これは、どうしたものか。悪魔の狗である、完全瀟洒なメイドは考えた。
 これを、どうしたものか。紅魔館に引き篭もる魔女は対処法を探した。
 こいつ、鬱陶しいなあ。最近、安定してきた悪魔の妹は思った。
 奴をどうしてくれようか。既に周りが見えていない館の主は叫んだ。



「きいいいいいいいぃぃぃ!! あの人間殺すぅぅぅぅぅぅぅ!!!」



 朝、夢に見て一回。朝食、新聞を見て一回。そして昼、テラスでのティータイム中に博霊神社の方角を見て今回。
 レミリア・スカーレット、本日三度目の大絶叫である。


「お嬢様、落ち着いて下さい。紅茶が零れています」
「だって、だって咲夜! 霊夢は結婚なんかしないんだもん! 結婚なんかしないはずだったんだもん! そういう運命なんだもん!!」
「レミィ、落ち着きなさい。何度も言ってるけど、その運命を捏造するのが良也でしょう」
「やだー! やだやだいーやーだーーー!! れーいーむぅー!!」


 びえー、と恥も外聞もなく泣き出した吸血鬼。この分だと、あと二回ぐらいは叫ぶだろう。
 そのカリスマ大暴落な様子に、魔女と従者は揃って溜息を吐いた。妹は鼻で笑った。

 なにせもう、かれこれ一週間近く前からこの調子である。諦めもつくというものだ。

 この話題を出すと、話が通じなくなるために詳細は分からないが、どうやらあの巫女は生涯独身でその生を終えるはずだったらしい
 そこを、ある意味で究極のイレギュラー、土樹良也が予期せぬ形で掻っ攫って行った訳だ。
 運命を見れる分、安心していたレミリアに取っては晴天の霹靂だったのだろう。

 あまり、自分の能力を使用することを好まず、イレギュラーこそ楽しむべきなどと言ってはいるが、嫌なものは嫌なのだ。
 ワガママここに極まる。


「いーなー、白無垢いいなー」
「霊夢は白無垢なんか着ないわ!」
「着るわよ。結婚式で」
「着なーいっ!! 結婚式なんてしーなーいーのーーー!!」
「レミィ、現実を見なさい」
「うー、うー」


 色々、言ってはみたが、これではただの駄々っ子である。
 精神は肉体に引きずられると言うが、それにしても酷い。
 耳を塞いで机に突っ伏すなど今時、寺子屋でも見られまい。
 やったら、問答無用でハクタクの頭突きが待っているが。

 そんな様子に、咲夜は力なく首を振った。ワガママには慣れているのだ。
 これに辟易しているようでは完全瀟洒は名乗れない。

 そして、零れた紅茶を片付けようとして……周囲が薄っすらと霧に包まれていることに気が付いた。


「っ!?」


 慌てて腿に手を伸ばすが、そこに巻いてあるホルダーにしまっているはずの銀製のナイフが見当たらない。
 驚きに固まる咲夜を尻目に、霧はどんどんと密度を増し、すぐに小さな少女の姿を取った。


「やあやあ、お困りのようだねぇ?」


 その人形の名は伊吹萃香。強力な鬼という種族の中においてさえ、四天王とまで称される最強クラスの妖怪である。
 小さな体躯に似合わぬ大きな二本角、相変わらず酔いの回った赤い顔で彼女は、咲夜から“萃めた”であろうナイフを手中で玩び、けらけらと笑った。


「まぁ、待て。喧嘩をしに来た訳じゃないよ」
「当館では不法侵入者は喧嘩を売っているものと見なしているのですが」
「生憎、お客さんだから、その手の商品は扱ってないのさ」
「残念ながら、泥棒はお客様とは言いません」
「“これ”は私の“中”に落ちていたのさ。“嘘”ではないよ?」
「なら、持ち主に返して貰いたいのですが」
「いいよ、ホラ。今度は“落とさないように”ね」


 浮かび上がり、ご丁寧にも全て柄を向けられたナイフを全て回収し、咲夜はいつでも動けるように臨戦態勢を取った。
 それに対し鬼は、何が楽しいのか分からないが笑ったままである。


「私は機嫌が悪いんだ。つまらない用件なら、消し飛ばすわよ」


 不機嫌さもそのままに、レミリアが唸った。
 先の幼児退行の如き錯乱は成りを潜め、そこには悪魔の王たる吸血鬼のカリスマが……微妙だった。


「最初に言ったじゃないか。『お困りのようだね』って。私はお前に協力してやろうと思って来たのさ」
「協力して“やる”? 子鬼風情が、悪魔の王に向かって何様のつもりだ」
「うん? なら同盟でもいいさ。おっと、何のかは今更説明しないよ。面倒だからね。霊夢を取られて面白くないのは、何もアンタだけじゃないのさ。こう言えばもう分かるだろう?」


 その言葉を受けて、レミリアは初めて鬼の方に体を向けた。


「いいわ、話を聞いてあげる。さっきも言ったけど、しょうもない案だったら吹き飛ばすわよ?」
「もちろんさ。他の奴にも協力を取り付けるつもりでいるけど、私はアンタが一番この話に乗り気だと思ってるんでね」


 満を持して鬼は言った。


「異変を起こす」


 吸血鬼は鼻で笑った。


「ありきたりね。でも、異変が起きれば動くのは巫女よ。今までの事を考えれば、何だかんだ言ってアイツも付いてくるでしょう。その中で、どうやって二人を引き裂く?」
「その前提を覆す。この異変に立ち向かうのは良也だけだ」
「何?」
「察しが悪いね。アンタ、仮にも“鬼”だろうに。 簡単な話じゃないか」


 萃香は笑った。それは底抜けに無邪気で、それ故に限りなく残酷な“鬼”の顔だった。


「攫っちゃえばいいのさ。巫女を。それを持って『異変』とする」


 かくして、この末永く、永遠に語り継がれるであろう妖怪たちの大結集。

 短くも重要な大異変“婚姻異変”が幕を開けたのだった。



















 結婚けっこんコケコッコ。
 はぐくみうまれるヒヨコッコ。
 たまごクラブひよこクラブこっこクラブにおんぶひも。
 おいおい、それはまだ気が早いだろうがわっはっは。
 ……わっはっは。

 ……大変なことになった。
 くるくると食肉用鳥類ぶっちぎり第一位の親子が回る頭を抱える。
 もう一度、言おう。大変なことになった。


 あの後、僕は当然の如く取り消しを求めたんだけど、霊夢は『別にいいじゃない、返すの面倒くさいし』の一点張り。
 スキマも、『ちょっと、今から取り消すのは難しいわねぇ……』と言ってのらりくらりと煙に巻くばかり。
 僕の意見などちっとも聞きはしない。

 とは言え、僕もこればっかりは安易に頷くことは出来なくて、その場では結論が出なかった。
 成り行きで生きてきた僕だけど、共に生きることになる女性(ひと)を選ぶのに、変な妥協はしたくなかった。


『この一週間、色々と考えてきなさい』


 そんな僕の様子を見て、スキマはそう言った。
 一週間程度で、結論が出せるようなことじゃなかったけど、時間が欲しいとは思っていた僕はそれに頷いた。
 時間が経つほど、誤解が深まっていくのは分かっているんだけど……。


「……んせぃ」


 霊夢と結婚かぁ……。
 ……嫌な訳じゃ、ないんだけどな。


「先生!」
「おぅわっ!!」


 耳元で大声出すんじゃねえよ! と怒鳴りそうになって、僕は初めて周囲の様子に気付いた。
 全体的に木とコンクリっぽいもので出来た正方形の部屋に30人程度のミドルティーンどもが制服を着て机に座っている変な空間だ


「……って、何だ。学校か」
「……先生、仮にも生徒の前で学校を何だ呼ばわりはないでしょう」
「っと、悪い悪い。たしかに不謹慎だった」
「いや、いいですけど。それと、連絡とか議題とか全部終わったんですがLHどうします?」


 LH。どうでもいいが、Long Homeroomの略である。
 時計を見れば、30分近く残りがあった。
 どうやら、生徒にまかせっきりで思考の湖に溺れていたらしい。
 たぶん、海ほど深くも広くもない。


「りょーやせんせー、もう帰りたいー」
「授業が終わるまでは駄目。まぁ、騒がしくしないなら駄弁っててもいいぞー」


 えー、いいじゃん。もー帰らせてよー。などとヒヨコどもがピーチクパーチク囀る。
 黙らっしゃい土曜の最後とは言え、早く帰すと僕が怒られるんだ。

 僕も新人の分際で担任など持っていたりするが、まだまだ上から目線でばっしばっし言われてしまう年代である。
 歳取ったらある程度は言われなくなるんだろうけど、そういう人はむしろちゃんとしているものだ。


「それはそうと先生、最近何かあったんですか? ぼーっとしてること多いですよ?」
「……あー、ちょっとな」


 本当はちょっとどころじゃないんだけどな。
 流石にこいつらに話すようなことじゃない、意識することぐらいはあるかもしれないが、高校生には早い話だし。
 まぁ、誤魔化しておけば大丈夫だろう。


「りょーやせんせー」
「何だー?」


 そこへ、ゆる〜い声音で女子が手を上げたので、僕もゆる〜い返事を返す。
 追求は受け付けてませ〜ん。と言おうかとも思ったが、自意識過剰かと思ったのでヤメた。


「ズバリ『女』でしょ」
「ぶふっ!」


 緩い声から一転して鋭さの混じる甘い声で言われ、思わず噴出してしまった。
 ヤバい、これは拙い。認めたようなもんじゃないか。
 クソッ、女はすべからく魔性だって知ってたはずだったのに!

 割と静かだった教室は一転、え〜、マジで〜。とか若者特有(僕が若くないという訳では断じてない)の緩さと好奇心が混じった視線が僕に一斉掃射。
 ええい、そんな目で僕を見るんじゃない!!
 くそぅ、何とか言い逃……じゃなくて、…………言い逃れをしないと。


「先生……」


 横から声がかけられる。見れば、そこには青い顔の幽鬼が1名。
 まぁ、委員長な訳だが、ぶっちゃけ怖い。
 それはもう『今年の文化祭はこいつをメインでお化け屋敷に決定!』と言いたくなるぐらいに。


「先生!!」


 そう思ったのも束の間、幽鬼は亡者に早変わり。僕の肩をガッ、と掴んで叫んだ。


「騙されています!!」
「んな訳あるか馬鹿野郎!! 5年越しの結婚詐欺とかありえんわ!!」


 いくらなんでも悲しすぎるだろ!!


「え、結婚?」
「……ハッ!」


 乗せられ……自爆? いや、乗せられた!! くそうっ、何て卑劣な!!


「って、待て少年H! 黒板に何書いてやがる!!」
「俺をその名で呼ぶんじゃない!!」


 そう言いつつ、少年H(役職:委員長)はデカデカと書かれた文字を背に、黒板をバァン! と叩いた。


「諸君! 残念だが、ホームルームの議題が増えた!! タイトルは『先生が5年付き合ってるらしい女性の正体とは!!』」
「うおおおおおっ!!!」
「やめんか!」


 付き合ってないから困ってるんだよ!!
 そんな訳の分からない追求は隣のクラスの先生が注意しに来るまで続いた。


 その後、ちょっと怒られました。ぐすん。













「あ゛〜、しんど……」


 仕事から帰って着替えもせずに万年床に突っ伏す。
 博麗神社の布団とは違う、化学繊維の匂いがした。


「………………」


 こうやって、何も無い空間に来ると、どうしても考えてしまう。
 霊夢との婚約の話。

 そもそも、僕と霊夢はどういう関係なんだろうか?

 ずっと、なあなあで済ませてきたけど、年頃の男女が2人きり一つ屋根の下で一夜を過ごすという特殊な状況を、僕たちは特に感じ入るでもなしに過ごして来た。
 同棲だとか何だとか言われても実感なんかなかったし。

 確かに、霊夢は間違うことなき美少女だ。そして今、立派な美女になろうとしている。
 そりゃあ、初めて会った時は巫女だってことも含めてときめいたりもしたし、その手の柔らかさに動揺したりもしたもんだ。

 でも、何だかんだで一緒に過ごすようになると、美人に慣れてきたこともあってか、その半端なく面倒くさがりで傍若無人な態度に、幻想はすぐさま木っ端微塵になった。

 でも、幻滅したとか、そういうんじゃない。

 すごく付き合い易い奴だった。
 小町には、曲がったことはしないが、優しくも無いなんて言われたらしいけど、そんなことはない。

 確かに優しくないし、加減も知らない。面倒くさがりで、楽が出来るならとことん楽なほうに走る駄目巫女だ。
 そんなだから、人里では信用がないし、お賽銭だって集まらない。だけど――


「だけど、あいつの空気は優しいんだ」


 それだけは言える。

 誰に対しても同じように接するけど、誰に対しても容赦なんてしないけど、あいつは誰だって受け入れてくれる。
 それは人間だろうと、どんなに危険な妖怪であろうと変わることは無い。

 だから、あいつの周りには色んな奴が集まる。
 外れた奴がたくさん集まる。

 例えば、天真爛漫で傍若無人な変わり者の人間の魔法使いだったり、強力過ぎる力と高すぎるプライドを持った吸血鬼だったり、力を持ちすぎた妖精だったり、正体不明なよくわからないスキマだったり――。

 つまりは、どんな異端も受け入れる。
 
 それはまるで、あいつが守る幻想郷そのものだ。


 だから、――怖い。


 “伴侶”という特別な位置にあるべき場所に立った時、“同じもの”として扱われてしまうのが怖い。
 “伴侶”という特別な位置に“ちょうど良かった”何て良く分からない理由で立ってしまうのが怖い。
 そんな特別になるべきことを、思いつきのように決めてしまえる霊夢が――怖い。


 いつか、スキマが言っていた。

 幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは残酷な話だと。


 その残酷さが、僕にはたまらなく怖かった。


「そもそも、霊夢は僕をどう思ってるんだろう」


 それさえ分かれば、この恐怖も少しは薄れるかもしれないのに――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

『断る』


 これが、僕が一週間考えた末に出した結論だった。
 こう言っては何だが、妥当な結論だと思う。
 そもそも、前提からしておかしかったんだ。

 霊夢と僕の間に恋愛感情は無い。
 友愛はある。恐らく、親愛だってあるだろう。
 だけど、そこに男女間の愛はないのだ。

 霊夢だってそう。
 本当に何となく、新しく出会う男と関係を築いていくのが面倒だと思ったんだ。
 決め付けとかじゃなくて、本当にそうなんだと思う。
 この話が流れても、贈られた品を返すのが面倒だと言って怒るぐらいだろう。

 その後で、理不尽な痛い目にあうんだろうけど、そんなことはしょっちゅうだ。
 そして、永遠亭や東風谷の時みたいに、終われば何もかもいつも通りに戻る。
 そう、あいつに取っちゃ人生を決め兼ねない大事だって“いつも通り”で済んでしまうんだろう。

 ……いつも通りで、済まされてしまうんだろう。
 僕の苦悩なんて、歯牙にもかけずに。
 
 
「…………っ」
 
 

 何故か、病気なんかしないはずの心臓がズキリと痛んだ気がした。


「すぅ〜……ハァ……」


 その痛みを誤魔化すように、深呼吸なのか胸に溜まる“ナニカ”を押しやる溜息なのか分からない息を吐き出す。
 空気が美味しい。だけど、気分は軽くならなかった。


「……よし」


 それでも、いつまでもこうしてはいられない。ウジウジ悩むのは性に合わないんだ。
 僕は覚悟を決めて現実と幻想の境界を跨ぐことにした。

 跨ぐと言っても目を瞑って、世界を踏み越えるイメージをするだけで、歩いたりはしないんだけど。
 そして、空気が変わったのを確認して目を開いた。
 
 そこには、いつものように佇む博麗神社が――


「って、なあっ!!」


――巨大な怪獣にでも襲われたかのようにボロボロになっていた


「て、天子がまた何かやったのか!?」


いや、霊夢の知り合いでいまさら博麗神社を攻撃するような奴はいない。
そもそも、まともな妖怪ならここを攻撃する何ていう暴挙に出ることはありえない。
博麗を害することは、幻想郷を害することと同義。

弾幕ごっこの余波ならともかく、後にも先にも、ここを狙って壊したのはあの不良天人だけだ。
それも、あれは“地震”と言う遠距離攻撃だ。
こんな風に“直接壊した”のとは訳が違う。
これは、何かヤバいぞ!


「霊夢ーーーーっ!!」


大急ぎで縁側に回る。今は朝の9時ぐらい。この時間なら霊夢は二度寝か掃除をしているはず。
霊夢がどうにかされるなんて想像も付かないけど、それでも心配だ。
ここに居ないなら異変解決と言う名の無双封印(誤字でなく)で暴れまわっているんだろうけど。

そして、そこで僕が見たのは、室内まで無茶苦茶になった縁側だった。

卓袱台はひっくり返り、箪笥や化粧台などは軒並み倒れ、障子は全て外れ飛んでいる。
まるで、猪か何かが暴れまわったかのような有様だった。


「う、嘘だろ……」



室内がこうまで荒れているということは、つまりそこで争ったということだ。
突発的な弾幕ごっこでは決して無い。

喧嘩大好きなあいつらだけど、一応はルールや暗黙の了解があって、こういう時は必ず表へ出る。
時々、一方的に霊弾を撃ったりはするけど、それぐらいじゃこんな酷い有様にはならない。

……もしかしたら、寝込みを襲われたのかも。

そんな考えに行き着いてゾッとする。
魔理沙が霊夢は勘が鋭すぎて寝ていても悪戯に反応するとぼやいていたが、ただでさえ寝起きの悪い奴だ。
本気で戦闘になったなら、本来の動きが出来るはずがない。


「何かっ、何か手がかりは……っ!」


追いかける為の手がかりを探す。
正直、実力不足も甚だしいかも知れないけど、不死という特性上、僕は足手まといになることがない。
それに、僕の能力は例え厄介な能力であっても、受け付けないことがほとんど。
必ず役に立てるはずだ。

そして、僕は荒らされた部屋のど真ん中に真っ赤な字で『果たし状』と書かれた封書を見つけた。
開かれた形跡はない。
霊夢に当てられたものと考えるのが妥当だけど、それなら部屋が荒れている説明にならない。

ええい、何を迷っているんだ。 非常事態じゃないか!

だいたい、女の子の寝込みを襲うような奴に僕が遠慮をする必要はないんだ!!
僕は意を決して、それを開いた。

そして、とても後悔した。
その果たし状を開いたことでなく“心配していた事に対して”。

焦りで強張った脳と冷たくなった首筋の緊張が解けていく。
同時に、出所の分からない灼熱が、腹のそこから競りあがってくるのを感じた。

内容は、本当に下らないものだった。



『果たし状

 土樹良也へ告ぐ

 花嫁は預かった

 貴様の愛が本物ならば我らを打倒し、奪還して見せよ
 
 道半ばで倒れるようなら、花嫁は帰って来ないものと思え
 
 妖怪の山に座す古き神の社に控える湖畔にて待つ
 
 必ず、単身で来られたし
 
  妖魔同盟一同 筆頭レミリア・スカーレット 伊吹萃香』



病に罹らぬはずの頭蓋から、ブチリと血管が切れる音がした。














あとがき

こんにちは、そろそろ就職活動本番なマイマイです。
100年に1度の不況ピンポイントとか本当に運がありません。テストも被って気分は最悪です。閑話休題。

さて、今回は婚姻異変の第二話『承』をお送りしましたが、どうだったでしょうか?
本当は12kbの所(良也の懊悩の所)で切るつもりだったのですが、次の『転』が1シーンで9kbに達してしまったので、1シーンずらすことにしました。
どっちが切が良かったのかは分かりませんが、楽しんで頂けたら幸いです。

これを読んで『面白かった!』や『甘くないんじゃゴルァ!』などと思った方は、じゃんじゃん感想を送って来て下さい。
それが批判であれ評価であれ、自分のモチベーションは上がります。
特に、文章の批評なんかは泣いて喜ぶので、本当によろしくお願いします。




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