『佳境となってまいりました、かぶき町最強大食い王決定戦!
超絶テラ盛り丼の前に、現役力士から一週間何も食べていないマダオまでそうそうたる面々があえなく敗退していき、残ったのはなんと女性選手二人のみとなりました!
まずはご存じ爆食チャイナ娘神楽選手!
 もう一人は最近立て続けに大食い店を制覇し続けている西行寺選手です!
 二人とも箸のスピードがまだまだ落ちません!!』
ダウンした選手は次々と運び出され、残ったのは食い続ける神楽と西行寺という見たことのない人物、それに大量の丼だけとなる。
神楽を応援するのはもちろん天パの銀時と地味なメガネの新八だ。
「神楽ァ! 行けェ! 引き離せ!」
「それにしても神楽ちゃんと張り合う人がいたんですね。
それも女の人で。並みじゃありませんよ」
「まったくあの胃拡張娘といい勝負ってどーなってんだよ。
サイヤ人の末裔かっつーの」
「そういえば名前なんて読むんですかね?
 さいぎょうじゆうゆうこ?」
「って、ゆーかよ。
俺は認めねーよ。日本語の辞書に載ってない名前を付けちゃう親!
 月と書いてライト君とか業と書いてカルマ君とか、小学校の先生が涙目になるよーな名前付けてんじゃねーよ!
 傷つくのは子供自身ですよ!!」
「って他のマンガのキャラを例に出しちゃダメでしょ!!
 大体そんな名前の子がこれ見たらどーすんですか!
 暗に西行寺さんの名前もダメ出ししてるし!!」
「うるせーよ!
 ジャンプヒーローたるもの空気読まないで正論言うもんだろーが!!」
「アンタみてーな血糖値高くて目が死んでいるジャンプヒーローいねぇよ!」
丼と弾幕が飛んで来た。
「うっせーアル。静かに食わせるネ」
「そんなに騒がれちゃおちおち味わえないわ。お静かになさい」

「全く…あなたたちはジャンプだ、ヒーローだ、血糖値だ、何を言っているんですか?
 さいぎょうじゆゆこ、と読みます。あと静かにして下さい。
幽々子様にも私にも迷惑です」
 そう緑のスカートに刀を携えた少女が、騒がしい二人に話しかけてきた。
「あ、すいません。熱が入り過ぎちゃいまして。
あの神楽って子、僕たちの仲間なんですよ」
「神楽ァァァ! 食えェェェ! 家賃払えねェェんだ! 今月マジヤバイ!
 ミスターサタンにセルゲーム丸投げする位ヤバイんだァァァ!」
よく見るとこの三人生傷が多い。
「…熱くなる理由はわかりますが…」
「ちょっと最近過酷な事になってきまして…」
「わかります。幽々子様の食事を用意するのが大変で大変で…。
作っても作っても次々にお口に入っていき、食費だけで経費が、嗚呼経費が…。
私、休みも給料も貰った事ないのに、経費が…」
「てか、あなた大家族のお母さんみたいですね」
「ふぁって、おいひいんでふもの」
「幽々子様、お口に物を入れて話さないで下さい。
 あと、おこぼししてますので、お渡ししたハンカチでお拭き下さい」
「むしろお母さんそのものでね」

「おやおやぁ、あんたんとこの幽々子様苦しいみたいですよぉ〜」
幽々子は箸を置き、扇で暑そうにあおいでいる。
「ま、まさか幽々子様が食事中に箸を置くなんて…」
「って、神楽ちゃんも…」
『おーと! 選手二人同時に箸が止まったぁ〜〜!
 そして神楽選手いつのまにか妊婦のように腹が、丸く膨らんでいるー!
 これは神楽選手不利か〜? 今にも出産しそうだ!』
「ひっひっふ〜」
「おいいぃ! ラマーズ法してんじゃねェ! てか産むなよ! 産むなよ!
 ピッコロ大魔王みたいに口から何か産むなよ!!」
「ちょ…マズイですよこれ!」
「むん」との気合いと共に、神楽は腹に打撃を加え、腹をみるみる元のサイズに。
「穴に押し込んだアル」
「穴って何?」
「秘密の女の子の穴ネ」
「知らねーよ!」
「え……人間ですか?
 彼女。気配は人間に近いのに…」
正確には違うが。
「安心して。妖夢。
白玉楼の黒字化のためには私だって頑張るわ」
「主に幽々子様の食費が原因なのですが…」
「そのためにもこの世界に来たんじゃない。
美味しい物を食べてお金を貰うという夢のような一石二鳥のプラン。
ここで頓挫させてなるものですか」
「ご自分の食い扶持はご自分で…、いえなんでもありません」
「それじゃ、少々ズルさせて貰いますわね」
『クララが…いや西行寺選手が…立っ…じゃなくて跳んだーー!
 むしろ飛んだーー!!』
「むしろサイヤ人じゃねーかぁぁー!」
「って、遥かかなたまで飛んじゃってますけど!!」
『おや、遥か上空の西行寺選手が…勢いよく再び着席ーー!』
「「だから何してーんだぁ! オメーはぁ!」」
「ふう、食べ物が穴に入りましたわ」
「だから穴って何? あんたらブラックホールでも腹にあるの?」
「秘密の穴ですわよ」
「秘密の穴アル。
それ以上はセクハラで訴えるネ」

「おいおい、予想外だぜ。
本気でサイヤ人襲撃とはヤバイぞ。
 さっきからエネルギー弾みてーなの撃ってきたし、マジで惑星ベジータから地球征服に来たんじゃね?」
「その前にあの二人、本当にこの世の生き物なんでしょうか?
 いつのまにか、ものすごい丼が積み重なっているんですけど」
「幽々子様は生き物ではないんですけどね」
「ロボットとか言う気じゃねーよな。
最近トラウマなんだからよ」
「? いえ、死んでいますので」
「まさかぁ…」
「何百年も前に亡くなった亡霊ですので、生き物とは言えませんよ」
「オイオイオイ、何言っちゃってんの? お前バカじゃね? むしろバカじゃね? 幽霊が何? こんな昼間からご飯おいしく食べちゃってますかって? なにそれおかしいわ。どこのカカロットだっつーんだよ」
「銀さん、目が虚ろで冷や汗凄いですよ」
「なんと言われようが、幽々子様は亡霊ですよ。
食事に関しては…私も不思議なんですが…。
内臓とかあるんでしょうか……」
「何お前オバケとか信じてますって? バカなの死ぬの? むしろ成仏しろっつーの」
丼と弾幕がなおも飛んでくる。
「だからうっせーアル」
「やかましいですわ。
あと美味しい物が有る限り私は成仏しません」

「「おかわり」」
神楽と幽々子の丼が同時に空になった。
一体この体のどこに入っているのだろうか?
「秘密ですって」
「弁護士呼ぶネ。セクハラで訴えるアル」
そしてアナウンスが響く。
『お互い一歩も引かない戦いですが! なんと用意した材料がなくなってしまったようです。
よって引き分け、賞金も山分けとします』
「仕方ないですね。家賃の元手にはなりますし……」
そんな新八の声を遮り、ステージの二人は立ち上がる。
「さて、やるヨロシ」
「では、やりますね」
手にはそれぞれの得物、傘と扇を持って。
「え、ちょ…」
あと、ステージ下でも。
「こっちはマジで引けねーんだ」
「それはこちらもです。
ここでは帯刀禁止なので、借り物の模造刀ですが、お相手いたします」
「こっちはなぁ、ババアんトコのロボッ娘が、家賃徴収する時、源外のジジイとどっかのガキに改造されて"うろ覚えの金閣寺の一枚板"とか言う連続エネルギー弾撃ってくるんだぁぁ!
引くに引けねーんだよ!」
「よく生きてますね…。
それにしてもあの河童もこの世界に来ているとは…」
「このままだと銀ちゃんの頭が白髪になるネ」
「こちらも白玉楼黒字化計画のためには引けませんの」
『まさかの両者、観客巻き込んでの乱闘へ発展だー!』
傘と扇が火花を散らし、木刀と模造刀が衝撃音を撒き散らす!
「ってオイィィ! なんでいきなりバトル開始ィ?!
 僕置いてきぼりだし!
しかも銀さんの頭、白髪でも大差ないし!」
そして、裏手へ四人は消えて行った。音もしない。
「あれ、どこ行ったんだろ?」
再び争う音が聞こえてくる。四人……じゃない。
ボコボコにした何にか巨大な生き物を引きずって。
「よっしゃー! 大量アル!」
「こっちの獲物の方がでけーぞ!」
「いいえ。こちらの方ですわ」
「では、幽々子様調理にかかります!」
「銀ちゃん! こっちも作るネ!」
「任せろ! 万事屋なめんなよ! 独身男舐めんなよ!」
『なんと両陣営どこからか食材を見つけて来たァ!
 さながら美食家と料理人のコンビ! まだ食う気だぁ!』
「つーかもう大食い大会関係ねぇ!!」

なお、万事屋コンビはなんだかよくわからない物かできて食えなかったのは言うまでもない。

「負けてんじゃねーかぁぁぁ!」
「ごちそうさまでした♪」



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