!注意!
・この物語はフィクションであり、現実の一切合切と全く関係ありません。
・この話は、東方奇縁譚の二次創作であります。そういったものが嫌いな方は回れ右でお願いします。
・この物語の良也くんは、熱血主人公属性を併せ持っています。強い良也くんなんか良也くんじゃないと言う方にもオススメはしません。いわゆる「ぼくのかんがえたさいきょうのりょうや」が出現します。

・作者の妄想がふんだんに盛り込まれております。奇縁譚・原作の設定・キャラが崩壊している可能性が高いです。

以上のことを理解した上で、心にまだ余裕がある方はそのまま下へ

嫌な予感がした方は素直にブラウザバックを推奨します。

良いのですか?良いのですね?良いのでしたならこのまま進んで下さい。
楽しんでいただけたなら幸いです。

↓この先本文↓











僕はとある魔法使いの弟子”見習い”だった
僕の師匠である彼女、パチュリー・ノーレッジは、僕の知る限り世界最高の魔法使いだ
彼女に弟子入りして幾星霜、初めは軽い気持ちで彼女に師事していた。

僕には魔法の才能がなかった・・・・・・いや、正確には魔法使いとして大成出来る見込みが無かった。

僕の才能は、よく言えば万能型、悪く言えば器用貧乏だ。
得意科目の一点突破が基本である魔法使いにとって、得意科目の無いことは、才能がないようなものだ。
師事を始めて幾ばくか経てば、それがどれほど中途半端なことなのか、否応なく思い知らされた。
いくら僕が、少年誌的主人公のような人間では無いとはいえ、男としての矜持くらいはある。
逃げるしか能がない、戦っても勝てない、臆病者、卑怯者、表立って言っては来ないが、あからさまにそんな気持ちが透けて見えるような奴等も居た。
悔しかった、どれだけ誤魔化そうとも、悔しかったんだ。

僕だって勝ちたい、自分が主人公だなんて思える歳でもないが、男として産まれたからには、闘って勝ちたい。
ああ、僕もなんだかんだ言って、土樹家の人間なんだ、武神、土樹灯也の孫なんだ。
負けたくない・・・・・・強くなりたい・・・・・・そして・・・・・・勝ちたい!

そんな時、僕の前に居たのが、師匠であるパチュリーだ。

彼女は僕に強くなるための道を示してくれた。

その道を進む手助けをしてくれた。

目指すべき目標として立ちはだかってくれた。

いつしか僕は、心底彼女に憧れるようになった。

知れば知るほど底の知れない魔道において、誰よりも深く、誰よりも強くある彼女に、憧れるなと言う方が無理だったのかもしれないが。

そうして僕は、彼女に近づきたいと思ったんだ。

それからだ、僕が本気で修行に打ち込みだしたのは。

僕の不老不死の人生の、ほんとうの意味での最初の目標、それは・・・・・・

彼女<<七曜の魔女>>の”弟子”になることだった!!

 ***

「準備が出来たのね」

彼女はそう言いながら魔導書を構える
その傍らに、小悪魔さんがよりそって剣を構えている

「ああ、やっと準備が整ったよ」

僕もそう言いながら、腰の鞘から草薙の剣を抜く。
この日のためにありとあらゆる準備をしてきた。

「じゃぁ、念の為にもう一度ルールを説明するはね」

そう言いながらパチュリーは僕の方をみる

「これからあなたの弟子”見習い”卒業試験を始めるわ。
ルールは単純、私と小悪魔に、一発ずつ”有効打”を叩きこむこと。
何時ぞやの小悪魔の時みたく、お湯を引っ掛けたくらいじゃ有効打とは言わないからね。
その間、貴方の被弾数は無制限よ、どれだけ被弾しようとも、どれだけ死のうとも、貴方が力尽きて完全に沈黙するか、有効打を入れるまで試験は続くわ、ただし、消し炭になって一定時間意識を喪失しても負けよ。
武器・道具・魔術・体術・あらゆる戦闘技能の使用は許可されるわ、本気で殺すぐらいの気持ちでかかってきなさい。
私たちは身代わり護符と緊急回避用の転移護符を複数装備しているからどれだけ強力な攻撃を食らってもそれが肩代わりしてくれるわ。一撃の判定も護符の増減で調べるから、思いっきり攻撃しなさい」

思わず武者震いが走る、迫る戦いに血が滾る。

「さぁ、見せてみなさい良也、貴方がいままで身に着けた魔術を、貴方が今まで刻んできた魔道を、師匠である私を驚かせるほどの力を!」

パチュリーと僕の体から魔力が溢れる

「全力でかかってきなさい!良也!!」

戦いの火蓋が切って落とされた・・・・・・!!

***

轟!と轟音を立てながら無数の弾幕が襲いかかってくる。
僕は草薙の剣を振るって被弾コースの弾幕を切り払った。

しかし、間髪をいれず、車軸を流すような弾幕が僕を押し潰さんと遅いかかってくる
勝利への道の第一段階、あるスペルの発現まで生き残ること。
そのためにこの弾幕の暴風雨をのりこえなくてはならない。
能力を全開にして、加速速度を5倍に、いつでも防壁を張れるように、空間を捻じ曲げられるようにして、弾幕を切り払い続ける。
魔力をケチって勝てる相手ではない。

「充填『チャージ』!」

まず一枚目、残り四枚

弾幕を切り払う合間を縫って、空気中のマナを全力で吸収する。

大魔法使いから放たれる無尽蔵の魔力を全力で吸収する。パチュリーに僕が勝つために編み出した秘策の一つだ。

***

『いいですか良也さん、攻撃というものは何も自分の力だけでやる必要は無いんです。』

『大気中には無限の”気”が漂っています。魔力や霊力と言ってもいいですがね。』

『私自身の霊力というものはそこまで多くはないのです、それでもあれだけの弾幕を放ち、戦うことが出来るのは、その大気中の”気”を体内に取り込んで利用しているからというのも大きな理由の一つです。』

『もちろんなんのリスクが無いというわけではありません、空気中の”気”はあらゆる雑気の塊ですので、無造作に取り込めば反発しあってミンチになりかねません。』

『それを防ぐために、自らの気や魔力でそれらを制御し、ろ過し、自らが使える状態に整える必要があります。』

『私は”気を使う程度の能力”と長年の研鑽の末にこの秘技にたどり着きました。』

『この技を極めるのは並大抵の努力では足りませんが、もし極めることが出来れば、ただでさえ莫大な魔力のキャパシティをもう数段階、爆発的に引き上げることが可能です。』

『良也さんがパチュリー様に勝ちたいなら、パチュリー様に真似できない分野のアドバンテージを持つのも手ですよ』

***

「充填『チャージ』!」

二枚目、残り三枚

命を削って、更に莫大な魔力を生み出す。

その魔力を使い、更に空気中の魔力を吸収する。

***

『いいか良也、私達蓬莱人の絶対的な優位性はその”不死性”だ』

『当たり前だと思うだろうが、恐らくこれは良也の想像以上の利点を持っている』

『通常、禁術と言われる術は、その多くが多大なリスクを持っている』

『その最たるものが”命を削る術”だ』

『私達蓬莱人は、不死であるが故に、禁術の禁術たる所以を無効化できるんだ』

『しかし、いくら蓬莱人とは言え、いずれそのツケは払わなくちゃならない、この命を削る禁術の場合は、あくまで”魔力の前借り”扱いになる、使いすぎれば何日にもわたって魔力不足に苦しむことになるし、蓬莱薬の効果も一時的に減退する、かなり辛いが、負けられない戦いの最中に、命を好きなだけ削れるというのは、尋常ではない利益を生む』

『”死力を尽くす”とよく言うが、私達蓬莱人は、死力を”出し尽くしたその先”へ踏み込めるんだ』

『いくら蓬莱人とはいえ、元人間の私が幻想郷の大妖怪達と互角にやりあえる理由の一つがコレだ』

『良也、お前は蓬莱人になる前からそこいらの人間とは比べ物にならないほどの霊力を持っていた。そんなお前がこの技術を身につければ、化けるぞ』

『これからお前に教えるのはその初歩、”命を削って霊力に変換する術だ”』

***

「充填『チャージ』!」

三枚目、残り二枚

ぞくっと、背筋に悪寒が走る、とっさに”鞘”に魔力を込めて背後の防御に回す

ガキンっ!!!

なんとか小悪魔さんの魔力の篭った剣を防ぐことに成功した。

ちらりと見れば、小悪魔さんの驚愕した顔が見える。

まさか防がれるとは思わなかったのだろう。

反撃に弾幕を放てば、慌てたように小悪魔さんは転移して消えた。

***

『いいですか良也さん、二刀流の最大の力とはなんだと思いますか?』

『それは、手数の多さでも、得物の数でもありません』

『二刀流の最大の力は”生き残ること”です』

『かの宮本武蔵も五輪書において二刀流の利点を述べています』

『武蔵は徹底したリアリストです。彼の人の戦略は徹頭徹尾”生き残ること”を主眼に置いています』

『生涯不敗を貫いた彼の人は、卑怯と罵られようが、臆病者と誹られようが、絶対にこの主軸をずらしませんでした。そんな彼の人がたどり着いた境地を認めた五輪書において、武蔵は二刀流を推奨しています』

『彼の人の剣術は、百戦して百回生き残るための剣術。その奥義こそ二刀流を極めることなのです』

『二刀の防御力は特に多対一の戦闘において優位性を発揮します』

『攻めながらも片方の刀は常に防御に回せますし、防ぎきれないなら二刀で防御すればいいのです』

『敵の攻撃を確実に防げば、それだけチャンスも巡ってきます』

『攻撃は最大の防御なりというのは、しっかりと防御ができる人間しか言ってはいけないのです、普通の人間は、死ねばそこまでなのですから』

『私がこれから良也さんに教えるのは、”生き残るための剣術”です』

『良也さんの草薙の剣の鞘を鉄ごしらえにしてもらったのは、擬似的に二刀流の防御術を学ばせるためです』

『私の分身からの連携連撃を防ぎきれるほど熟練すれば、どんな状況でも慌てずに防御できるようになりますよ』

 ***

「充填『チャージ』!」

四枚目、あと、一枚

直後、特大の魔力弾がパチュリーから放たれる。これは、対草薙の剣用にパチュリーが生み出した秘技、『バンカークラスター弾幕』だ。

無数の弾幕を、巨大な弾幕で包んで放ち、敵に触れた瞬間、クラスター爆弾の如く、外側の弾幕が破れ、内蔵された弾幕が相手に襲いかかってくる。

草薙の剣は、打ち払った弾幕しか消せないという弱点を持つ、その弱点を的確に突く為には、小霊弾の波状攻撃が最も効果的だ。

パチュリーはその弱点を突くためにこの弾幕を生み出したのだ。

普通に切れば中の小霊弾にやられる。かといって避けられるほど遅くも小さくもない上に、ある程度の自動追尾まで付与されているという鬼畜仕様だ。

この弾幕を乗り切る方法はただ一つ。

強力な一撃で弾幕そのものを消し飛ばす事だ!

腕輪に嵌めた宝石から魔力を限界まで引き出し、草薙の剣に全力で込める。

「ウオオオオオオォォォォォォオオォォォッッッッ!!!!!!!!」

獣のような咆哮を上げ、最大まで高めた霊力を斬撃とともに解放する。

パチュリーの魔法弾と僕の斬撃が衝突した瞬間、凄まじい轟音が館中に響いた。

体中煤だらけだが、僕はなんとかこれを凌いたようだ。

流石のパチュリーもこれは予想外だったようで、珍しく目を見開いていた。

 ***

『強くなりたいだって?う〜ん、そうだね、私から良也へできる助言は二つある』

『一つ目だけどね、良也、こんな話を知ってるかい?』

『私達神はね、”分霊”といって同時に複数存在できるんだ』

『これを使って、あちこちに分社を立てることで、効率良く信仰を集めることが出来るんだ』

『これは人間にも応用が効くんだよ』

『宝石でも人形でも何でもいい、自分の霊力を分けて封じ込める事で、擬似的に”分霊”を創りだすんだ』

『通常、神が自分自身を信仰するなんてことはありえん、でも人間は別だよ』

『自分自身の分霊に霊力を捧げて擬似的な”信仰”を集め分霊に力を蓄えるんだ』

『そうして力を外部に蓄えることで、必要な時にその分霊を吸収して霊力を回復するんだ』

『分霊自体はもともと自分自身の魔力でできてるからね、なんの抵抗もなく吸収できるはずさね』

『これを複数体用意すれば、理論上、自分数人分の霊力を用意することが出来るはずさね』

『次に2つ目』

『良也、あんたは弱い弱いとよく言われるが、それにはいくつか理由がある』

『その最たるものが、”一撃の弱さ”による”決定打の欠如”だ』

『あんたは人間の中ではトップクラスの霊力をもってる、でもそれを引っ張りだすための”蛇口”が小さいのさ』

『じゃぁどうすればいいかだって?かんたんさ、霊力の抽出口を”持ってくる”んだよ』

『あんたはレプリカと言えどかの神器”草薙の剣”を持ってるんだ、霊力を引っ張りだす”触媒”としてコレほど最適なものはないよ』

『私がまず教えるのは、霊力を限界まで”引き出して””ぶつける”技術だ』

『恐ろしく単純だが、だからこそ、多量の霊力をもってすれば、強力無比な”一撃”を繰り出すことが出来る、基本にして最強の秘技だ』

『これに先程の”擬似分霊”の技術を合わせれば、瞬間的に自らのキャパシティの限界を超える霊力を引き出してぶつけることが出来る』

『コレさえ出来れば、もう決め手が無いなんて言わせないよ』

『さぁ、目標は飛んでくるオンバシラを叩き折ることだ、良也行くよ!』

 ***

〜推奨BGM Rebirth the Edge 〜

「充填『チャージ』!」

五枚目、チャージ完了!第一段階突破!

「現界『World is mine』!発動!」

瞬間、図書館にこっそり隠した五芒星魔方陣の起点に魔力が集まり、魔方陣が発動する

本来なら魔力の篭った起点を置きたかったが、そんな事したらパチュリーに一発でバレる。

だから、数年の歳月をかけて、本の一冊一冊に小さな陣の切れ端を仕込み、図書館全体を魔方陣の効果範囲に入れたんだ。起点に在る陣も、魔力なんか全く篭っていないものにした。流石のパチュリーも、魔力なんか全くない、しかも無数の本に少しずつ混ぜた紙片に気づけず、気づいてもただの紙切れにしか見えず、僕の陣の完成を防げなかった。

陣の存在に気付けるのは、僕が陣に魔力をチャージしてからだ。

いかにパチュリーと言えど、戦闘中に図書館全体に走る魔方陣を破壊するなど不可能だ。

そして、僕の思惑はまんまと成功し、僕の秘術を発動することに成功した。

僕がパチュリーに勝つにはこの陣の存在は絶対不可欠だ。

その陣の効果に気付いたパチュリーが驚愕とともに声を上げる

「これは・・・・・・良也の世界が・・・・・・広がっていく・・・・・・!!!!」

そう、この陣の効果は僕の”世界”の拡大と強化だ。

陣内部の全てを、普段の僕の世界と同程度の支配下に置き、本来の支配圏内の能力を数倍に引き上げる効果を持つ。

僕の能力を限界まで引き出すための魔方陣だ。

圧倒的に力量差のあるパチュリーに対して、僕が互角に戦うには、能力を限界まで引っ張り出すしかない。

思考分割や高速詠唱、詠唱破棄に尋常ではない魔力総量。

弾幕ごっこではない本気の戦闘において、パチュリーは無数の魔法を高速で同時展開して来る上に、いざとなれば魔力量に物を言わせて詠唱破棄で魔法を雪崩のごとく発生させ、魔力の濁流で押し流そうとしてくる。

まともに戦えば一瞬で消し飛ばされる。

僕がパチュリーの並列+高速魔法の速射を乗り越えるためには、能力で自身を加速させるしか無い。
現在の僕は、大体10倍加速まで時間を加速させている。

更に、この図書館は僕の世界の支配下にある。

物理・魔法法則をグチャグチャにかき乱してやれば、いかにパチュリーと言えど、魔法の展開に苦労するだろう。

この速度を生かして、パチュリーを落とせれば・・・・・・!?

「やるじゃない良也、でもね、この程度でやられる私じゃないわよ!」

瞬間、パチュリーからおびただしい魔力が溢れ、パチュリーの周囲の世界が逆に塗りつぶされた!くそ、やはりこれだけじゃ駄目か・・・・・・

しかし、常に僕の世界を塗りつぶすために余計な魔力を使わざるを得ないし、分割された思考の一部はそのために使われるだおろうから、パチュリーが不利であるのは間違いない。

最悪ではないが、善くもないな、やむを得ない、当初の予定通り作戦の第二段階に入るしかないか。

僕は、命を更に削って霊力を創りだすと、全身に漲らせた。

将を射んと欲すればまず馬を射よ、狙いは小悪魔さんだ。

一撃だ、一撃で仕留めないと僕の狙いがバレる。

タイミングは一瞬、小悪魔さんが空間転移を使用した瞬間・・・・・・今だ!

僕の世界の中では、すべての力の流れが手に取るようにわかる。

そして、ある程度なら、その流れに干渉できる!

小悪魔さんの転移先を強制的にズラして、僕自身もそこへ転移する。

「もらったァ!!!」
「キャァ!?」

魔力を限界まで込めた魔法弾を小悪魔さんに叩きつける。

瞬間、小悪魔さんの身代わり護符と逃走護符が発動し、彼女の姿が掻き消え、図書館の休憩エリアにあらわれた。彼女の護符が発動したということは、有効打判定に成功したということだ。

つまり、試験の内容の半分を達成したことになる。

残るは、パチュリー一人!!!

「驚いたわ良也、まさか小悪魔を落とすなんてね」

そう言いながらパチュリーは魔力を更に解放する。

「今のは転移魔法への割り込みね?そんな高等技術をモノにするなんて、師匠として鼻が高いわ、でも、ペース配分を誤ったようね、今のは相当量の魔力を消費するはずよ」

そうだ、いかに命を削って魔力を生み出せるとはいえ、限界はある。一定以上この禁術を使用すると、脳にリミットが掛かるんだ。いくらなんでも副作用が強すぎると脳が止めようとしてくる。

「残念だけどこれで止めよ、良也」

そう言いながらパチュリーは僕に向けて魔法の雪崩を放った。

***

『蓬莱人の限界をこえる方法?有るにはあるけど、オススメはしないわよ』

『いかに蓬莱人とはいえ、体自体は基本的に人間と同じ、無理をすればそのぶん何処かにしわ寄せが来るわ』

『体が動かなくなるのは、それ以上すれば何処かが壊れるかもしれないと肉体が判断するからよ、その危険信号を無視するということは、それ相応の代償が必要よ』

『上手く行っても地獄のような苦しみが待ってるわ、それでもやるの?』

『・・・・・・そこまで覚悟が硬いなら、コレ以上止めないわ』

『いい・・・・・・?この薬はね、国士無双の薬の強化版でね、肉体のありとあらゆるタガを外せるわ』

『この薬の使用条件は、体が限界を迎えた時に使うこと。そうすれば、限界のストッパーが外れて、限界の更に先、”限外”へ至れるわ』

『身体能力、魔力量、判断能力、ありとあらゆる能力が爆発的に上昇する、最強・最悪の超々大劇薬よ』

『こいつを飲んだ後に、あとで教えるスペルを発動しなさい』

『そうすれば、即座に薬の効果が現れる上に、蓬莱薬を意図的に暴走させて前人未到の再生能力を引き出せるわ』

『医者としてはこんな危険物飲ませたくはないわ』

『どうなっても保証できないから、できれば貴方が飲まないことを祈ってるわね』

***

目の前に弾幕が迫る中、僕は永琳さんに渡された丸薬を噛み砕き、飲み干す。

そして、懐から一枚のスペルカードを引き出して、発動した。

「限外『万夫不当の境地』」

瞬間、血液が沸騰する。

命を削るなんて次元ではない。いままで感じたことがないほど、血液が熱くなる。

命を砕き、燃やし、体中にありえないほどのエネルギーがみなぎる。

空っぽだった筈の力が、充満し、溢れだす。

今なら何でもできそうだ。

目の前に迫る弾幕を見つめる。

10倍に引き伸ばされた時間の中だと、酷くゆっくりに見える。

この壁の向こう側に、パチュリーが居る。

この壁を突破すれば、パチュリーに手が届く。

行ける、行けるぞ、今ならば行ける!!!

右手の草薙の剣に魔力を込め、真正面から弾幕へ向かう。

「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

弾幕を一撃で切り裂き、消し飛ばし、弾き飛ばす。

防ぎきれない弾幕が、僕を襲う

足が消し飛び、腕がもげ、心臓が抉られる。

即死だ。しかし、死ぬと同時に信じられない速度で蘇生する。

消し飛んだ足が生え、もげた腕が繋がり、抉られた心臓が再生する。

ただ前に、この暴風の中心に、僕の理想に、全力で突き進む。

体が消滅するたびに再生する。肉体が死亡しても即座に蘇生する。

もう何度死んだか解らない、少なくとも2ケタには達したと思う。

それでも止まれない、内から溢れ出る力を剣に込め、前に進む。

僕の弱い心が、もう諦めたいと囁くが、それでも止まれない。

残った全ての分霊を吸収し、最後まで命を砕き、全てが失われる寸前まできた。

止まるな……!進むんだ……!ただ前に行け……!

僕の中から全ての力が消え失せようとした、まさにその時、僕は魔法の暴風を切り抜け、パチュリーの眼前にたどり着いた。

パチュリーが、今まで見たことがないほど驚愕し、目を見開いていた。

もう再生能力も発動しない、右目も見えない、左手は有るのかも解らない。

だが、右手の剣は、まだ握っている!

僕は残った全てを剣に込め、全身全霊をもってパチュリーに向けて振るった。

「届けえええぇぇえぇえぇえぇ!!!!!!」

僕の剣と、パチュリーの最後の魔法が激突した瞬間、凄まじい轟音と共に、僕の意識は綺麗に消え去った。

 ***

「・・・・・・知らない天井だ」
「知ってるでしょうが」

僕のボケに即座に永琳が突っ込んでくる

「あなた・・・・・・あれだけ危ないと言ったのに本当に使ったのね・・・・・・」

永琳は呆れたといった感じにため息を吐くとコチラを向いた。

「今回はシャレじゃなくて本当に危なかったわ、下手すれば精神が崩壊して心が”死ぬ”かもしれないくらいね」

「そういう割には、意識がはっきりしているな」

「当たり前よ、貴方が下手に意識を戻せば激痛で精神崩壊しかねなかったから、目覚め無いよう2ヶ月仮死状態にして、その間に肉体の修復と副作用の軽減に全力であたってたんだから」

ふむ・・・・・・なるほど、僕が寝ている間に治療をしておいてくれたのか・・・・・・って、今なんてった?

「2ヶ月も眠ってたの!?」

「正確には三ヶ月ね、治療が終わった後も失った力を回復するために1ヶ月も目を覚まさなかったんだからね、もう目覚めないんじゃないかと半分諦めかけてたわ、一体貴方、どれだけ先の分まで魔力を引き出したのよ」

そう言いながら永琳はジト目でこちらを睨んでくる。うう、だって仕方ないじゃないか。
数年がかりであれだけの魔方陣を用意したのに、負けたくなかったんだから。

・・・・・・そういえば結局勝負はどうなったんだろうか?

「そういえば永琳さん、勝負の結果はどうなったのか知っていますか?」
「知らないわ」

医者としては頭に来ているのだろう、取り付く島もない

「そういう事は、直接師匠に聞きなさい」

永琳さんがそういった時に、ガラリと病室の扉が開いた。

「失礼します永琳先生、良也の様子はどうで・・・・・・」

そう言いながら部屋に入ってきたのは、僕の師匠のパチュリーだった。

パチュリーはぼくがベッドから上半身を起こしているのを見て、目を丸くしている。

「や、パチュリーおはよう」

僕がそう言いながら軽く手を振ると、パチュリーはツカツカとコチラに歩み寄ってきて・・・・・・

「この馬鹿弟子が!」
「痛ァっ!?」

ゴチン、と魔導書のカドでぶん殴られた・・・・・・どっから出したその本。

「私は確かに驚かせてみなさいとは言ったけど、心配させろとは言っていない!!!
自分の限界を遥かに超える力を使うなんて何を考えてるの!馬鹿なの!?死ぬの!?
やはり馬鹿なのね!この馬鹿弟子!!」

マシンガンのごとく罵倒され、思わず目を白黒させてしまった。

「ちょ!?馬鹿馬鹿言いすぎじゃないか!?」

「いいえ!言いすぎじゃないわ!このたわけうつけ大間抜けの大馬鹿者が!」

あんまりと云えばあんまりないい草に思わず反論しようとして、パチュリーの様子に言葉を失う

「ひっぐ・・・・・・本当に心配したのよ・・・・・・ひっぐ、もう目を覚まさないかと・・・・・・うぐ・・・・・・」

パチュリーは泣きながら説教してくる。長年パチュリーの弟子をやっているが、パチュリーが泣くところなんて初めて見た。

「彼女、あれから毎日見舞いに来ていたのよ。『良也がこうなったのは師匠である私の監督不行き届きのせいだ』って言ってね」

永琳さんはそう言いながらカルテをまとめ、すっと立ち上がる

「積もる話も有るでしょう、私は執務室に行くから、何かあったら呼んで頂戴」

そういって永琳さんは病室を出ていった。

***

「パチュリー・・・・・・心配させてごめん・・・・・・」

パチュリーは僕のベッドの側の椅子に座っている。だいぶ落ち着いたのか、まだ目は赤いものの、涙は止まっている。

「はぁ・・・・・・反省してくれたならもういいわ・・・・・・二度と身の丈に合わない力は使わないで・・・・・・特にあの最後に使った薬・・・・・・あれは本当に洒落にならないわ・・・・・・」

パチュリーはジト目で睨みながらため息をつき、そういった。

「わかった、使わないよ」
「約束よ」
「わかったよ」

そういって二三言葉を交わした後、(僕にとっての)本題に入る

「で、結局勝負はどうなったんだい?」

僕がそう聞くと、パチュリーはおもむろに懐から一体の人形を取り出す。
その人形は、袈裟懸けに切り裂かれていた。

「貴方の勝ちよ、良也、貴方の一撃はしっかりと有効打判定に成功したわ」

パチュリーが微笑みながらそういった。

僕は叫びだしそうになるのを抑え、続きの言葉を促す

「じゃ、じゃぁ僕はやっとパチュリーの・・・・・・」
「ええ、弟子”見習い”は無事(?)卒業よ、今度から名乗るときはこう言いなさい」

そういってパチュリーは一拍置き、僕の長年の悲願だった言葉を続けた。

「七曜の魔女の”弟子”、土樹良也とね」




あとがき

皆様はじめまして、私はジャムといいます。
掲示板に一度だけ書き込みしたのでもしかしたら知っている方もいるかもしれませんね。

さて、今回の話についてですが、奇縁譚外伝における「とある魔術の禁書目録編」において、良也くんが上条さんに
『この間、師匠から見習い卒業の太鼓判を押してもらえたところ』
『卒業試験と称した小悪魔さん+パチュリーとのガチ勝負は、死亡回数二桁をこえたなぁ・・・・・・』
と言っていた事を元ネタにしています。

こう言っては何ですが、奇縁譚本編中の力量では、上記の内容は多分不可能だと思われたので、良也くんが”真面目に”修行するルートを辿ると、あの話に繋がるのだろうと解釈し、そこから内容を膨らませていきました。

>卒業試験と称した小悪魔さん+パチュリーとのガチ勝負
 →本編では、小悪魔に一撃を当てることが試験内容で、お湯をかけた程度では弟子と認められないと言っていたので、ガチ勝負の内容は、弾幕ごっこのルールではない本気の殺し合いで、良也が二人にきちんと一撃を入れることとしました。後、良也くんの性格から本気では斬りかかりにくいだろうと思い、今話のような「身代わり護符」と「緊急回避護符」を複数枚もつという形にしました。

>死亡回数二桁をこえたなぁ・・・・・・
 →一度の戦闘でこえたのか、複数回のチャレンジで越えたのかは明言されなかったので、どちらにするか迷ったのですが、一度に越えたほうが盛り上がると思い、蓬莱人の不死性のゴリ押しという形で二桁を超えさせる事にしました。その為に、「意識を失わない様に何度も死ぬ」必要性が生まれ、今話のような、薬の能力を暴走させる戦略を取ることとなりました。

上記の内容を前提にして、いかに良也くんが試験を突破するかを考え、純粋にあり得る可能性から強化していく事にしました。

●地力の強化
まず思いついたのは、長年の修行における自力の強化です。
本編中では、良也くんは「博麗の巫女の3割の霊力」と言われていたとおもったので、今話では、「博麗の巫女の5割」まで霊力が増加したものとしました。
後は、能力における時間加速は最大3倍だったのも、5倍まで加速できるくらい成長したと判断しました。

●能力の強化
次に思いついたのが、能力の強化です。本編中で、良也くんの世界は、長くいる場所に自然と形成されるような描写をされていたので、能力範囲の拡大は可能であると判断しました。ただ、広げただけではそこまで強化されないと思ったので、魔力がたっぷり篭った魔方陣を展開して、その魔力で、陣内を強制的に良也の世界にして、且つ、良也自身がもつ周囲数メートルの世界は更に強化される、ということにしました。具体的には、5倍×2倍で10倍の加速が出来るくらいの強化です。
あとは、自分の世界なんだから、ある程度法則をねじ曲げることは出来ると判断し、パチュリーの魔法を阻害する効果も持たせました。

●魔力の増加+不死性の活用
前項における魔方陣を展開するためには尋常ではない魔力量が必要であり、事前準備は必須、でも魔力の篭った陣を図書館に用意なんてしたら一発でパチュリーにバレるだろうと思い、魔力の全くない魔方陣という器だけを用意し、戦闘中にそこに魔力を注ぐという形になりました。しかし、そんな大規模魔法を展開したら、良也君の魔力が底をついてしまう。ですので、自力以外の力を用意することとしました。
まず、ファンタジーものに有りがちな、「周囲のマナを吸収して使う」技術の獲得です。
これは、パチュリーとの戦闘なので、図書館は魔力が充満しているだろうと思い、これを吸収することとしました。技術は、気功を使う美鈴から周囲の気を取り込む方法を学ぶこととしました。美鈴ほど習熟出来るわけわ無いので、少量の魔力で、多量の魔力を取り込めるようになると改編。

次に、これまたファンタジーにありがちな、「命を削る魔法」です。不死性を持っているのだから、この技術を持たない理由がないと思うのです。この技術は、蓬莱人の先輩である妹紅から学ぶことにしました。内容は命を削ってその分魔力を生み出せることにし、ノーリスクではチートすぎるので、キャパを超える魔力を生み出すには、魔力を”前借り”することとして、前借りの日数が増えれば増えるほど前借りの効率が下がり、かつ、一定以上の前借りは蓬莱人でも危険でありストッパーがかかるとしました。

次に、「魔力を何処かに貯めておく技術」です。これは、神々の分霊を生かして、擬似的に自らの分身を作り、それを吸収する形にしました。現実世界でも、石や人形に念を込めて分身を作るまじないがあるので、それを発展させました。描写不足ですが、この話の良也くんは、ブレスレットや指輪、首飾り等で、体のあちこちに分霊を用意しています。この技術は神である神奈子様に教わりました。

●戦闘技術の向上
良也くんは、実家があの武闘派一家なので、それなり以上に武道の経験が有るはずです。
ですので、大抵の戦闘技術の基礎はしっかり固まっていると仮定して、体捌きを美鈴に、剣術を妖夢に師事しました。特に妖夢には二刀流の防御術を覚えさせる事で、良也の生存率を飛躍的に高める役割を与えました。良也くんは戦時に攻撃と防御が上手く同時に出来ないとぼやいていたはずなので、妖夢との修行でそこを改善してもらいました。

●武装を生かす+必殺技を作る
大分戦う準備が出来たところで、良也くんが戦闘に勝てない大きな理由を克服します。
古来より、「戦争は相手の陣地を占領するまで終わらない」と言われるように、守りばかりでは戦闘に”勝てない”です。勝つためには相手にきちんと攻撃しなければなりません。良也くんは魔力自体はかなり多いのですが、多い魔力に比べ、出力が残念です。なので、魔力を引っ張りだす為の触媒として、神器である草薙の剣を用いる事でその問題を解消し、引っ張りだした魔力を、そのまま剣に込めて叩きつける事で、攻撃力の不足を補うことにしました。ここでも神奈子様に技術を学んでいます。

ここまで強化すれば、あとは戦闘の定石、相手の弱点を突くだけです。
パチュリーも小悪魔も肉弾戦は得意ではないでしょうから、不意をついて接近戦に持ち込んでしまえば勝ちです。
一度目は、魔方陣展開で広がった世界を利用し、空間転移を使用した小悪魔を補足、転移位置を自分に有利な位置にずらし、そこへ自分も飛んで不意打ちです。
二度目は、力を使い切ったと思わせておいて禁薬で回復、止めをさそうとしたパチュリーの攻撃を正面から打ち破る事で、二重に意表をつく事に成功しました。

念の為に言っておくと、今回良也は勝ちましたが、それはあくまでルールに則って一撃を入れただけで、ルール無用の勝負なら、パチュリー単騎に近接戦闘に持ち込んでも勝てません。ダメージを別の対象に流されますし、圧倒的魔力で蹂躙されます。
そのうえ、良也の大魔方陣は数年がかりでやっとバレずに仕込めるレベルの規模なので、初見の敵には使えませんし、種が割れた以上もうパチュリーにも使えません。良也が無理してでも勝ちたかった理由の一つがこれです。

●まとめ
良也くんはやればできる子なんです。本気出して修行すればかなり強くなると思うのです。本人の性格上、そこまで行くには外伝ルートか、IFルートのパチュリーエンドに持ち込むくらいしか、そこまで行くことはないかと思われますが・・・・・・
ですので、今回の外伝IF×IFルートでは、良也の性格をある程度改変し、熱血属性と戦闘好き属性をある程度ですが加えています。勝手にキャラ改変して申し訳ないorz
見る人が見れば矛盾だらけだと思いますが、許して頂ければ幸いです。

あ、言い忘れましたがパチュリーも少しいじってます。
パラメータから【感情薄い】を無くして、【献身的】と【義理堅い】を足した感じです。
サバサバした感じのパチュリーが好きな人ごめんなさい。でも乙女な感じのパチュリーも良いと思いませんか?

最後にここまで呼んで下さった皆様方と、作者様である久遠天鈴様に最大限の感謝を。
有難う御座います。



PS 感想頂ければ感激で涙がでます。



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