東方奇縁譚三次創作作品 「突発休日と喫茶店での過ごし方」 空が高くなり色鮮やかだった葉っぱたちも枯れ始め、そろそろ冬の妖怪たちが目を覚ます季節になろうとしている。 そのとき僕は突然訪れた予期せぬ暇をもてあましていた。 学内に出回ったインフルエンザのおかげで僕の受ていた授業が休みになってしまったのだ。 おかげで僕は土日を含め四連休を楽しめることになったのだ。運良く塾のバイトも入っていなかったし。 時計を見ると九時を少し過ぎたころ。 うむ、幻想郷にいくかこっちで暇でつぶすか普段なら少しは悩むところなのだが、あいにく田中と高橋もインフルエンザでダウン中なので僕の幻想郷行きはすんなりと決まった。 いまから行けば大体昼食時ぐらいには着けるだろう、と僕は移動を開始した。 「あ、そういえば成美さんから頼まれていたものがあったんだった」 移動中、喫茶店の前を通りがかって思い出した成美さんの依頼。 本来なら明日の大学の帰りに買う予定だったものだ。 自分の財布の中身と依頼品やお菓子の値段を頭の中で計算する。 おっと、移動賃も忘れちゃいけない。 チンッ! と頭の中のレジが計算を終える。 なんとか買えるだけのお金は財布の中に入っていたようだ。 というわけで第一目的地を通り道の近くにあるスーパーへと変更するとしよう。 目を開けると目の前のみんなの忘却の真っ只中にあったおんぼろ神社は姿を変え、僕の第二の住居となっている博麗神社を映し出していた。 霊夢はいつものように箒を手に持ち境内を掃除していた、もちろんテキトーに。 今日は魔理沙はいないようで境内には見当たらない。 突然の訪問に霊夢は意外そうな顔をしてその疑問を聞いてきた。 「あれ、どうしたの今日は? 来るのは明後日だと思ってたけど」 「急に暇が出来てね。何もすることが無かったから来たんだ。だめだった?」 「だめじゃないけど来るならもっと早くに来てほしかったわ。お昼食べちゃったじゃない」 むむ、自分で云っておきながらなんかいけない関係の主婦と間男のような会話だ。 ちなみに霊夢は一緒に食べたかったのではない、来るのが分かっていたら僕に作らせる気だったのだ。 「僕はまだ食べてないからお菓子売りに行くついでに人里で食べてきちゃうよ」 僕はそう云いリュックの中から今日のお土産の栗羊羹を取り出す。 「あとこれはお土産、ゴミはいつものように」 「いつもありがとね、早速休憩にしよっ」 霊夢にお土産を渡すと霊夢は軽く、本当に軽くお礼を云ってそそくさと神社の中に入っていった。 多分お茶を入れに行ったのだろう。きっと僕が帰ってきたときには栗羊羹は全部無くなってるに違いない。 しかし僕のリュックの中にはもうひとつ、自分も食べれるようにと予備の栗羊羹が入っているのだ。 僕も日々学んで生きているのだと内心に思いながら体を浮かせる。 さて、僕もお菓子を売りにとお昼を食べに人里に向かうとしようか。 人里に着いた僕は予定外の訪問でいつもより少ない客にお菓子お売りながらとあるお店の前まで行った。 成美さんの経営している喫茶店である。 いつもなら成美さんが店の外に来て手渡していたのだが今日は予定外の訪問なので、成美さんは来なかったのだ。 それにせっかく人里でお昼を食べるのだから、成美さんの喫茶店でお昼を食べようかと思っていたのだ。 お店のドアを開けるとカランカランとドアに付いたベルが鳴り、その音と共に成美さんの「いらっしゃいませ」という掛け声で迎えられた。 お店の中はゆったりとした雰囲気の洋風デザインになっており、蓄音機から流れる音楽も相成ってかものすごく落ち着ける空間に成っていた。 ほう、とおもわず僕の口から出てしまった。 実はいうと僕はここに来たことが無かった。男一人で喫茶店に来る勇気が無かったのである。 席はカウンター席が四つ、四人がけのテーブルが三つある。 ということは、と暗算する。最大で十六人客が入れるのか。 今はお客はカウンターに一人いるだけだったが、その一人が僕にとって意外な人物であった。 「よお良也、珍しいところで会ったな」 「魔理沙こそ」 そう、成美さんのいる正面に位置するカウンター席に魔理沙がいたのだ。魔理沙の膝の上にはもうすぐ2歳になるという成美さんの子供が座っている。 「私はぜんぜん珍しくないぜ」 「魔理沙ちゃんは私のお店の常連さんよ」 僕はカウンターの魔理沙の隣に座り、成美さんが僕にお冷を持ってきながら教えてくれる。 そうなのか。ぜんぜん知らなかった。 そう思うと魔理沙に会ってるのはいつも博麗神社か通りがかりだ。 よくよく考えると僕は魔理沙のことぜんぜん知らないな。住んでる場所も魔法の森ってぐらいしか知らないし。 「あ、これご注文の品です」 リュックの中からスーパーで買ってきた品を取り出し成美さんへ渡す。 「あら、ありがと」 成美さんはお金を出すためにレジ(のようなもの)のところに行こうとしたが僕はそれを止める。 「帰り際でいいですよ。後お昼食べてないんで頼んでいいですか?」 すると成美さんは、実は私たちも今からお昼なんだよという事で一緒に食べることにした。 出てきたメニューはサンドイッチに紅茶、成美さん特製のケーキだった。 魔理沙はお昼は食べていたので紅茶とケーキのみで、今は成美さんの子供にお昼を食べさせている。 ちなみに席をカウンター席からテーブル席へと移動している。 僕の正面に魔理沙と成美さんといった配置だ。成美さんの子供は席が変わっても魔理沙の膝の上である。 「ほ〜ら、大好きなお母さんのご飯だぜ〜。あ〜ん。 ってこら、ちゃんと食べないとダメだぜ」 魔理沙は慣れているのか丁寧に成美さんの子供に食べさせていた。 それで僕の中の魔理沙の印象が少し変わった。 いつも元気で男勝りなだけでなく、こういった優しい女らしいところもあったのだと気づいたのだ。 サンドイッチも食べ終え二杯目の紅茶を飲みながらケーキを食べつつ三人で世間話をしていた。 成美さんの子供が魔理沙の膝の上で魔理沙の服を握り締めながら眠ってしまったので、声のボリュームは少し小さめでいろいろなことを話した。 この店においてある蓄音機とレコードは魔理沙に頼んで香霖堂から買ってもらったそうだ。 成美さんと魔理沙の話では僕の知らない魔理沙が沢山いた。 「でね、その時の魔理沙ちゃんがものすごくかわいかったのよ、すっごく目を輝かせて『お、おい成美、こいつ今私の名前云ったぞ』って。 は〜、あのときの魔理沙ちゃんを写真にとっておきたかったわぁ」 その時の映像を頭の中で思い出してるのか、成美さんは遠い目になる。 成美さんにからかわれて顔を少し赤く染めそっぽを向く魔理沙に不覚にも僕は見とれてしまっていた。 普段の男勝りな性格や行動のせいで、霊夢とはまた違った意味で女性として見てなかった魔理沙を僕は女性として見ていた。 「ん〜、もしかして良也君、魔理沙ちゃんに見とれてた?」 僕が魔理沙に見とれてたに気づいた成美さんが目を細めニヤリと笑う。 「えっ、あ、い、いいいやちがうよ」 ヤバイ、図星だった僕は見事にどもってしまう。 どもった僕に図星だと気づいた成美さんの笑みは増すばかりである。 「うわっ」 と、その時そっぽを向いていた魔理沙が突然成美さんの子供を高い高いをするような形で抱えて立ち上がる。 よく見ると成美さんの子供の服から、特に股下から液体がポツリポツリと垂れていた。 子供を乗っけていた魔理沙のエプロンは当然ぬれていた。それどころか濡れている所が黄色に変色している。 あ〜これはあれか、成美さんの子供がOMORASHIをしてしまったのか。 「きゃっ! 大変!」 成美さんは魔理沙から子供を受け取り僕へと渡す。そして魔理沙を連れて店の奥に行った。 するとすぐに成美さんだけ店の奥から顔を出し、畳まれた布を僕へと投げてきた。 「私は魔理沙ちゃんの着替えを用意するからオムツを替えて!」 とだけ云ってまた奥に消えていった。が、すぐにまた顔を出す。 「魔理沙ちゃんをお風呂に入れてるけど覗いちゃダメよ」 「の、覗きませんよ」 多分僕の顔は真っ赤に染まってたと思う。 魔理沙の入浴には少し興味あるが、今のところは考えないでおこう。 今はそれより大事なことがある。 そう、成美さんの子供のオムツを替えることだ。 幻想郷に紙オムツなんてないからもちろん布のオムツだ。 僕の同年代の人がいきなりそんなことを云われても何も出来ず、ただただ混乱するだけだろう。 しかし僕こと土樹 良也は特技の一つに布オムツの交換があるのだ。 そんなことで僕はテキパキと成美さんの子供のオムツを交換をするのだった。 ほんと人生何が役に立つか分からないものである。 そして待つこと三十分、成美さんの子供が僕の腕の中ですやすやと寝息を立て始めたころ、やっと成美さんと魔理沙が店の奥から出てきた。 僕の気のせいかもしれないが、成美さんの肌の艶が何故か二割増しになっている。 それに魔理沙は顔だけこちらに出しているだけでこっちに出てこない。 何があった? あの店の奥でいったい何があったんだ?! 「いやー、待たせてごめんね。探すのに手間取っちゃって」 なにをだ成美さん! 「り、良也。お前はもう帰ったほうがいいぜ。と云うか帰れ」 「ほら、魔理沙ちゃん。恥ずかしがってないで出てきなよ」 なかなか出てこない魔理沙を強引に引っ張り出した。 このとき、そう、このとき僕の中の何かが解体される高層ビルのように音を立てながら崩れたのが分かった。 僕は固まった。予想外の出来事がおき頭の中のレッドアラートがファンファンと鳴り響いていた。 頭の中で会議中の12人の脳内僕たちが全員魔理沙から目が離せなくなっていた。 出てきた魔理沙は普段の白黒の魔女ルックでもなければ、いま成美さんが着ているような和服のようなものでもなかった。 肩が丸出しの薄いピンク色のキャミソールにクリーム色の二段重ねのヒラヒラミニスカート、それに白のハイソックス。 それが今の魔理沙の服装だ。絶対領域が僕の目にはまぶしすぎる。 ギギギと固まっていた首を動かしこれは何? という視線を成美さんに向ける。 「今、貸せる衣装がこれしかなかったのよ。私がここに来た時の洋服」 うそだ、目が面白そうだからやりましたと語っている。 「うー、なんか何にも着てないみたいな感じだ。すっごいスースーするぜ。 外の人はこんなん着てよく外を歩けるぜ」 キャミソールの胸元とスカートの先を持って扇ぐようにパタパタさせる魔理沙。 「駄目よ魔理沙ちゃん、下は私の貸して履いてるけど上は何もつけてないんだから」 「ぶはっ!」 僕に聞こえないように成美さんが魔理沙に耳打ちをするが、聞こえてしまって僕はおもいきり吹いてしまった。 は、鼻血は出てないよな。うん出てない。 鼻下を確認する僕の視線は魔理沙から離れなかった。 「駄目よ良也君。いくら魔理沙ちゃんがかわいいからってそんな凝視しちゃ」 「目がエロいぜ」 僕はあわててごめん! と云い後ろを向いて深呼吸をする。 一回、二回、三回、おまけに四回。 ついでに深呼吸をしながら心の中で魔理沙は親友と何度か唱える。 うん、落ち着いた。 落ち着いた僕は振り返り、改めて魔理沙に謝る。 魔理沙は、まぁいいぜと水に流してくれた。 うぅ魔理沙のそんなところが好きだよ。親友としてだけど。 「どう良也君、魔理沙ちゃんすっごく似合ってるでしょ」 「うん、すごく似合ってるよ魔理沙」 さっきの呪文が聞いたのかすんなりと返せた。 「よかったねぇ。良也君、魔理沙ちゃんの事すごくかわいいってさ」 ちょっ、かわいいとは云ってない! いや別にかわいくないという訳じゃない、むしろものすごくかわいい。 衣装のこともあって当社比二割り増しだ。いや、むしろ、増し増しだ! 「お、おう、ありがとな」 魔理沙の顔がもう目に分かるように真っ赤だ。多分僕も真っ赤なのだろう。 うぅ、成美さんがすごい笑顔だ。絶対僕らで遊んでいる。 「今日はもう帰るぜ」 勝ち目なしと判断した魔理沙は撤退を開始する。 「今日は迷惑かけたからただでいいわよ」 衣装は明日取りに来るぜ、と云って店から出て行った。 と思ったら即行で店の中に戻ってきた魔理沙。 忘れ物か? と思っていると魔理沙が少し震えた声で云った。 「寒かったぜ、なんか羽織るものを貸してくれ」 《あとがき》 なにぶん初心者なので荒いと思います。 さらに私は国語、英語の文系教科はいつもワーストIに入っていたほどの文系駄目男です。 感想、苦情、愚痴、苦情、誤字脱字、苦情は掲示板にお願いします。 感想を見るのが怖いよ しかし成美さんの子供って本当はいったい何歳なんだろうか? 今回書くにあたって勝手に設定したのが子供の年齢と、喫茶店の内装、成美さんが幻想郷に来た服装、魔理沙が常連って設定。 喫茶店の名前、子供の性別と名前、旦那さんは無視しました。 成美さんは数少ない出番から同性の後輩にもてる様な女性タイプのおしとやかじゃない方と推測。 ほんとは良也の快適温度をきっかけに魔理沙家まで送っていく予定だったんだけど今回は喫茶店の話ということできりました。 魔法の森内では良也ノ世界の範囲が狭くなって擬似アイアイ傘状態とかね、バッサリと。 書き終わって思ったけど『インタールード』ってやっぱすごいわ。 |
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