第一話「大体スキマのせい」 〜side 土樹良也〜 「外来人を呼んだわ」 博麗神社でくつろいでいたところに、突然スキマこと八雲紫からかかってきたセリフがそれだった。 お前はいつの間に現れたんだとか、挨拶も無しにかける言葉がそれかとか、色々言いたい事はあったが、とりあえず、今のスキマの発言について言及する必要がある。 「……わんもあぷりーず」 「だから外来人を呼んだのよ。スキマで」 唐突。 圧倒的唐突。 「うん、とりあえず二つほど質問させてもらうが、何のために呼んだんだ? あと、それを何故僕に言う?」 「一つ目の質問の答えは暇潰し、二つ目の質問の答えは何となくよ」 「OKよく分かったからまずは速やかにその口を閉じろ」 色々と突然かつろくでもない話だが、それについていく僕も大概だと思う。 慣れって恐ろしい。 「まあ二つ目の答えについては冗談だから安心しなさい」 「いや、今問題なのは一つ目の答えの方なんだが」 「あなたには、その外来人を迎えに行ってきてもらうわ」 清々しいほどのスルーだった。 いや、そんな事よりも。 「……ええと、もっと詳しく」 「さっき呼んだのはいいけど、間違えて森の中に落としてきちゃった☆」 「『きちゃった☆』じゃねえ!」 一応解説しておくと、幻想郷で『森』といえば、ご存知魔法の森の事である。 人間はおろか妖怪すらも好んで近付こうとはしない場所で、そこに漂う胞子には魔法使いの魔力を高める効果があるらしく、アリスや魔理沙が居を構えているが、普通の人間ならば深呼吸で失神できるという恐ろしい場所である。 つまり何が言いたいかというと、魔法使いどころか魔力や霊力になんの抵抗もない外来人なら、最悪死亡する。 「大事故じゃねえか!」 「仕方ないじゃない。起こってしまった事についてうだうだ言っても何も始まらないわ」 「言ってることは正論だが、その元凶であるお前が何でそんなに冷静なんだよ」 「もう五月蠅いわね。早く行きなさい。手遅れになったらどうするの?」 どの口が言うもここに極まれりという発言に非常に腹が立つ事この上なかったが、本当に死んでしまっては一大事なので、とりあえず、名も知らぬ外来人を助けることにした。 「という訳で、ちょっと森までいってきてもらえないだろうか」 「何で私に言うんだよ」 偶然にも博麗神社には魔理沙が来ていたので、彼女に頼む事にした。 これは僕よりも魔理沙が向かった方が早いからで、したがって名も知らぬ外来人の生存確率も上がるわけで、決して僕が楽をしたいからではない事をここに明記しておく。 ちなみに、霊夢はお仕事(この仕事とは、必殺仕事人とかそういうニュアンスである)だ。 「そもそも、紫が自分で行けばいい事だろ」 「いや、スキマはスキマで、博麗大結界の補修があるらしい」 「補修?」 「うん。一か月前位から、結界の調子が悪いらしい」 何でも、『揺らぎ』が多いのだとか。 「とにかく頼むよ。霧雨魔法店への依頼という事で、報酬も用意するからさあ」 「その報酬次第だな」 「ハーゲ○ダッツ4つでどうだ?」 「任せろ!」 ちょろっ。 まあ兎にも角にも、これで僕の役目は果たしたと言っていいだろう。 仮に死んでいたら全部スキマのせいな訳だし、お茶を飲みながら霊夢の帰りを待つとしよう。 あとがき どうも、三次創作に初挑戦の辛味です。 基本的に急展開が多い上に短いですが、平にご容赦下さい。 なお、一話には登場していませんが、この話の主人公は辛味のオリキャラとなっています。 構想という名の妄想では、初期はグダグダ多めで後半に燃え、格好良い良也を書きたいと思っています。 感想を送っていただければ、辛味の執筆意欲が増大するので、よろしくお願いします。 |
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