「先生は、節操がなさ過ぎますっ」 「うーん、そう言われてもなぁ」 ぷんすかぷりぷりと怒る元教え子の風祝に、良也は苦笑を返す。 彼の携帯電話の今の壁紙は、教育実習をしているときに受け持った生徒たちの中でも特に仲の良かった、西園寺と藤崎、高宮栞の三人と並んで撮ってもらった写メであり。 それを早苗に見られたことが、今回の彼女の説教の発端だった。 「幻想郷でも沢山の人に手を出しているのに、それだけでは飽き足らずに外界の、しかも年下の娘ばっかりに手を出してますよねっ?」 「いや、手は出してない。恋人と呼べる存在は今まで居たことがないし」 「それは屁理屈ですっ。現に先生が手を出そうとすれば、どれだけの女の子が引っかかると思うんですか?」 「いや、多分弾幕で追い払われて乙だと思う」 その情景を、良也はいやに鮮明に思い浮かべることができる。 自身を襲う弾幕の嵐、それに屈する自分。 「それにこいつらだって、僕が顧問をしたってだけで好きとかじゃないと思うし」 「そうそう。早苗は潔癖すぎるんだよ。そんなんだと良也に嫌われるよ?」 「神奈子様!」 ぽりぽりと良也のお土産である煎餅を齧りながら、守矢の神が笑う。 「それに早苗、もし良也が誰と付き合うことになっても、早苗は良也を先生としてしか見てないんだろう?なら関係ないじゃないか?」 「た、確かにそうですけど・・・」 「なんなら良也、私か諏訪子と結婚するかい?両方とでもいいよ?」 「神奈子様!?」 「結婚かー、考えたこともなかったなぁ」 「そんなもんさ。運命の出会いってのは急に来るもんだ」 一人慌てる早苗を尻目に、良也は茶を啜り、神奈子は笑いつづける。 もともと恋愛には然程興味を抱いていない良也である、結婚など考える気にもならなかったのだろう。 しかし、そうはいかないのが早苗である。 「け、けけけ結婚なんて!早すぎます!」 「おや、どうしたんだい早苗、そんなに慌てて?」 「先生も私も、結婚なんて早すぎますよ!」 「そうかい?良也だって立派に二十歳を過ぎて就職しようとしてるんだ、十分だろう?」 「まぁ、両親や爺ちゃんにも早く嫁を見付けろって急かされてるけど」 「ほら、こんなもんなんだよ早苗」 からからと笑い飛ばす神奈子と、ニヤニヤする良也。 それをみて、早苗はかぁーっとなって。 「し、知りません!先生が誰と結婚してどうなっても、私には関係ありませんから!」 思わず、そう叫んでいた。 それから、神奈子と良也が何を話していたのか、早苗は知らない。 ただ夕食の時に、神奈子が諏訪子に『良也が外界でお見合いするらしい』と言っていたのを、なんとなく耳に挟んだだけで。 しばらくの間、良也が幻想郷に現れなかった事から、その話はやがて噂となり、パパラッチが幻想郷各地でそれらしいことを書いた新聞をばら撒いて。 結局、数ヶ月のときを経て良也が幻想郷に再度訪れたとき、それが『噂でしかなかった』ことを知った早苗や、一部の幻想郷の住人が安堵の息をついたらしい。 ちなみにパパラッチは悪魔の妹とガチタイマンという罰ゲームを課せられ、その根も葉もない噂を流した責任を取らされたとか。 もっとも。 そんな噂が流れているとは知らなかった良也は、幻想郷の住人たちの反応に首をかしげていたのだが。 で。 「え、お見合いはしたんですか!?」 「うん。つっても、爺ちゃんの知り合いの娘さんだったんだけど」 「へぇ、結婚すれば良かったのに。何で結婚しなかったんだい?」 「・・・・・・ほら、僕って蓬莱人じゃないか?」 「あ」 「なるほど、そういうことね」 「そういうこと・・・って?」 「早苗、そこは察してあげなさい」 「結婚するんだったら、まぁ蓬莱人仲間か妖怪になっちゃうんだよな」 「難儀だねぇ」 「・・・あ!」 「やっと気付いたかい早苗」 「で、でも、それじゃあ先生って・・・」 「当分は結婚なんて考えられないんだろうね」 つまりは、そういうお話だったということ。 |
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