この物語は、作者であるダークバスターの二次創作『東方空物語』のIF話です。
 よって、オリジナル設定&時間のすっ飛ばしあり。
 さらに、主人公のスペカネタバレもあり。ただし、詳しい解説はありませんので、ご了承ください。その辺は、本編(東方空物語)で説明します。(使用するか、現時点では未定ですが)
 さらにさらに、ここの話限定の設定(の予定)もあるので、本編と混ぜない様、ご注意をお願いします。















































「男なら、責任を取りなさい」

 我が主であり、今俺がいる世界――幻想郷に引きずり込んだ存在であるお方、八雲紫からの言葉である。
 今いる場所は、マヨイガではなく、博麗神社の一室。その中に、俺と主の紫、上司であり主の従者である藍、代表の閻魔王が二人いた。
 本来ならば、もっと多く来る予定だったらしいが、部屋の大きさの関係上、人数を限定した結果である。もっとも、襖を全開。外からでも、余裕で見えるようになっている。
 護衛役兼付き添いの死神が数名、博麗神社の主である霊夢、さらに草むらから隠れているようで隠れていない文。メモを取りつつ、カメラをパシャパシャ。静かなので、俺のところまで聞こえます。っーか、少しは自重しろ、パパラッチ。

 そんな、空気がギスギスした中、俺は堂々と正座している。そして、紫に既に決まった返事を返す。

「はい、心の準備というものがありますが、必ず責任を取ります」

 俺は、主にそう頭を深々と下げながら答えた。

「ですが、一言。一言だけ言わせてください」

 今、俺は主に、言わなければならない事がある。いや、何が何でも言わなければならない。

「いいわ。言って見なさい」

 その言葉に、俺はゆっくりと顔を上げ、主の顔を見てから口を開いた。

「てめぇにも責任があるだろうが、ババァ」

 思いっきり、主に暴言を吐いたのだった。











































東方愛物語
〜とうほうそらものがたり〜










































「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 俺は、ボロボロに穴の開いた地面の無事な部分で、四つん這いになりながら、息を整えていた。
 先ほどの俺のババァ発言を機に、紫との弾幕勝負へ。発言撤回を求める紫と、責任の追及を求めた俺の戦い。巻き込まれた連中には、いい迷惑である。
 実際に、所々の穴の中心に、黒い煙を出しながら倒れている奴もいる。藍だったり、付き添いの死神だったり、文だったり、魔理沙だったり、閻魔王だったり。
 ちなみに、俺はスペルカード≪装符「鋼の巨人」≫を使っているので、体はバルディオスになっている。
 なお、バルディオスは、昔のロボットアニメの機体なので、明らかに図体がデカイと思われる。だが、スペルカードに『どんなに大きくても、2メートルまで』と、いう制約を設けているので、問題は無い。
 あ、言っておくけど、変形・分離・合体は不可。人間の構造に惹かれるので。よって、バルディアスの最強技である『バルディロイザー』は使用不可能。あれは、相手に最大出力によって火の玉と化したバルディオスが体当たり、敵内部で強制分離によって相手を引き裂く技。よって、分離を行う技なので、『サンダーフラッシュ』までしか使えない。一応、『サンダーフラッシュ・フルパワー』というものがあるが、今一判りづらかったので、使用不可能である。
 話は戻って……俺は、段々膨れ上がる感情に、体を振るわせる。
 そして、立ち上がり――俺は叫んだ。

「勝ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 人生初の、主からもぎ取った勝利。勝利なのだが、始めた理由がロクでもないので、何気に泣けてくる。っーか、逆に叫んだせいで悲しくなった。

「――何をやっているのですか、貴方たちは」

 その呆れ口調の言葉に、バルディオスから元の人間の姿に戻り、後ろを振り向く。

「いや……ちと、なぁ」

 俺は、声の主に、苦笑しながら答える。

「まったくもう……」

 あ、肩を落としながらため息を吐いた。やっぱり、この惨状を見れば、呆れられるのは当然といえば、当然か。

「じゃあ、返事を聞かせて頂きます」

 その言葉を聞いた瞬間、息を深く吸って吐いた。

「俺と……結婚前提で、お付き合いしていただけませんか」

 疑問系ではなく、ハッキリと答えた。それが、彼女への、今この場での、俺の最大の誠意。何の駆け引きも無く、騙しあいでもなく、純粋な想いのぶつけ合い。またぁ、受け止め合いでもある。
 その言葉に、彼女は目を閉じ、口を噤む。
 それによる沈黙。
 俺は。俺が、焦る事も無く、ただ待つ。

「…………喜んで」

 そう微笑みながら、彼女――映姫は答えてくれた。
 ここに、一つの愛が生まれた。











































外伝
すれ違い
〜しきえいき・やまざなでぅ〜










































 あれから、往く時も経ち、人間の知り合い―― 一部の人間は除く――は、映姫によって裁かれ、あの世へ行った。
 俺? 俺は、閻魔王の計らいで、死神をやっている。給料もちゃんと貰っているし。あ、八雲の名は返上して、四季 空(しき くう)という名でいる。
 仕事の内容は、映姫のサポートと、小町の監視。監視の方は、それなりに緩い。実際、小町は仕事がめんぅどくさい訳ではなく、それなりに理由がある。理由は、語らないでおく。本人が、それを貫いている限りは。
 話は戻り、生前は色々あり、それなりに楽しく、虹の様に輝いていた日々だった。そして、死後は死後でまったり過ごしている。
 何故、死神をやらせてもらえているのか? 閻魔王の取り計らいとしか言えない。本当に、それ以上の言葉が見当たらなかったから。逆恨みかもしれないが、それはそれで仕方が無いかもしれない。紫との大乱闘に巻き込んだから。
 あ、言い忘れたが、スキマの能力は今も健在。パシリ役として、他の閻魔からも頼まれる。
 で、今は、他の閻魔から、おつかい――というか、私用を頼まれた帰りである。

「あ、空さぁん空さぁん空さぁん空さぁん!!」

 ちなみに、現在は中有の道。その店の一つ≪薬缶帝≫という、飲み物全般の店。最初は、お茶系の専門店だったが、余りはやらないとの事で色々取り扱うようになった。
 その店の一人娘兼看板娘をしている女の子――芦島 杏(あしじま きょう)が、声を掛けてくる。
 毎度毎度、この店の前を通る度に声を掛けてくるので、映姫の機嫌が良く無くなるので、少しは勘弁して欲しい。だが、無碍にするわけにもいかない。

「今日は何だ?」

 すると、杏は俺に寄り添い、体を預けてきた。荷物は手荷物なので、片手で持っていても問題は無い。ってか、まず離れて欲しいのだが、10年前からこんな感じなので、もう諦めている。
 一応、死神を始めてから100年以上は経っていると思う。詳しく知るなら、事務所に顔を出すか、映姫辺りに聞けば良い。あ、俺を裁いたのは映姫じゃなくて、あの時の話し合い――以来、≪博麗私闘事件≫と呼ばれる――参加した閻魔王の一人を、サンダーフラッシュで巻き込んだ方です。あれ、小隊攻撃なんだよね。
 言っている事は、思念丸出しでしたが、キチンと裁かれました。でも、死神認定の試験に、雑用ばかりやらされていたのは気のせいだろうか。5年ほど。

「今日はお暇ですかぁ?」

 色声を出しながら、俺を誘う。できれば、こういう行動はやめて欲しい。映姫がみたら、またケンカになる。

「いや、まだ仕事の途中なぁんで……」

 でも、突っ撥ねた様な言い方が出来る訳でもなく、普通に断る。

「ええ〜、どうせパシリなぁんでしょ?」

 否定できないのが痛い。痛いけど、一応仕事になっているので。あ、パシリ根性が染み付いたか?
 だから、俺に体を預けないで。そして、胸板を人差し指で、円を描くようになぞるな。ああ、周りの視線が相変わらず痛い。

「パシリは否定しないが、それでも仕事には変わりない」
「少しくらい」
「穏便に帰らせてくれ」
「別れちゃえばいいのに」
「死神をやっている意味が無くなるは」
「ならぁ〜……火遊びは、い・か・が?」

 上目使いで、俺の顔を見上げてきた。大抵の奴は、多分コレで落ちるだろう。落ちるだろうが、俺には効かない。
 鈴仙とか、パルシィとかの概念能力は効くが――って、これは関係無いか。と、場違いな事を思う。まぁ、言葉はすでに決まっているけど。

「はぁ…………俺は――」
「――俺は……何ですか?」

 ため息を吐き、すでに決まっている言葉を言おうとした瞬間、後ろから聞きなれた声が聞こえた。
 ゲームオーバーかよと思いながら、後ろを振り向くと――般若の様な覇気を出しつつも、涙目で俺を見ている映姫がいた。
 つまり、プラマイ零ではなく、少しプラス程度に抑えられている様な感じ。けど、涙目と言う事は、また勘違いしている証拠である。でもさ、何でスペルカードを握り絞めているのかな? 弁解くらいさせて欲しいなぁ。あと、京はすでに離脱済み。この辺は、行動早いなと感心してしまう。などと現実逃避はここまで。

「まっ、待て、映姫!」
「五階も六階もって、アパートですか!? 問答無用――≪審判「ラストジャッジメント」≫!! 天誅ここに極まれ!!」
「ま――」

 思考する暇も無く、俺の視界は一瞬にして白く染まった。そして、この勘違いは何度目だろうなと、白い光に意識をゆだねていった。





「ぃってぇ〜」

 ボロボロになりながらも、おつかいの品を手に、飛行する俺。
 映姫のラストジャッジメントによって、≪薬缶帝≫の向かいに合った≪極楽往生≫という飲食店が吹き飛んだ。何でも、儲かっているにも関わらずに相当な額を滞納していたらしく、オマケで破壊したらしいとの映姫の弁らしい。
 オマケ扱いでの職務真っ当……職権乱用?

「しかし……問答無用で、ラスジャを撃たなくても……」

 そう呟きながら、三途の川の上空に差し掛かる。

「小町は……」

 ふと、下を見ると……案の定、小町が昼寝、ではなく黒焦げになっていた。多分、映姫のとばっちりを貰ったのだろう。
 今回の倒れ方は斬新で、犬神家になっている。詳しく説明すると、上半身は地面に埋もれ、足が蟹股に開いている状態を指す。それをやったのが、映画≪犬神家≫である。ただ、この格好には問題がある。スカート系の服をはいている場合、パンツが丸見えになってしまうのである。
 俺は、颯爽と降り立ち、小町に歩み寄る。

「何気にアダルティーなパンツを履いてるな」

 などと発言しながら、捲れたスカートをかぶしてから、脛辺りを叩く。
 反応無し。
 いくら死神でも、死ぬ可能性はあると思う。だって、空腹を感じる――つまり、お腹が減る。何も食べなければ餓死。餓死は死ぬ一つの結果。
 よって、死神や閻魔にも、少なからず≪死≫の概念があると踏んでよい。ただ、寿命が果てしなく無い。もしくは、存在しないだけなのかもしれない。
 で、恒例の大根引っこ抜き。で、小町の頬を、軽く叩く。

「お〜い、生きてるかぁ〜」
「…………」

 無言。耳を口元に近づける。すると、小さな呼吸音が聞こえる。

「……息はあるな――お〜い、生きているかぁ〜」

 と、言いながら、再び小町の頬を、軽く叩く。
 それは、十五回くらい繰り返していると、小町が唸り声を上げる。

「……あ、あれ? 空、か?」

 目をゆっくり開け、俺を認識して声を出す。

「ああ、そ――」

 いきなり胸倉を掴まれて、小町の方に寄せられる。

「またかい?」

 小町の目が怖い。多分、映姫の八つ当たりよりも、泣かしたことの方が大きいだろう。なので、ここは素直に答える。

「……はい」

 目を反らして答えたけどね。

「はぁ〜……ホントに何度目だぃ」

 呆れ口調と態度を見せる小町。そして、俺の胸倉を離してくれたので、立ち上がる。そして、小町にも手を出して、立つのを手伝う。

「面目ありません」

 その場に正座して答えるべきなのだと思うが、地面が石ころだらけなので、立ったままうな垂れる。
 小町は、肩を落としてから自分の舟に乗り、櫂(かい)を手に取る。あ、楷はオールを日本語にした言葉だ。

「ほら、乗りな」
「ういっス」

 小町の言葉に返事を返しながら、舟に乗り込む。俺も死神であるものの、三途の川を行き来する死神ではないので、舟は持っていない。あっても、精々レンタルである。
 あと、閻魔でなければ、三途の川を飛ぶ事は許されない。閻魔は人手不足だが、死神はそれなりにいるらしく、閻魔城の手前のとがった岩山から監視しているらしい。知り合いがいないので、どんな仕事の仕方のかは不明。
 で、小町の能力――距離を操る程度の能力をつかって、とがった岩山の入り口辺りまで到達。閻魔城の岸手前までいけばいいと思うが、先ほど言った監視役の死神に、姿を見せないといけない決まり。一応、能力による不法侵入が無いかの確認をしている。とは言え、ここまでくれば大体十分位で着く。

「で、今回は、何が原因だい?」

 と、とがった岩山に入った瞬間に、声を掛けてきた小町。十分ほどで着くとはいえ、少し退屈である。基本的に、流れ作業と変わらないから。

「……薬缶帝」
「またかい」

 俺の一言で、ゲンナリする小町。理由は、映姫が泣く原因の三分の二が、薬缶帝の娘絡みなので。

「ったく、あの娘も懲りないねぇ〜。大体、空がハッキリと言わないから、こんなことに成るんだよ?」
「申し訳ありません」
「はぁ〜……ほら、荷物を渡しな。アタシが持っていってやるよ」

 手を差し出しながら、小町は言う。そして、俺は、その手に荷物を渡しながら答える。

「では、お願いします。閻魔は、阿蘇柁さんです(あそだ)」
「あいよ。で、何を頼まれたのさ?」
「私用ですからね、内緒で」
「へいへい」

 と、言いながら、小町は足元に荷物を置き、再び櫂を漕ぎ始めた。
 そして、城の前の岸に着き、小町と一緒に門を潜る。サラリーマンの様に、忙しなく動く死神たち。受付嬢役の死神――えっちゃんこと、エリバ・ツティースから、「あら、四季様から小町に乗りかえたの?」などと発言を貰い、スキマ送りにした。
 スキマ送りと言っても、元主である八雲紫のスキマ送りとは、モノが違う。簡単に言えば、別の場所に落とすだけ。紫みたいに、スキマ内で色々な事が出来る訳ではないから。あとで報復があるけど、気持ちをマイナスにしたくない。それと、八つ当たりだけど。

「じゃぁ、俺は映姫の下に」
「ああ、頑張りなぁ」

 と、中央の部屋から少し行った通路で、小町と別れる。
 俺は、ただ一人、誰もいない長い通路を歩く。この長い通路で、裁かれるのを持ったり、歩いている最中に生前を思い出したりなど、思い返す通路でもある。俺の場合は、これから起こると思われる出来事で、頭が一杯である。なを、それなりに距離があるので、ホバーリングで移動中。ドムだぜ、ドム。ホバーリングの代名詞の機体。
 で、映姫いる裁判の間の扉の前についた。

「さて……と。どうするか」

 まず、小町が犬神家状態だったので、霊はいないので書類整理中だろう。ならば、普通に入ってみる価値はある。
 コンコン、と、普通に扉を叩く。

「誰ですか?」
「俺です」
「…………」

 沈黙が帰ってくる。だが、自分の脳内警報が騒ぎ出す。
 俺は咄嗟に、スキマを展開して、滑り込む。本来、死神をしている間は、閻魔をやっている奴から、許可を貰わなければならない決まりがあるのだ。
 何でそんなめぇんどくさい事をと思うが、三途の川を一瞬で跨ぐ事が出来るからである。さらに、スキマからなので監視が出来ないのである。故に、どんな理由であれ、能力使用は始末書モノではあるが、この回避方法は間違いで無いと踏んでいる。
 案の定、出口のスキマから顔を出すと、扉越しから閃光が迸っていた。ラストジャッジメントを、問答無用で叩き込んだのだろう。なお、扉の弁償は、自動的に給料から天引きされる。

「今度、川渡しの方に回してもらおう」

 三途の川渡しは、月給は低いものの、運賃として貰った代金の半分を貰うことが出来るのである。一応、全額貰っても問題ないのだが、使っている舟と櫂が破損した場合は、自腹を切らなければならない。よって、半分くらい収めていれば、修理代は閻魔城が持ってくれる。俺の場合は、レンタル料も掛かるので、三〜四割である。まぁ、小町の様にサボらないで渡せば、いい額が貰えるのだから。
 で、今後の事はここまでとして、スキマから出てきて、穴の開いた扉に向かう。

「映姫、話を――」

 穴から顔を覗かせた瞬間、大量の悔悟の棒が視界に広がって、こちらに飛んできていた。

「――ぉぉぉぉおおおおおおおお!?」

 慌てて顔を引っ込めると、穴から飛び出た悔悟の棒が、廊下と壁、天井に突き刺さっていく。言わずとも、映姫の十八番のラストジャッジメント。閃光もそうであるが、大量の悔悟の棒も入っている。
 扉を背にしようとしたが、ガンガン鳴り続けているので、その場に伏せて声を上げる。

「話を聞いてくれ!! でないと、何もかも進まないから!!」

 だが、返事は帰ってくることは無く、仕方が無いのでスキマを展開する。
 そのまま、映姫の後ろから飛び出て、抱きつく。案の定、無言のまま暴れる映姫。だが、そんな事をされても、離すつもりは無い。
 聞く耳持たないだろうから、顔を無理やり映姫の顔に付け、耳元で言う。

「今回もまた、誤解だ」

 その言葉に反応して、攻撃も暴れるのも止める。止めるが、聞く耳は持ち合わせていないだろう。けど、言葉を続ける。

「確かに、言い寄られて振り切らない俺が悪い。それは認める。けど、付き合いってモノもあるだろ?」

 その言葉に、少し反応して、首をゆっくり縦に振る。

「あそこは、娘と仲がいいからって、オヤジさんから安くしてもらったり、時々タダでくれたりしてくれている。不満はあっても、俺たちは平等に接しなければならない節がある。今は、合って無いような決まりでも、最低限のラインは決まっている。違うか?」

 俯く映姫。だが、俺は怒っているわけじゃない。

「嫉妬してくれる事は嬉しい」

 その言葉に、体が少し震えた。

「でも、せめて話くらいは聞いてくれないか? さすがに、いきなり攻撃だと、死神でも持たないからさ……なぁ?」

 すると、俺の手を、映姫が握ってくる。俺も、少し映姫を抱きなおす。
 閻魔と死神。魂の輪廻を、永遠に見続け、導き、裁き続ける存在。決して、無くてはならない存在であり、未来永劫変わらない存在なのかもしれない――業務体形は、変わりつつあるけど。

「……いてくれますか?」

 映姫が言う。

「……当たり前だろ」

 そして、俺が答え、そのまま言葉を続ける。

「だからこそ、そばにいたくて、死神になったんだから」
「こんな女に惚れて、後悔は無いのですか?」
「百年以上経ってぇるんだぜ? 人間の知り合いはいない。いても、現神人から神の末席になった早苗。完全に魔法使いとなった魔理沙くらいさ」
「ですね」
「あとは、蓬莱人と妖怪プラスα(アルファ)位さ」

 俺は、笑って答えた。

「クス」

 映姫も、そう小さく笑った。
 俺が死神になる前――生前の時から、変わることのない想い。しかし、変わらないものなど無い。永遠という名の時間の中、少しずつ変わっていくのが世界。変わりたくない、しかし変わらなければならない。
 もし、永遠に続くのなら、例え離れたとしても、また愛する者の隣にいたい。それだけである。

「ごめんな、映姫」
「いえ、私こそ。何も聞かずに、先走ってしまって……」

 変わり続ける世界の中で、何度でも隣に戻ってくる事を、ここに誓う。










































「――話は、纏まったかね?」

 その声に、俺と映姫は固まり、首をギギギギという音が鳴っても可笑しくは無い動きで、真正面を向く。
 そこには、俺がサンダーフラッシュで巻き込んだ代表の閻魔の方。映姫と同じ閻魔でも、位はあっちが高い。何せ、十王の一人である変成王なのだから。まさに、俺も若かったなぁ〜クラスの代物である。映姫も、多分顔を青くしているよ。うん、トップだぁもんね、十人いるけど。

「では、この惨状の説明を聞こうか」

 夫婦仲良く、裁判のお時間である。










































 あの出来事から、十日目。
 俺は現在、あの時予定していた通り、三途の川渡しをやっている。あの後、閻魔のトップに絞られ、降格などは免れたが、給料の天引きは決定した。
 映姫は、只今謹慎中。謹慎期間は、夫婦喧嘩は家でやれとの事で、壊した部分が直るまで。ただ、特注で作った部分は壊れていたらしく、最低でもあと一ヶ月はでられないらしい。蓄えがあるから、餓える心配は無い。
 で、俺の今の状況は、給料じゃ天引き額が間に合わないとの事なので、先ほど言った川渡しをやっている。無論、代金は全額献上です。ビタ一文も入りません。
 いや、普通に給料が貰えるだけマシだから、文句は言わない。自業自得でもあるし。

「お〜い、空の助ぇ〜」

 と、何故か受付嬢をやっている筈のえっちゃんこと、エリバ・ツティースが、舟に乗り楷を漕いで来る。しかし、片手には新聞が掴まれている。

「どうしたんですか?」
「これよこれ」

 寒気がする様な笑顔を見せながら、新聞を渡してきた。
 手に取って広げる――烏天狗の知り合い、射命丸文の≪文々。新聞≫である。時たま、捏造というか、先走ったモノがあるので困る。
 で、見た瞬間、俺は何もかも固まった。

『地獄の最高裁判長の夫、部下の死神にセクハラ!!』

 という、キャッチコピーが書いてあったから。しかも、小町の足を叩いている時の写真付で。
 仲直りできてから、まだ十日しか経ってないんだよ? 一応セクハラだったけどさ、こんなの乗せたらどうなるのか判ってるだろ。頼むから、自重という言葉を覚えてくれ、パパラッチ。
 この場合、速攻で締め上げたいが、紫に勝てたのは奇跡であり、そう何度も続くものではない。
 なのぉで――

「……――ぁぁぁぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁああああたぁああああああああ!!」

 ほら来たよ……スペルカードを、両手で持てる限り握り締めて。
 とりあえず、櫂をエリバに渡――って、

「いねぇぇぇぇえええ!? 逃げぇんの早――って、いつもの事だ!!」
「小町に手を出すとは胸ですか所詮胸ですよね私は無いです貧乳と普通の中間ですよ!!」

 はぁ!? しま――

「ラストォォォォオオオオ――」

 俺も含めて、全体がスローモーションになった。
 だが、逃げなければならない。せめて、この舟を巻き込むわけにはいかない。だが、範囲が大きすぎるって!?

「閃光が五つ!?」

 閃光は、どんなにあっても一つ。つまり、ラストジャッジメントを五枚同時に使用している事を意味する。

「――ジャッジメントォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」





 あの後、一人の監視員の死神が、こう語った。
 三途の川付近で、光の柱が出たんだが……何故か、調査は行われなかったんだよ。え、何故かって? そりゃあ、十王が決めたことだからさ。まぁ、十中八九、あの夫婦がやらかしたんじゃないの? 起こっても、いつもの事扱いだし。











































≪提供≫
久遠天鈴
ニコニコ動画
三途の川
サークル・闇砲










































変わる世界の中で、変わらない想いを。
されど、時が過ぎれば想いも変わる。
変わるのなら、また変わって、戻ってくればいい。
メビウスの、無限の輪の様に。










































END




















あとがき
 閻魔城とは、(多分)完全な架空の建物です。少ない手元の資料にも、載ってなかったので。
 ネットで調べても、どの様な言葉で検索していいのか判らず。なので、オリジナルに。
 あと、説得の部分が難しい。多少端折った間隔では歩けど、これまで何度もやっているから。じゃあ、駄目ですか?(汗
 そして、何気にシリアスブレイク。
 あとは、ものすっごく簡単なプロットを、初めて作成。消しながら書いていたので、手元には残ってないですが。(汗
 何とか纏まってよかったかな? で、突っ込みを少し期待かな。でも、元から考えていたモノだからね。
 最後に、八雲家がロボットに乗るなら、やはりバルディオスだな。だって、ゆかりんがメインで、あとのサブは藍と橙で決まり。能力だって、丁度同じだから。