東方奇縁譚×ペルソナ4(ネタバレ注意) 土樹良也in八十神高等学校 ○プロローグ 2011年4月?日 夜 霧 とあるアパート 土樹良也の部屋 大学卒業後、僕は紆余曲折を経て八十神高等学校の英語教師になった。 この学校は人手不足過ぎて、担当教科の兼任も考えられていたらしいが、流石にそれは無茶ではないだろうか。 八十稲羽市に引っ越して早一年、この町のことも大体分かるようになってきた。。 この町は『こちら側の博麗神社』からそれなりに近いところにある。 そのため仕事をしている今でも、月に一回程度は幻想郷に通えている。 季節は春。新年度の準備を一段落させ、時計を見るともう日付も変わるころだった。 窓の外は深い霧に覆われている。天気のせいか、雰囲気はどことなく重い。 明日から新学期が始まる。僕はシャワーを浴びてから寝ることにした。 ○シーン1 2011年4月?日 朝 晴れ 八十神高等学校 2-2 英語の初授業。一人の男性教師が教壇に立つ。 「久しぶり、もしくは初めましてかな。 今年度君たちの英語の授業を担当することになった土樹良也です。まあよろしく」 自己紹介が終わり、授業が始まる。 他の個性的な教員と比べてみると実に普通な印象を受ける……。 穏やかに授業が進む中、陽介が小声で話しかけてきた。 「この先生、金髪美人と付き合ってるみたいだぜ。俺も一緒にいるところを見たよ。 なんだかいい雰囲気でさぁ、ホント羨ましい妬ましい」 「―――となるんだ。さて花村、この部分の意味を答えてくれ」 「え……ええと、その――」 授業を真面目に聞いた。 知識が高まった♪ シーン2 2011年5月?日 昼 曇り 堂島宅 自室 昨日は巽完二救出のため、『テレビの中の世界』で探索・戦闘を行った。 しかし、まだ完二を救出することができていない。 今日は皆で休息日にしたが、なんとなくじっとしていられない。 外に出ることにした。 稲羽中央通り商店街 北側 辰姫神社 辰姫神社に到着した。どうやら先客がいるようだ。 「信仰なぁ。田舎とはいえ流石にこれ以上は―――」 日本酒の瓶を持った土樹先生がキツネのそばでしゃがみ、話しかけている。 「やあ、こんにちわ」 立ち上がり声をかけてくる。いったい何をしているのだろう? 昼間から神社で酒を飲む気なのだろうか……。 「少しお供え物でも、と思ってね。なにかと神社とかには縁があって」 酒瓶を見ていることに気付いたのか、苦笑しながら話し出す。 実際にここには何度か足を運んでいるらしく、キツネにも懐かれているようだ。 「このあたりだとまだ少しは信仰されているしね。お賽銭やお供え物もそこそこあるみたいだ」 それから先生は少し語り始めた。神や仏を信じる心、信仰について。 神社の絵馬やお賽銭、お供え物がこの地の人々の信仰を示していると先生は言う。 キツネの依頼を達成することが、少しは信仰につながったのだろうか。 「それじゃあもうお供え物も渡したから、僕はこれで。また学校でな」 既にお供え物を渡しているらしく、先生は去って行った。 シーン3 2011年8月?日 昼 晴れ 稲羽中央通り商店街 南側 四目内堂書店 新刊を購入し、外に出る。 道路の向こう側に土樹先生の姿が見えた。 不思議そうな様子で一点を見つめている。 視線の先には青い扉がある。 ……!? もしかして、『ベルベットルーム』への青い扉を眺めているのだろうか。 自分以外には見えていないはずだが……。 少しの間様子を伺ってみる。 何かあると感じているのかうろうろしているが、はっきりと見えてはいないようだ。 先生は首をかしげながら去って行った。 シーン4 2011年10月?日 放課後 雨 稲羽中央通り商店街 北側 愛屋 雨の日限定スペシャル肉丼に挑戦しようと思い、店に入る。 奥のテーブル席に、土樹先生の後ろ姿と金髪の女性の顔が見える。 おそらく噂の女性なのだろう。なんだか独特な服装をしている。 一目見ただけでこう思うのもなんだが、どことなく胡散臭い。 二人の手元にはスペシャル肉丼がある。料理を待つ間、二人の会話が耳に入ってきた。 「うぅ……。もう厳しいぞ、これは。なんで僕まで……」 「話の続きをしてもいい? この霧、しばらくは手を出さないでも構わないわ」 「……そりゃあ、僕程度にこの異変をどうにかできるとは思わないけどさ。 このままでも大丈夫なのか、スキマ?」 『霧』に『異変』。気になる言葉だ。スキマ、とは金髪の女性の愛称だろうか。 「いつまでもこのままで大丈夫、というわけではないわね。けど、下手に手を出すとややこしくなる。 すでにこの異変を解決する役割を与えられた者達が動いているから」 「役割を『与えられた』か」 「ええ。彼らは私たち風に言えば、『仮面をつける程度の―――」 「アイヤー、スペシャル肉丼お待ちっ!」 二人の意味深な会話は続いているが……。 今の『知識』では会話の内容を理解できそうにない。 出てきたスペシャル肉丼に挑むことにした。 今回も食べきることが出来なかった。先生も同様らしい。 スキマと呼ばれた女性はしっかりと食べきり去って行った……。 勇気が上がった♪ 根気が上がった♪ 知識が上がった♪ シーン5 2011年12月?日 昼 曇り ジュネス 八十稲羽店 入口 『真犯人』の探索を切り上げ、特別捜査隊の皆と帰宅しようしていた。 既に日は落ち、あたりは暗い。 「なんだかずいぶん疲れてるけど、大丈夫かい?」 ジュネスの入口で土樹先生に後ろから声をかけられた。 先生の手にはジュネスの買い物袋がぶら下がっている。 「お買い上げありがとうございまーす。 今日は付き合ってる美人さんはいないんですか?」 「どこかそのへんにいるんじゃないか? それと、決して僕はアレと付き合ってなんかいない」 「またまた〜。この前だって―――」 陽介が話し続ける中、先生がこちらを見る。 「やっぱり彼ら、なんだろうなぁ(ボソ)」 「どうかしたクマー?」 「いや、何でもないさ。それじゃあ、僕はこれで。 ……気をつけてな」 先生は去って行った。 最後の言葉、彼は何かに気づいているのか。 「やっぱり、なんかおかしい」 「どうしたんですか?久慈川さん」 「直斗くん……。先生に後ろから声をかけられた時、何も予兆を感じなかったの。 いくらこっち側とはいえ、カンゼオンが何も感じないだなんて……」 「そんな気にすることじゃねえだろ。『真犯人』はもうテレビの中にいるんだ。 今日の探索で疲れてるだけじゃあねえのか?」 「そう……なのかな」 BAD END IF AFTER 2012年?月?日 昼 霧 禍津稲羽市 「八十稲羽市が原因不明の霧に飲み込まれて以来、音信不通になっています」 ニュースを見て、いてもたってもいられなくなった。仲間たちとも連絡が取れない。 ずいぶんと無茶をして、3月以降一度も訪れていない八十稲羽市に戻ってきた。 あたりは霧に包まれている。テレビの中の霧が溢れだしてきたようだ……。 辺りに人の気配はないが、所々に人間の仕業とは思えないような傷跡が残されている。 この霧でいったい何人のシャドウが暴走したのだろう。 連絡の取れない特別捜査隊の仲間は無事なのか。 暴走したシャドウを制御し、ペルソナにできた者はいないのか。 誰でもいい……!誰かいないのか!! 町を徘徊する異形を蹴散らしながら、かつて過ごした街並みを走る。 商店街に差し掛かった頃、空を飛ぶ二つの何かが見えた。 紅白のあれは巫女服なのだろうか。しかし、腋が見えている。 もう一つはスーツ姿である。遠目だが、どこかで見たことがあるような……。 スーツ姿の男が近寄ってくる。あれは――― 「―――なんだ、こっちに来ていたのか。ずいぶん久しぶりだね。 ……こんな凶悪な異変が起こっているんだ、いろいろと聞きたいことはあると思う。 僕の力の及ぶ限りはどうにかしたつもりけど、被害は結構出てしまっている。 でも、この異変は今日で終わるだろう。 こういう時だけは頼りになるやつが、出張解決に来てくれてるんだ。 ……まずは八十神高校に行こう。お前の仲間たちがあそこにいるはずだ」 東方霧中行 〜 Mask of the readiness. START? あとがき はじめまして、こういったものを書いた経験がほとんどない玄之丞です。 今回はいつも楽しく読ませていただいている東方奇縁譚と、私の好きなゲームであり、アニメなども大人気なペルソナ4をクロスさせてみました。 実はペルソナ4のTRUE ENDは見ていないのでおかしなところがあるかもしれませんがお見逃しください。 とはいえ深く関わらせることが出来るわけもなく、各シーンのダイジェストみたいになっています。 ゲームのペルソナ4に出てくる八十神高校では、人数不足か何かで体育教師が英語教師も兼任していたので、もし良也君が八十神高校で英語教師をしていて兼任が起こらなかったらどうなるか、といった思い付きがきっかけです。 妄想を形にするのって大変ですね……。 BAD END IF AFTERで霊夢さんが幻想郷を飛び出し、出張異変解決をしているのは、外の世界とはいえ幻想郷に近いところで、こんな異常が起こっているとやばいと判断された、という勝手な設定です。 そういやスペルカードルールとかもあんまり考慮してないや。 また、出動がこんな遅すぎると言ってもいいタイミングなのは、スキマ妖怪とペルソナ4の黒幕の間に何らかの協定のようなものがあったのではないでしょうか。 |
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