……文と椛に懐かれました。 以上、前回のあらすじ。 「前回のあらすじどころじゃないよね、所々端折り過ぎだし」 「しょうがないだろ、最後の部分だけ抜粋するとそんな感じだし」 とりあえず僕らは人間の里に居る。 幻想郷の中心に位置するその里は、名前の通り普通の人が住んでいる箇所である。 時折幽香などの妖怪も来るが、基本何もしないことが暗黙の了解として成り立っているので多少安全だろう。 「はい、良也さん。口を開けてください」 「ほら、大地。早く開けないとその頬に団子を押し付けるぞ?」 うん、逃げられなかったんだ。 だって文は早いし、椛は嗅覚利くしで全く持ってダメだった。 魔法で視界を防いだりしてもダメ、結局は速度において僕らは最速を名乗る射命丸を振り切ることは出来ない。 ――とりあえず口を開けて団子を食べさせてもらう。 大地君もしぶしぶと言った感じだが同じように食べさせてもらっている。 「……美味い」 「まあ確かに美味しいけどさ……」 それは団子屋のおかげであり、二人のおかげではない気がする。 ――たぶん。 しかし二人ともそれで嬉しそうだから困ったものだ。 「と言うか萃香達は追ってこないみたいだけど何でだろう?」 「多分俺も良さんもレミリアからしたら運命は読めないし、萃める事も出来ないからじゃないか? 一応自分の世界を持ってる訳だし」 なるほど、それなら納得。 二人とも能力とかに縛られないからね。 「と言うか、人間の里ならとりあえず人が多いから隠れるのは簡単だと思う」 「いや、それはどうだろう…… 僕らってここの人たちからしてみれば奇抜な格好だから逆に見つかるかも」 僕がそう言うと大地君は「そっか……」と頷いた。 少し聞き込みでもされたら即座にアウトである。 とりあえず二人とも顔を近づけて内緒話を開始。 (で、これからどうするのさ) (どうするも何も……解薬作らなきゃらないだろうな〜。 けどそのためにはどこかで調合する必要があるし、時間も必要だ) (なら永遠亭は? 永琳に調合を任せたり、施設を借りたら?) しかし大地君は静かに首を振った。 (……てゐが恐い。もし盗まれでもしたら目も当てられない。 さらに永琳に任せるには手法が面倒だし、尋ねられた時点でアウトな気がする) (確かに……) ……一瞬鈴仙に飲ませてしまったら仲良く慣れるんじゃないかと脳裏を過ぎったけれども即座に却下。 やっぱり薬は卑怯だよね。 (……地霊殿は? あそこなら広いし隠れる場所が沢山ある) (そうだな……) 納得したかのような言葉を吐いた瞬間に二人とも顔が上昇して行く。 ――簡単な話襟首を掴まれて持ち上げられたのだ。 「何を話してるんですか? 私も混ぜてくださいよ」 「除け者にするとは良い度胸だな。 どちらが上か知りたいか?」 「椛そんなキャラじゃないだろ!?」 とりあえず大地君が突っ込んだところで話は終了。 今のところ出来る事はないのだろうか? 「私じゃ満足できませんか? 良也さん……」 そんな事を良いながら射命丸が悲しそうな顔をする。 今にも涙を零してしまいそうなほどに目が潤んでいた。 ――これがパパラッチの本気だというのか!? 「い……いやいやいやいや! そんな訳、無いじゃないか」 しかしここで泣かれるのは嫌だし、泣かせたらそれはそれで居心地も気分も良くない。 だからすぐさま否定するのだが―― 「有難う御座います!!」 「うわわわわ!?」 射命丸が思いっきり抱きしめてきた。 その事で更に大きくなった胸が押し付けられるし、微妙に嬉しいわで微妙な心境。 くそう、パパラッチがこんなに可愛いとは今更の事だけどさ…… ぐらりと来るじゃないか!! 「そんな厳しい態度は俺嫌なんだけど」 「え!?――あ、文様〜!!」 向こうでは大地君がはっきりと強気な態度な椛にはっきりとそう言った瞬間何時もの椛に戻った。 ……なんでだ? 「うぅ〜っ……」 「無理して強気に出るからいけないんです。 素直に行くことが男性にとってはウケが良いのです」 「変な知識入れんでええわ!! と言うか椛も実行しなくて良い!」 「そんな事言わないでよ〜!」 一気にヘタレた。 ……なんだこれ? 「どうしたら許してくれますか?」 もはや嘆願や懇願の域に入っている。 それに大地君は物凄いため息を付いた。 ――基本押し付けられるのには反発するけど、そうではないものにはだいたい寛容である。 「……どうもしなくて良いよ。 とりあえず素の椛でいれば良いから」 「わかりました♪」 「いや、だからってハグはせんでもおおおぉぉ!?」 素の椛に抱きしめられて苦しがる大地君。 うん、それはさっき僕が通った道だから良く分かる。 妖怪の力で抱きしめられたら苦しいよね、主に肺が締め付けられて酸素が吐き出されるから。 「そうですね〜、椛が素直になったところで私達も少しずつ仲を深めていきましょうか。 まずはデートから初めまして、プレゼントにキスと進めましょう。 そして最後はですね――キャッ」 「やばいぞ、危ないぞ大地君! このままだと僕はって言うか僕らは確実に誰かとゴールインしちゃうんですけど!?」 「今度家に来てください! 手料理とかご馳走しますから!」 「え、マジで? じゃあ今晩行こうかな……紅魔館行けなくなっちまったし」 そう呟いて顎に手をやる大地だが…… 素での言葉だろうがそれは危ないぞ大地君! どっちかと言うと君の貞操とか、人生とか、命とか。 しかも椛も「しめたっ!」見たいな顔してるし! 「其処までにしてもらおうか」 「「「「!?」」」」 突然の声に皆して驚く。 椛と射命丸まで硬直している有様だ。 その視線の先を見ると居たのは――慧音だ。 脇に書物を抱えている辺りからすると寺小屋が終わってからなのか、阿求のところから戻ってきた所だろう。 彼女はゆっくりとこちらに来るとまず大地君を睨み付けた。 「またお前か!」 「いやいやいやいやいやいやいやいや!? いきなり来て決めつけなのは私としては宜しくないと思うのですがでも結局として俺が原因な気がしないでもないから当たってると言えば当たってるんですけど、それでもいきなり犯人扱いするのは信頼関係とかそういうものはどうなってるんでしょうかと、私香山大地としてはそこん所詳しくお聞きしたいんですが、どうなんでしょうか!?」 「……テンパリ過ぎといえば良いのか、必死すぎだろそれも……」 もはや土下座をしそうな勢いで喋る大地君を見てそう思った。 ――確か僕の知ってる小説がアニメ化したけど、その主人公もそんな感じだったな…… 「とにかく……この二人が何時もよりおかしな理由を聞かせてもらおうか。 特にあの部分」 「――はい……」 慧音が椛と文を指し示す。 まあ射命丸はボタン弾けそうだし、椛は巨乳になって横から見たらエロスだしね。 べ、別に見たくて見たわけじゃないんだからね!! 寺小屋に移動してからの大地君に対する尋問のような時間が既に30分ほど経過した。 ……大地君は以前何かやらかしたそうで慧音とは微妙な関係だそうな。 「――で?それを治す方法は?」 「知ってるけど作ってません!」 「うわぁ……」 もはや体育の教師にこってり絞られる気が少し弱い不良生徒のようだ。 実際は言葉攻めしかされていないが、聞いていて少し泣きそうになった。 信頼の無さが聞いていて辛いほどに分かった。 ちなみに椛と文は一旦帰ってもらった。 二人ともくっついて離れなかったが、慧音が「……帰らないのであれば一緒に特別授業で宿題を大量に叩きつけるぞ?」と言ったところ渋々帰ってゆきました。 ――まあ椛はともかく、射命丸すら恐れる宿題。 ……まあ学生だったらレポートとかでもひぃひぃ言ってるけどね。 「まったく……よくもまあ其処まで事件を起こせるものだな」 「面目ありません!!」 「……とりあえずさ、薬を作る為に地霊殿に行こう 二人なら話を分かってくれる――」 そう言った瞬間、屋根を突き破る馬鹿でかい騒音。 それと供に埃が舞って周囲が少しの間見えなくなる。 けれども先ほどの紅色の槍を見れば大体誰だか判る…… 「ふふふふふ……さて、追い詰めたわよ大地! 大人しく薬を渡しなさい!」 「わたせ〜」 其処に居たのはフランドールとレミリアだ。 もう既に武装は済んでおり、グングニルにレヴァーテインも装備済みだ。 「さて、と……ようやく見つけたわ。 お嬢様の為にも私の為にもそれを渡してもらおうかしら」 「完全に私欲混じってますけど!?」 「失礼な。私はお嬢様の命令で嫌々やらされてるだけですわ。 けれども其処に自分の意思が介入しても……おかしくは無い!」 「おかしいっての!? と言うか日光の下じゃ――はっ!?」 大地君はそう思いっきり叫ぶが、僕も気付いている。 太陽の下では吸血鬼であるレミリアとフランドールは蒸発してしまう。 けれども蒸発しないのは何故か? それは分厚い雲が空を覆っているからである。 光が当たらなければどうと言う事も無いという訳だ。 「まさか萃香!?」 『あったり〜!』 大地君が叫ぶと同時に霧らしきものが集う。 ……いや、これは萃香だ。 収束した霧の先にはその人物が現れる。 ――うん、やっぱり胸は大きいままである。 「さて、大人しく私と一緒に来るんだね!」 「嫌だし!!」 大地君全力で拒否する。 ――その態度はきっと沢山の東方大好きな人物から非難を浴びるだろうけどさ…… しかし萃香は萃香で余裕である。 「そう来るだろうと思って援軍を呼んであるんだな〜」 「残念だけど大地はここでゲームオーバーよ」 「コイン一個も無いけどね」 「……」 慧音何だかプルプル震えてるのを他所に会話が進む。 ――しかし萃香のフラグ相手は大地君か。 まあ助かったといえば助かったんだけどさ…… 「さあ私に力を!」 「それ何て――うおぶぅっ!!?」 突っ込みを入れようとした所で物凄い衝撃が僕を襲う。 2メートルぐらい滑ってからクラクラする頭を働かせてそれを見る。 すると其処に居たのは―― 「ええええぇぇ!? チルノに小悪魔、大妖精まで居るんですけど〜!?」 「あたいを無視するなんて無理なのさ!」 「もう、探したんですよ〜?」 「はぁ……はぁ……、慌てて飛んできちゃいました」 そう、三人とも僕に突撃とも言えるような体当たりで僕を押し倒している。 身動きが取りづらいけれども、動けなくは無い。 「えええぇぇ!? フラグ相手は僕かよ〜!? と言うか重い〜!!!」 三人も乗っていれば重いだろう。 しかしそんな事は言わない、だって分かりきってるから。 「ねえねえ、湖行って遊ぼうよ! 今なら蛙の氷漬けあげるから」 「え〜? それよりも鬼ごっことかの方が良いな〜」 「良也さん、この前新しい蔵書を仕入れたんですけど読んでみませんか? 多分気に入ると思うんです!」 わ〜い、もはやどんな状況か分からないぞ〜!! 「動けないって言うか引っ張らないで!?」 「う〜……アタイんだ!」 「ずるいよチルノちゃん!」 「私の……ですよ!」 うん、男性としては物凄く嬉しい。 けれども……やっぱり引っ張られれば腕とか痛いわけで…… 「痛い痛い痛い痛い!! 誰か助けてーっ!!!!!」 そう叫んだ瞬間、三人の悲鳴と供に両腕が自由になった。 けれども今の突風は射命丸!? 「……探したわ」 「って、今度はパチュリー!?」 うん、大地君が行ってた事を覚えてるけどこれは流石に予想外―― 「って言うか大地君のフラグ少ないよ! 不公平だ!」 「じゃあかしゃぁ! 俺だって交友範囲が狭いの木にしとんじゃぁ!!」 そう言えばそうだったね。 あっちへフラフラこっちへフラフラと移動しまくってて友達なんかすぐに出来る訳ないか。 唯一仲が良いのはボスキャラかEXキャラぐらいか。 ――だからレミリアとフランドールね。 「って、大地君それだとフラグの相手がだいたい小さい女の子ばっかりじゃないか!」 「チルノと小悪魔、大妖精を侍らせて置いてそれは無いだろうが!?」 「私達を無視しないでくれる?」 「とりあえず良也は私と一緒に図書館まで戻りましょう」 なんか積極的と言うか方向性まで変わってきた。 と言うかパチュリー…… 女王様? 「とりあえず今までは魔法の事でも放置しすぎてたから今日からみっちり教えるわ。 大丈夫、その為の魔法とかも知ってるから」 「わああぁぁ!!!」 もはや問答無用の領域で連れ去られそうになるが再び救援が――!? 魔法と言う深不可視の縄を断ち切るようにその人物は降り立った…… 「って、諏訪子!?」 「へへ〜……助けに来たよ、良也!」 顔を多少嬉しそうに赤らめて背中越しにこちらを見る諏訪子。 それを悔しそうに見るパチュリー。 ――背後ではレミリアと大地たちがやりあってる。 うん、双剣使いは格好良いね。 一人で3人まで同時相手してる。 けれどもやっぱり劣勢で移動がかなり激しくなってゆく。 ―― 僕も何かしないと! 「良也! 一緒に逃げるよ! 良也と一緒ならまた外界に戻っても構わないから」 「それをさせると思う?」 パチュリーは魔道書を取り出して本格的に魔法の詠唱に入る。 魔法使い対神様か…… どっちが勝つのか物凄い興味はあるけど―― 「大丈夫。恋する乙女にとって障害なんか無いに等しいんだから!」 「物凄い頼もしいけど別の場面で聞きたかったな、それ。 ……とりあえず大地君、この状況は――」 「うわああぁぁっ!?」 大地君を見た瞬間、目と鼻の先を通過する大きな物体。 それが大地君だと気付くのに数秒かかった。 「お前等……寺小屋で暴れるんじゃない!!」 「慧音が怒った〜!!」 フランドール逃げ始めた。 基本怒られるのは嫌なんだろうな…… 「大地君、大丈夫か?」 「あてて……いや、何とか……」 投げられた先は寺小屋の外で、誰も居なかったので彼と他人の誰にも迷惑はかかっていないようだ。 「とりあえずもうやばいんで逃げる!」 「……僕もとりあえず行くよ」 ここに居ても僕の力じゃどうにもならない。 薬も作れないし、止める事もできない、更には振り切ることだってとてもとても…… 「なら一気に――」 「地霊殿へ!」 そうと決まれば行動は早い。 一気に地面を蹴って空中へ―― 「待ちなさい!」 「――待たないとナイフでハリネズミにして差し上げます」 けれども追ってくる人物がしっかりと三人居る。 レミリアと咲夜、そしてフランドールである。 「効果は見たでしょ!? 胸が大きくなるだけじゃない…… 好感度が一定以上ある人物に対して恋慕するような奴だよ?」 僕がそう言うがレミリアは聴く耳持たない。 それどころか挑戦するかのような眼差しを向ける。 「あら、私が其処まで好感を向ける相手が居るのかしら? 逆にそっちの方が面白そう。 ――ね、咲夜?」 「まあ多分相手は居ないと思いますけど」 「それって死亡フラグだよね!」 逃走しながらの会話はかなりきつい。 レミリアたちの声を聞き逃しそうになるし、聞き逃したら方向が分からなくなる。 遂には弾幕まで飛ばしてくる始末。 「良さんこれ!」 「えぇ!?」 大地君が薬ビンを僕に投げてくるのですかさずキャッチする。 それと同時に剣を再び抜き放つ。 「俺は三人の相手をするから良さんは身を隠してくれ! 俺も上手く撒いたら解薬つくりに行くから!」 「……分かった」 僕は戦闘レベルがそれ程高くない。 なら剣を持っている大地君に任せてここは先を急いだ方が良い気がする。 地霊殿で暫く隠れて、その後で安全に外界へ逃げよう。 ――スキマが手伝わない限りはそれで無敵だ。 良さんが飛び去ったのを確認して完全に三人へと向き直る。 これで俺は足止めを果たして行方を分からなくすればよいのだ。 「さあ来い!」 剣を分離させて二つに分ける。 これで手数を増やしてある意程度対抗できるようにするのだ。 「くっ……」 どうやら迂闊に抜く事は出来ないようで、レミリアたちは向かい合うように足止めを食らう。 良さんはゆっくりとだけれども遠くに消えてゆく。 それを見ているレミリアがとっても焦っていた。 「邪魔よ!」 レミリアのグングニルが俺に目掛けて放たれる。 一直線に飛ぶ神速の槍が急速に接近するが―― 「当たらんよ〜」 そんな場違いな声を出しながら回避する。 真っ直ぐに飛ばす武器は手元を確認すればだいたいの方向は分かるのだから。 「悪いけど真っ直ぐに飛ぶだけだから回避だけだったら楽なんだわ」 そう言ってレミリアに無駄だという事を言うが、何故か先ほどの笑みは消えている。 それどころか余裕っぽい。 「そうね大地に簡単な攻撃を当てるのは難しい事は理解しているわ。 ――だけど連れの方はどうかしら?」 「え!?」 慌てて背後を見ると、良さんに重なるようにグングニルが飛んでゆく。 拙い、このままだと良さんが墜落する!? 「良さん後ろだ!!」 そう叫ぶことしか遠距離に居る俺には出来なかった。 大地君の叫びが聞こえた気がして背後を振り返る。 何か嫌な予感に突き動かされる。 其処には―― 「グングニル!?」 まだ少し距離はあるものの速度が速度だ。 僕には少しばかりの回避をする余裕しかなかった。 「回避――っ!?」 それでも多少弾幕ごっこで鍛えているからギリギリで避ける。本当のギリギリで。 通過してゆく槍に何の衝撃が身体を襲わない事に無事回避しきったことを理解した。 「助かっ――た!?」 しかし目を開いてみると周囲は薄い霧のようなもので覆われていて良く見えない。 それもすぐに霧散して視界が開けてくるが―― 「わああぁぁ!?」 「え、何!? どうしたの!?」 大慌てで接近してきた大地君がかなり取り乱している。 その理由も判らずに僕も取り乱す。 僕の問いに大地君はアワアワと答える。 「ぐ、グングニルで……ビンが!!」 「え――?」 言われたとおりに見てみると持っていたビンが蓋の部分を残して綺麗さっぱり消え去っている。 勿論丸薬も―― 「圧縮率85%だから粉末状になってぶっ飛んじまった!」 「えぇーー!?」 先の霧は丸薬だったものと言う事。 つまりは全て風に乗って飛んでいったわけで―― ――幻想郷中に薬が空気中にばら撒かれました―― その事実確認に二人して絶句しながら向かい合う。 遠くでレミリアと咲夜が呼吸でその効果を得てしまったようで豊胸されていた。 「良さん……短い人生だったな」 「え、何!? 辞世の台詞!?」 「幻想郷で良さんに会ってもう一年が経過したな〜…… 良さんに会ったおかげで友達が一人増えたし、外界のお菓子も買えた。 ――もう少し互いに知り合うことが出来たらって思うと……悲しくなるな」 「いやいやいやいや、もう少し生きる努力をしようよ!? 逃げれば何とかなるかもしれないじゃないか!」 そう肩を揺さぶりながら言うが既に諦めと開き直りとなっていた。 「なら俺は何処で薬を作れば良いんですかねぇ!? これで紫とかが直ぐに着たら俺でも何にも出来な――」 「呼んだかしら?」 「「うおぁっ!?」」 付近に開かれたスキマから身を乗り出す紫。 その突然の出現に二人して慌ててしまう。 「何故にここへ!? と言うか……大丈夫、か?」 大地君が少し疑心を露わにする。 まああの圧縮率だったら確かに紫の居る場所にまで届いてそうで恐い。 しかしそれに紫は微笑んで応える。 「まさか、あんな薬如きに私がやられるわけ無いじゃない」 「……なら良いんだけどさ。 紫に関してはフラグ関連で心あたりが有って少しな……」 「シクシク……私ってば信用無いわね…… 確かに少し殺そうとしただけじゃない」 それって十分不信になりうる動機だと思う。 けれどもそれだとフラグになりえないと思う。 「けど最終的には助けたじゃない。 こうやって生きてる事がその証明でしょ」 「まあ確かにそうだけどさ…… で、何のようだ?」 「薬を作りたいと風の噂で聞いただけですわ。 なら場所を提供しようと思って」 「マジでか!? そりゃありがたい!」 ――ここは『待て、それは孔明の罠だ!』と言ったほうが良いのだろうか? だって明らかにスキマがそんな事を言ってくるのはおかしいし―― ――胸の部分だけあからさまにもう一つのスキマで隠れてるし。 けれども大地君、考える事は大人びていても異性関係は子供並みに鈍い。 だから簡単に引っかかる。 「待て、これは孔明のわ――」 「なら頼む!」 「任せて。 ――何もかも私がやってあげるから」 スキマに何のためらいも無く身を投じる大地君、しかしスキマがゆっくりと閉ざされる向こうで声だけが聞こえた。 『は? ここで薬の調合って…… 寝室じゃねぇか?!』 『えぇ。作るも何も――作れるのは薬だけじゃないでしょ?』 『……え、寝室で作るって――何を――』 「大地君〜!?」 しかし目の前でスキマは閉ざされてゆく。 そのスキマを大地君は掴んで最後の言葉を残す。 『とりあえず長くて二日! 良さんは耐えてくれ!』 「いやいやいやいや! そのままだと君は間違いなく別のナニカを作る羽目になるから!」 『大丈夫だ……俺を信じろ!』 「君の腕前の心配じゃなくて僕がしてるのは君の事――」 最後に親指を立てた腕がゆっくりと隙間の向こうへと消えていった。 ――でもいつまでも大地君の心配をしてる場合じゃない。 「良也ーっ!!」 フランドールのタックルが空中にてかまされる、それと同時に地面に向かって落下してゆく。 その向こうでレミリアと咲夜が大地を探して飛び立った事と、諏訪子やパチュリー。 果てにはチルノたち三人が飛んでくるのを見た。 後書きという名の何か〜 蒼野「どうも、蒼野です。 ……と言っても余り後書きで書くことは無いのですがね。 とりあえず『永琳が作ったんでも良かったんじゃね?』と言う意見に。 これを書く指定の一つで『オリキャラ混ぜて』ってのが有ったからです。 まあ外せという意見が多ければ外しますが。 基本居ないと考えてくれれば良いです。 今回が異例な訳ですから。 では又次回。」 |
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