「あら、良也じゃない」

「久し振り、アリス」

いつも通りパチュリーに頼まれて魔法の森へ適当な草を取りに行くと、アリスと出くわした。。どうやら散歩をしていたらしく、上海が肩の上辺りをふわふわと浮いている。

「またパチュリーに頼まれたの?貴方も真面目よね」

「真面目というか、本を貸してもらったり教えてもらったりしてるんだし、当たり前なんじゃないかな…」

「そこが真面目なのよ。魔理沙を見てごらんなさい」

「流石にあれは例外じゃないか…?」

まあ、真面目だと言われれば悪い気はしないので、適当に切り上げておく。
魔理沙が実は努力家だという話はちょくちょく耳にするし、実際その通りなのだろうけれど、僕からすると紅魔館に突撃してきて嵐のように去っていくイメージが強烈すぎる。
もっと具体的に言うと、館に超スピードで突っ込んで門番張り倒して本を勝手に持っていく(常習犯)、である。東風谷ではないが、常識にとらわれないにも程がある。良識にもとらわれていない。

「あれだけ好き勝手やって、本当にヤバい類いの本は絶対に持っていかない辺り強運というかなんというか」

「そうね。あの子、霊夢には及ばないけれど勘が働くのよ」

「霊夢と比べちゃいけないって。…そう考えると、やっぱり幻想郷って型破りな人ばっかりだよな」

「そうね」

「まともな人が少ないもんなあ…」

「…それは貴方がそういう人とばかり関わっているからよ。人里は一般人が大勢いるじゃない」

「そうなんだけど…なんというか、皆アクが強くて」

僕を蓬莱人にしたり、血を吸ったり、スキマに落としたり、何かあれば核エネルギーを解き放とうとしたり…まあ人外ばかりだが、とにかく人生観が変わったりするような出来事が多すぎるのだ。

「…っと、そろそろ戻らないと」

「そう言えば貴方、パチュリーに頼まれ事をしてたんだったわね」

「話してるうちに欲しいものも集まったしね。じゃあ、また」

「ええ、またね」

ひらひらと手を振って、アリスと別れる。
…当たり前のように飛んでるけど、これもこっち来てからだよなぁ…外の魔法使い(本物)にもそんなに飛べる人はいないみたいだし、やっぱり環境が違うといろいろ変化するんだなぁ。



「お帰りなさいませ、良也様。図書館に外の人間がいますので、顔を見てみてはいかがでしょうか」

「え、そうなんですか?」

「ええ。何やら魔法使いの素養があるらしいのですが…」

「へー…」

とりあえず咲夜さんにお礼を言って、図書館に向かう。どのみち、集めた材料をパチュリーに届けねばならんのだ。

「戻ったぞー、パチュリー」

「あら、遅かったわね。…ああ、彼が今話していた、土樹良也よ」

どうやら俺の話をしていたらしい。
学生服を着ているし…高校生くらいだろうか。彼もこちらを振り向く。

「ああ、あっちとこっちを行き来してる、とか言う…俺から見れば、先輩みたいなものですかね」

「まぁ、君よりここの先輩っていえばそうなんだけど、僕もまだ新参者だよ。はいパチュリー、これ」

「ええ、ご苦労様。……まあ、ここまで馴染んでおいて今更新参者というのも違和感があるわね」

確かに自分でもそう思わなくは無いが、だとしても大体皆僕より遥かに年上…

めっちゃ睨まれた。

「…今、失礼なことを考えたでしょう」

「ははは、ソンナコトハナイヨ?」

「………まあいいわ。とりあえず、彼の能力は…そうね。『主に雷の魔法を使う程度の能力』といったところかしら」

「へえ、雷」

随分と派手な能力である。僕の能力とは大違いだ。

「まあ、今はこの程度なんですけどね…ふんっ…と」

そう言いながら、親指と人差し指の間を軽く開いて目の前に持ち上げ、気合いを入れる。そうすると、二本の指の間でパチッ、と音が鳴った。

「まあ、能力から見ても素質はあるみたいだし、そのうちもっと強力になるでしょうね…そう言えば、まだ名前を聞いてないわね。何て言うの?」

「あっ、そうでしたね…鳴宮、荊です」

「鳴宮くん、か」

「はい。ええと…良也さんの能力なら、直ぐにここ、幻想郷?から出られると聞いたのですが」

「ん?そうだけど…それって霊夢の仕事じゃ」

「その通りだけれど、貴方がここにいるのだからそちらの方が楽でしょう。何だかんだこちら側にもう一度来るときも貴方の世話になるでしょうし」

「…えっ?」

もう一度来るとき?どういうことだろうか…わざわざこちらに来る必要もないと思うけれど…ああ、そうか。

「パチュリーに魔法を教わる、ってことか?」

「まぁ、そうね。彼がどうしてもと頼み込んできたから、仕方なく」

「お手数をお掛けして、申し訳ないです」

「あー、えっと…まぁ、僕の都合がいいときなら」

「それで構いません。ありがとうございます」

とりあえず、スキマと酔っぱらいには注意するように言っておいた。幻想郷において、出会ったらアウトな程の危険人物といえば、人を食べる妖怪(流石にこれに関してはパチュリーがすでに注意していた)と、上の二つくらいだと思う。
まあ、こんな感じで、外と幻想郷を行き来する仲間ができた。



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