「しっかしあれだねぇ、お前さんも義理堅いこと」
「そういうなよぅ」
「いやいや、あたいは良也のそんなところが気に入ったんだ。恥じることはないよ」

ごそごそと無縁塚で新しいアイテム探しをする良也と、彼を優しい瞳で見つめる美少女――小町。
切っ掛けなんて忘れるぐらいに長い長い間の付き合い――それも男女のそれだ――
だからこその気心の知れた問答。
気の遠くなるほどの昔に良也は霊夢と死別して、行くあてもなく幻想郷を彷徨い歩き、そしてこの無縁塚で小町と、もう一人の少女に救われたのだ。――その魂ごと、全部。

「しっかし、良也も罪だねぇ。あたいって恋人がありながら、他の女の子にも好かれてるんだろう?」
「そーなのかー」

良也にとっては初耳だった。
今は白玉楼に居候し家事をしたりする傍ら、時々無縁塚でこうやって小町と会うのが良也の日々だったりする。
そんなのだから、周りの評価などは全く気にしていないというのは、言い訳になるのだろうか。
もっとも――彼の今の恋人は、霊夢の死後の彼を一番親身になって慰めていた、小町なのだが。

「あたいだって嫉妬とかしたりするかも知れないってのに、お前さんはいつも暢気だねぇ」
「そりゃあ今はこまっちゃんが一番だからだろ?」
「歯の浮くようなことを言わないでおくれよ、恥ずかしいじゃないか」

小町の頬が、ほんのりと紅く染まる。
そんな小町の様子が可愛くて、良也は作業の手を止めて小町の隣に腰を下ろす。

「あぁもう、こまっちゃんは可愛いなぁ」
「なにせ、お前さんの恋人だからねぇ」

からからと笑いながらも、二人の距離は近い。
小町が良也に寄り添うように体を預け、良也はそれを受け止める。
全くもって幸せな、そんな一瞬のとき。

「平和だねぇ、幸せだねぇ・・・」
「全くだよなぁ」

霊夢を失ったときから、良也の世界はモノクローム――白黒の、彩を失った世界だった。
その世界に彩を加えたのは、ほかならぬ小町で。
何度も何度も会ううちに、気の合う仲間から恋愛感情を抱きあうにまで昇華していった。
無論四季映姫にもバレはしたが、意外な事に許してくれていた――無論、条件付ではあるが。
条件というのはたやすいこと、小町と良也の逢瀬は小町が一日に映姫が決めたノルマの霊を運ぶことだ。
そのノルマ自体も相当に優しく設定している辺り、閻魔様はそこまで厳しくないようだ。

「ねぇお前さん?」
「ん?」
「また今度。一緒に、川でも行かないかい?」
「いいね、こまっちゃんの水着姿もみてみたいなぁ」
「そんなたいしたもんじゃないよ、あたいの水着姿なんて」

酒がなくとも、こうやって寄り添うだけで幸せだと思える――酷く現金な自分たちに、二人の笑い声が重なる。
今度は、死別などという別れもない、絆だからこそ。
二人は、小さな幸せを手にしたと――いつまでも笑顔だった。




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