紅魔館は、そりゃあ色々なトラウマがあるわけだけれども。

「でも、この本の充実振りは他じゃあないんだよなぁ」
「そうでしょうね。この図書館は大きいだけではないですから」

穏やかな声で微笑む小悪魔さんと二人きりで、今日は勉強会。
不老不死になったとは言え、自衛の手段があるのならばそれを磨くのに勝る手段はない。
ちなみに師匠はお出掛け中。
だが、ここには師匠に勝るとも劣らない(はずの)先達者、小悪魔さんがいるわけで。

「あ、そこの式、間違ってますよ?」
「え?あ、これか・・」
「直したほうが良いとは思いますが」
「うん、すぐに直す」

小悪魔さんに指摘された所を、すぐに直す。
基本的なミスではあったけれども、それだけですぐに変わるのも魔法の妙味。

「・・・・・・・はい、よく出来ました」
「ふぅ。これで一息付けるかなー?」
「じゃあ良也、今度は私と遊んでー!」

・・・・・・・はて。
この図書館には僕と小悪魔さんの二人きりのはず・・・・。

「幻聴か?」
「・・・・?何が幻聴なの?」
「やっぱ聞き間違えじゃない・・よ・・・・ぎゃあっ!?」

後ろを振り返り、思わず悲鳴をあげてしまう。
何故なら、そこに暴君妹様がいたから。

「もう、そんなに逃げなくてもいいじゃない」
「遊ぶって言ったって、僕の血はあげられないぞ?」
「えー」

明らかに不満げなフランドール。
しかし、僕にも言いたいことはあるのだ!

「だってレミリアもフランドールも僕の血を殆ど溢すじゃないか」

以前姉妹でよってたかって血を吸われたときのことは、今でも鮮明に覚えている。
二人とも満足そうに微笑んでいたが、お気に入りらしいドレスを真っ赤に染めるほど、溢していた。
・・・・・その微笑が可愛くて、胸キュンしたのは内緒だ。

「でもでも、良也の血って美味しいんだよ?」
「そんなに美味しいんですか?」

今度は小悪魔さんが会話に混じる。
万一フランドールが小悪魔さんに癇癪を起こしても・・・うん、ちゃんと僕の能力の範囲内にいるし、大丈夫だろう。

「良也の血って、不老不死になってから『深み』が出たんだって」
「初耳だぞ」
「お姉様が言ってたもの、間違いないわ」
「レミリアさんのお気に入りですか。すごいですねぇ・・・」

僅かばかりの憧憬と、同情を含んだ目で小悪魔さんが見つめてくる。
そして、いっぱいの好奇心を隠そうともしない無垢な瞳でフランドールが僕の血を求めてきて。


結局、フランドールにたっぷりと血を飲まれた僕は、それを知った(フランドールがしゃべった)レミリアにも血を飲まれることに。
貧血でフラフラになりながら帰った僕を待っていたのは、霊夢と魔理沙の食事の用意だった。



とりあえず、こんな休みの日が毎週のようにあるんだけど。
それでも楽しい幻想郷ライフは、まだまだ続くのだった。



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