読む前に。
 まず、文字が全て中央に寄っていた場合は、EI8などの最新のバージョンの問題です。
 解決するには、一番上ツールバー(人によって違うかもしれない)に □□□ という感じに四角のボタンが3つあります。
 その左のボタンが、互換表示という奴で、押せば設定した通りに表示されます。詳しくは、カーソルをボタンの上に置いて、少し待てば表示される筈です。





 物語を読むに当たって。
 オリジナル主人公&視点で進む。
 オリジナル設定あり&多少違う部分が出る可能性あり。
 東方に関する知識が微妙に曖昧(二次創作との)なので、そこの点をご了承ください。










































「はっ!?」

 目を見開くと、最初に見えたのは天井だった。
 日本家屋特有の天井で、それなりに良い木で出来ている。現在の日本では、数少ない家屋である。
 そのまま首を左右に動かす。
 目に入るのは、襖に畳、タンスと壁くらいである。まだ暗いので、夜が明けていないのだろうが、時間が判らない。
 時間? 時計の確認と思いつつ、腕を見る――時計が無い。
 辺りを見回す――それらしき物は、見当たらないが、そこであの時の事を思い出す。

『人――ではないけど、見かけで判断するのは……だ・め・よ♪』

 慌てて首を振って、思い浮かんだものを消した。っうか、鳥肌が立ったわ。と、両手で二の腕を擦る。
 落ち着いてから、もう一度、落ち着いてから思い出す――たしか、大福を数百個の準備……を、思い出して凹む。
 ともかく、準備するにも台所の使い勝手が、まだ把握しきれていないので準備もできない。

「仕方が無い」

 昨日から着ている服のままであったが、着替えが無い。
 家に帰ればあるが、ここは幻想郷。俺の『力』――もとい、『スキマ』を使っても行けるかどうか。
 目的地が不明確だと、地中や空中に開いたり、人の真ん前に出てしまったりの時もあり、自分の位置が不明ならなお更である。
 転移魔法が、一番判りやすいと思われる。自分の位置から、別の場所に飛ぶ為の魔法。
 Aが自分の位置とし、Bが目的地だとする。Aが断定できても、Bが曖昧なら不可能である。
 というより、危険極まりない。
 転移先が空の上――落下する。高さ、場所によっては死ぬ。
 物体の中――体が埋まってしまい、場合によっては切断される。
 他にもいくつかあるが、代表的なモノである。現に、スキマで似たような事を、実際にやらかしたことがあり、あやうく死に掛けたことがある。
 物凄い精密計算やら、空間把握後に脳内で精密なイメージしなければならないので、このままでいるかどうか考える。
 出来れば、今すぐ着替えたいのだが。

「 ん? 」

 仕方なく立ち上がり、振り返り際に下を向いたら、布団の上に着替えが置いてあった。










































東方空物語
〜とうほうそらものがたり〜











































 下着も一緒にあったので、ありがたく思いつつ着替える――のだが、下着を着てから思う。

「どっから持ってきた?」

 新品に近いが、何度か使った感覚はある。少し緩くなった部分のあるパンツのゴムに、よれよれの肩掛け辺り袖なしのシャツ。
 シャツとパンツ共に、表示のタグ部分の字も、少し薄れている。サイズもあうので、これは――

「俺の家から持ってきた?」

――と、考えを口に出す。俺を帰す気は無いのか。
 ここで暮らすのかは置いておいて、この世界で生きていく事には変わり無く。

「って事は、紫さんに頼めばいいのか――はっ!?」

 自分で行っておいて固まる。部屋には、パソコンゲームの『オ○○○○きさせちゃうぞ♪』や『強○○等』。さらに、『○○狩りは公正である』などの保有がバレればぁ、確実に言い降らされる可能性大。
 むしろ、それをネタにして弄られる可能性がある。あの人――いや、妖怪だっけ? ああもう、とにかくやりかねない。

「…………諦めよう」

 人間諦めが肝心とも言うし。未練あるけど。
 そうしぶしぶ思いつつ、着替えを続行。
 見た目は、自分が持っていた服と同じだったので、広げてみなかったので余り気にしてはいなかったが――所々に、刺繍が施されていた。
 服装は、薄い長袖のシャツとTシャツの二枚重ね風のシャツ。背中には、中国にある陰陽のマークが描かれている。
 ズボンは、膝辺りにファスナーがあり、取り外しが出来る使用になっている。
 しかも、袖の部分に文字らしき刺繍があった。

「手縫い? まさか、何かの術でも封じてあるのか――って、ゲームのやり過ぎだな」

 頭を振って、立ち上がる。布団はどうしようかと考えるも、このままで良いと思い当たり、襖に向かう。
 とにかく外に出て、どこだか確認しないと思いながら、襖を開ける。広がる光景に、一つ確かな事がある。

「この広さ以前に、京都か奈良にある文化遺産の庭の拡大版か。確実に紫さんの家でない事は確かだな」

 うん、今更だが畳や布団の質、さらに立派な掛け軸と生け花――どこかの豪邸の一室と思われる。紫の家――マヨイガの家も、それなりに良い家だが、どこか年季を感じさせつつ昭和テイスト的な雰囲気がある。
 それと打って変わり、今いる家にも年季はあるものの、京都や奈良の文化遺産の中にいる様な感覚に襲われる。年季は、京都や奈良並ではないのは、それよりも新しいからだと思う。
 俺がいた家は、普通の一軒屋。行き成り広い室内に一人でいるのは、どこか落ち着かない。
 そして、通路に出てみれば――地面が白い石で整えられ、木や岩などが絶妙なバランスで配置されていた。様に、昔の日本にあった有名な庭が広がっていた。だが、京都や奈良にある庭よりも広い。
 しかも、高さからここは二階だと判り、下へ降りる階段を探す。
 まず人間は分かれ道で、基本的に左側を選択することがあるらしい。確か。
 なので。

「よし、左からGO」

 探索も兼ねての行動である。
 とにかく、このまま移動。やはり見ても判るが、障子や床、柱に至るまで一級品が使用されている。
 さらに、手入れも行き届いているのは、当たり前だと主張した様な勢い。
 部屋の中も見ようと思ったが、さすがにマナー違反なので止めた。
 で、行き止まりに成っていたので、その場でUターン。
 目印に、自分が寝ていた部屋の襖は開けておいたので、どこからスタートしたのかが判る。
 しかし、デカイの一言である。
 とにかく長い通路を歩いて、ようやくスタート地点に戻り、そのまま通過して目的の降りる階段を探す。
 で、三分もしない内に階段を発見。降りていくと、パタパタと足音が聞こえる。
 人がいるのか? などと当たり前な事を思いつつ、階段を下りる。
 そこには、刀と小刀と訳の判らない存在をつれた、白髪のお河童の髪型をし、緑がベースの服を着た小柄な女の子と鉢合わせする。

「あ、起きられたのですね!? ちょうど良かったぁ〜」

 俺を見るや否や、いきなり涙目になる女の子。
 目尻にあった涙を取ってから、俺の手を取って引っ張る。

「え、ぁの、どこへ!?」
「台所です!!」

 俺の脳内は混乱の一途を辿り、成す術も無く連れて行かれた。その途中で橙とすれ違い、挨拶である軽い会釈を交わした。俺はやった時に、すでに橙を越え始めた辺りだったので、多分橙は俺の背後にやったか、唖然と見送ったかのどちらかだと思う。
 物凄い量の大福を乗せたお盆を持っていたが。漫画で見るような量に、俺の目は点になったような気がした。それとついでに呆気に取られ、引っ張られた勢いで通路にぶっ倒れた。
 で、何だかんだで、台所。
 そこは――戦場であった。
 物凄い勢いで、藍が次々と大福を作り上げていく。もうコレでもかと言うほどの量である。
 すでに作り置きの山が、三つ。急斜面のピラミッドというより、頂点が高い円錐に近い。しかも、倒れない様に、絶妙なバランス感覚で出来ている。

「おお、無事だったか!?」

 藍がこちらを向いた時に放った、第一声。

「とりあえず、何が無事なぁんだ?」

 そういいながら、俺は藍の方へ歩み寄る。

「覚えていないのか? 紫様のスキマに突き落とされた事を?」
「スキマ……ああ、お前と橙が手を合わせていた事を確認した以降の記憶は無い」

 思い出し、自業自得だが見捨てた出前なので、皮肉を込めて言った。

「それは……まぁ、理解しているのなら、以後気をつける様に。ちなみに、対抗策は無いからな」

 そう返しながら、すり鉢で小豆をすり潰す藍。その動作は、まさに機械的な動きであり、均等にすり潰していく。まさに、無駄の無い動きである。
 で、対抗策は無い――うん、あの時既に悟りを開いたから問題は無い。突っ込み所は満載かもしれないが。

「では、こちらに」

 女の子に指示され、作業先へ移動する前に確認することがあった。

「あっ、ああ――って、所で君は?」

 俺の言葉に、「あ、自己紹介が未だでしたね」と言いながら、こちらに体ごと顔を向ける。

「あ、申し送れました。私は魂魄妖夢」

 そう言いながら、軽い会釈を行う妖夢。
 だが、その言葉に俺は、昨日の事を思い出す。

「? 魂魄妖夢って――ああ、昨日藍さんが言っていた。ってぇ事は、ここは冥界?」
「はい、その通りです」

 剣士であり、庭師である魂魄妖夢は、俺にハッキリと言った。










































第二話

亡霊
〜はらぺぇこひめ〜











































「では、こちらをお願いします」

 作業場――といっても、部屋の中央部分に置かれたテーブルに案内され、置かれた物を見せられた。
 台所の作業場の上には、大量のもち粉があった。

「つまり……大福の皮を大量生産しろ、と?」

 その言葉に、妖夢はコクリと頷く。
 藍と同じで、主人に苦労しているのだな、と思った。だって、二人に何と無く掛かる影は、同じ哀愁を放っていたから。
 まぁ、度合いは違うようだけど。

「しっかし、紫さんは料理をしなくなったんだ?」
「それは聞かないでくれ」

 俺の言葉に、一刀両断を放つ藍。影が掛かったので、これ以上の追求を止めた。
 仕方なく、作業を始める――もち粉に自分の直感で水を加え、こね始める。

「……ば、すでに……」

 と、藍が何かを言ったが、よく聞き取れなかった。
 特に気にする事無く、少しだけ向けた顔を戻して作業に戻った瞬間、ゴォ! っと、言う音と光が背後から降りかかった。
 慌てて振り返ると、藍が七色の光の柱に取り込まれていたのである。
 なお、天井辺りに赤いリボンが付いたスキマが見えたので、犯人は紫だと一発で判る。多分、下の方にもスキマがあるのだろうと確信する。が、俺は硬直状態のまま、光が収まるのを見届ける。
 途中、橙の声が聞こえたと思うが、気にしている余裕が無かった。目の前で起きている光景が、あまりにも漫画的展開が成されていた為に。
 そして光は消えて無くなり、スキマも瞬時に消え、所々に黒焦げの跡がある藍は、その場に落ちた。

「らっ、藍さん!? 生きてるかぁ!?」

 俺は大慌てで駆け寄る。妖夢も、作業を止めて翔って行く。
 少しだけ抱き起こすも、少し焦げ臭くて、うっ。と言ううめき声を出してしまう。

「藍さん、大丈夫ですか!?」
「……あ、ああ……いつもの、事――だ」

 妖夢の返事に答えるも、カクッと首を落とし、完全に気絶する藍。
 お陰で、いつの間にか戻ってきて錯乱する橙と、オロオロする妖夢の二人を落ち着かせる。
 妖夢は、オロオロするだけだったので、落ち着かせれば問題は無い。だが、橙は藍の両肩を掴んで前後に素早く揺するのである。そのまま放置すれば、本気で逝きかねない。
 なので、調理を俺が全て引き受ける事を伝え、運び役に妖夢、藍の看病役に橙が付いた。
 量を考えると、妖夢がやるべきだと考えるが、紫とここの主である幽々子のいる場所が判らないから。案内している時間も無いらしいので、俺がやる事に。

「さぁ〜て、調理スピードは格段に落ちるが――やれるだけやるか」

 そう宣言して、擦り掛けの小豆もとい餡子に手を掛ける。
 それなりの量であるが、終わり掛けだったのが幸いであった。
 紫は、多分藍の作業が終わってから、攻撃を仕掛けたと考える。よって、今目の前にある餡子は、完成していると踏んで良い。
 だが、俺は納得できなかった。この粒餡か漉し餡か判らない、中途半端な餡子が。
 だから俺は、今一度棒を手に取り、餡子を磨り潰していく。
 丹念にかつ丁寧に。
 案の定、仕上げでも量の多さに時間が掛かるも、今度は皮を作る。
 もち粉に水を加え、捏ねていく。餅つきでついた方が良いと思うが、弾力があり過ぎる。従って、手と腕力のみで捏ねていく。
 適度に捏ねたら、適度な大きさに千切って平らにして皮にする。ヘラで餡子を取り、皮の上に餡子を乗せて包む。包む際、肉マンみたいな形ではなく、滑らかな面にする。
 最後の仕上げに、手にべとつかない様に片栗粉を塗し、完成。
 量は、藍と妖夢がいた時よりも半分である。

「だが、遅いな……もう戻って来ても可笑しくは無いはずなのに」

 調理スピードを考えると、遅すぎる。
 すでに、待機していた二つの大福の山は、既に妖夢が持って行ったのである。しかも、俺が大福を作っている間に。
 ともかく、完成した大福が乗ったお盆を持つ前に、お茶葉も持つ。
 水や薄いお茶だと、大福の甘さが異常に高くなってしまうのを防ぐ為である。
 相手は亡霊と妖怪、下の感覚は麻痺しないと思うが、美味しく頂く方法の一つなので。
 だが、ここで問題が発生した。

「……どこの部屋にもって行けばいいのだ?」

 そう、部屋が判らないのである。
 スタート台所は判っているが、ゴールである亡霊と妖怪の居場所が判らない。つまり、スキマを使うことも出来ない、それ以前に館全体を把握していない。
 結果、大福とお茶葉を持ったまま、立ち尽くすしかないのである。
 まぁ、そのまま馬鹿みたいに立っているのも問題なので、仕方なく橙の元へ行く事に。が、そちらも場所が判らないので、八方塞がり。
 泣きたいが、大福がリアルタイムで僅かずつであるが、高くなってきている。まぁ、たかが一時間や二時間程度では、味を損なう事は無い。

「さて、一つ一つ探していくか」

 二階から降りてきた階段を見つけ、そこをスタート地点として、虱潰しに襖を開けていった。

「……違う…………ここ――でもない…………スカ…………はぁ〜」

 開けては閉め、開けては閉めの繰り返し。
 それを繰り返しながら進んでいくうちに、襖が全開になっている場所を発見。
 そこが、ゴールかもと思い、期待を膨らませながら向かう。
 顔を出すと、そこには紫と笑顔を浮かべる女性、そのお膝元には何故か泣いている妖夢。本気で何があったのか気になった。
 だが、今は手に持っている物を、渡すのが仕事。

「紫さん、持って来ましたよ」

 そう言いながら、部屋に入ってテーブルの上に置く。

「あら、ありがとう」
「どうも」
「ええ。で、紫さん」
「ほぁに」

 既に口の中に大福あり。

「……すいませんが、こちらの方は?」

 と、笑顔を浮かべる女性に、手の平を向けて尋ねる。指で示すのは、マナー違反なので。

「ああ、そう言えば紹介がまだだったわね。彼女は、西行寺幽々子。私の友人よ」
「よほぉしくねぇ〜」

 そう大福を食べながら、返事を返す幽々子。
 正直、食べるか喋るか、どちらかにしろよと突っ込みたかったが、ここは堪えた。

「はい、宜しくお願いします。所で妖夢さん、どうしたんですか?」

 聞くタイミングを間違えたのかは判らないが、聞いておきたい事は今聞かないと。

「あ、別に気にしなくて良いから」

 と、幽々子が返した。
 何と無くだが、どちらかが何かをやらかしたのだろうと考えた。が、それを口にはしない。した瞬間、昨日と同じ結末を迎えそうでならないのと、台所での件がある。
 それで、台所で思い出した。

「紫さん」
「ん?」

 大福を頬張っている最中であったが、タイミングが悪かったって事で。

「藍さんが、台所でとんでもないことになったのですが」
「ああ、あれは私がやった事だから、気にしないで」

 気にしないでの言葉に、激しく疑問を覚えたが、ここでも黙る。
 悪いが藍は式紙、俺は人間。食らえば、死んでもおかしくは無い。漫画であるギャグ修正と言うものがあるが、俺にとっては今存在する世界が現実なので、そう都合の良い現象は起きない。
 第一、ギャグ修正とは、架空の物語を盛り上げる為の手法であり、現実には存在しない。

「所でこの大福、美味しいわね」

 考え耽っている最中に、そんな声が聞こえる。

「ええ、私もそれなりに気に入っているのよ」

 その言葉に、何と無く嬉しかった。
 子どもの頃、この力――スキマを使っている時を、一度だけ見られた事がある。
 しかも、見られた相手はクラスのリーダー的存在で、俺を毛嫌いしていたのである。
 ここまでくれば判るが、次の日から学校で化け物扱い。証拠が無いにも関わらず、クラス全員から化け物を言われた。
 さらに、その呼び名が飛び火して他クラスに。引いては学校全体に広まった。
 学校の先生や親は、自体が収集できないと踏んで、見て見ぬフリ。自分の親からも、実害は無かったので、諦めろとのお言葉。
 虐めに関しての国のアンケート調査があっても、学校経由。俺のアンケートをシュレッダーに掛け、先生が問題無いという項目に丸をつけていた。
 無論、これはスキマを開いて見ていた。
 その時は、大人に絶望した。
 それから、スキマを使っての仕返しと、スキマを使う際の細心の注意を心がけるようになった。
 中学校に上がってからは、さらにエスカレート。
 何せ、下駄箱や机の中に、動物や虫の死骸、ゴミなどが詰め込まれていたのだから。
 普通なら、先生方も動くと思いきや、小学校の噂の生徒と言うことで隠蔽を行ったのである。
 しかも、それが何回も起きて――スキマを使って常に監視し、ビデオカメラを使って証拠を撮影。
 学校に通さず、PTAに提出。
 さすがに問題になるも、マスコミにバレない事を良い事に、厳重注意だけに留まったのである。
 その時の会話も録音し、警察、文部省、マスコミに匿名で送った。
 それにより大問題に発展し、学校は徹底的に叩かれ、実行した生徒も悲惨な目に。お蔭で俺も巻き込まれたが、小学校の件も露見してやり、さらに拡大やしてやったのは言うまでも無い。
 その代わり、俺たち家族は引越しを余儀なくされたのだが、ある意味有り難かった。まぁ、ちょうど親父が転勤する事になったので、これを機に職場を変えてもらった。
 そのお蔭で、高校は真っ当な生活が送れた。
 で、昔話をここまでにして、現実に戻る。

「紫」
「――何?」

 お茶を飲んでいる紫に、大福を両手に持つ幽々子が声を掛ける。

「空ちゃん貸して」
「え?」

 幽々子の言葉に、俺は耳を疑った。って、いうか、貸し借りって有りなの? っーか、ちゃん付けは止めて欲しい。呼び捨てでいいから。

「じゃあ、今度妖夢貸して」
「みょん!?」

 紫の言葉に、変な声を上げながら驚く妖夢。目尻に涙があるのが、とても印象的だった。
 幽々子は、右手の大福を一口で方張り、無言で親指を立てる――OKという意味だろう。

「幽々子様!?」

 その合図に、ショックを受ける妖夢。何と無くであるが、心の中でご臨終と呟く。

「空」
「はい」

 紫に呼ばれ、体ごと紫に向ける。

「今日から少しの間、ここで働きなさい」

 問答無用の言葉。だが、一応俺にも人権がある。

「拒否権は?」
「ドブに捨てなさい」

 俺に人権は無かったようだ。やはり妖怪相手では、人権など糞食らえ、らしい。が、当たり前か。
 凹む俺だが、そんな事は関係無しに話は進み、結局、妖夢と一緒に今日から幽々子の世話をする事になった。
 その後、お昼を頂いて、俺を除いた八雲一家は帰っていった。
 最初に妖夢が、客人として扱うと申し出があったが、断って手伝いをした。
 が、これが一段ときつかった。
 掃除に洗濯、炊事に風呂焚き、それらに使う水の汲み運び。
 まぁ、水の汲み運びは川の中にスキマを展開し、貯め場所に入れるという技を使ったので、簡単に終わった。
 途中で溢れそうになったのだが、排水するという作業が行われた。
 ともかく、それ以外能力を使うことも無く、作業は進む。
 それが次の日も始まり、そして終わって、さらに次の日。

「がぁ!?」

 体中に激痛が走り、まともに動くことが出来ないのである。
 つまり――俺は只今、全身筋肉痛。
 いくら一般人より毛の生えた程度の筋力でも、この異常な広さの家なので、掃除も大変なのである。
 しかも、無理に頑張りすぎたのが原因――つまり、自業自得。
 自分の体力を把握できないのは、ある意味未熟者だと言う証拠なのかもしれない。

「大丈夫ですか?」

 心配そうに聞く妖夢。幽々子はその横で、クスクス笑いながら見ている。ちなみに、手には棒を持たれている。

「す、すいません――ぁ、が!?」

 駄目だと言うことで、謝罪をする。
 だが、終わった瞬間に体に衝撃が走る。
 何かと思って確認すると、幽々子が棒で布団の上から体を突っつく。

「って、痛い、痛いから!」
「何をやっているのですか幽々子様!?」
「え〜、だって面白いじゃないの」

 何気に酷い発言をしますね、幽々子さん。

「私ではないのですから、少しは自重してください!! いや、できれば私の時もお願いします」

 何気に自分への保険も忘れないので、感謝したくてもできなかった。

「とにかく、一日安静していないと」
「でも、紫の借り物だから、早めに治ってもらわないと」

 俺、物なの? と、脳裏に過ぎる。

「はぁ〜、判りました。医者を呼んできます」
「ええ、お願い」

 そう言って、部屋を出る妖夢。
 で、今部屋に残っているのは、俺と幽々子のみ。

「ところで空」
「……なんですか?」
「帰りたくは無いの?」

 その言葉に、俺は黙った。
 確かに、スキマの力を使えば帰れる可能性はある。行きはこの世界、帰りは住んでいた世界。
 点と点を結べば、線はでき、道が出来る。
 藍の説明では、ゲームや漫画の世界、他人の夢にすら入れる力。だが、それを行えば現実と空想の狭間が無くなる。だからこそ、使わなかった。使えば、自分の生まれた世界では、生きていけなくなる。生まれた世界では空想、でも空想の世界では現実。常に世界を超えていれば、自分の常識があべこべになる――それが怖かった。
 人間、怖いモノ見たさの意識は、誰にでも存在する。俺だって、例外ではない。だが、まだ試していない。試して成功したら――味を占める可能性がある。人肉を食べた時と同じようなモノである。
 食べたことは無いが、実際に食べてしまった人の話を聞く限り、どの肉よりも美味いらしい。
 ただ、今現在の俺の力では、無理な話であるのだが。

「今の貴方は八雲空。スキマ妖怪、八雲紫と近い能力を持った人間であり、八雲家の一員」

 それだけ言って幽々子は、部屋を出て行った。
 そして、襖を閉めた瞬間に鳴った音は、妙に大きく清んだ音に聞こえた。










































≪提供≫
久遠天鈴
ニコニコ動画
白玉楼
サークル・闇砲










































≪予告という名の予定≫
第三話

医者と門番
〜ふこうなでしとちゅうごく〜










































第二話
END





















あとがき
 伏せ字を入れたのは、書いていてNGだと思ったからです。(挨拶
 主人公は、ゲームや漫画、アニメをクリア、読破、鑑賞しては売り、新たに買ってを繰り返し。
 お気に入りは売らないが、そうでもない、つまらないものは手元には残さない。
 なを、主人公はぶっちゃけぇ、18歳でも高校生。リアルに居るので問題は無いと考えた上での設定。
 ただし、むっつりスケベキャラでは無いです、ストーリーを楽しむためです。
 だって、エロ漫画の中には、突っ込みたくなる様な話やありなのか!? と、言える様な話があるから。
 進めている訳ではないが、良い話もあると言う事です。
 あとは、自分が書くオリキャラである主人公の大体が、イジメの経験あり。うん、度合いは違うけど、作者である私が経験者なので、その影響なのかもしれない。
 最後に、ダラダラ的な日常を描く作品です。過度な期待はしないで下さい。あっても、時たま程度です。

戻る?