吐き気がするほどの血の匂い。 それに誘われて、馬から飛び降り、山を駆け上る。 まさか、娘様が、 その仮定を否定したくて、私は、あの、桜へと駆け上る。 殺されるところも、殺すところも、考えたくもない。 絶対に、止める。その覚悟をもって全力で駆け上る。その先、 そこにいる娘様。そして、もう一人の少女。 もう一人は知らない、けど、 娘様の後ろ姿に傷はない。 無事か。 「娘様あっ!」 声をかける。娘様は目の前の少女に何か言われ、 そして、――吹っ切れたような、どこかすっきりとした表情で、振り返る。 「そうね」 頷く言葉は、多分、小さく微笑む知らぬ少女に告げた、のだと思う。 だけど、 大丈夫か、と、私は懐の勅書に触れる。 道中、娘様に事情を聴こう。 娘様はなにもしていないと、帝様と、泰親様に聞いていただき、そして、改めてこの地の調査をしよう。 きっと、それで大丈夫、そしたら、いつかした約束。――そう、花見をしよう。 ここではない、都の桜を、頼政様と、娘様の母君と、早太と、 だから、まずはここから連れ出そう、と、手を伸ばして、 「手遅れだよ。西行、妖」 そんな、声を聞いた。 「いけないっ!」 ぐい、と襟首が掴まれる、そして、 「んっ」 業、――と、音が鳴る。 その死穢に、そこにある全ての命が散り消えた。 ただ、――――咲き誇る桜を除いて、 「まったく」 ぎり、と。私の襟首をつかみ、放り投げた女性の後ろ姿が歯を食いしばる。 「貴方は?」 異国のものか、金色の髪の女性は前に――娘様に向けて手をかざす。 そのかざした手には透明な光の壁。周囲の、――刹那のうちに散り枯れ朽ちた木々、その中にありまだ私が無事であることを考えれば、守られた、ということか? とはいえ、安心できない。見える横顔は、真剣で、何かに耐えるように歯を食いしばる。 「…………これ、人の身に宿るには、凶悪すぎるわね。 死穢の名、剥奪した理由もわかるわ」 「な、なにが起きている?」 目を見開きその体を震わせる娘様。 そして、その姿を満足そうに見る、佐藤中納言範清。 もう一人の少女も、桜の根元に陣取り、手をかざす。 恐らく、その少女と目の前の女性が、何かの術で娘様から放たれた、凶悪な何かを防いでいる、のだろう。 目の前の女性が苛立たしそうに横目でこちらを睨む。 「取り込み中よ。人は消えなさい」 「妖怪っ!」 桜の下に陣取る少女が、やはり、歯を食いしばりながら、 「この桜、封印しなさいっ! その娘の死穢が、集まってる! 地脈を通して都を滅ぼすつもりですっ!」 「ああもう、閻魔は妖怪使いが荒いわ」 閻魔? ともかく、目の前の女性は文句を言いながら動こうとする、が。 「させると、思うか?」 斬っ! と、音。 「うそ? ただの刀に?」 振り下ろされる刀、それを無視して駆け寄ろうとした妖怪は、切り裂かれた腕を見てぽつりとつぶやく。 その刀を振るった者。 「中納言、どういう、事ですか?」 「なに、簡単なことだ。 私的な腹いせで、都を滅ぼしてみようと思っている」 「都、を?」 「血を吸い、人を死に誘う桜が開いた地脈に、今度はその娘の、死に誘う呪いを流し込む。 桜の呪いに対する防備を固めた都は、質の違う西行妖が持つ死の呪いに無防備だ。清涼殿だけではなく、都すべてを死穢に満たせるだろう」 西行妖。――それが、娘様の、名? 泰親様の言っていた、不死見に隠された。本当の? 「なんでもいいわ。その桜、と、それにつながる地脈、封印させてもらうわ」 「出来るものなら、なっ!」 中納言はさらに刀を振るう。妖怪、と呼ばれた金髪の女性はそれを扇子で弾く。 猛攻、といえる中納言の攻撃、が、それも妖怪には届かない、が。 「く、――――いそぎなさい。 塞の封印も、この呪いでは、保てない」 「わかって、いる、わよ」 ぎぎぎぎぎぎんっ、と刀を弾く音が連続する。弾く、弾くだけで、その、封印は出来ない。それどころか、駆け寄ることさえできない。 「なんなのよ、その、刀、は」 「私が鍛えた。妖怪を切るための刀だ。 いかな大妖怪といえども、斬られれば飛ぶぞ」 「その、よう、ね。 それに、なんで、貴方、死なない、の、よ」 そう言えば、そうだ。 周囲の木は完全に死に絶えている。妖怪や閻魔、と呼ばれた二人の女性、そして、その力を振りまいている娘様や、光の壁に守られている私はともかく、 なぜ、中納言は、当たり前のように生きているのだ? その答えを、中納言は答えた。 「生きていないからな、私は」 そして、刀を振るいながら、笑う。 頭を抱えて血の池に蹲る娘様を見て、 「『歌聖』西行が高野山で作り上げた鬼。 髑髏勧請の失敗作、それが私だ」 鬼は嗤う。 「人に捨てられたのなら、意趣返しに人を滅ぼすのも、一興だろう」 「たかが復讐のために、随分派手にやるわね」 ぎんっ、と音が響く。そして、私は動けない。 動けない、あの妖怪が作った壁が、私と戦場を隔てる。 「復讐に、その魂を染め、挙句に、無差別の殺戮ですか。 最早、救いがたき罪業ですね」 「私の魂が見えるのか? 閻魔」 「見えないわ。まったく、そんなものを作ったその人も、十分に罪深い」 「まったくだっ!」 ぎぎぎぎんっ、と刀が扇子を弾く。 中納言は、ひたすらあの妖怪の足止めを続ける。 その理由は、傍から見ればわかる。 娘様から溢れる何かの力は、加速度的に強まっている。光の壁はびりびりと歪み、術などには疎い私にもそれとわかるほど、凄まじい威圧を感じる。 それに同調するように、閻魔様はつらそうに顔をゆがめる。 それなら、決定打を打てる妖怪を足止めすれば、いずれ閻魔様の力を超えるだろう。そうなれば、――――娘様が、都を、滅ぼしてしまう。 今の呪いでさえ、清涼殿を陰陽師たちが総出で構築した結界で何とか防いでいた。それをさらに超える娘様の力が流れれば、――なら、 「妖怪っ!」 「貴方に構っている暇はないわよっ!」 「この壁をはずせっ! そうすればその分の力がお前に戻るのだろうっ!」 私のその言葉に、びくっ、と娘様の肩が震える。 その瞳が、辛そうに歪む。――なぜ? 「貴方は、――」 ぎんっ、と力尽くで刀を払う、そして、手を動かす、が。 「遅いっ!」 ぎんっ、と斬りかかる中納言にその動きを止められた。 たん、たん、と、血の池を駆け巡る。その速度は妖怪にふさわしい高速で、西行の鬼も苛烈に追いすがる。 大地に満ちた血の池、そのしぶきを上げながら、妖と鬼は扇子と刀で切り結ぶ。その中で、それでも、妖怪の声が届いた。 「貴方は、死にたくないと、そう言ったそうね」 「あ、ああ」 娘様から聞いたのか? 妖怪は、私の肯定に、小さく苦笑して、 「生きていたい、そう願う人がいるから、あの娘は自らに宿る死を抑えてる。 その貴方が、死んでもいいなんて言ったら、あの娘が堪えられなくなるわ」 だから黙れ、と、その金色の瞳で私を睨み、 「なら、貴様を殺そう」 どぐんっ、――と、鼓動が高鳴った。 「反魂の術にて作られた私が、離魂の術を知らぬと、思っていたのか?」 //.開幕 魂が、離れる。 離魂の術。――目の前には、まさに、その通りの現象が起きた。 絶大な死の力に対抗するために、妖怪がその力を使って作り上げた結界。 故に、唐突に向けられた離魂の術はその結界をすり抜け、そこにいた武士の魂をその体から引き剥がした。 どさ、とその体が倒れ、魂が離れる。 そして、当たり前のように死んだ。 あ、と、誰かが呟く。 「ああぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」 がくん、と娘が血の池で仰け反り、悲鳴を上げる。 死にたくない、そう、強く生を訴えたものが、死んだ。 死んだ、死んだ、死んだ、死んだ、――知らぬ者も、知る者も、死に焦れた者も、生を望んだ者も、すべて、死んだ。 死、死、死んだ。死んだ、死んだ死んだ死んだ死んだ。だれもかれも何もかも、すべて、 私に関わった人は、死んでしまった。 「ぐぅっ!」 閻魔が膝をつく、唐突に流れた膨大な死に、塞の力はすでに限界を迎えている。 「ああもうっ!」 離魂の術により生まれた一瞬の隙に、閻魔に妖怪が駆け寄る。そして、地脈の起点、桜を中心に結界を構築。 「た、すかりました」 「助かってないわよ」 ぎり、と歯を食いしばる。 膨大な死。――それを抑え込む、それで、限界。 そして、妖怪を切る刀を持つ鬼が、ゆっくりと歩み寄る。 後は、動くことさえできない妖怪と閻魔を斬ればいい。 寂しいから、と造られ。不気味だから、と捨てられた鬼は嗤う。 「さあ、あとは、お前たちだ」 死ね、と鬼は嗤う。 すべて死んでしまえ、と鬼は嗤う。 //.閉幕 死にたくない。 死にたくない、死にたくない、死にたくない。 死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない。 こんなところで、こんな簡単に、 聞こえる、娘様の、泣き声。 ごめんなさい、――その、絶叫が聞こえる。 死にたくない、死ぬのが怖い。――けど、 それ以上に、このまま死ぬわけには、いかない。 たとえ、魂魄が分かたれようとも、たとえ、死の呪いに穢されようとも、それでも、絶対に、私は、 「死な、ぬ」 術にて離される魂をその手につかむ。 つかみ、引き寄せる。 絶対に、こんなところで、死なない。 このまま、死ぬわけには、いかない。 霞む視界、歪む世界。 その中で、――――見えた。 立ち上がる。足を踏みしめる。 手に持つ、骨食。――分厚い、鉈のような刀。 足は、動く。なら、 「私は、死なぬ」 だから、―――― 「貴様が、死ね」 鍛え抜いた足は、数間の距離など間合いの中、――血の池が飛沫を上げる。舞い散る桜の花びらが掻きまわされる。 一閃、――その首を、叩き落とした。 「――ば、か――――な」 ごと、と首が落ちる。体が、崩れ落ちる。 血は、流れない。 「貴様、死なぬのか? 否、離魂の術が失敗した。わけではない。 貴様、生の執着が、魂さえ引きずり戻したのか?」 「知らん」 「この死穢の中さえ、貴様は生きていると、そう言うのか?」 「そうだろうな」 頷く、と、西行の鬼は笑う。 「ならば、貴様はもう、人ではない。 死に、それでも生きる者を、人とは言わぬ」 あるいは、その通りかもしれない。 ふわり、私の周りを漂う魂。 はは、とその首は笑う。私は、骨食を振り上げる。 「この刀、銘は骨食、というらしい。 貴様の魂が宿る頭蓋の骨も、食い砕いてくれるだろう」 「はっ、それはうってつけの刀だ」 恐らくは、その意思はすべて髑髏に宿っているのだろう。西行の鬼は頭だけになっても変わらず笑う。 それでも、頭だけでは何もできない、死を覚悟して、それでも、嗤う。 「貴様の、その分かたれた魂に刻め。 都を滅ぼそうとした、西行の鬼がいた、ということを」 忘れるな、――人に捨てられた鬼は、憎悪をこめて、ただ、嗤う。 「……………………忘れぬよ」 「御侍、様。――御無事、じゃ、ない、みたいね」 「娘様も、随分無理をしているようで」 「え、ええ」 は、あ、と娘様は一息。 「妖怪さん、閻魔様。 どう、すればいいかしら?」 たぶん、もう、結末は出ている。 妖怪は瞳を伏せる、閻魔様はぎり、と歯を食いしばる。 多分、もう、―――― 「私は、……認めません。 自死が、解決なんて、…………そんなの、救いが、なさすぎる」 絶対に、――でも、 「貴方は死に穢れた真の名、西行妖、という名を思い出してしまった。 不死見の名も、意味はない。貴方は存在するだけで、死をばら撒く」 妖怪は、淡々と告げた。 そう、と娘様は頷いて、懐から刃を取り出す。 「父様が出家した時に使った。迷いを断つ刀。まさか、こんなところで使うとは思わなかったわ。 後のことは、お願いできる? 妖怪さん。父様の遺した、この、死を呼ぶ桜と、私の死を」 「ええ、ともに、封印しましょう。そこの反対しそうな閻魔は、私が黙らせるわ」 ぎり、と、閻魔様は再度歯を噛みしめ、憎い敵を見るような、強い目で娘様を睨む。 それしかなくても、仕方がなくても、それでも、認めない、というように、 ただ、それでも、 「…………いいでしょう。 貴女をこの地、桜のもとで眠らせます。妖怪、西行妖と、不死見の名を使い、この桜を封印しなさい」 「わかったわ。 閻魔が譲歩するなんて、珍しいわね」 「こんな結末など認めたくありません。が、それでも悪戯に被害が出ることは避けるべきです」 はいはい、と妖怪は目を細める。 そして、自死を目の前に、娘様は、淡く微笑んだ。 命よりも儚い、その微笑を浮かべ、 「願わくは 花の下にて 春死なむ 死穢なき地 浄土を夢見」 その刀で自らの喉を貫いた。 そして、桜、咲く。―――― 死に満ちた桜が咲き誇る。満開の死、世界を染め上げる純白、世界を覆い尽くす死色の花。 死そのものたる蝶が舞う。光を編み上げた羽を持ち、桜に捧げられた全ての命が無数の光を持って空へと還る。 死のような光の月が輝く。静かな光、冷たい光、命を認めない美しい光が、この世界を包み込む。 死を身に宿す姫が倒れる。死色の世界に紅を打ち、ふわり倒れる裾が広がり、夢見るように穏やかに、死色の世界に血色の生命を捧げる。 ――――あまりにも美しき、死染桜の狂咲。 塞の神と境の妖が、その死を見据える。 「彼の世に嬢の亡骸を、その名、墓標に刻み、この地に眠れっ!」 「桜に眠る不死見の名、西行妖への封印とするっ!」 そして、桜の花は散った。 娘様の姿は、もう、どこにも亡い。 「この桜は冥界に送ります。 厳重に封印はしましたが、現世には、危険すぎる」 「ええ、そうして頂戴。 けど、気をつけてよ? 私の封印は名を持って縛り付けたものだから、その名を持つ嬢の亡骸が無くなれば、封印は解放されるわ」 「言われるまでもありません」 「それと、」 妖怪は、そこに落ちた二本の刀を拾った。 一本は、西行の鬼が持っていた。妖怪を切る刀。 一本は、西行の娘が持っていた。迷いを断つ刀。 「これ、貴方が持っていなさい。 放っておくのも難だし、形見くらいはほしいでしょ?」 「…………かたじけない」 妖怪は興味なさそうに頷き、閻魔様はため息を一つ。 「では、さようなら。 偶さかの縁とはいえ、また、いつか会いましょう」 「私はあまり会いたくないんだけどね」 そして、妖怪はこちらを見て、 「その魂に、刻みなさい。 西行の娘と、西行の鬼の、………………………………まあ、なんでもいいわ。 この、お噺を、忘れないことね」 そういって、妖怪も閻魔様も消えてしまった。 私も背を向ける。いろいろ報告しなければならない。振りかえるつもりは、ない。 あとには、一つの墓標。 ただ、それだけが遺された。 「――――――――以上が、『歌聖』西行の遺恨による顛末です」 いろいろと補修中の清涼殿。私は帝様、頼政様、泰親様、それと、多少減ってしまった公卿に囲まれて事の顛末を話す。 うむ、と帝様は頷いて、 「このたび、そなたは都を救った。 報奨を与えよう、望むものを言ってみよ」 言葉に、私は頷く。 「では、二つほど願いがあります」 二つ? と、疑問、そして、 「無礼「よい、言ってみよ」」 立ち上がりかけた公卿を帝様が制する。私は頷いて、 「このたびの、娘様や、西行の鬼――佐藤中納言範清の顛末は、どうか史実として残さぬようお願いします」 「…………ほう、…………まあ、よかろう。 このたび、私を呪ったものは、例の、――鵺、という妖怪だ。そう記録しよう」 よいな? という言葉に公卿達は頷く。 「そうなると、そなたへの報奨は妖怪退治のものとなる。 いささか労に見合わぬが」 いえ、と私は首を横に振り、 「もう一つのお願いです。 どうか、私の事も記録に残さぬようお願いします。私は、旅に出ようと思います」 「報奨を、いらぬというか?」 ざわめく公卿たちの中、帝様の意外そうな声が響く。私は頷き、 「御覧の通り、私は人とはいえぬものとなりました」 ふわり、魂を動かす。 「帝様からの報奨を、妖に与えるわけにもいかないでしょう」 沈黙。やがて、帝様は傍に控えていた公卿に、 「……………………その者、妖でありながら清涼殿に上っている。 この国の果てまで追放せよ」 「承知しました。この国の果てまでいけるよう。勅書を用意します」 「頼政」 「はい」 「鵺退治、誠に御苦労であった。 報奨として、その刀、獅子王を授けよう」 「……有り難く、」 頼政様は、私を睨んで深く、頭を下げた。 これは怒られるな、と。私は覚悟を決めた。 「…………で、どういうつもりだ」 清涼殿から一歩、今まで黙っていた頼政様が私を睨む。 私はその視線を真っ向から受け、 「娘様に、無用の汚名を遺したくなかった。 単なる私の感傷です」 そう、それ以上の意味はない。 娘様は、死んでしまったのだから。 「……勝手にしろ。 が、お前の事も記録に残すな、だと? おかげでわしは受けるべきではない名誉まで受けた。 それでわしが喜ぶと、本気で思っているのか?」 思わない、むしろ、そう言うのは嫌う方だ。 「答えろ、なぜ貴様は旅に出ようなど言い出した?」 それは、 「見てみようと、思ったから、だと思います」 「ほう?」 なにを、という問いに、私は答え応じる。 仏には桜の花を奉れ 我が後の世を人ととぶらはば 「桜の花を、どこかで、咲いていればいいなと」 「…………勝手にしろ」 そういって、頼政様は歩き出した。 ぞんざいに振られた手、私は深く、頭を下げて応じる。 ありがとうございました。――そう、呟いて私は歩き出した。 桜は既に散り始めている。 いつかまた、桜の花をどこかで見よう。そして、とりあえずは、 「さて、――どこに行こうか。 とりあえず、富士でも見に行こうか」 私は、呟いて歩を進める。 そして、人の歴史を、後にした。 |
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