最近かぶき町の一角にできた真新しい神社の賽銭箱の前に、一人の男が立っていた。 通称マダオというサングラスを常時着用している、ここの床下に住み着いているみすぼらしい男だ。 汚れた一円玉を投げ入れ、涙をこぼし、そして叫んだ。 「殺せぇぇぇぇぇ!! 俺を殺せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 神様ァ、嫌いなんだろ俺の事をををををを!!! 俺もお前の事何か大嫌いだよ! バァァァァカ!!!!」 賽銭箱の後ろの扉が不意に開き、注連縄背負った女性と二つの目玉が特徴の帽子をかぶった少女が現れ、二人同時にカードを掲げた。 『贄符「御射山御狩神事」』 『源符「厭い川の翡翠」』 「え、ちょ……あ” あ” あ” あ” あ” あ”あ” あ” あ” あ”あ” あ”!!!」 言葉にならない悲鳴が轟いたのは言うまでも無い。 「あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ” あ”あ” あ” あ” あ” あ” あ”!!!!」 「なるほどねぇ、役人を首になって以来、何をやっても上手くいかないと」 「最近じゃ、金髪の女の子に毎日食べられそうになっていると。それで避けるために神社の床下で生活していると。厄神の雛にアドバイスされて」 「ルーミアでしょうか? そういえばこっちでも見ましたね」 神社の奥の部屋でさっきの注連縄の女性と目玉の少女、加えて緑髪の女の子に尋問されるような体勢のマダオ。 「あと、警察のバズーカの流れ弾が引き寄せられるように落ちてくると」 「射命丸さんを狙ってますからね」 「それに閻魔とか言う女の子にきついお仕置きをされたと」 「映姫様の事です。それはあなたが悪いと思います。 それでタクシードライバーしていたら、乗ってきた女の子4人組に暴走させられた挙げ句、空飛ぶ女の子に貧乏神よばりされて、夢想封印との言葉と共にぶっ飛ばされたそうですね」 「ルーミア、リグル、ミスティア、チルノみたいなんだけどね」 「間違いなく霊夢が止めを刺してるしねぇ」 「あの、みんな知り合いなんですか? その前にあんたらなんなの?」 「ここの神様だけど?」 「神様やっているけど、何か?」 「当神社の巫女にして、現人神です! それに、あなたも神なのでは?」 「確かに、神になろうとしているね」 「コイツが雛が言ってた奴だね。貧乏神になろうとしている人間」 「うるせーよ! 誰が貧乏神だっつーんだよ! 寺子屋で犬として飼われていたり、道端で誰か拾ってくれるの待っていたり、借金2000万あったり、普通だろーがぁぁぁ!! むしろ、普通だと言ってくれぇぇぇ!! 頼むから普通だと、笑顔で言ってくれぇぇぇぇえぇ!!!」 「だから貧乏神になるんだよ」 「貧乏神になるための修行しちゃってるねぇ」 「うるせーよ、知らねーよ、そんなの! 俺がそんなに悪いのかぁぁぁぁあああ!!」 「お待ち下さい。 貧乏神になる事で、人に嫌われる事が信仰を集めると同じ効果があり、嫌われる限り生き続ける事ができます。 その上、近づいた人間に対し、無差別に貧困の御利益を差し上げる事ができるのですよ!」 「それただの迷惑! ほとんどテロ!!」 「わかりました。ではこうするのはどうでしょう」 「いや、あのさ。マダオが来るのはわかるんだけどさ。 何このファンキーなモンキーがベイベー言ってそーな三人組」 死んだ目の銀髪が言った。 「脇出した程度で人気出ると考えるの、百万年早いアルネ」 チャイナ服の少女が続く。 「ダメですよ! お客さん相手に! 僕だって注連縄背負ったり、変な目玉を頭に付けたりおかしいだろってツッコミたいのを我慢してるんですから!!」 地味なメガネ言う。 「うん、天罰下そうか」 「そだね」 「あの、困るんですけど。万事屋に来た意味無くなるんですけど」 「そうですよ。このままじゃマダオさんがまるでダメな貧乏神になってしまいます!」 「んで? マダオが貧乏神にならないよーに何か今までと違う生活を送る方法を考えて欲しいって?」 「ええ、このままだと貧乏神となってしまい、それはご本人が嫌がってますので。 私たちはこの世界の事よくわかりませんし、相談に乗って欲しいなと」 「よくわかんねーけど。よーは何か仕事みてーなの見つけりゃいいんだろ。 んじゃ、これはどーよ」 「ちりーん」 窓際で首を釣っているマダオ。 「いきなり何させてんだァァァ! それいつもの長谷川さんんんんん!!」 「よく見ろ、ぱっつぁん。これ風鈴」 「仕事でも何でもねーよ! 別な意味でヒヤッとするわ!」 「人として何の仕事もできねーんだから風鈴としてまっとうさせればいいんじゃね?」 「いいわけあるかぁぁぁ!!」 「俺の命も風鈴の灯火だぜ……」 「笑えねーよ!」 「じゃ、これはどうアルか?」 「わん」 犬小屋に入っているマダオ。 「犬ぅぅぅうう! それもうやったネタァァァ!!」 「前は人間としての尊厳残してたアルネ。 完全に犬になってしまえば、尊厳も何もなくなるアル。 定春より羞恥心も何もなくせば完璧ヨロシ」 「ヨロシくねーよ! 解決してねーよ!」 「つー」 「わんの次はつーって、何してーんだよ!」 「確か、神社で生活しているって聞いたんですけど。その関係で何かないですか?」 「わかりました! 神社関係ですね! では、このようにしてはいかがでしょう」 「ぽくぽく、ちーん」 犬小屋に入っているマダオ。木魚と鉢を叩きながら。 「また犬小屋ぁぁぁああ! リサイクル何回目だぁぁああ!!」 「いえいえ、中におられますのはまるでダメな菩薩様、略してマダボ様です!」 「問題1ミリも解決してねーよ! 避けるべき事態だろソレェェェエ!!」 「神になるのが嫌なら仏様になる。これぞ神仏習合です!」 「どっちみち人間の仕事じゃねーよ! しかもそれ寺!」 「すりー」 「しつけーよ!」 「うちの神社関係でって言うのはありかもね。それじゃこれはどう?」 「しゃー」 蛇の着ぐるみを着て木に絡まっているマダオ。 「蛇ィィィ! 何で蛇ィィィ!!」 「神社に蛇は付き物さ。注連縄も蛇からきてるしね」 「だから人間の仕事じゃねーだろーがぁぁぁぁ!!」 「俺の蛇も脱皮してくれねーかなぁ」 「知るかぁぁぁああ!!」 「まあまあ、こういうのはどうかな?」 「げろげーろ」 蛙の着ぐるみのマダオ。 「もう神社とすら関係ねぇぇぇえ!!」 「いやいや、狛犬の代わりに蛙がいる神社がある(かもしれない)んだよ」 「その括弧はなんだぁぁぁあああ!!」 「オタマジャクシなら、放流できるぜ」 「するなァァァ! そんな汚いオタマジャクシ、放流するなァァァァァ!!」 不意に入り口が開く。 「神様方、それに銀時! 話は聞いたぞ!」 「変な奴が来たァァ!」 「変な奴じゃない。桂だ」 ロン毛と白いよくわからないのがやってきた。 桂とエリザベスだ。 「なんでオメーがいきなり出て来んだよ。脳細胞、髪の毛に取られてる奴が来てもしょーがねーんだよ」 「神社の一大事となれば人肌脱ごうではないか!」 「聞ーてねーよ。コイツ」 「何でもこの御仁に仕事を与えようというのではないか!ならば、これはどうだろう!」 座布団の上に鎮座するサングラス。 「本人どこ行ったァァァァ!」 「神社に住んでいると聞いたからな! ならば神社にいてもおかしくない立場になればいいではないか! そう、ご神体の一つとなれば! より神社に人が集まり、神様の力が強まるというもの! これで文句は……」 「だから本人どこ行ったぁぁぁぁ!!」 (ココダヨ……新八クン……) 「本人の存在感ほとんどねェェェ!! だから人間の仕事じゃねぇっつーの!!」 「もう、人間やめてよくね?サングラスの付属品でよくね?」 「むしろもう人間じゃないアル。新八と同じネ」 「人間だからね! メガネかけてるだけの人間だからね!」 “思ったんですけど” エリザベスがプラカードを掲げた。 “神社の管理人やってもらえばいいんじゃ? 神様たちは幻想郷とかいう星によく戻る訳だし、掃除とか屋って貰えばよくね?” あ、そっか。皆がそう思った。 “いや、早く気づけよ” こうして、マダオ守矢神社の管理人となった。 「ふぉー」 犬小屋に住みながら。 「だからなんでだぁぁぁぁ!!!」 |
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