フラリと、空を飛んで冥界へと向かう。
誰も居ない博霊神社は何処か寂しくて、掃除をしても何だか綺麗になったような気がしない。
百年経った今でも、博霊神社は宴会をする場所になっている。
結局の所、霊夢はその生涯を一人身で過ごした。誰かと結婚すれば良かったのに…まぁ、孤独とかじゃなかったから、良いんだろうけど。
魔理沙は変わらぬ姿で今も元気に紅魔館に突撃しては、本を借りていっている。魔法使い凄ぇと思ったのは内緒だ。

僕も相変らず、外の物を売って暮らしている。僕って、未だに戸籍が有るんだよね。外の世界の…偽造だけど。
スキマが口座とかイロイロと用意してくれたし…何でも、僕に子供が出来たら新たな博霊の巫女にするんだと。
相手が居ないよ!! 相手が!!

今日の昼頃言われた事でムシャクシャしていたので、酒を飲む。一人で飲んでも詰まらないので、酒飲み仲間の所ヘ向かってる途中なんだ。

(どうせ、サボって暇してるんだろうし…)

そう思って着いた三途の川。僕が甘かった。小町では無く映姫が居たんだ。しかも、イライラしてる。小町め…サボリ過ぎたんだ。僕には何も出来ない。

「おや? 良也…また小町とお酒を飲むつもりだったのですか?」

「いや…うん。そうなんだけど…居ないみたいだね。小町」

「ええ…一時期サボリが無くなったと思っていたら……お仕置きです」

恐い、恐いよ映姫。どうしよう…一応、僕にも小町のサボリを知らせたりとか、止めたりとかしなかったので此の侭、映姫がヒートアップすると僕にまで被害が出そうだ。

「ソレに、彼方も彼方で「それじゃあ、一緒に飲もうか映姫!!」……私とですか? 職務は小町が帰ってこないと意味が無いので良いですけど…」

やった!! 危機は回避できた!! 何だか今日の僕は冴えてるぞ!!

「それじゃあ、一杯」

「あっ、私もお酒と杯を取ってくるので少し待っていてください」

「分かった。先に始めてるよ」

「直ぐに戻ってくるので」

そう言うと、映姫は物凄いスピードで三途の川の向こうへ飛んで行った。そんなに急がなくても良いのに。
職務が進まないのは当然だけどね。橋渡しがサボってたら向こうに渡れない。
クイっと一口、酒を飲む。ツマミは持ってきたんだけど…七輪忘れた。スルメは焼くに限るのに…
そう思って、視線を前に向けると映姫が飛んで帰ってくるのが見えた。
何か持ってるみたいだけど…袋と…なんだアレ?

「七輪?」

「彼方が忘れたようだったので持ってきましたが…要らなかったですか?」

「いや、助かったよ。スルメは焼かないとね」

本当に気が利く子だなぁ…コレで説教が無ければ…

「何か考えましたか? 良也?」

「別に? 何も考えてないよ?」

「…まぁ酒の席では無礼講です。今回は見逃しましょう」

太っ腹な事で…良かったぁ…


正直な話し、今日の僕は小町と酒を飲むためじゃなく。小町と映姫と酒を飲もうと考えていた。
そう、思ったのは映姫を見てからだけど…
不意に、随分と前に小町が言っていた事を思い出した。

『死なないあんたなら、ある意味気軽に付き合えるってことさ。妖怪連中は不老長寿ではあるけど、完全な不死のやつなんていないしな』

『死者を裁くっていうのに、私情が入っちゃいけないだろ? だから特定の人間や妖怪とは仲良くしない。特に閻魔である映姫様はそこらへんかなり気にしている』

はぁ…重いなぁ。何で思い出しちゃったんだろ? 僕はただの蓬莱人になった元人間なのに…

「どうしたんですか? 何か悩みでも?」

「ん? いや…スルメを焼き過ぎたと思って…まぁまぁ一杯」

「おっと…。そうですか? 私は丁度良いと思うけど…」

スルメを齧りながら話す、閻魔と蓬莱人。何だか滅茶苦茶だな。

「映姫って何か悩みとか有るのか?」

「何を突然言うのかと思えば…私を馬鹿にしてるんですか?」

「いやいやいや、そういう意味じゃない。ホラ、映姫って閻魔だろ? 前に聞いた時はこの辺り一体のっていうか、幻想郷の魂の裁定だけしているだけじゃ無いみたいだし…やっぱり忙しいのかなぁっと思ったから、聞いたんだけど?」

スルメを噛みながら、言ってみる。

「…確かに、忙しい時は忙しいですが……私の能力が能力なので苦労は在りませんね。」

「白黒はっきりつける程度の能力だっけ? そう考えると便利だねぇ」

「そうです。しかし……悩みは有ります」

何だか、僕にも分かったんだけど…

「小町?」

「そうです!! やはり小町はサボリ過ぎ何です!! この間なんてですね…」

映姫の愚痴が始まった。初めてじゃないか? 映姫が愚痴るのって?
コレも、善行なんだろうか? それなら、ちょっと嬉しいかな。僕に出来るのはこれぐらいだからね。

このまま、もう少し飲ませて全部吐かせようか? どうも、溜め込むタイプみたいだし…別にヘベレケに成った映姫が見たいとか、そんなんじゃ無いよ?

「ホラ、杯が空に成ってるよ」

「ありがとうございます。ソレでですね…クドクドクドクドクドクドクドクドクド」

あ、アレ? 止まらないよ?

「聞いているんですか良也!!」

「は、はい!!」

「その前は…グチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチ」

トホホ…調子に乗った結果がコレだよ。今度からは絶対に小町が居る時に飲もう。

















「む? お酒が無くなりました…今日はもうお開きですね。」

「……そうだね」

やっと終わった…

「ソレでは、私は帰ります。また…一緒に飲みましょう。良也。」

「その時は、小町も一緒にね?」

「そうですね」

クスクスと笑う映姫。この笑顔が見られるなら、軽い善行だよ…多分
僕はそう思って、家に帰る事にした。眠くて堪らないんだよ…今日はお仕事もお休みにする。





私は、小さくなる良也に向かってもう一度声を掛けた。聞こえていない。絶対に聞こえない様に

「ありがとう、良也。少し…軽くなったわ」

ありがとう。私の死なないお友達。

さてと、今日は疲れそうです。食事は体力の付く物にしましょう。


そんな、上司を影から眺めながら死神が一人。寂しそうに言葉を吐いた

「無視なんて酷いよ…二人とも…それよりも…」

小町は出るに出れずに映姫の愚痴を聞いていたのだ。

「ううぅ…心が痛い…」

自業自得という。







あとがき

ヤマもタニもねぇ!! ただ、映姫が良也に愚痴って酒を飲む話。
良也が昔を思い出して、映姫と酒を飲む話です。小町が、少し真面目に働く様になった切欠の話かも知れない。



戻る?