土樹玲於奈は、兄である土樹良也を慕っている。
兄としてではなく、男としての良也に、恋心も持っていた。
武道一般を得意とする一家の中で、唯一【才能】に恵まれなかった兄。
その代わり、誰にも優しく穏やかで、オタクなのはどうかとおもうけど。

兎に角、そんな良也がお盆に帰ってきたときに、兄の知り合いだという八雲紫という女に見せられた写真のことが気にかかっていた玲於奈は、年末・正月に兄が帰ってくるのを待っていたのだ。


※この頃良也は幻想郷の新年会に出ています。詳しくは第六十二話。

(兄さん・・・・遅いな)

酷く不安になる。
もしかしたら、写真に写っていた幼女にイジメられているのだろうか。
拘束されて、酷い目にあっているのではないだろうか。
そんな嫌な思いばかりが、玲於奈の脳裏を駆け巡る。

(もしかしたら・・・)

お盆に来ていた女の人とデートでもしているのだろうか。
デートでは飽き足らず、進むところまで進んで・・・・・・・・・・。

(そんなの・・・・嫌)

ボスン、ボスンとサンドバッグを殴るたびに打撃音が弱くなっていく。
胸が締め付けられるような思いに囚われながら、玲於奈はサンドバッグを殴り続けた。



それから、数日後。
無事に帰ってきた兄の声を聞いた玲於奈は、思わず感激してしまい、涙ぐんでしまったりもしたが。
今度は邪魔の入らない、穏やかな一家団欒を楽しむことが出来た。
家族で神社に行き、家族で夕食を食べて。他愛もない話に花を咲かせて。
兄が家に居るほんの二日ほどの時間は、待つ時間に比べて、恐ろしい速度で過ぎていき。
そして、またお盆に帰ってくると家を出た兄の背中を見つめながら。

今度こそ、良也に素直に甘えたいと、玲於奈は小さく決意したのだった。


オワレ。



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