今回の話ですが、お題はタイトルにもある通り『夢』です。まぁ、簡単に言うと幻想郷に対する思いを含めた紫の『夢』です。
 紫の嬉しそうな様子を感じていただければ、自分の文章は大成功、と言ったところでしょう。ちなみに、最後に爆発した理由はとりあえずチルノのせい。
 屋外とは言え肌で感じられるほどの揮発性がある可燃性物質を撒き散らした上に火元にぶっ掛ければ……あとは分かりますね? 現実でも起こり得ますので気をつけましょう。

 さて、思いっきりクライマックスっぽいですが、始まりました『婚姻奇憚』シリーズ!
 今回の『夢』を含め『想』『天』『生』とそれぞれの文字のテーマに沿って書いていきたいと思います。
 ちなみに、構成は全て完成。待たせないとはいえませんが、比較的早くお見せ出来るように努力します。







 それから、『結』で出した問題。自分でも無茶かなーとはおもってたんですけどねぇ。

@強引な手段に出なければいけなかった理由
A“異変”の意味
Bその他、この台詞にはこういった設定が隠れてるんじゃね?
C番外、何故、最後の最後にどんでん返しがありえたか

の答えですが、読んでいただけたなら恐らくは分かると思います。


 @作中でも説明しましたが、霊夢にも良也にも結婚する運命が無いので、強引にくっつけに行かないと進まないというオリジ設定
 『承』で“霊夢には結婚する運命がなかったらしい”を考慮に入れて『結』でレミリアや萃香、紫の発言を見てると納得できるかも知れない。出来なかったら自分の構成力&文章力不足。
 
 Aも見るところは一緒です。要するに、良也=勇者。霊夢=姫で運命を越えて結ばれる男女の英雄譚を準えようとした訳です。
 基本的に『結』の三人称の辺りに物凄く答えが載っているかと……思います。

 Bは博麗で結婚するのが初めてだとか何とか色々。想像すると楽しいかも知れません。答えは特に決めてないと言うwww

 Cはぶっちゃけ紫とやった弾幕ごっこはほぼ無意味。ただ、自爆って“世界”が一度、消滅しているので一番、縁のある霊夢と繋がったという無茶設定。良也がその気でなければ運命を越えられないとかで分かってくれたらと期待してました。
 本当は、自爆の後にレミリアと萃香のシーンを入れるつもりだったのですが、一言二言でシーンが入れ替わるのは流れ的に微妙なのでやめました。申し訳ない。


 さて、どれぐらいの方が予想と一致したでしょうか? 


 『予想と一致したぜ!!』『そんなん分かるかゴルァ!!』などと思われた方は何にせよあれ喜んで返信するので、掲示板に感想を書き込んで頂けるよう、よろしくお願いします。特に予想と一致した人は是非、その旨を書き込んでください。たった一言でも自分のモチベーションは急上昇します。もしかしたら執筆速度が上がるかもしれません。

 それでは、皆さんこの辺で。またお会いしましょう。



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