かつて、その世界には武術の神と称された1人の人間がいた。その人間は長い長い修行を繰り返し、己を高めていった。更なる高みを目指すため、人の器を越えてまで修行に励んだ。その人間の名は武天老師、またの名を亀仙人といった。多くの武術家が彼に教えを乞うたが彼が弟子をとったのは本当に僅かな人数だけであった。しかしその弟子達は皆彼をいつまでも尊敬し続けた。自らの師を越えたというのに彼を師と仰ぎ続けた。それから数百年、その後の亀仙人はというと……









「うひょひょひょひょ、ええのう、ええのう。やはり都にはぴちぴちギャルがわんさか居るわい。やはりナンパは止められんのう、若返るようじゃわい。」

ただのスケベ爺に成り下がっていた。




亀仙人が幻想入り 第壱話 「一体何者?幻想郷に来た亀仙人」



此処はとある森の中、その森の中にスケベ……もとい亀仙人はドズン!という音とともに上から落ちてきた。

「う、む?……なんじゃい夢か。惜しいのう、もう少しでぴちぴちギャルに囲まれていたというのに……。」

やはりただのスケベ爺なのだろうか?というか落ちてきたことに対しては何もないのだろうか?よいしょの掛け声一つで普通に起き上がった。その時に背中の甲羅をズシッっと重そうな音を立てて。

「む?誰じゃ!其処の隠れてるの!」

いきなり森の中の茂みに向って声をかけた亀仙人。その先にいたのは……

「わはー見つかったのだー。」

そう言いながら、何か黒い球体がぷかぷかと浮きながら亀仙人の前に現れた。それはまぁ読者の皆さんは知っているあの子なのだが、来たばっかりの亀仙人が知ってるわけもなく首を傾げているだけであった。

「なんじゃ?お主は。近頃は球体まで喋るのか?」

「球体じゃないよ、ルーミアなのだー。」

喋る球体ことルーミアはぷりぷりと怒っているようだが全くその様子が見えない、無論体全体を覆っている黒い球体の所為で。

「ルーミアちゃんか、近頃の球体には名前が付いてるんじゃのう。」

ふぉっふぉっふぉと笑いながら球体をからかう亀仙人。そのことに益々ぷりぷりするルーミアであったがあることに気づいた。

「むぅー……あ、そっか今能力使ってるから何も見えないんだった。」

そう言うと黒い球体は徐々に小さくなっていき最後には消えてなくなった。後に取り残されたのは金髪金眼、黒の服を纏い、頭にリボンを付けた1人の少女であった。

「10年後に期待じゃのう。」

何冷静に観察してるんだエロ爺。

「だまらっしゃい!」

「ん〜なんだ、お爺さんだったのかー。がっかりなのだー。」

ルーミアは肩を落としてがっかりしている。

「お嬢ちゃん、こんなところで何しとるんじゃ?」

「ご飯探してたのだー。」

ルーミアの言葉に亀仙人は首を捻って考え始めた。

「はて?こんな森の中で食べれそうな物なんて中々見つからんと思うぞい。」

月の光しかない暗い森の中である、こんな暗さでは食べ物なんて見つかりっこないだろう。

「んーん。もう見つかったのだー。あまりおいしそうじゃないけど。」

「ほう?見つかったのか、そりゃあ良かったのう。」

もう見つけたというルーミアの顔はどこか獣じみた目をしていた。既に食べるものを見つけているということに少し驚いている亀仙人であったがその額にはうっすらと汗をかいてきている。

「わはー、じゃあ早速、あ、お約束忘れてたのだー。」

いけないいけないと頭をかきながら言っている仕草は本当に可愛い。可愛いのだがどこか危険な気配がしている。それもかなりきついのが

「お約束?何じゃ、それは?」

「んー?いつもご飯食べる時に言う言葉なのだー。」

満面の笑みをしながら言うルーミアに思わず亀仙人も笑みが浮かぶ。傍目にはには祖父と孫といった二人組である。本当に微笑ましい。

「なるほどのう、偉いのう、ちゃんといただきま」

「貴方は食べてもいい人類?」

「・・・・・・へ?」

亀仙人の笑みが固まった。

「久しぶりのお肉、絶対に逃がさないのだー♪」

いやいやルーミアさん可愛く言っても無駄ですよ?だって眼が笑ってないし。

「まいったのう。」

亀仙人は亀仙人で全く動じていなかった。

「頂きま〜す♪」

ああ、これで亀仙人が幻想入りも終わってしまうのか、まだ始まったばかりだというのに、

バクリ!!

亀仙人が幻想入り、     了 (BAD END1 ルーミアに食べられる)
ご愛読ありがとうございました。































「あれ?何これ?食べれない?」

「残像じゃよ。」

良かった、まだ終わってなかった。

「え?え!?」

食べたと思った亀仙人が今はルーミアの後ろで立っている。無論何処も食べられてなどいない。

「これぞ亀仙流  残像拳じゃ。」

ルーミアが襲って来たのと同時に残像が残るほどの速さで動き、相手に錯覚を見せるという技である。ルーミアは理解できずに頭に?マークを浮かべながら亀仙人と残像を見やっている。

「どういうことなのだー?」

「それはそうとお嬢ちゃん……妖怪じゃろ?」

亀仙人は確信めいた一言をルーミアに対して放った。サングラスを掛けているので見えないがその眼光はまっすぐとルーミアを見据えている。

「!!なんで分かったのだ?私これでも見た目は人間そっくりなのに。」

指摘されたルーミアからかなりの殺気が出ているのも関わらず、亀仙人は飄々とした顔でその問いに答えた。

「こんな夜中に人間の女の子が森にいるわけないじゃろ。」

「ですよねーなのだ。」

と言うので一気に空気が明るくなった。もはやこの場に先ほどまでの重苦しい空気は残っていない。……この場の空気は既に亀仙人が独占しているのである。

「それに、お嬢ちゃんから妖力が感じられるからのう。」

先にそれを言えよ。と言いたいが先にいるわけない宣言を行うことでこの場の流れを変えてしまったのである。勝負において、流れを掴んでしまった者が勝者となる場合が多いのは有名である。

「じゃあ、仕切りなおしいくよ?お爺ちゃん。」

「ふぉっふぉっふぉ、いつでもいいぞい。」

再び両者が対立する。お互いの視線がぶつかり合う。闘気が重なり合う。……均衡が生まれる。しかしその均衡は一瞬であった。ルーミアが速攻を掛けたのである。

「スペルカードいくよ?夜符:ナイトバード!」

ルーミアがそう、宣言するといくつもの光弾がルーミアから放たれ、亀仙人を襲った。

「わったった。な、なんじゃ?それは?」

「何って、スペルカードだよ?」

「すぺるかーど?何じゃそれは?」

ルーミアはさも当然のように言うが外から来た亀仙人はスペルカードはおろか弾幕勝負のことも知らないのである。

「スペルカード知らないの?じゃあ弾幕勝負も?」

「知らんぞい。」

「そ−なのかー……まぁこれから食べられる人間には関係ないことなのだー。」

ちなみにこの会話の間もルーミアは亀仙人を攻撃し続け、亀仙人はそれを避け続けているのである。

「当たらないのだーさっさと当たってよー」

「ふぉっふぉっふぉ大分慣れてきたぞい。ほれほれこっちじゃよ?」

「むむむ〜。」

その時、Spell card break という声が聞こえるとともにルーミアの弾幕が急に途絶えてしまった。

「あ〜、時間切れなのだ〜。」

「ふむ、わしの勝ちかのう?」

弾幕が途絶えたことで勝利したと思った亀仙人はそう言うとその場を立ち去ろうとした。しかしそうは問屋がおろさない。

「まだなのだ〜!闇符:ディマーケイション」

ルーミアはもう1つスペルカードを発動した。スペルカードは1枚ではないのである。

「これで最後なのだ〜!!」

「これは……仕方がないかのう。」

不意打ち気味だったので亀仙人にこの弾幕をを避ける余裕はなかった。もはや目の前にまで弾幕がやってきている。

「お嬢ちゃん風に言うと……開祖:かめはめ波」

森の中に光があふれた。

後にその時のことをルーミアこう述べた。

「あ、あれは思い出したくもないのだ。私のスペルカードごと私を光が飲み込んで……気が付いたらあのお爺ちゃんはいなくなってたのだ。……ただ、怪我の手当てと近くに野兎と山菜だけ置いてあったのだ。あ、あのお爺ちゃんは何者だったのだ!?」

こうして亀仙人の幻想郷初の弾幕勝負は勝利に終わった。(本人は弾幕勝負を理解していないのだが。)はたして亀仙人は何処に向かったのか?

第弐話へ続く。

あとがき
ブレイドです。ようやく壱話が完成しました。……ギャグに走りすぎたかも知れません。場合によっては修正すると思います。でも路線はこんな感じで行こうと思います。感想、質問等ございましたら掲示板の方にお願いいたします。それでは此処まで読んでいただきありがとうございます。



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