さて、私達もパチェリーと少し話をしてから紅魔館を後にし、今は永遠亭に向かって飛んでいる最中。 ちなみに今は私が詠奈をおんぶしてる形で運んでる。良也さんの近くにいなきゃダメだけど、重さが軽減されて楽になるのよ。 それは魔理沙も早苗もわかってるはずなのに、なぜか睨んでくるのよね。 「あのさ……ちょっと飛びにくいんだけど」 「しょうがないじゃない。下手に離れると詠奈を落としちゃうかもしれないし」 なんて言いつつ、私は良也さんに擦り寄った。ていうか、もう密着してるけど。 詠奈。なぜ、ため息なんて吐いてるのかしら? いいじゃないの別に。私がこうしてたいんだし。 それはそれとして、竹林が見えてきた。となると、永遠亭ももう少しね。 ということはあの子とも会うのか……文句、言われないわよね? 第六章 永遠亭 「お〜い、霊夢達が来たぞぉ〜」 「ほいほ〜いっと。よく来たねぇ」 良也さんの声に顔を出したのは、確かてゐだったかしら? その子が笑顔でこちらを見て―― 「あれ? そっちの子は?」 「私の妹の詠奈よ。隣は魔理沙の弟で理斗」 「ど、どうも……」 「よろしく……」 聞かれたんで答えると2人も戸惑いながらも頭を下げていた。ま、初めてだから当然か。 「ふぅ〜ん。ところで私に賽銭を入れてみないかい?」 「へ?」 「神社の娘に賽銭をねだるんじゃない」 てゐのいきなりの言葉に詠奈が戸惑ってる。良也さんがつっこんでたけど、それには同意するわ。 「ちぇ〜。お師匠様〜、姫様〜。お客さんですよ〜」 残念そうにしながら、てゐは奥へと行ってしまう。 それを見た良也さんはやれやれといった様子で付いていき、私達も続いて屋敷の中へと入っていった。 「お〜い、連れてきたぞ」 「あら、いらっしゃい」 良也さんの声に座っていた輝夜がにこりと微笑む。その隣には永琳が座っており、更にその後ろでは鈴仙がいて…… 「お久しぶり。200年ぶりね」 「ええ……そうね……」 聞こえてきた少女の声に思わず顔が引き攣りそうになる。少女の名は土樹 玲於奈…… わかる人にはわかると思うけど、良也さんの妹なのよ。なんで、彼女がここにいるかというと―― あれは博麗大異変が解決して少し経った位かしら? 実は唐突に現れたのよね。 紫の話だと、玲於奈も良也さんみたく外と幻想郷を行き来出来るみたい。でも、無意識に来ちゃったせいで、その時は大層混乱してたけど。 で、来ちゃった理由はというと進学で良也さんの近くに引っ越すことにしたらしく、そのことで良也さんに報告しようとしたらしい。 でも、途中どこかに行こうとする良也さんを見かけ、以前から怪しい行動があったので尾行して……で、気が付いたらここにいたと。 しばらくして、戻ってきた良也さんが玲於奈がいたことに驚きながらも説明をして……それからね。彼女も幻想郷に来るようになったのは。 で、なんやかんやで良也さんが蓬莱人になったことを知った玲於奈はなぜか自分も蓬莱人になっちゃって……今はここでお世話になってると。 昔のことを思い出して、ちょいと頭痛を感じる。良也さんと一緒になった後は色々とうるさかったのよね。 おかげで私としては苦手な人になっちゃったんだけど…… 「そういえば、その2人はどちら様かしら?」 「霊夢の妹と魔理沙の弟だそうですよ」 輝夜の問い掛けにてゐが答えるけど……詠奈はガチガチに固まってるし、理斗ぼ〜っとしてる。 詠奈、緊張のしすぎよ。それと理斗、輝夜に見惚れてるでしょ? それは絶対にそうよね? 「あら? どうしたのかしら?」 「あ〜……たぶん、初めて会ったから緊張してるんじゃないかな?」 良也さんがそういうけど、輝夜もあれは絶対にわかってやってるわよね? だって、笑ってるし。 「自己紹介は後でさせるわ。ところで変わったこととか起きてない?」 「異変の事だったら、こっちも何もわかってないわ」 「ええ。ここ200年は静かなものよ」 鈴仙と永琳が答えるけど……まぁ、こっちもそんなものか。でも…… 「それって流石におかしくない? 私達は異変が起きるから継承を受けたのよ。それなのに何も起きてないなんて」 「ええ、そうね。それに関しては私も同意権よ。何も起きなさすぎる……不気味なくらいにね」 玲於奈がうなずいて同意してくるけど、確かにそうよね。レミリアの能力でもわからない。何かが起きるはずなのにその予兆すらも無い。 こうまでおかしなことばかりだとわからなくなってくるわ。あ〜やめやめ。わからないこと考えたって、わかるわけじゃないもの。 あ、そうだ。私がここに来たのはこんな話をするつもりじゃなかったのよ。 「そうだ。永琳、お願いしたいことがあるんだけど……ここじゃなんだから、別の部屋でいいかしら?」 「ん? ええ、いいけど。なんなの?」 「それは――」 聞かれて悩む。良也さんには聞かれたくないのよね。 「あ、ちょうどいいや。私も永琳に頼みたいことがあったんだよ」 「わ、私もです」 と、魔理沙と早苗もそんなことを言い出す。それで何かあると感じたのだろう。永琳は意味ありげな視線を向けてくる。 「そう……一旦、部屋に戻らなきゃならないんだけど、一緒に来る?」 永琳の問い掛けに私達はうなずき、良也さん達と一旦分かれて永琳の部屋へと向かうことになった。 「確かに薬はあるわ。でも、良也がなんというかしらね?」 椅子に座り、腕を組む永琳がため息混じりに答えた。確かにもし私達がしようとすることを良也さんが知れば、怒ると思う。 でも―― 「あんな別れ方をするのは……もう嫌なのよ」 両手を握りしめながら、私はその想いを漏らした。私達が歳を取って行くのに、良也さんはそのまま。 どこか離されていくような感覚。やがて、私達は寿命を迎えて……あれが一番つらかった。 自分達の感覚では一瞬だとわかってはいても、離ればなれになってしまうのは―― だから、死ぬ間際に私は考えた。継承されたら、私も蓬莱人になろうと。それは魔理沙や早苗も同じ考えだったけどね。 「やはり……そうだったのね……」 声が聞こえて振り返る。そこにいたのは玲於奈が壁に背を持たれ、腕を組んで立っていた。 「あの時……あなたの顔を見た時、そうではとは思ってたけど……でも、本当にツライわよ。蓬莱人になるのは……」 悲しそうな声で玲於奈は語る。外の世界、幻想郷を含めて知り合いがいなくなる。 寿命や病気、事故といった死を迎えることによって……2人は両方の世界でそれを体験していた。 後で聞いた話になるんだけど、そのせいで良也さんも玲於奈も人里に顔を出さないようになってしまったらしい。 知っている者が死んでしまうのは未だに慣れないからと…… 「わかってる。良也さんが怒るかもしれないことも後悔するかもしれないことも。 でも……でも、良也さんと離れるのはもう嫌なのよ……」 自分の想いをぶちまけるように私は話していた。そう、もう嫌だった。 良也さんや玲於奈が外の世界を……外の世界の人達と決別して幻想郷に来た時、とても思い悩んだのは知っている。 私も蓬莱人になれば、いずれそうなるかもしれない。でも……良也さんと離れるのは嫌だった。 物理的な距離では無く、存在という関係が離れるという感覚。 言葉にしづらいけど、それはとてもつらく重苦しいものだったから……だから―― 「そう……兄さんも愛されてるわね」 玲於奈のため息交じりのつぶやきに私や魔理沙や早苗も顔を紅くしてしまう。 いいじゃない……良也さんのそばにいるのは心地良くて、安心出来るから…… 「わかったわ。薬はいつ用意すればいいの?」 「もう少し……少なくとも私達が成人してからでいいわ」 永琳に聞かれてそう答える。少なくとも今の姿じゃ……その……背とか胸とか…… なんていうか、後々困りそうだし……ね? 「あなた達は……まぁ、いいわ。来て、紹介したい人達がいるの?」 玲於奈の言葉に私達は首をかしげる。紹介したい人? はて、誰だろうか? たぶん、私達の知らない人達なのかもしれないけど―― 「あら、お久しぶりね。霊夢」 戻ってきた私達に声を掛けたのは幽々子だった。でも、私達は言葉を返せなかった。 なぜなら、私達は3人の姿に目を奪われていたから…… 1人は……妖夢に似ていた。でも、妖夢じゃないというのはわかる。 なぜって? だって、その妖夢似の子供の後ろには背が伸び、銀糸のような髪が腰まで伸び、すっかり大人の女性に成長した妖夢がいたから…… でも、私達が亡くなる前よりはもっと大人びている感じがするけど。 じゃあ、この子は誰? ていうか、なんで同じ顔……妖夢似の子供がもう1人いるわけ? それにもう1人、こちらは玲於奈に良く似た今の私達よりちょっと年上といった感じの女性がいる。 誰よ、この人達。というか……なんで、ここまで嫌な予感がするの? 「妖夢……この子達……誰?」 「ええと……あなた達、挨拶を」 「はい、魂魄妖夢の娘、魂魄妖姫(ようき)といいます」 「同じく魂魄妖夢の娘、魂魄妖華(ようか)です」 「あなたも挨拶なさい」 「はいはい。土樹魅奈(みな)。よろしくね」 妖夢に言われた子供達は座った状態ながらも丁寧に頭を下げて、玲於奈に言われた女性は陽気な感じで挨拶をするんだけど…… 本気でなぜだろう……加速度的に嫌な予感が大きくなるのは? それになぜかしら? 良也さんを睨んでしまうのは? で、良也さん。なぜ、そんなにも顔色が悪くて顔を反らそうとするのかしら? 「あなた達……父親は誰?」 『土樹良也です(だよ)』 私の疑問に彼女達はそろって答えてくれた。魅奈だったかしら? その子はしてやったりの笑みを浮かべてくれたけど。 「さて……良也さん。どういうことなのかしら? 私、この子達のことまったくもって知らないのだけど?」 「そ、それはだな……ま、待て、話す! 話すから、スペルカードは構えないで……ていうか、いつの間に用意したんだよ!?」 私は普通に聞きたいだけなのに、良也さんはなぜか怯えてしまう。 おかしいわね? 私だけじゃなく、魔理沙や早苗がスペルカードを持って迫ってるだけなのに? それに詠奈。なぜ、理斗と抱き合って怯えているのかしら? 「落ち着いてください。これにはその……色々とありまして……」 紅くなりながら、妖夢はそのことを話し始めてくれた。 私達が亡くなった後、良也さんはそれはもうひどい状態だったらしい。何をするにも無気力。そんな感じだったみたい。 更には博霊神社を去り、あちらこちらへと彷徨うようになってしまったのだそうだ。 それを見かねた紫は幽々子と相談し、生霊の時からの付き合いである妖夢を一緒にさせようとしたという。 2人は気晴らしをさせるつもりだったらしい。まぁ、最初は話しかけても心ここにあらずだったみたいだけど。 でも、妖夢は懸命に……良也さんに少しでも元気を取り戻して欲しかったから、献身的に話しかけていった。 そのおかげか、良也さんは少しづつ話すようになり、やがて元気を……いつもの調子を取り戻すようになった。 が、ここで紫と幽々子にとって予想外のことが起きた。 良也さんに献身的に話し込んでいく内に、妖夢にとっても良也さんは無くてはならない存在になってしまったのだ。 でも、良也さんには私達がいる。そのことで悩んでしまったらしい。 そこで紫と幽々子は良也さんと妖夢を一緒にさせようと考えたのよ。何考えてるのかしら? 良也さんも最初はもちろん断ったみたい。私達がいるからって。でも、紫と幽々子は説得してしまった。 私達を忘れろとも諦めろとも言っているわけではない。でも、あなたには今一緒にいてくれる人が必要だと。 他にも色々と言ったらしく……ついに良也さんは折れて一緒にすごすようになったらしい。 といっても、結婚では無いと言うけどね。同じようなもんでしょ、それ? ちなみに玲於奈も同じようなもんだったらしい。彼女、血縁者なのに良也さんのこと慕ってて…… そのことを紫に知られ、いつの間にやら一緒にさせられ……妖夢と同じように子供が出来てしまったと―― 「まったく、あのスキマは……碌なことしないわね」 「まぁ、紫さんに乗せられた私も私だけど……」 「けど、蓬莱人になるなんて……思い切ったことするなぁ〜」 「私は幽々子様に仕える身ですから……それに良也さんとも……」 良也さんを黒焦げにしてからため息を吐く私に玲於奈はすまなそうな顔をしていた。 一方で呆れてる魔理沙の言葉に妖夢は紅くなってたけど。まったく…… 「言いたいことは色々とあるけど……そういうことなら仕方が無いわね」 「にしては、やりすぎじゃありませんか?」 早苗がツッコンでくるけど……あんたも良也さんを黒焦げにするのに参加してたでしょうが。 「にしても、この子ら見てると妖夢が小さい頃を思い出すいなぁ〜」 「でしょ? あの時なんか――」 「ゆ、幽々子様、ここではその話は勘弁してください!」 「はぁ、私も子供欲しいなぁ……」 「ひ、姫様……」 魔理沙がそんなこと言うもんだから、幽々子が何かを言おうとして妖夢に止められてるのはいいとして…… 輝夜……それはどういうことかしら? なぜ、嫌な予感がするのかしら? 鈴仙もなぜそんな複雑そうな顔をするのかしら? 永琳もやれやれといった顔をしてるけど、嫌な予感がするのはなぜかしらね? はぁ……私達がいない間、何をしたのよ……良也さん、じっくりと聞かせてもらうからね? あとがき ども、今回は結構時間が掛かりました。難産な部分がありましたので。 で、良也君……正直に言います。やりたかっただけです^^; いや、こういうのもありってのは私くらいなんでしょうがね。久櫛縁さんはどう思うだろうか…… 後、妖夢の成長は半分は人間だし、ありだよな? という考えからでした。でも、成長させすぎたか?^^; さて、次回は再会編最終回。どんな形になるかはお楽しみに〜。 仕事立て込んでるので、いつになるかわかりませんが^^; |
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