今日も今日とて紅魔館で魔法の勉強。 来る回数はものスゴイ勢いで減っているため、時折フランやレミリアに文句を言われたりもする。 が、毎度毎度血を吸われて、大半がドレスの彩色に使われているのだ。 何より、映姫に言われたことが大きいのだけれど。 毎度甲斐甲斐しく世話をしてると、霊夢がきちんと頑張るようになったのだ。 その代わりに、霊夢の世話に割く時間が大幅に増えたがために、自分のことが疎かになって・・・・本末転倒じゃないか? 「それに、僕にいいことって何もないんだよなぁ・・」 「何を言ってるの?」 「あぁ、ちょっとね。そろそろ何か良いことがあってもいいかなぁ、なんて」 「・・・・貴方、本気で言ってるのかしら?」 パチュリーが珍しく怒ったような、呆れたような顔でこちらを見てくる。 「貴方は不老不死なのよ?無限の不幸と無限の幸福を待っているの」 「・・・だよなぁ・・・・」 ため息一つ、目の前の本に目を落とす。 ようやくにして慧音さんの言っていた言葉の意味が理解できつつあった。 不老不死であるという、その重さを。 僕がユルく流していた事実の重さを。 意味を。 (まぁ・・・なんとかなるよなぁ・・・?) 結局シリアスが続かないのは、いつもの僕なのだが。 「あら良也。帰るの?」 「出た!」 「その人をオバケか何かみたいに見るの。やめなさいね?」 もうすぐ紅魔館の門といったところで、背後から聞きなれた声。 年下の子を嗜めるような微笑を浮かべたレミリアがそこにいた。 「もう血はあげただろう!?」 「そうじゃないわよ。今度持ってきて欲しいものがあるの。予約ね」 「予約?」 レミリアからの予約は初めてのはずだ。 「・・・言っとくが、デタラメに高いものや危ないものは駄目だからな」 「違うわよ。フランが本を読みたがっているの」 「図書館にもたくさんあるだろう?」 「あんな小難しい本じゃないわ。童話とか御伽噺とかの類よ」 「あぁ、それならかまわない。種類は選ばないんだろう?」 「ええ」 さようなら、とレミリアは踵を返す。 その後姿を少しだけ眺めて僕も紅魔館を去って。 このときはまだ、数日後に起こる事件に関して、僕は何も知らなかったんだ。 |
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