朝。
白玉楼に住まう半人半霊の美女、魂魄妖夢はいつになく爽快な目覚めをした。
何故なら、隣には永久に愛しようと誓った青年がいるのだから。

(おはようございます、良也さん)

彼の寝顔をゆっくり見るなど、いつぶりのことだろう。
最初に彼が幻想郷を訪れたときに見たきりではないだろうか。
しかし、そんな些細なことを気にする妖夢ではない。
早速この夫と、ここの主人である幽々子のために朝食を作ろうと、布団から出る。
悪戯っぽく良也の頬にキスを一つすると、それだけで新しい一日を頑張れる気もしてきて。
眩しいほどの笑顔で、妖夢は調理場へと歩いていった。


「おはよう妖夢。やっぱり朝は早いんだ?」
「当たり前よ。三人分の朝食を作る時間を考えると、今までよりも早いはずだけれど」
「へぇ、そうなんだ」
「いつもとほとんど変わらない時間ですけどね」

朝食の出来上がり寸前で、夫である良也と幽々子が並んで居間へ。
何度も見た光景だが、頬が緩んでしまうのはなぜだろうか。
にやけそうになる顔を抑えながら、妖夢は二人に食事を運ぶ。
彼が白玉楼で暮らすことになって嬉しいのは妖夢だけではないのだと、朝食の席で幽々子が言っていたのが気にはかかったが。
和気藹々とした朝食の時間は、早々に終わりを迎えた。



「良也さん」
「ん?」
「浮気したら、駄目ですからね?」
「相手がいないだろう?」

からからと笑う良也を一睨みして、それからため息を一つ。

(良也さんって、結構人気あるから心配なんですよ・・)

不安で不安で仕方ないが、しかし良也を信じたいのも彼女の心情ではある。
人里へ外の世界のお菓子や飲み物を売りに行く姿を見つめながら、妖夢は苦笑いを浮かべていた。

果たして、妖夢のハラハラする新婚生活の幕は開いたのだった。



・・オワレ。



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