物語を読むに当たって。
 オリジナル主人公&視点で進む。
 オリジナル設定あり&多少違う部分が出る可能性あり。
 東方に関する知識が微妙に曖昧(二次創作との)なので、そこの点をご了承ください。











































「では、説教を始める前に……空さん、何か質問は?」

 そう正座した俺に、尋ねてくる映姫。
 質問……なら、いくつか聞いておくか。

「ならまず一つ目。俺は、いつ戻れるのですか?」
「それは安心してください。明日の朝辺りには、目が覚める様に調整しますので」

 さらりと言った言葉に、俺はげんなりとして横にいる小町は、「自分だけ逃げるな」という視線を感じる。旅は道連れと言うが、ここで道連れを発動しないで欲しい。カードゲームのトラップカードか、お前は。

「……二つ目。何で今からなんぅですか? 死んでからの方が、良いのでは?」

 その言葉に、映姫はとても素敵なエガオを見せてくれた。
 うん、どうやら地雷を、踏んだらしい。

「いいですか? 貴方を含めた外来人――すなわち、現代人は嘆かわしい。今が良ければそれで良いと言う考えが行けないのです。今を改め、死後の世界をより良くする事と知る事です。つまり、常に善行に励むのです」

 そこで、言葉を一旦区切る映姫。多分、まだ言いたい事があるだろうが、質問が終わってから纏めて言うのだろう。腹を括るべきだったな。

「で、質問は終わりですか?」
「いえ、まだあるので、良いですか?」
「ええ、構いません。ある程度しておいた方が、これから言う言葉の意味をより深く受け止める事が出来ると思いますので」

 そう言って、閻魔の目が輝いて見える。むしろ、生き生きしていた。この瞬間、俺は思う……職業柄ではなく、趣味ではないのか、と。
 そう思った瞬間、ビシッという効果音が聞こえそうな勢いで、手に持っていた棒を突きつけてきた。

「今、変な事を考えていませんでしたか」

 疑問系ではなく、断言してきた。どうやら、変な考えの内容までは判らない模様。でも、真面目に答えるほど、俺は馬鹿ではない。

「いえ、説教は、職業柄ではなく、趣味で無いかと思ってしまって」

 が、相手は閻魔。ここは、大人しく吐いた方が正解。

「理由は?」
「説教すると決まった瞬間、貴女の目が生き生きとしていましたので」

 閻魔も、今の言葉に顔を顰めた。少なからず、心当たりがあったのだろう。あ、小町も笑っている。どうやら、同じ考えを、少なからず持っていたのだろう。
 映姫は、素早く振り向いて、持っていた棒を投げつける。忍者が使う手裏剣一つ、棒手裏剣の両々で回転しながら飛んでいく。
 棒手裏剣は、手裏剣の一種だが、基本的な形が棒状である事が特徴である。なお、投げ方も二種類あり、直打と回転打がある。
 直打は、剣端の指先のほうを向けて打つ方法。握り方は、剣先を指先のほうに向けて中指に添うように手のひらに手裏剣を載せ、親指で手裏剣の端を押さえる。打った瞬間の的に当たる瞬間まで、手裏剣は回転せずに飛んでいく。
 回転打は、剣の先端を手首のほうに向けて握って打つ方法。握り方は直打と同じだが、剣先が手首のほうに向いている。
 なお、直打と回転打のどちらかを選択するからは、あるいはどれくらいの回転をさせるか。それこそ忍者各人の極意とするところで、敵の距離がどれくらいであるか、どのような場面であるかなどによって千差万別であった。
 ただし、実際に投げる物は、長くて百八十ミリ、重さ九十七グラムの棒状。けして、閻魔が持っている悔悟の棒ではない。あれは、大きすぎる。

「イタッ!?」

 額に、棒の突起部分が突き刺さったらしく、その場に転げ回る。うん、判るよ。だって、首が後方に吹き飛ぶ勢いだったから。その威力、押して知るべし、である。

「で、質問とは?」

 再びこちらに振り返って、尋ねてくる映姫。その手には、先ほど投げたはずの悔悟の棒が握られていた。ただ、小町の方に飛んでいった奴は、小町が転がりのせいで確認が出来ない。

「あぁ〜……外の世界から気になっていた言葉があるのですが、聞いていいですか?」
「冥土の見上げ、という訳ではありませんが、何でしょうか?」

 と、快く映姫が承諾してくれたので、遠慮なく言う。

「姫初めって、何で――」

 言い終わる前に、視界が白く染まり、浮遊感を覚えて――ブラックアウト。











































東方空物語
〜とうほうそらものがたり〜










































 で、次に目覚めたら、また天井が飛び込んできた。
 ただ、白玉楼の屋敷の天井に似ているが、何か違和感を覚える。どうやら、この世界に来てから、三回目の気絶をした様である。いや、先ほどの奴は臨死体験だから、気絶二回と死に掛け一回と、カウントしたほうが正しいのだろう。

「また知らない天井だよ……あと、何回やるんぅだろう」

 と、しみじみ思いながら、言葉にして放つ。
 だって、この世界に来る時や、白玉楼に言った時も気絶した。下手すれば死ぬかもしれないと、少々本気で考え出した。ってか、本当に死に掛けたから。

「あら、起きたのね」

 その声に、思考を停止して顔を向けると、そこには中心で赤と青に別れている服を身に付けた女性が立っていた。
 配置的に、上半身と下半身の部分の色が反対になっているが、一瞬だけ超人機のメタルな人を思い浮かべてしまった。だって、配色が赤と青だよ、判る人は判るよ。

「…………」

 何かポケットから、注射器と薬(カプセルと粉)、あと試験管とか変わった容器が取り出される。

「申し訳ありませんでした!!」

 全力で土下座した。
 だって、モルモットは嫌だ。

「ふふふふふぅ♪」

 何か聞こえる笑い声は、目が笑っていない者の声だと察する。
 だが、怖くて顔を上げられず、確かめる機会を捨てるのだった。

「まぁ、顔を上げなさい」

 その言葉に、恐る恐る顔を上げると――その辺にいる人と同じ顔。普通の表情があった。
 確かめる機会を捨ては筈なのに、強制認識したらどんな事になるのだろう。自分の事だけに、想像ができない。
 真面目に怖いです。特に、医者は。
 理由? 病気や怪我した時に、何かされそうな気がするから。もしくは、門前払いを喰らうかもしれない。

「大丈夫よ――ちょっと付き合ってくれれば」
「え?」

 医者らしき人は、いつの間にか俺の横にいて、袖を捲くった左腕の間接辺りを、アルコールが染みた綿で拭いていた。

「って、あの、何時の間にってぇか何に付き合うんぅですか!?」

 俺は慌てて、左腕を掴んでいる医者の手を振り払おうとするが、ピクリとも動かない。

「うどんげ、てゐ」
「…………はい」
「了解です、お師匠様」

 後ろから、体と腕が固定される。って、ブルータスお前もかぁ!? ってか、ブルータスって誰だよ。ネットで見かけたネタだけど、真面目に分からないんぅだよね。って、

「俺に対しての援護は!?」
「あるわけ無いでしょ?」
「――!?」

 反論しようとしたら、腕に痛みが走る。確認する為に、顔を向けるが、絶望した光景が出来上がっていた。消毒された部分の腕に、謎の注射が打たれていたから。しかも、謎の液体は殆ど体に打たれたあと。

「おー…………」

 一瞬にして、意識が遠のき、体が軽くなるのを感じ取った。





「で、戻ってきたのかい」

 そう小町が、言葉を漏らす。頭に、漫画の様なデカイ汗の雫が、でそうな感じで。うん、気持ちは判るよ。だって、現世に戻ってから、それほど時間が経ってないと思うし。短時間で、二度死に掛ける人間の方が、珍しいだろうけど。あ、昔の外国のでは珍しくないか。死人が蘇るなんて時期があったし。

「そうです」

 先ほどまで、起こった事を説明した俺が、今いるのは三途の川――つまり、出戻りである。いや、この場合、出戻りじゃなくて、別の言い方があるか?

「っーか、一日に臨死体験を二回もしてここに来た人間を、アタイは初めて見たよ」
「あの世初?」

 馬鹿な事を聞く俺。それ以前に、普通に生きている人間は、臨死体験など無縁の筈である。が、スキマを開ける能力があるので、普通と言えないのが悲しい。

「かもね。今までそんな話を、聞いたことが無いから」

 だが人間の歴史は、浅くも深く、複雑である。地獄の一角だけを担う閻魔や死神故に、他の方面の情報に疎い。もしくは、入ってこないだけかもしれない。よって、人間の歴史上初ではなく、この三途の川では初の存在に当たる可能性がある。が、ただそれだけの話で、自慢話かホラ話扱い程度。つまり、生きている自分以外の人間にとって、どうでもいい話だから。

「あ、林檎食べる?」

 小町が、林檎を一つ、差し出してきた。相当擦っていたのだろうか、ツヤを出す為にワザとワックスを塗った様に、表面が輝いている。あ、現在は、やっている店があるかどうかは不明。小学生時代の学校の先生から、聞いた話だから。ちなみに、ワックスはワックスでも、林檎の品種自体が遺伝子的に持っている性質らしい。それ以上は、知らん。

「頂きます」

 俺は、それを受け取り、袖で軽く拭いてから、そのまま噛り付いた。そこで、ふと思い出した。

「小町」
「あん?」

 俺の声に反応するも、顔は向けない。別にいいけどね。口にある林檎を噛み砕き、飲み込む。

「一つ聞いていいか?」

 言い終わってから、一口。今度は少量である。

「いいけど、知らない事は無理だからね」
「ああ、判る範囲で構わないさ。映姫に聞いたいだけどさぁ」

 また一口齧りし、林檎を軽く上に投げて掴みなおす。という、手遊びを始める俺。

「え〜、四季様が知らない事――は、あるか。で、なんだい?」
「うん、姫初めって――」

 次の瞬間、視界一杯に、江戸時代だかのお金が、降り注いできた。同時に、手遊びをしていた林檎は、掴み損ねて地面に落ちる。
 そして――あ、年代モノかなと思いながら、視界が暗くなった。










































第四話

三途の川と永遠亭
〜せっきょうとうさぎのはんぷくよことび〜










































「師匠、いくらなんでも、初対面の人間を実験にするのは、どうかと思いますよ?」

 朦朧とした意識の中、そんな声が聞こえた。つまり、意識は不完全だが、肉体に戻ってきたのは確かだった。現に、額が冷たい感覚に襲われる。多分、濡れた手拭い辺りでも、額に置いてくれたのだろう。さらに、会話の部分から、注射した医者では無い事は確かだ。これで医者だったら、本気で泣くぞ。

「ウドンゲ――後で私の部屋に来なさい」
「ちょ、私、何か地雷でも踏みましたか!?」

 何気に理不尽だな。と、思いながら、段々と意識がハッキリしてくる。

「よくもやってくれたな、マッドサイエンティスト」

 俺は、ハッキリした意識で、辺りを確認。元凶を認知してから、言葉を放った。

「あら、思ったより早かったわね」
「ふざけんなぁ、年増」

 一応、治療してくれた人だと思うので、ババァではなく年増と暴言を吐く。
 すると、徐に両手がポケットに向かい、何かを取り出し始めた。だが、俺は見えた。最初に見せた奴――脅しで見せた薬を。

「すいませんでした!!」

 自分の状態を無視して、全力で土下座を起こった。体は痛かったが、生存本能が勝った結果である。マッドサイエンティスト辺りから、「だったら、最初から言うんぅじゃないよ」的な視線が突き刺さる。いや、口が悪かったのは認めるけど、人体実験をやったのはどうよぉ。

「まぁいいわ。顔を上げなさい」

 俺は、指示通り、顔を上げた。すると、左肩が叩かれたので、顔を向けると……親近感を覚えそうな涙目の笑顔を向けている、鈴仙。
 本当に、苦労人だと悟るが、同属視はやめてくれ。俺は、お前とは違う的な視線を飛ばすが、それを受け入れつつ笑顔を絶やさない。うん、完全に親近感を覚えられたな。と、感じながら、鈴仙の笑顔を見なかったフリをして、マッドサイエンティストに声を掛ける。

「ところで――えっと……すいません、名前は?」

 マッドサイエンティスト言いたいが、薬で三途の川は御免被る。

「ああ、自己紹介がまだだったわね。私は、八意永琳。ここ永遠亭で医者をやっているわ」

 そう言い終わる辺りで、俺の横に座る八意さん。マッドサイエンティストであり、医者して認識しない方針。

「八意永琳、さん、ですね――あ、自分は八雲空と言います」

 この辺は、丁寧口調。その辺は、いくらなんでもメリハリはあるから。
 で、その言葉に、八意さんは眉を顰めるも、思い出したように顔を明るくする。

「八雲? ああ、白玉楼の庭師さんが言っていた、新しい従者ね」
「ええ、何故かね。で――」

 と、紫さんとの出会いから気絶する前の出来事、自分の能力を話した。特に、能力の方は話すなと言われてないし。でも、触り程度で、自分でも分からないと伝える。マッドに情報を与えすぎると、こっちの身が持たないから。

「そう……ただの人間が、あの八雲と近い能力を使う事ができるなんて」

 その瞬間、背筋に寒気と戦慄が走る。

「私の研き――」
「謹んでお断りさせて頂きます」

 なんだろう……アニメとか漫画にある、人体実験を思い浮かべてしまった。それ以前に、先ほど実験されたからな。もう三途の川には行きたくない。何故か、って? 尋ねただけで、力技で現世に生還させられるから。
 うん、触りだけでもこの反応。今後、能力の説明を求められない限り、黙るか濁すかの方針にする。

「そう――残念だわ。紫に直接交渉でもしようかしら」

 何かトンでもない事を口走りましたよ、このお方!? 紫様、お願いですから、許可しないで下さいよ!? マジで命が危ういから!? だから鈴仙、「アナタも仲間ね♪」的な笑顔を向けないで!! ってか、次からウドンゲインと呼ぶぞ!!

「まぁ、冗談は――」
「冗談の一言で片付けないで下さい、マジでお願いします」

 凹みながら、八意さんに言う。言っておかないと、次にどんな発言が飛んでくるのか判らないから。言っても、無駄だと思ってしまうのが悲しい。

「そうね――ウドンゲ」
「はぁ、はい!」

 今まで放置されていた鈴仙。笑顔が消えて涙目だけに。だが、そんな事も気にも掛けずに言う八意さん。アンタは鬼だ。悪魔だ。欲望の魂を捧げるタイプだ。そこだけは、何が何でも否定させないぞ。

「あとはお願いね」
「はい――って、何もしてないのに?」

 あ、確かに。と、俺は心の中で納得し、何と無く頷く。

「彼と貴女は、気が合いそうだから」

 そう言って立ち上がり、襖に手を掛けて振り返る。うん、気が合いそうだな――被験者同士。

「私より、色々話に花が咲くでしょう」

 それだけ言い残して、部屋から出てってしまった。
 ……どうしろと? 気絶前に出会ったばかり(一時間あるか無いか)の人と、どんな花を咲かせれば良いんぅだよ? あ、まさか、今後の被験者の心得でも聞けと? 御免被る。
 お互い、どうすれば良いのか判らず、その場に留まるばかり。

「そ、そういえば!!」

 と、鈴せぇ――もとい、ウドンゲインが声を出した。

「くっ、薬を打たれた時は、その……大丈夫でしたか?」

 そう、途中で躊躇していたが、勇気を持って聞いてきたウドンゲイン。その勇気には、敬意を表してやろう。ウドンを統べる者よ。

「三途の川に行ってきたよ」
「ふぇ?」
「三途の川。ここの天井を見る前にも、行っているからな。二度目だ」

 俺の言葉に、完全に固まる鈴仙。下手すれば、自分自身が実験体になっていたのだ。固まるのは、無理も無いだろう。だが、お前が近くにいた時は、容赦無く身代わりになってもらうが。

「――――!?」

 急に、鈴仙がビクッと、体を硬直させる。そして、辺りを始めた。うん、やはりウサ耳があるだけに、動物の本能が働いたのだろうか。俺の考えを察知して、周囲警戒を始めているのだから。だが、安心しろよ、鈴仙。生贄は、ここぞという時に使うモノなのだから。
 まぁ、この辺で黒い思考はやめにするか。いざという時に勘繰られては、元も子もない。

「急にどうした?」
「――あ、いや……何だか、背筋が寒くなったから、ね」

 言葉を濁す鈴仙。やはり、日頃から苦労人をやっている証拠か。

「あ、ちょっと、飲み物でも持ってくるわね」

 そう言って、立ち上がる鈴仙。あと、角度的にスカートの中が見える可能性があるので、顔を背けた。

「うぁ!?」

 不意に鈴仙の声が上がったので、顔を向けると――バカン!! とう音を立てながら、犬神家の如く、上半身が畳を抜けて地面に刺さっていた。
 当然の如く、彼女の下半身の履物はミニスカートなので、パンツが丸見え状態に。俺は、咄嗟に顔を背けると、別のウサ耳の女の子がいた。
 そして、手を差し出してきた。

「見物料」

 何をほざいているのだ、このちびっ子は。

「鈴仙、まず助ければいいか? それとも、この小さい子どもを絞めて良いか?」

 何と無くムカついたので、そう鈴仙に尋ねた。

「てゐを絞めるのは後でできるから、先に助けて!」

 そんなお言葉が返ってきたが、一言言う。

「パンツ丸見えだけどいいか?」
「…………誰か呼んでくれない?」

 あ、パンツ見た事は、不問か? いや、パターン的にしばかれるのか。

「誰も来ないよ」

 鈴仙と俺の会話に、割り込みを掛けるてい? と、呼ばれる女の子。挙句の果てに、道を塞ぐ始末――マジで、どうしろと?

「てい? でいいのか?」
「ていじゃないよ、てゐだよ。ちなみに字はこれ」

 と、ポケットから取り出した紙と筆ペン取り出して、『ゐ』を書いて見せてきた。
「『ぬ』?」
「『ゐ』と書いて、『い』と発音するのさ」

 ああ、昔の字であったな。
 確か、どこかの山道に一文字書かれた看板があり、坂を上り下りする時に見られる場所がある。
 と、小学校で聞いた事がある以前に、行った事があったぁけ。もう覚えていないけど。
 で、再び手が差し出されるが、叩いて返す。大人気無いと思うが、これくらいやってもバチは当たらないだろう。お子様の教育のためにも。

「鈴仙、あとでビンタ――されたくないけど、しても良いから、救出させて貰うぞ」
「あ!! 能力で何とかなりませんか!?」

 確かに名案だけど、一つ問題があるんぅだよね。

「座標が判らないから、能力での救出は無理だ」

 空間把握能力に乏しいというか、どこまで埋まっているか判らないから。だけど、やってみるか。

「けど、やってみる……が、変な所に開いたらごめん」

 そう良いながら、何と無く想像して開いてみる――速攻で閉めた。
 吐き気に襲われるも、何とか耐える。
 なお、開いた場所は……多分、鈴仙の胃の中だと思う。それを肯定するように、返事が返ってきた。

「あの……お腹の中が、一瞬だけ変な感じがしたのですけど?」
「すまん、普通に助ける。ビンタして良いから」

 そう言って、パンツが丸見えの足――太もも部分を抱えて、大根の要領で引っこ抜く。あ、パンツの色は白ね。で。

「痛い!?」

 鈴仙を抜き終わった瞬間、問答無用でビンタされた。自分で思うが、いい音を出していたと思う。だが、自分の顔が、吹き飛ぶくらいの力って、どれくらいだよと思う。

「ほぃっと」

 しかも、顔の側面が地面と水平になった瞬間、てゐが顔に手を置いて跳び台扱して、飛び越えていった。

「――ぁが!?」

 その際、勢いの加速が付いて、畳に側頭部を叩き付けた。俗に言う、援護攻撃か追加ダメージといったところである。が、正直、勘弁して欲しい。

「こら、てゐ!! 待ちなさい!!」

 顔を畳に沈めている最中に、鈴仙はてゐの追撃を選んで、飛んでいった。鈴仙の薄情という訳ではないので、問題は無いと思う。が、てゐは、後で仕留めないと。と、思うが、絶対懲りないタイプなので諦める。

「……いってぇ〜……」

 左頬と右の側頭部を擦りながら、言葉を出す。
 で、ここまでの状況確認。
 案の定、鈴仙にビンタされた。まぁ、下着の色とデザインを拝見し、あまつさえ両足を抱きしめたのである。この程度で済んだと思えば、本当に安いものである。
 だって、スペルカードとやらを叩き込まれたら、命がいくつあっても足りないと思う。え、霊弾? ああ、光の玉ね――現に生きているから、相当の集中砲火を浴びない限りは、大丈夫だと思うが、油断はしないでおく。
 なお、殴った本人は、てゐを追いかけて廊下に出て行ってしまった。そのてゐのせいで、追加ダメージが発生。叩かれた際の勢いを利用? されて、地面に叩きつけられたのだ。利用したかは疑問だが、てゐの行動を考えて、利用したと考えても良い。

「とにかく、どうするか」

 そう呟きながら、身なりを確認。
 見慣れない服――というか、江戸っ子が着ていそうな服を纏っていた。多分、患者用か、来賓用の服だと思う。動く訳には行かないと思うが、鈴仙はてゐを追いかけていったので、途方に暮れるしかない。

「何か、あるかな……あ、知恵の輪発見」

 待っている間の時間潰しに、何か無いかと辺りを見回すと、知恵の輪が転がっていたので拾う。まぁ、言わずとも黙々と解き始める、俺。部屋の中に、金属音だけが響く。

「……あ、解けた」

 どうやら、誰かの途中だったらしく、あっさり解いてしまった。ので、今度は解く前の状態にする為に、カチャカチャと鳴らし始めた。
 そして、数十分後。

「ああ、いたんだ」

 と、開いていた襖の間から、てゐが顔を出してきた。

「いたんだじゃないよ」

 手に持っていた知恵の輪を解くのと止めて、てゐの方に顔を向ける。何度見ても、コスプレっぽく見える。ついでに、先ほどの件の怒りも沸くが、ここは抑える。

「で、何のようだ?」
「何の用でしょう?」

 俺の問いに、問いで返してくる腹黒ウサミミ幼女。しかも、笑顔が黒く見える。
 うん、ココに来て、生存本能が上がったのか、何と無く判るようになった――と、思う。いや、臨死体験も経験したから、間違いなく上げっている。

「まぁ、実は……鈴仙の事なんだけどさぁ〜」

 そう言葉を紡ぎだしながら、如何見ても裏がある笑みを浮かべてくる、てゐ。

「何だよ……って、そういえば、お前を追っていったのに、何で帰ってこないんだ? 巻いたのか?」
「違うよ」

 俺の疑問を、一言で片付ける。

「罠に嵌めてきた」

 変わりに、とんでもない事を言いきった。

「嵌めた!? どこで!?」
「庭のどこか。助けに行けば?」

 先の件もあるので、行くべきだろうが……これも罠に決まっている。決まっているのだが、行かなければならない。

「鈴仙姫は、アンタの助けを待っている!!」

 と、親指を立てて、サムアップする。
 それを見た俺は、ため息を吐きつつ、鈴仙の不憫さに同情の念を送りながら、その場から立ち上がった。知恵の輪は、結局元に戻せなかった。理由は、最初の形が判らなかったから。見本があれば、想像は容易くなるだろう。しかし、見本が無い状態で、元に戻せというのは、絵柄も無い真っ白なパズルを組む様なモノである。例えの方が、ピース数によっては、難解なのかもしれないが。











































≪提供≫
久遠天鈴
ニコニコ動画
永遠亭
三途の川
サークル・闇砲










































≪予告という名の予定≫ 第五話

兎妖怪
〜さぎうさぎのいたずら〜











































第四話
END




















あとがき
 姫初めとは、昔の新年初の男女の合体用語である。(挨拶
 それ以上、詳しい事は自分で調べてください。ここのサイトだと、権限削除以前に、公開してもらえないので。自分のサイトじゃ、ギリギリラインを書いていますけどね。(汗
 最初の永琳のやりとりが、少し判りにくいですが、あくまで主人公視点なので、混乱している状態を書きました。(言い訳に近す
 だって、人間混乱すれば、こんな感じでしょ?
 で、何とか、追加の四話目完成。説教オンリーに使用ともいましたが、いい言葉が見つからなかったので、この様な感じに。できれば、少し違う展開になっていたかも。学の低さに泣きを見る、俺。でも、説教できる人は、一種の才能ではないかと、作っていて思いました。
 では、五話目で――っていっても、ここに詰めた分を穴埋めする様な感じ。あと、修正程度なので、リアルの関係を抜かせば、早く出来ると。


参考書物
・【決定版】忍者・忍術・忍器大全(定価:580円・税込み)
・林檎とワックスの関係(参照サイト:http://bigsexy.mediacat-blog.jp/t16155)
※このサイトのみの見解の為、100%鵜呑みにしないでください。