霊夢が無双すぎて、この街がヤバイ。
いや、僕は部外者だし、この街はこの街で非常識が常識なんだけど。
やはり、止めるべきだろう。

「となると、助けを呼ぼう」
 トップランカー二人にそれに匹敵する人を加えても、全く止められないのだ。
ちなみに、瓦礫から晴太という少年の助けもあって出た時には、あの三人の姿はなかった。




「ここまで来てくれそうな人で、かつ実力者」
妖夢は来てくれそうだ。
真面目だし、人助けというなら、問題ないだろう。

 ああ、東風谷も。
こんな外の世界にも似た街だ。喜んできてくれるはず。
多少暴走しても、人助けならやってくれるだろうし。

 それと、白蓮さんだ。
知らない街の事でも、今の状況を知ったら黙ってはないはずだ。

 東風谷と白蓮さんを誘えたら、守矢神社と命蓮寺の面々も巻き込めるか?
それに新たな技術を見れるからと、にとりもだ。

珍しいものがあるぞと天子も呼べるかも。
それに加えて、すでに来ている連中を何人かでも捕まえれば、かなりのパーティーになる。




 そう考えつつ、地上に出た時だった。
キイン、と刃物が打ち合った音が聞こえた。
妖夢だった。

「あーもう! なんてこと言ってるんですか!!」
そんなことを言いつつ、刀を振り回し、戦っていた。

「ダンコンを試し切るとは何事かと言っただけだ。そしてもし切るなら僕が欲しいだけだ!」
そんなことを言う相手。
左目に眼帯を着け、後ろ髪を縛った小柄な剣士だった。

「柳生道場を襲撃した輩を見つけなくてはならないが、ダンコンをおろそかにするなら成敗を加える。覚悟!」
 柳生って、あの柳生?
たしか剣術指南役の。

「って、妖夢! 何があったんだ」
「あ、良也さん! 見たことの無いくらいとっても太いダイコンがあって、試し切りにちょうど良いかなって言ったら、この人が襲ってきて……」
「だからダンコンを試しで切るなと言っているのだ! 切るならば、外科的手法を持って、僕が賜る!!」

ん?
「今、なんて?」
「ですからこの人、ダイコンじゃなくて。言っているのが」
「ダンコン、つまりはチ○ポだ」
あの、はっきり言わないで下さい。

「あー!!! 信じられないいいいいい!!!」
と、本当に目にも止まらない斬撃を繰り出す妖夢、対する柳生道場のダンコンの人はそれと同じくらいの斬撃を持って対抗、二人の間には、ただ火花だけが文字通り散っていた。

 そしてダンコンの人を「若、おやめ下さい」と言って羽交い締めに仕様とした人は、妖夢がいる方向に投げつけられ、峰でホームランされていた。




 ……なんでもういるんだ。
ふと、風を感じた。
この風の感じは、まさか。

「先生! 危ないです!!」
やっぱり東風谷だった。

「なんで東風谷がここにいるんだよ! 危ないって、この街自体が危険だし!」
何度死んだことか。幻想郷でもなかなかないペースだぞ。

「詳しい説明は後です! 見たことも聞いた事も無い化け物が現れました!! 注意して下さい!!!」
「誰が化けモンじゃあああああぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」
 見るとそこには、煌びやかな衣装の、
「何よりも美しく、誰よりも強く、超越した」
巨漢でゴツくて青ヒゲ生やした、
「オカマだ、ゴルァァァアアアアアア!!!!!!」
オカマがハンマー持って仁王立ちしていた。

「脇開いた奴がうちの店を散々荒らし回ったと思ったら、今度は2Pカラーみてーのがやってきやがてぇぇええ!
『モンスター発見、排除します』じゃねーよ!!
いい加減にしろっつーんだよ!!!」

「東風谷……お前が悪いぞ、これ」
「あんなヒゲ生やした女の人の服を着た集団ですよ!
あれほど怖い変態の化け物のあつまりなんて、倒すべきです!!」

 いや、別な意味で怖いけどさ。
「だから誰が化けモンだつーんだよ!
いい加減にしやがれェェェェエエエ!!」

ハンマーを一気に振り落とされる。
東風谷はひらりかわすも、地面には巨大なクレーターが一撃でできた。
……化けモンじゃん。
「覚悟! 秘術『グレイソーマタージ』」
「ちょ……僕、近……」
「あ、先生−!」
吹き飛ばされる僕だった。




「良也さん? 何故、ここに?」
いてて、ってこの声は。

「聖さん? なんであなたもここにいるんですか?」
「詳しい事は後で説明致します。
全く誠に人間とは愚かで勝手なものである!」
え、この口調いきなり本気モード?
金剛杵持っているし。

「このワシのどーこが愚かで勝手なんじゃああぁぁぁ!!
メルちゃんの飼い方にケチつけくさってぇぇぇ!!
ワシの組にカチ込んだクソガキの前に、血祭りに上げたらぁ!!」
目の前にいるのは、顔に斜めの縫い傷がある、七三分けのヤクザ風の男。
手には短刀を持っている。

「ええか。ワシはダックスフントのメルちゃんのために毎日の散歩と念入りなブラッシングをかかさず、高級舶来ドックフードを取り寄せて、きっちりとした予防接種に定期検診までやっとるがな!
どんな嫌らしい医者であろーが、頭を下げて一字一句漏らさず言うこと聞いとるわ!!
どこが愚かだっちゅーんじゃぁぁあああ!!」
あれ、見た目怖いけど、いい人?

「犬を綱で繋ぐなど言語両断! 犬は犬らしく、野山を駆けまわらせるべきでしょう!!
まさに人間の都合の押しつけ!! 即刻止めるべきことです!!!」
そういや、白蓮さんって大分昔の人だった。
幻想郷じゃ犬は大体放し飼いだし。

「このかぶき町でそないなできるか!
ええかぁ、この髪型七三分けじゃ。七対三の奇跡もバランスなんじゃ。
三の貴様への怒り、七にして返したらぁ!!!」
「説法、説得を暴力で返す。全く愚かなことだ!」
と、金剛杵と短刀が衝撃音を鳴らした。

 もー、好きにして下さい。




 白蓮さんが巻物を広げてきたので、そそくさと距離を取る。
ヤクザに向かって弾幕を展開して来たが、素早くくぐり抜け攻撃をし続けていた。
 東風谷のスペルはオカマに直撃するも、もろともせずハンマーを振りかぶる。
妖夢と剣士はダンコンとかいいつつ、鍔迫り合いしている。

 ………なんで呼ぼうと頭に浮かんだ三人がすでに、この街にいるんだよ。
しかも、争い起こしてるし。

その前に、霊夢が火種つけて、三人が大きくしてない?
どうも襲撃されたところにいた人たちみたいだし。
 どうしよう、騒ぎが大きくなっている……。




「いいか、嬢ちゃん。3数える。その物騒なのを置くんだ」
そんなことを言う、渋い声が聞こえた。
シンセングミに似た制服のサングラスにタバコをふかす、白髪の男だった。
目の前にいるのは……、

「エネルギー充填!」
お空?!!
ヤバすぎる!!
あの鳥頭じゃ、あの人を消し炭どころか、街が崩壊する!!

「お空!! やめ……」
「1」
ズドン、と一発。
……2と3は?
「男は0と1だけわかってりゃいいんだ。 その物騒なモンは地面に置きな」
「右手だけ狙うなんて! もう一回!!」
「1」
バアン、とさらに一発。
「負けるか! もう一回!!」
「1」
ドオン、ともう一発。
わかりました。好きにやってて下さい。




ピピピ、と振動と共にポケットから音が鳴った。
……携帯電話?
いや、僕のは倉庫にしまってあるはずだぞ……。

 ポケットより取り出してみてみる。
メールが届いており、内容が、
『はじめましてだお!(^○^)
空飛ぶ女の子について何か知っていたら、教えて欲しいんだお!(^▽^)/』
だった。
なんだこりゃ。

「一体誰が、いつの間に」
「エリートですから。情報収集は欠かさないのです」
いつの間にか白い制服の男が立っていた。
 冷たい表情の片目メガネをかけた、刀と拳銃を携える男だった。

……待て。
「あなたが送ったんですか? これ」
「エリートたるもの、メールにもこだわりがあるものです。
愚かにも見廻組に襲いかかった者を成敗せねばなりません。
知っていることがあれば、速やかに話しなさい。そしてメル友になるのです」
 なぜにメル友?

つーか、外見と文章がこれ以上無いくらい合わない。
ピピピと、僕の後ろから聞こえて来た。
続いて、バキッという何かが壊れる音も。
「貴様だろう。このような物を仕込んだのは!
何のつもりだ!」
目立つ九本の金色に輝くシッポ。スキマに似た服。
藍さんが、そこいた。
携帯電話を握り潰していた

「エリートの勘ですよ。あの紅白の不届き者のことを知っているかと思ったのです。
そのためにメールを送っておきました。
大体、壊しても無駄ですよ」
ピピピとまた音。
藍さんはシッポに手を伸ばす。
……携帯電話が出てきた。

「何が『壊しても無駄だお』だ!
馬鹿にするな!!」
「そのようにムキになるとは。何か知っていますね。
力ずくでも全てを話して貰います。そしてメル友になるのです」
ただに寂しがり屋か? この人。




 弾幕と斬撃、銃弾が飛び交う戦場から逃げる僕。
藍さんと普通に闘ってるよ。あの人。
と言うか、一体何が起こって……?

「うおわ!」
刀が首筋で、止まっていた。
気配も何も難じなかったぞ、今。
「違った」
と、目の前にいるのは少女。
さっきのメル友の人に似た白い制服の少女だ。
長い黒髪で、表情はやはりと言うべきか、固い。
僕には気にも留めず、刀を振るう。

 刀は弾幕を弾いていた。
このハートの形の弾幕、もしや。
僕の能力の範囲を広げてみる。
黒い帽子に、閉じた目のペンダントの少女が現れた。
「ん? 良也?」
「こいし?! なんでここに……、はいいか。なんで闘っているんだよ!」
「なんとなく?」
とのこいしに続き、
「なんとなく」
と白い制服の少女。
「……で、あなたはどうやって見えない相手と闘っていたんですか?」
「なんとなく」
無茶苦茶だ。

「『ローズ地獄』」
「いきなり何の前触れも無く、凶悪なスペル使うなぁぁぁぁ!!」
今更だが無意識で行動しすぎる!
突如現れこいしのを中心に周回するバラ。

白い制服の少女は、「斬る」と呟き表情を変えずに突入した。
 ……あの子、妖夢の人斬りとこころ本体の無表情とこいしの無意識を合わせたようなキャラだな……。








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