「あのね、おまわりさんはね、別に怒ってはいないんだよ。
地球には郷に入らずんば郷に従えっていう言葉があってね、君みたいな子がお酒のんじゃいけないって言っているだけでね。
あと、どこの子? お母さんやお父さんは?」
と、ゴリラに似た顔の黒い制服の男が、ぱっと見幼い少女に話かける。
 外見に相応しくない酒臭さを漂わせながら、腕に手枷のような腕輪を着け、頭にはアクセサリーなのだろうか、両側頭部から長い角がある少女だった。
「だ・か・ら! 誰が小さな子なのよ!
大体、親なんかとっくの 昔にいないっての!」
「いやいや、親なくして荒れる気持ちはわかるよ。
ウチにも親との縁切っちゃった奴いるし。そいつもメチャクチャ荒れててねぇ」
「え、そうなのか…」
「近藤さん。そんな昔話いらんでしょうよ」
と、もう一人同じ制服を着た男がタバコを吸いつつ入ってきた。
「おお、トシ。なんだ聞いていたのか」
「まあトンがったガキは任せて休んで下さいよ」
「ああ。すまんな」
「さて、オメーんトコじゃ昼間っから酒飲んでも誰もなんも言わねーし、何をやってもいーんだろーけどよ、ここじゃそれは通らねぇってこった。
まあ、食いな」
そう言いつつ空の皿を出した。
「って、何も入ってないじゃ…」
黄色い物をいきなり絞り出す。
「まよねぃ〜ず」
「トシィィィ! やっぱやるそれェェ! 一瞬でもうピラミッドじゃん!
むしろウ○コじゃん!! 汚いよ!!」
「俺がよく食うマヨネーズピラミッドだ。さあ、食…」
「ふざけてんのか!!」
幼女の拳が瞳孔開き気味の顔面に炸裂した。
まるで大型トラックにはね飛ばされたかのように、壁を何枚と貫通した。
しかし、頭から出血しつつ立ち上がり叫んだ。
「そうか! 地球に来たばかりで知らんのか!
これはマヨネーズと言ってな、白い飯からデザートにまで合う調味料、否、食料でな」
「トシィィィ! 病院行けェェェ!
いろんな意味で病院行けェェェ!」
「もはや1日4本の消費が義務と言っても過言では」
「お願いだから病院行ってェェェ!」
「もっかい殴れば正気になる?」
「脳みそがマヨネーズの奴に何やらしてもムダでさぁ」
そう言いつつガムを噛みながらまた一人入ってきた。
かなり若く見える若い男だ。
「総悟か」
「沖田。テメーか」
「ガキにゃーこれでしょーよ。
ほい。まず食いな。あと近藤さんと土方さんも」
「アメ? 全く子供扱いして」
「アメ玉か」
「ガキにゃいいだろうけどよ」
それを口に含んだ瞬間だった。三人とも泡を吹いて倒れた。

「総悟ォォォ!」
「沖田ァァァ!」
アメのような何かを口に入れた二人がゾンビのように立ち上がってきた。
「「何食わせたァァァ!!」」
「栄養剤でさぁ」
「死ぬかと思ったんですけど!!」
「こないだ知り合った兎耳の女の子からいただきやしてねぃ。
パトロールサボりついでに落とし穴掘り手伝ってやったら貰ったんでさぁ。
味考えないで色々混ぜたらお仕置き用にしかならない失敗作らしくてねぃ。
ガキと土方さんのお仕置きにゃちょうどいいでしょーよ」
「俺が何をした!!」
「その前に何? 俺ただの巻き添え?」
「いい感じで苦しんでくれると思いやしてねぃ」
「「このドSがぁぁぁ!」」
「……いい加減に……」
ふと少女の方に目をやると、頭がテーブルを突き破り、床板を貫通、地面にまでめり込んでいた。
「ちょ……。大丈夫? どんなズッコケしてんの?」
「いい加減にしろーー!」
と、少女は巨大化した。
今度は天井も屋根も破壊し、何よりも大きくそびえ立った。

「知らない土地に来たから大人しくしてたって言うのに!
考えてみれば鬼が人間の言う事聞く必要ないじゃない!!」
「オイィィ!! 誰か毒キノコ持ってこい! ドス黒くて勝手に歩くやつ!」
「そんなキノコ幻想郷にもないわよ!!」
そんな事言っているうちに真選組全員が抜刀し、取り囲んでいた。
「へえ…。鬼の力見せてあげるわ。かかって来なさい」
腕を振り回し地面を殴った。
爆発したようなその一撃で、大きなクレーターを作り上げる。
それだけで男たちをはね除けた。
そこにゴリラに似た顔の真選組組長が斬り込んできた。
「ふぁんふぉうひゅう(三刀流)」
「ほに(鬼)」
「ぐり(斬り)」
一気に斬りつける!
……結果は見えている。
「オイィィィ! どこから突っ込めっつーんだぁぁぁ!」
「そんなふざけた技殴り潰されて当然でしょーが!」
との土方と巨大幼女の声を皮切りに、
「あんたは頭までゴリラか!」
「他のマンガ、パクれてもねぇよ!」
「頭弱い小学生だよ。やってる事が!」
との突っ込みが続き、沖田は
「近藤さん。刀貸してもらいまさぁ」
「そ、総悟…仇を…」
「てい」ベキ!!
「ちょォォ! 虎徹ExとVer.7を!
 まだローン残ってるのに!」
「近藤さんにゃもったいねーです」
そんな中、「あの感触でまだ意識あるのね」というつぶやきが聞こえた。
「オイ。何よそ見してんだ。コラ」
タバコを吸いつつ、瞳孔開き気味の男が殺気を放つ。
「オメーらは手をだすな。ガキ一人に寄ってたかっちゃー真選組の名折れだ」
「へーい」
しかしバズーカが向けられている。
発射、爆破。土方、命中。
「何してんだぁぁぁ! お前はぁぁぁ!」
「一気にやっちまおーと思いやしてねぃ」
「最初から俺狙ってたろ!」
「あんたたち、いいわ」
幼女が元のサイズに戻った。
「気に入ったわ。あんたたち」

「あのね。伊吹萃香さん。
別に怒ってないんですけどね。
仲直りの宴会やってくれたわけですし。
あなたが二十歳とっく昔に過ぎていたわけですし。でもね…」
全員土気色の顔で死んでいた。
「全員潰さないでくれません?」
「鬼も潰れる鬼殺しを振る舞っただけよ」
「ヤバイんですけど!
尋問されてないのに吐きそうなんですけど! 明日も仕事なんですけど!」
「マヨネーズだっけ。
あれ、魚の干物と合うよねー。はい、土方」
「もっとマヨネーズを盛れェ!」
「死人みたいな顔で復活するなぁ!」
「コイツ、殺す」
「総悟! 死んだ魚みてーな眼で例のアメ砕いて酒に入れるな!」
「あははは」
幼女の声が響き、まだ宴会が続くのだった。



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