教育実習を始めて数日経ったある日。
僕はいつも通り顧問としてオカルト部の部室に向かっていた。
毎日のように「弟子にして下さい!」と言ってくる西園寺の発現をうやむやにするのは疲れるけれど、一応顧問だし、行かないわけにもね。

「あ、つっちー数時間ぶり」
「こんにちは、土樹先生」
「うぃっす。…あれ?西園寺は?」

いつもなら出会い頭に絡んでくる西園寺が部室にいない。
大抵一番に部室に来てるんだけど、今日はまだみたいだ。
珍しい。

「西園寺さんでしたら、「珍しい魔導書が見つかったから調達してくる!」ってメールを残して帰ったみたいです」
「明日のつっちーはいつも以上に大変かもねー」

うわぁ、本当に大変な事になりそうな気がする。
小悪魔さんの件があったからもう無闇に危険な事はしないと思うけど…不安だ。

暫く部室で二人と談笑し、西園寺が戻ってくる様子が無いため早々に解散した。
始めて部室でゆっくり出来たような気がするなぁ。

そして翌日。

「いやぁ凄い魔導書だよこれ。かなり実践向きでさぁ」

結構古びた魔導書らしき物を読みながらそんな事を言う西園寺が部室にいた。
それにしても魔導書…というよりは、色々書き記したノートみたいな印象を受ける本だなぁ。
中身も何処と無く拙い感じがする。
初期の僕と同じ様な間違いをしている部分もあるから、誰かが魔法を学び出したばかりの頃にメモの様な感覚で書いた物なんだろう。
でも、何か見覚えがあるような字なんだよなぁ。

「それ、著者の名前とかわかる?」
「著者?えっと…あったあった。パチュリー・ノーレッジだって」
「ぶほぁ!?」

パ、パチュリーだってぇ!?なんで外にパチュリーの本が!?
…そういえば、レミリア達が幻想郷に来る前はこっちの世界にいたんだっけ。
もしかしたらこっちの世界に居た時にまだ未熟だったパチュリーが書いた物なのかもしれない。

この事は、パチュリーに知らせた方がいいんだろうか。
…一応西園寺から回収して持ってってみよう。

「それ、ちょっと貸してくれないか?」
「へ?何でですか?」
「ほら、前みたいな危険な事が怒ったりしないか確認したいからさ」

そういうと若干渋い顔をしながらも了解してもらえた。
じゃ、近いうちにパチュリーのとこに行かなきゃなぁ。

―――――

「よくもそんな恥ずかしいものを持ってきてくれたわね…」

持ってきたらそんな事を言われてしまった。
いやまぁ、気持ちはわかるんだけども。

「はぁ…まぁこれなら外の世界に置きっぱなしでも問題ないわよ。ある程度の才能がある人間じゃない限り魔法を発動させる事すら困難な拙い仕上がりの魔法しか書いてないし」

あ、やっぱりそうなんだ。
いやぁ、パチュリーが書いた本だから、何か僕にはわからないような事が書かれてるんじゃないかって思ってたんだけど、考えすぎだったみたいだ。

「ほら、さっさとそれ持って帰りなさい。そんな稚拙な魔導書を他人に…特に魔理沙辺りに読まれたらと思うとゾッとするわ」
「了解。元々この用件の為だけに来たようなものだったしね」

さて、さっさと帰って明日の準備をしなくちゃなぁ。
…終電、間に合うよな?

―――――

その後、この魔導書は西園寺の宝物として大切にされる事になったようだ。
幸い西園寺には魔法の才能は無かったらしく発動はしなかったみたいだが、時々霊力が反応したような感じがするので微妙に不安だったり。
オカルトに関しては行動的だからなぁ、西園寺は。
そのうち努力で魔法を使い始めたりしそうで怖いぞ。

「うわっ!?つ、つつつ土樹先生!?ちょっとだけ風が起きたよ!?」

…え?



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