監視生活10日目、つまりあんぱん生活10日目だ。
そろそろ精神があんぱんで荒廃する頃になる。
 俺の名前は山崎退。退なんて名前だが、そう簡単に退いたりしない。
だからこそ面が割れている攘夷志士のアジトの監視を任されている。
ここ10日動きは全くない。
しかし苦労して仕掛けた盗聴器によると今日集会があるようだ。
 いつもより集中して監視を……あんぱん……しなけ……あんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱん
 そんなあんぱんを吹き飛ばす不審な奴らがやってきた。

 いや、いいんですよ? その緑髪の女の子は。脇開いた服は気になるけど。
 で、何その帽子ィィィ! 飛び跳ねる小さい女の子は可愛いよ。
で何? 帽子に付いたでかいふたつの目玉が怖いんですけど!
 こっち見てない? ねえ、こっち見てない?
 でもって、何よそれェェェ! 頭に注連縄って何ィィィ?
 アンタの頭に神様降臨してんの?
腰にでっかい輪をくくりつけてるって、どこのパリコレだよ! 結構美人だから、余計パリコレだよ!
何でそんな堂々と街中歩いていけんの?
 いや待て、この三人がアジトに入るわけ……、何かさらに白い変な奴に「良く来たな」ってプラカードで歓迎されてんですけど。
エリザベスがなんであの三人普通に迎えるんだよ。

 盗聴器から声が聞こえる。
「攘夷志士ですよ? まさか会えて、アジトにまで入れるなんて感激です!」
この声は緑の髪の女の子だな。
「だねー、まさか街中で配っていたティッシュに書いてた事が本当だとはねー」
あの帽子の子かな。
ってマジかその情報ォォォーーー!
「早苗って歴女だっけ? 百何十年前に似たような奴いたけどねぇ」
注連縄の人か。
いや、本当に頭に神様降臨してません?
「あ、あの人がリーダーですね」
桂か。やはり来たか。
最近どこに行ったのかわからなかったが。
「新入りを含めた皆の衆、良く来た! うれしく思うぞ!」
確かに桂だ。
「あ! 神官の格好です。ああやって欺いているんでしょうか?」
「へえ、それとも神社の人なのかな?」
「だったら、あたしらと関わりできるかもね」
奴の変装はいいとして、何の話をしているんだ?

「おお、エリザベス。『今日の話題は何ですか?』とな!
 実は、大きな計画を立てようかと思っている」
良し! 張り込んだ甲斐があった!
「この江戸の北東側に何があるか皆知っているな。
そう初代将軍康康を奉った日康東照宮だ。
ここには年に何百万という人が参拝に訪れるだけでなく、風水で言う鬼門を封じ込める働きもある。
この度、この東照宮に潜入していたのだ」
だからか、最近奴を見なかったのは。テロ行為でもする気か?
「よってこのかぶき町の辺りに新たに神社を造り、大規模に人を集めることで、鬼門を乱し、かつ集まった賽銭を攘夷活動に充ててしまおうと言う計画だ」
何考えてんだよ。上手くいきそうにない計画だよ。
「『それで奉る神はどうする? 桂さんを奉るのか?』だとエリザベス。髪がないからカツラ、じゃなくて、神じゃない桂だ」
メンド臭えよ。
「やはり何らかの神は立てるべきだろうな。
これから選定をしようかと思っている」
「あたしらはどうだい?」
そんな声が聞こえた。
あの注連縄の人だ。どんだけ神様降臨してんだよ。
「奉ればいいことあるよ」
帽子の子だな。
そんなの被っている時点である意味神ですけど。
「私たち神様ですから」
緑髪の子だ。あんたまで言うか。
「何ィ? 神だと? そのような者がなぜ今ここに現れたと言うのだ!
一秒間に13連打の高橋名人の指先はここにはないぞ!」
懐かしいな、オイ。
「ここにいる者では一秒間に5連打のエリザベスが最速だ!
皆、弱ボタンでの百烈張り手しか出せんのだぞ!」
あんな奴に負けるお前らって何よ!
不器用の神様取り憑いているよ、お前らには!
「そこまで言うのなら証拠を見せて貰うぞ!
幻のLボタンでの百烈張り手ぐらいの神業を見せて貰わんとな!」
ストUはもういいよ!
「さあ、やってみるが良い! 何? 何ィィィーーーーー! 申しわけありませんでした。あなた方は神様です」
おい待て。
「エリザベスに至っては驚きのあまり、目が見開いたそのままになってしまっている」
元から開きまくっているし、着ぐるみだし。
その前に、何があったの?
「図らずも神々がここに降臨して下さった! この計画上手くいくぞ!」
おお、と歓声が上がる。
何があったんだ。まさか本物と言う気か?
「まあ、本殿は幻想郷にあるからここに置くのは分社になるけど、その康康とか言う神を妨害すればいいんだね。
ちゃんと奉ってくれるならやってやるよ」
「そんな神よりずっと前から神様やっているからね。
それはそうと盗聴されてない? ここ」
「何? 本当か」
バレた? 巧妙に隠したハズ! そう簡単に見つかる訳が……。
「あ! これですね。見つけました!」
見つかったァァァ?
「さすが早苗。よく見つけたね」
「奇跡を起こす程度の能力を持っていますから!」
奇跡的に見つけられちゃたまんねぇんだよぉぉぉ!!
「こいつら攘夷志士だっけ。
敵対勢力に仕掛けられたか。ならまだあるかも」
「あ、ありました!」
「あと、あれもじゃない?」
人の苦労をぉぉぉ!
「何と神々が我々の助けをして下さったぞ! 皆の者崇めろ!」
「信者獲得っと。よしよし守ってやるよ」
「良い所じゃん、ここ」
「神奈子様、諏訪子様、電気も信者もゲットですね!」

 くそ、まさか盗聴器全て見つかるとは。ここは一旦退くか……。
とあの三人が出てきた。
緑髪の女の子がいきなり俺のいる方へ何か投げてきた。
って今の何?
エネルギー弾?
ちょ、エネルギー弾?
隠れ家の壁が崩れて姿がバレる。
「あー、変な機械いっぱいあるし。やっぱあいつだね。早苗、よくわかったね」
「奇跡を起こす程度の能力ですから!」
だから奇跡的に見つけられちゃたまんねぇんだよォォォ!!
「とりあえず、あたしらの信者のために色々聞きたいことあるんだけど」
 くっそぉ、逃げるしかない! 逃走経路は大丈夫だ。
幸いここの裏手は藪になっている。
そう簡単には見つからない。空でも飛ばない限りは……。
「あ、いたいた」
「あの人ですね」
「悪い事言わないから、止まりなさい」
って、空飛んでるんですけど!! 三人そろって空飛んでるんですけどォォォォォ!!
マジで本物の神様だっつーの?!
神様でも何でも捕まる訳にはいかない。確かここに……。
あった。
喰らえ! 真選組御用達のバズーカ、発射ァ!
「ん、『神奈 エクスバンテッドオンバシラ』」
撃墜ィ?! バズーカの弾がたくさんのレーザービームにさらされたあげく、ケシズミになったんですけど?!!
つか何? かめはめ波?
「大丈夫ですか、神奈子様」
「問題ないよ。思ったよりいい弾幕じゃない。ただね」
「あっちがやるなら、こっちもね!」
三人から大量のエネルギー弾が降りしきる!
ちょおお!!
あんたら神様じゃなくてベジータ王子様だろおおぉぉぉ!!!

 雨のようなエネルギー弾に追いつかれ、吹っ飛ばされた。
地面に倒れ、動けない。
三人が降りてきた。
「あんたって、あいつらの敵なの?」
言うわけにはいかない。
「別に信者になれば助けない訳じゃないけど」
はい?
「神奈子様、よろしいのですか?」
「早苗、だってね。
神様というのは両陣営から助けを求められるものなんだよ。
だから矛盾も受け入れないと」
「諏訪子の言うとおりよ。
矛盾を飲み込む位が神様らしいしね」
 と、そこにロン毛と白い変な奴を先頭に多くの人が走ってきた。
桂とエリザベスと攘夷志士の連中だ。
マズイ、これじゃ逃げも自決もできない。
「おい、貴様ァ!」
くそ…、これまでか。
「そんなこそこそせずに集会に来ればよいのに!!」
え? エリザベスも歓迎とかプラカード出してるし。
何? 俺の顔忘れてる?
いや、俺が地味だからってそれないだろ。
「奇跡を起こす程度の能力ですから」
……あんた何でもアリかぁぁ?!
「信者もう一人増えたね」
「ひとますめでたしってことで」
「よかったですね。かぶき町に来れて」

 こうして俺は堂々とスパイ活動が出来るようになってしまった。
分社造りも着々と進んでいる。
とりあえず、あの三人にあんぱんをお供えにしようかと思う。
あともちろん、潜入中もあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱんあんぱん



「山崎さん、しっかりして下さい」
「目が凄い虚ろだよ。大丈夫?」
「返事がない。ただのあんぱんのようだって感じだね。何? エリザベス」
「『その報告書とか書いてある紙は何?』って? ああ、これね」
「えーと、細かい文字でびっしりあんぱんとしか書いてないよ。
取りあえず、守矢神社のお守りたくさん付けて様子見ようか。
それでダメなら永遠亭に連れていかないと」
「せっかくですから、山崎さんだけでなく、みなさんにお守り配りましょうか。
これで皆さんの上に幸せが舞い降りますよ
ひとつ200円です」



戻る?